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「・・・着いたか。一瞬だな」
気がつくと、俺は、雑草の生い茂る中に座っていた。
立ち上がると、雑草の高さは膝ぐらいまである。
雑草の中あちらこちらには、一抱え以上ある石の塊が顔を出していた。
自然のものではない、石材だ。
ただいずれも古く、表面は風雨で劣化していた。
昔々に建てられていた石造りの建物が崩れ、そのまま放置されたと思われた。
周囲を見回してみると、ここは小さな丘の上であることが分かった。
草原と森、それにやや遠くに町らしきもの、街道らしきものが見えた。
まったく馴染みのない風景だった。
町らしきものは周囲に城壁を備えており、中世ヨーロッパのような風情である。
音は、そよ風に揺らされる草と木々の葉のたてるもののみ、車の走行音など一切聞こえなかった。
(まずは、貰った魔法の確認だな。さっきは時間がなくて、詳しく見れなかったからな)
貰ったはずの本は手元にない。だが、焦る気持ちはまったく湧かなかった。
なぜなら、自分の頭の中に、その存在を感じていたからだ。
頭の中の本を開いて読むイメージをしてみると・・・・読めた。
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我は、当本を貸与された者に、下記の力を貸与する。
当本は、貸与された者の命が失われた時点で、力とともに返却される。
貸与する力
根源魔法のうち、以下の物
怪我治療(S~F)
病気治療(S~F)
状態異常回復(S~F)
怪我治療薬作製(S~F)
病気治療薬作製(S~F)
状態異常回復薬作製(S~F)
※1 根源魔法とは、過程を得ずに結果だけを現出するものである。
呪文の詠唱、魔方陣の作成、素材の準備、天体の相関位置等、通常発動に要する一切の外的要因が不要である。
※2 1日に使用可能な回数は、すべての計で以下の通り。
なお、使用可能回数に必要なのはあくまで日をまたぐ事であり、睡眠時間は関係しない。
S 1
A 3
B 6
C 10
D 15
E 21
F 28
なお、貸与された者には、支度として以下を与える。これについて返却の必要はない。
人族の一般的な公用語の能力(D)
一般的な旅人装備一式
金貨9枚
銀貨10枚
以上
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・・・あの石像、親切だ。
それが、読んだ後の印象だった。
まあ、まずは魔法から確認していこう。
この世界の標準が分からないが、おそらくとんでもない力だということは推測できる。
S~Fというのはおそらくランクのことだろう。
回数から言って、Sが一番上、Fが一番下だな。
なにせ、神が自分で「世界最高位の魔法」と言ってたのだ。
病気の治療(S)の魔法を使えば、不治の病だろうとも治せるはずだ。
怪我の治療(S)なら、死んでさえなければ、体真っ二つからでも回復させられるかもしれない。
それに各種薬、ポーションが作れるって言うことは、余った使用回数でポーションを作製しストックしておけば、いざという時大量に使用できる。
売って金にしてもいい。
マジックポイント制ではないんだな。
それに親切というか気が利いているというか、言語はともかく装備と現金を準備してくれているとは、有難い。
いかにチート能力を持っていても、金も何もなしからでは大変だ。
仮に転移者が、食べ物、飲み物、現金なしの状態で到着したとする。
いかに強大な力があっても、当座の命がつなげない。
なんとか人里に辿り着いたとしても、金はない。
そして腹は減っている、人里に食べ物がある、そして転移者は強い力を持っている。
・・・不幸な未来しか、想像できない。
あ、なんか思ったんだけど、あの石像、今までも俺みたいなの何人も捕まえて依頼掛けてたんじゃないか?
そんで、最初着の身着のままでほっぽり出して、うまくいかなかったとか。
なんか、勧誘の時から慣れてる感じがしたもんなあ。
まあそれは置いておいて。
支度品を返さなくていいっていうのは、助かる。
服とか傷んだら、捨てていいってことだしな。
けど、言語能力なんて返すとか返さないとかのもんなのか?まあ、どっちでもいいけど。
人族の一般的な公用語っていうことは、やっぱりいるんだな。人以外で言語能力のある奴。ファンタジーだわあ。
あと言語能力の(D)って、喋れるが(F)、読めるが(E)、書けるが(D)ってことなんじゃないかな。
読み書きが出来る最低限、ってこったな。
けどなんだ?この本、文字が書いてあるの最初のページだけだわ。
2ページ目移行は全部白。
無駄に分厚くてページ数あるけど、意味ないだろこれ。
魔法関係はとりあえず理解したので、次は装備品の確認をする。
布製のバックパック。
中には水筒と、ショートブレッドみたいな食べ物が幾つか入った袋が一つ。
試験管にコルクの栓をしたような形状のガラスの瓶が2本。中には薄赤い色の液体が入っている。
旅人装備一式ということだから、おそらくこれは怪我か病気の治療薬なのだろう。
身に着けているものは、
フードつきの厚手のマント。
布製の上下の服、それに下着と靴下。
皮の手袋にブーツ。
皮の腰ベルトに短剣が一振り、貨幣の入った皮ポーチもついている。
残念ながら、身分証みたいなものはない。
町へ入るとき求められたりするのが定番だから、あると助かると思ったのだが。
逆に言えば、なくてもなんとかなる、ってことだろう。
装備品の確認後は、魔法は試すことにした。
実際どんな感じなのか、把握しておきたい。
「鑑定!」
近くの草をにらみながら、鑑定をイメージしつつ叫んでみる。
なにも起きなかった。
「ステータス・オープン!」
自分の胸に手を当てながら叫ぶ。
なにも起きなかった。
鑑定やステータスを見る能力は、残念ながらないらしい。
改めて、怪我治療薬作製(F)をイメージし、魔法を発動させようとした。
すると、自分の中で何かカチリと、引き金を引いたような感触があった。
同時に目の前に、薄赤い液体の入った、試験管にコルクの栓をしたような形状のガラスの瓶が1本、出現した。
驚きつつも、草の上に落ちる前に右手でキャッチする。
驚いたのは、容器ごと出現したからだ。
予想していたのは、薬液だけがバシャッと出て来る、水の入った瓶に手をかざさないと魔法そのものが発動しない、だったからだ。
まさかポーション瓶ごととは。
驚いたが嬉しい驚きだ。
これなら瓶を準備しなくてもポーションを作れる。
説明書きにあった素材不要とは、容器のことまで及ぶのか。
町へ向かうに当たり思うところがあったので、怪我治療薬(F)をさらに2本、病気治療薬(F)と状態異常治療薬(F)3本ずつ、さらにこの三種の(E)を1本ずつ作製した。
病気治療(F)は薄青い色、状態異常治療薬は薄緑色をしていた。
(E)はそれぞれ若干色が濃くなった感じだ。
「収納!」
叫んでみたが、目の前の物品はそのままだ。
まったく収納されない。
バックパックの中にある食料の入った袋をいじってみた。
実はアイテムボックスではないか、と期待したが、普通の布袋のようだった。
まことに残念ながら、そういう能力や道具は持ってないようだ。
作製したポーションを、割れないように注意しながらバックパックに入れる。
背負って少し歩いてみると、背中でカチャカチャ音がするが、割れはしないようだ。
今後の工夫要ということで、今はこれで我慢しよう。
ではでは、出発しますか。
目標はやや遠くに見える町らしきもの。
ファンタジー世界で野宿して生き残れる自信はまるでないので、日の落ちる前、いや手続きとか宿探しとかも考えるともっと早めに着きたいところだ。




