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不死鳥の塔

 



 一足先にソアラを発ったスズランは、目的の場所に辿り着いていた。

 遠目からでもはっきりと視認することができる【不死鳥の塔】。眼前すると、改めてその威容を実感した。


「思ったよりも早く着いたね」

「そうね」


 移動が速いのは、ステータス補正による恩恵だ。

 入口の大扉はまだ開いておらず、塔の周辺には先行を狙う待機PTの姿を見ることができる。

 もう半刻も経てば、周囲は多くのプレイヤーで埋め尽くされる。


「それでも結構な人数がいると思うんだけど……そんなに必要なの?」


 尋ねたのは、攻略に関する内容だ。

 1PTにつきの構成人数は概ね3人から10人ほど。人数が増えれば増えるほど攻略難易度は下がるが、配分される報酬も減少する。バランスが良いのは4人か5人。

 見る限りでは、やはり王道の構成が多いようで、現状で見られるのは6PTほど。既に30人近いプレイヤーが集まっていた。

 町で見かけた冒険者たちが全員集結するのだとしたら、その人数は100を優に上回っているのではないか。


「PT人数を増やせば、もっと楽に撃破できるはずよ」

「それをしないってことは、やっぱり報酬?」

「そうね。ちょっと変わったシステムが採用されていて、最初に入室したプレイヤーのPTだけがボスと戦闘できるの」

「え? それじゃあ、早い者勝ちってことになるんじゃ……」

「そうだけど、とてもじゃないけど4、5人PTでいきなり倒せるような敵じゃない。もし負けても与えたダメージは継続され、そのまま次のPTに持ち越されるわ」

「あぁ。そういうことか」


 とりあえず挑んで、負けたら次。負けたら次。いわば、ボス側の勝ち抜き戦。

 適度に削られたタイミングで戦ったPTが撃破報酬を得られるということなのだろう。


「でも、それだと勝てない前半組みが挑むメリットがなくなるんじゃない?」

「そうでもないわ。負けたとしても、規定のダメージラインを通過することによって、その時点で報酬がドロップするのよ」

「ちゃんと救済措置があるんだ。そうでもしないと、誰も挑まなくなっちゃうしね」

「……えぇ。でも、それがそうでもないんだけどね」


 何せ過去ファーストアタックからそのまま撃破してしまったPTも存在するのだ。

 ライン報酬も撃破報酬も根こそぎ、残されたPTは呆然。そのまま町までとんぼ返りという結果に終わってしまった。


「なるほど。それなら倒せなくても、ちゃっちゃと挑んで貰える報酬だけ狙った方が全然マシだね」

「あと、FA報酬もあるのよ。与えたダメージには関係ないし、撃破報酬の次に大きいから堅実にそっちを狙ってるPTも多いってわけ」

「そっか。だから、ここで開店待ち(・・・・)してるのか」

「そういうこと」


 こうして会話している間にも続々と増えるPT。

 さながらバーゲンセール当日のデパート前のよう。


「報酬には興味ないし、あとは到着を出迎えるだけでいいね」

「見落とさないように注意するわよ」

「と言われてもボクは顔とか知らないし、剣を不可視化されてたら探しようがないよ?」

「あっ。そうだったわね……えーっと……」


 スズランは少年の特徴を伝えつつ、現地にて到着を待つことにした。




 ◇




 アマクニを先頭に、少年一行は街道を外れ西進している。

 道中エンカウントするMOBは、


「そい」


『ギャブゥ!』


 アマクニが一刀のもとに斬り伏せていた。

 アラン曰く、これはよほど機嫌がいい時だとか。


「普段は何かにかこつけて僕に戦わせるんですよね……本当に危機に陥るまで、自分は後ろで高みの見物をしているんですよ?」

「ほう。何か申したでござるか、アラン?」

「いっ、いえ、何でもありません! 何も言ってませんっ!」


 名刀【小烏丸】の切っ先が後方を向くと、アランは竦み上がった。

 わざとらしく構えた刀を、そのまま横薙ぎにして現れたMOBを屠る。


「……ふふふ、他愛のない。如何でござるかな、もげ太殿?」

「す、凄いですね、アマクニさん!」

「そうでござろう、そうでござろう。……むっ、また曲者。そいっ!」


『ブゲウ!』


「凄いです、アマクニさんっ!」

「ふっはは! そうでござろう、そうでござろう! そぉいっ!」


『ブブゲゥ!!』


「…………」


 どんどん調子に乗って雑魚(レベル100ちょい)を斬り捨てる。

 もし、仮に狙ってやっているとすれば、この中で一番策士なのは少年なのではないか――。

 そうひとり苦悩するアランがいた。


 そうして。

 遠くにうっすら見えていた細長のシルエットも、肉眼で外部構造まではっきりと見て取れるようになる。

 一行の塔までの旅路は、順調に過ぎていった――。



 やがて、眼前にそびえ立つ【不死鳥の塔】。

 閉ざされた扉の前には、多くのプレイヤーがひしめいていた。攻略の開始を今か今かと待ち侘びていた。


「ふぅ、何とか間に合ったのでござる」

「ご、ごめんなさい……」


 額を拭うアマクニに、少年が頭を下げる。


「はぁ……はぁっ……も、もげ太くんが急に居なくなった時は、本当にどうなることかと思いましたよ……」

「ほ、本当にごめんなさいっ!」


 両手を膝に突いて呼吸を整えるアラン。

 平穏なはずの道中。ふと目を離した隙に、少年がふらふらとルートを外れてしまったのだ。

 どうやら付近に生息していた草食動物に目を奪われたらしい。

 慌てて止めようとしたのだが間に合わず、少年が背に飛び乗ってしまい、驚いた動物は少年を乗せて走り出してしまった。その辺りはさすがの草食動物。恐ろしい脚力と持久力で駆け回り、無事に救出する頃には塔を通り過ぎてしまっていた。


