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 ポーション鞄を持って、さらに町をぶらつく。

 中身は空なので軽い。

 地図や世界情勢が分かるようなものはないかと、うろうろすると、本屋っぽいところを見つけた。

 中に入ると、本屋というより貸し本屋だ。

 見本を手に取ると、紙製の本だ。元の世界ほどの紙質ではないが、十分立派な紙だった。

 冒険者ギルドや商人ギルドが発行した初心者向けの本があったので、借りることにする。

 こんな時ギルドカードは大変便利だ。

 免許証とメンバーズカードが一緒になったようなものだ。

 さらに口座にお金を積めば、デビットカードにもなる。

 店には文房具もあったので、メモや日記が書けるよう購入する。

 本は1冊2泊3日で銅貨2枚、ノート1冊銅貨1枚、万年筆みたいなペンが銅貨5枚だった。ちなみに銅貨10枚で銀貨1枚だった。やっぱり。

 他には下着類を2着ずつ購入。

 Tシャツとトランクスみたいなもの、それに靴下だ。価格はそれぞれ銀貨1枚前後だった。


 ちょっとした横道に入ると、大人の雰囲気のするエリアがあった。

 飲み屋が立ち並び、娼館っぽいのも数軒ある。

 まだ夕方早い時間なのに、すでに営業しているようだ。

 飲み屋街を通り抜けながら、キョロキョロしないようにしつつ周囲を観察する。


(こういうところは、異世界でも変わらないな)


 突然だが、俺は素人童貞である。

 女性とつきあったこともない。

 だが、この手の風俗には、それなりに金と時間を掛けたのだ。


(よし、収入が安定したら来てみよう。宿でポーション作って、明日ギルドに売りに行こう。継続して買って貰えそうなら、明日はここでお祝いだな)