「無問題、行き先が同じであったのが僥倖でござる。その辺りも含め、さすがはもげ太殿でござるよ」


 周囲の状況を確認する。

 扉の付近が特に過密化しているが、その周辺――階段下にまでプレイヤーが密集していた。


「それにしても……かなり多いでござるな」

「多い? そうなんですか?」

「然り。拙者、初見ではござらんが、ここまで人が多いのは珍しいでござる。何かあったのでござろうか……少し話を聞いてくるでござる」


 言うが早いかアマクニは片手を上げ、そのまま他のプレイヤーの元へと走り寄っていった。

 見知らぬ人物に突然話し掛けられたせいか、相手に相当な驚きがあったことは遠目でも分かる。


「……して?」

「……なんだ」


 そうして二、三繰り返すとアマクニは駆けて戻って来た。


「戻ったのでござる」

「はい。それで理由は何でした?」

「うぅむ……それなのでござるが」


 アマクニは勿体付けるように言葉を区切った。

 というよりも、説明の言葉に迷っているのだろうか。むくれ顔のようにも見える。


「拙者としては、少々不服な理由にござる。何でも彼の“月天”が来ているとの話」

「なんと……あの月天が……?」

「出所は掲示板のようでござる。『ソアラで月天を見た』などという目撃情報が複数あったと――それが時期的に“塔”へ結び付いたのでござろうな」

「それがまたどうしてこのようなことに?」

「不死鳥の塔は、ディフルを除けば大陸にて最難関のダンジョンでござる。攻略失敗もあるほどに。そこに月天が乗り込んできたとなれば……」

「なるほど、討伐失敗の可能性は激減すると!」

「さすがはアラン。そういうことでござるよ」


 いくらダメージを与えたところで、討伐できなければ報酬は得られない。そうなればただの骨折り損のくたびれ儲け。

 その上、一度崩れた攻略PTを再編するには時間が掛かるし、そうした二回目の攻略はさらに骨が折れるだろう。


「それで、その不機嫌丸出しのふくれっ面の理由については?」

「……ぬぅ。『月天、月天』と皆が信者のように口を揃えて言うせいでござる。であれば、拙者も出撃予告くらいしておくべきだったでござるな」

「そ、それはやめておいた方が賢明かと……」


 慌てアランがアマクニを宥めた。


「しかし、あまりPTがインフレし過ぎるのも気掛かりでござる」

「えっと……その理由も聞いておいていいですか?」

「そんなに聞きたいでござるか、アラン? どーしようかなー、でござる」

「もげ太さん」

「教えてください!」

「……アラン、いつからそのような策士になったのでござるか? まぁ簡単なことでござるよ」


 ふんふんと頷くふたり。

 先生と教え子のような関係になったところで、アマクニは人差し指を立てた。


「不死鳥の塔のようなインスタンスレイドダンジョンにおいては、敵の強さがプレイヤーの数に比例するのでござる」

「ええ? それってかなりマズイんじゃないんですか……?」


 ここからざっと見て取れる限りでも、数えきれないほどのプレイヤーが集結している。

 あわれふるぼっこかと思われたボス、これがまさかの強化フラグとは……。


「うむ。これだけ集まるとは思わなかったのでござる。正直、拙者ひとりでは厳しいでござるな」

「のほほんとしてる場合じゃないですよ――!? 本当に大丈夫なんですか!」

「そこは……ほれ。彼の月(なにがし)が何とかしてくれるはずでござる」

「た、他人任せ……」

「それがレイドの醍醐味でござる」

「猫口で言う台詞じゃありません! そして合ってるようできっと間違ってますよ、それ!」

「……ふむぅ? そうこう言っている間に扉が開いたようでござるな?」


 階上を見ると、まるで異空間に吸い込まれていくかのような勢いでプレイヤーが雪崩れ込んでいた。


「うっ……ともあれ、こうなったら僕たちもうかうかしれられません! 急ぎましょう!」

「当初、あまり乗り気でなかったアランが随分とやる気満々でござるな? ……まぁ、急がずともボスは逃げないのでござるよ。この数では、有象無象がいくら集まったところでどうにもならないのでござる。分母が減るまでは即死祭――御霊奉納にござる」

「とても物騒ですね――!?」


 飄々と構えるアマクニと背を押しながら、三人は不死鳥の塔の西扉を潜っていった。


「では、行きます――!」



 [不死鳥の塔 ≪アライアンス13≫ に参加しました]




 ◇




「……遅いわね」


 スズランは腕を組みつつ足裏で地面を小刻みに叩いていた。

 周囲がごった返していたのは、つい先ほどまでの話。今や、ブームが去り閑古鳥がなく歓楽街。

 時折、出遅れた冒険者が駆け込み乗車をするものの、それ以外は吹く風が身に染みる静けさがあった。


「どこかで手間取ってるのかな? それとも見落とした?」

「どちらも絶対にないとは言い切れないけど……おそらく見落としてはないはずよ」


 これでも四大ギルドを取り仕切る立場にあったのだ。人員把握と整理くらいできなくては話にならない。


「となると、そもそも塔に参加する気がないとか?」

「それも……否定はできないけど、あの子の性格上まず考えにくいわね」

「ふーん、そっか。あと、ちょっと気になったことがあるんだけどいいかな?」

「何よ?」


 月天は、周囲を軽く見回してからスズランに尋ねた。


「確か、さっきまで塔の周りを囲むくらいに人が居たよね?」

「そうね。それがどうしたの?」


 見える範囲、ぎりぎり視界に届く範囲までプレイヤーの姿が確認できたのだ。


「それが、もう全員いなくなってるってどういうこと? 皆が皆、ここから入ったわけじゃないよね?」

「え……?」


 指摘を受け、スズランは頬に手根を押し当てる。


「――あっ」


 そして、白目が大きく見えるほどに目を丸くした。


「たっ、たた……大変よ――!?」

「うん。その様子だけで大変さが分かった上に、何となく結果に予想が付いたよ。じゃあ僕らも行こうか」

「とっ、塔にはここ以外にも入口があったのよ――! ……って、あれ?」


 気が付けば手を引かれてずるずると足裏を引き摺られている。

 そのまま東扉に吸い込まれていった。



 [不死鳥の塔 ≪アライアンス13≫ に参加しました]




 ◇




 扉を抜けると、長い通路が視界を奥に伸びていた。

 通路の幅は両手を広げた大人二人が横に並べるほど。天井もかなりの高さがあり、身体強化を入れて飛んでも届きはしない。

 正面は行き止まりで、そこから左右に通路が伸びている。行き止まりまでの奥行きでも50メートルほどあるのではないか。


「――というわけで、1Fでござる」

「ここがスタート地点なんですね!」

「仕掛けのようなものは何もなさそうですが……」


 念のため、アランは通路脇の石壁を注意して調べてみるが、仕掛けの類は見当たらない。


「まずは、塔へようこそ――といった慎ましい歓迎にござるな。しかし、2Fからはそうもいかぬのでござる。まぁネタバレは自重するのでござるよ」

「……お心遣い傷み入ります」


 道なりにルートを進行していく。

 礼を述べてはみたものの、本当に心遣いゆえか否かは定かでない。


「そういえば、先ほどシステムメッセージにあった≪アライアンス≫というのは?」

「良い質問でござるな、アラン。≪アライアンス≫というのは同じインスタンスに招待されたPTにござる」


 ここで言うインスタンスとは、インスタンスダンジョンの略称。

 個別に独立した空間に存在し、異なるインスタンスや大元のフィールドにいるプレイヤーとは遭遇せず、互いに影響を与えない。そのパーティのためだけに生成されるダンジョン。