 今後の楽しみが出来たので、嬉しくなる。

 ニヤつく口元を押さえ込みながら、宿へと向かった。


 宿に戻ると、明日も泊まることを告げ、金を払う。

 ギルドカードを使えるか聞いたら、使えるそうだ。

 口座にはまだ金を入れていないので、現金で支払った。

 その後は、飯の時間までポーションを作ることにした。

 怪我・病気・状態異常の(F)(E)を5本ずつ、(D)(C)は各1本だ。

 どのランクまで需要があるのか、どこまでがこの町で出して大丈夫なのかが分からない。

 明日はギルドで、職員の反応を見ながら確かめよう。

 (D)は各種とも、(E)より色が濃くなった。

 かなり濃い、飲んだら口の中に色がべったりつきそうなくらいだ。

 (C)は(F)並みに薄くなったが、その代わり淡く発光している。

 ベッドの布団の中に持ち込んで暗い中で見たら、結構綺麗だった。

 腹が減ってきたので、ポーションを鞄に入れ鍵を掛け、ベッドの下に突っ込んで部屋を出る。勿論、部屋にも施錠した。


 食堂に下りて行くが、早かったのか客は誰もいない。

 大丈夫かと聞くと、大丈夫だとの事で、さっそく夕飯を出してもらう。

 パンにサラダにスープに茹でたソーセージ、普通にうまかった。

 定番のメシマズを覚悟していたので、いい方に驚いた。

 うまかったと伝えると、宿の親父がニカッと笑う。

 少しドヤ顔だ、この宿は食事に自信があるのだろう。いい宿を紹介して貰った。

 俺以外客がまだいないので、親父は暇そうだ。

 そこで俺は、親父に銅貨を数枚握らせ、情報収集することにした。

 昼間気になった大人の街について、特に娼館についてだ。

 俺が尋ねると、親父は下ネタを話す時の男特有の、ちょっと楽しそうな下品な笑顔を浮かべて、

詳しく教えてくれた。


「この町にゃ娼館が3軒ある。まず一番手前にある『シーゴッド』って店は、旅行者向けだ。店は立派、女の質も悪くないが、値段が高いな」


 さっそく俺はノートにメモを取る。


「その奥の『シュリンプフィールド』は、シーゴッドより安く、女は若いのが多い。だが、技術は低い。素人同然だ」


 ほうほう。


「一番奥の『ロウクワット』は、地元向けだ。安いが女の年齢は高め、しかしうまい奴が多い。もっとも当たり外れは大きい、ババアで愛想なくて下手糞ってこともある」


 いやー、それは勘弁だな。

 それにしてもさすが中核都市、結構店があるな。


「金額は、大体だが、シーゴッドで銀貨9枚、ロウクワットが3枚、シュリンプフィールドが6枚だ」


 ん?銀貨?宿が1泊食事つきで銀貨4枚。女の子一人が銀貨3枚から9枚。

 元の世界の感覚からいうと、かなり安い。

 俺は確認する。


「銀貨だよな?金貨じゃないよな?」


「当たり前だ、金貨だったら誰もいかねえよ」


 何言ってだ、こいつ?見たいな目で見られた。

 そうなのか。

 俺の高い安いの物差しの基準は、ここの宿代しかないからよく分からん。

 

「さっき言った金額は店に払う分だからな。その他に、プレイ後に女の子にチップを払う必要がある。サービスにもよるが、銅貨3枚から6枚くらいが相場だな」


 しっかりとメモする。

 おっさんは下品で素的な笑顔で俺に聞く。


「で、なんだ?これから行くのか?」


「いやー、話を聞いてますます行きたくなったんですけど、ちょっと今日は、明日の準備とかあるんで無理ですね」


 それを聞いて、おっさんは残念そうだ。

 そんな会話を続けていると客が入ってきたので、部屋に戻ることにした。


「じゃあ明日行ったら、どうだったか感想を聞かせてくれよ」


 おっさんは、ニヤニヤ顔のままウインクした。

 そのまま客の方へ向かい、後ろ手でバイバイをしてくる。


「分かりました。有難うございます」


 いろいろと貴重な情報をくれたおっさんに礼を言って、階段を上る。

 ますます明日が楽しみになってきたが、今日は異世界初日、やるべきことをやっておかなくてはならない。


 部屋に戻ると、すぐにやるべきことを始めた。

 俺の思うやるべきことは、借りてきた本、冒険者と商人の初心者向けの本だ。

 冒険者の方には、ギルドで行ってる業務や、初心者の心得、一般的な魔物のことなどが書かれていた。当然、ギルドカードや口座のことも書かれていた。商人ギルドの方も、おおよそ似たような感じだ。

 とても全部は読みきれないが、大体のことは把握した、気がする。


 さて、今日は職場で転落死するは異世界に転移するはで大変だった。

 そろそろ眠くなってきた、が、寝る前にもう一つやっておかなければならない。

 Sクラス魔法の行使だ。

 1日1回しか使えないから、残すのはもったいない。

 使うのは病気治療だ。

 自身が病気にかかってる自覚はないが、気がついてないだけかもしれない。

 異世界だけに、どんな病気があるのか分からないし。

 ということで、魔法使用。

 自分に手を当て念じる。


(病気治療(S))


 俺の中のどこかでカチリと引き金が引かれたような、そんな感覚が走る。

 一瞬体が強く光ったような気がした。

 体に変化はない、ような気がする。

 おそらくこれで、罹っていたかもしれない病気はすべて治癒されたはずだ。

 魔法素晴らしい、まさに神の力、元の世界じゃあり得ない。

 ついでに怪我治療(A)と状態異常回復(A)も掛けておく。

 残り(A)一つは保険として残しておく。


 ベッドに入った直後、今日はまだ風呂に入ってないことに気づいた。

 そもそもこの世界の風呂事情も調べてないし、宿の風呂、あるいはシャワーがどうなってのかも、聞いてなかった。

 時間も時間だし、急速に睡魔が襲ってきたので、今日は風呂に入らず済ますことにした。

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