 アライアンスは、同一インスタンス内で共闘するパーティを総じたものである。


「なるほど……つまり、このPTリストの隣にある小さなアイコンは……」

「アライアンス情報でござるな。ちょうど、最後のPTも招待されたようでござる」


 自分たちのPTはAグループ、他に三つのB~Dグループが表示されていた。

 どうやら1アライアンスにつき4グループ構成のようだ。


「なお、最後フロアにて全アライアンスが合流。全PTが同一インスタンスとなり、その状態を≪クラスター≫と呼ぶのでござるよ」

「クラスター、というと集合体でしょうか。ボスは総力戦なんですね。ありがとうございます、勉強になりました」

「うむ。アランは勤勉でござるな」

「僕も頑張ります!」

「もげ太殿は十分に励んでいるのでござるよ。拙者も期待しているのでござる。――それでは、いよいよ2Fにござるよ。準備はよろしいでござるか?」

「「はい!」」


 一行は、上へ続く階段を登っていった。




 ◇




 行き止まりの通路の奥。

 ふたりが目を向けるのは、壁に備え付けられたモニュメント。


「随分あからさまだけど……これは?」


 月天が指で示すのは、獅子の頭部を象った彫像。それが正面と左右にひとつずつ。

 中央にはぽっかりと開いた口がある。中は暗くて見えないが、腕一本なら入りそうな大きさだ。


「見たままよ」

「腕を突っ込めってこと? ハズレたらそのままガブり――とかならない?」

「そんな仕掛けじゃなかったはずだけど……確か、他アライアンスの進路を確保するスイッチじゃなかったかしら?」

「え? そんなの無視すればいいのに」


 さも当たり前と言った様子の月天に、スズランは嘆息を交えながら説明した。


「……そうすると、他アライアンスが進行できなくなるでしょ? その先に、別アライアンスの仕掛けがあったら――こっちも進めなくなるのよ」

「それは困る。つまるところ、アライアンスで協力して進まないとダメってことか。面倒な作りだ」

「そういうのは、心の中にしまっておくものよ」

「納品完了。じゃあ、さくっと処理しようか」

「ちょっ」


 言い終わる前、月天は獅子の口へ腕を挿入した。

 直後、ふたりの耳に届く音があった。


 〈ブッブー〉




 ◇




「うわわっ!」

「きゅ、急に敵が降って来ましたよ、アマさん――!?」

「ええい! どこのPTか、トラップの解除に失敗したのでござる!!」




 ◇




「…………えっと、今のブザーは?」


 月天は、アライアンスリストを見やる。

 A、Cグループは問題なさそうだが、BグループのHPバーが微妙に減少していた。


「別のPTにお手付きトラップが飛んだみたいね……」

「えっ? そういう仕組みなの?」

「必ずじゃなけど、そういうこともあるわ」

「それは申し訳ないことをしたな。お詫びにサクッと解除しておこう」

「あ――」


 言いつつ、右の獅子の口に腕を伸ばした。


 〈ブッブー〉


「ちょちょっ!」

「……あれ? じゃあこっちかな?」

「ちょっと待って!」


 そして最後の獅子に腕を入れる。


 〈ブッブー〉




 ◇




「敵っ、アマさんまた敵が――!?」

「ど、どこのうつけでござるか! まさに敵は陣中にあり、でござるな!」

「スラッシュっ!」




 ◇




「あれ、おかしいな? ……これ壊れてるんじゃないの?」

「そう言いながらもまた手を入れようとするのはやめなさいっ――!」


 スズランは、月天の手を慌てて引っ張り上げた。

 月天はというと、握られた右手を見ながらどこか嬉しそうに頬を緩めている。


「だって解除しなきゃいけないんでしょ、これ?」

「だから解除の方法があるのよ! 三つ全部失敗した時点で少しは考えて!」

「え? あぁ、そっか。……なるほど」


 言われ、今さら気が付いたといった体の月天。

 人差し指を眉間に軽く添え、「えー」と低音を間延びさせる。


「……ボクたちの仕事は、事実を導き出すだけです。月畑天三郎です」

「じゃあ今度からそう呼んであげるわ」

「ごめんなさい」

「分かったら真面目にやりなさい。別々にやってダメなら……分かるでしょう?」

「あ!」


 月天がぽんと手鼓を打った。


「ぶっ壊す」

「…………馬鹿なの?」

「あぁ……なんか今背筋にゾクゾクって来た。ごめん、分かったから無言で傘を構えるのはやめて。実は物理的なのはあんまり好きじゃな――あふっ!」


 スズランは、黒頭を柄で小突いで静かにさせる。


「……なんか目覚めちゃいそう?」

「やめて」


 もう手に負えなくなる――というのは彼女の内心。


「まぁ冗談は置いといて、さっさと解除しよう。でも、口が三つあるのに対してこっちは二人しかいない。残る“手”を何かで代用しなきゃいけないんだけど」

「そこまで分かってるなら、初めから真面目にやりなさい。そのためにこれを出したんでしょう?」


 スズランは、頭を小突いた和傘を青年に差し出した。

 傘を受け取り、持ち主の顔とをまじまじと見比べる。


「いいの?」

「ダメ、って言ったらメンバー補充でもする?」


 アライアンスが“パーティー”ではなく“グループ”で表示されているように、人数が少ない場合は他のPTと統合して参加をすることができる。

 また手詰まりとなった場合は、新規参加者から補充を行うこともできるのだ。


「それは……あんまり喜ばしくない」


 当然ともいえる反応。

 彼のネームバリューを鑑みれば、一介のプレイヤーと接点は極力持ちたくないはずだ。

 言っても、スズランとてそれは同じである。


「じゃあ他にないでしょう。あなたは武器らしきものを持ってる様子がないし」

「剣はあれ一本って決めてるんだ」


 ディフル樹海からここに至るまで、幾度となくMOBと戦闘を行った。

 だが、その間月天は一度も武器を使用しなかったのだ。予備の剣を持ち歩いていないのだろう。


「……でも、ここに武器置いて行っても平気なの?」

「平気よ。アライアンス中は装備変更できないから所有権が解除されないの。脱出したら手元に戻ってくるわ」

「あぁ。そういうこと」


 説明に納得し、各々が配置に着く。


「じゃあ、ありがたく拝借させてもらうよ。スズさん」

「えぇ」


 スズランは左口に、月天は中央口に左手を添え、そして右口に傘の先端を合わせる。


「いくよ」


 顔を見合わせ、小さく頷く。

 準備は万端だ。


「「せーのっ!」」


 掛け声に合わせ、三つのオブジェクトの口に同時に突き入れる。


 〈ピンポーン〉


 トラップの解除を告げる音声が鳴り響き、中央の獅子の壁が左右へと開かれる。

 奥には、次の階へと通じる階段が見えていた。




準繁忙期に入り、徐々に忙しくなってきました(◎_◎;)

これから冬に向かいどんどん仕事が増えていきます……。

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