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エバフレと仲間たち

2016/09/07

本文修正しました

 



 こうして無事に結成された新ギルド“エバーフレンズ”。

 ちょっとした揉め事(?)こそ生じたものの、所属メンバーリストは四人になっていた。


「では、改めまして――これからもよろしくお願いします!」


 そう言って、加わった三人のメンバーに頭を下げたのは新ギルドの小さなギルドマスター――もげ太だ。

 少年は、改めてメンバーリストを見やった。



 [ギルドマスター]

 もげ太 Lv19

 クラス:ペイジ


 右手:木剣(青)

 左手:木の盾(青)

 頭:鉢金

 胴:法被アーマー

 手:籠手

 足:下駄グリーヴ

 アクセ:なし



 本人であれば、詳細まで閲覧することができるのは、ステータス画面同様だ。

 職業の見習い剣士からクラスへとランクアップしたペイジ――見習いの騎士を指す。

 パーティの盾職を希望し、代名詞となる盾を愛用していることから騎士クラスの適正が伸び始めたのだろう。

 プレイ歴は二週間を過ぎ、ゲームにもそこそこ馴染んできた頃合いだ。

 とは言え、本来ならばこのレベル帯でギルドを設立するプレイヤーもかなり珍しくはあるのだが。


「こちらこそ、よしなに頼むの」



 [サブマスター]

 キリュウ Lv304

 クラス:ロードナイト



 少年の挨拶に最初に答えたのは、少年と同じほどの背丈の少女キリュウ。

 エバーフレンズのリストのNo.2を実力で勝ち取った彼女は、満足げに頷いた。

 キリュウの主武器である扇が“両刃武器”に分類されていることから、クラスは君主と騎士を表すロードナイトとなっている。

 レベルは驚異の300オーバー、UWOでも五本の指に数えられるランカーだ。


「ふふ。よろしくお願いするわね。可愛いマスターさん」



 [メンバー]

 スズラン Lv245

 クラス:ミンストレル



 柔和な顔で微笑みつつも、どこか妖艶な女性。

 マスターという明確な上下関係を引いたことで、わずかにだが言葉遣いを改める。

 もげ太より頭ひとつ分は高い身長を、少年の目線にまで下げて一礼を返すスズランは、メンバーリストの三番目に名前を連ねている。

 クラスは宮廷詩人とも呼ばれるミンストレル――なのだが、風貌は芸妓(げいぎ)に近い。

 かつてキリュウの下に居たスズランは、その上に立つことを望まない。

 結果、話し合い(・・・・)により何事もなく彼女はそのポジションに収まることに成功した。


 ――一方、不満を何とか抑えようとしつつ、しかし、釈然としない四番目の男もいた。


「よろしく頼むぜ、もげっち…………あー、クソ」



 [メンバー]

 ネームレス Lv275

 クラス:シャドウレイダー



 語尾に小さく悪態を吐く双剣使い――ネームレス。

 クラスは影の侵略者の意を持つシャドウレイダー。

 突如勃発したナンバー2決定戦にて戦天に全HPを飛ばされ、旅先で変更しておいたセーブポイント――キヨウの街へと飛んだ彼は、高価な転移石を使用してメルニカへと戻ってくる羽目となった。

 二度目のまさかはないとは思うものの、今はメルニカに復活地点の更新してある。


「そう気に病むな。相手が戦天では俺とて勝つのは難しいだろうさ」

「ちっ……プライドがねぇのか、テメェは」


 エルニドに気を遣われていると理解しつつも、憎まれ口を叩いてしまうネームレス。

 それは空気で伝わっているのだろう、言われてもエルニドは苦笑を返すだけだった。

 ギルドメンバーでこそないが、両手武器である大太刀を装備する彼のクラスは前衛重戦士のヘヴィヴァンガードだ。

 閲覧が許可されているもげ太であれば、フレンドリストから確認することができる。


「まぁまぁ。今日はもげ太さんの新たな門出ですから」


 ローブ姿にリボンの少女リリルが両手を仰いで二人を宥めようとしているのか、ただし、手の平の向きが逆なせいで「ファイッ!」にしか見えない。

 だが、全て意図してのものだろう。

 リリルもまた別のギルド“森羅万象”に所属している。

 クラスは魔法攻撃職の上位クラスであるアークメイジ。閲覧条件についてはエルニドと同様で、Lvは301。

 魔法攻撃職のはずである彼女が、補助スキルならばまだしも回復スキルを取得した理由については謎に包まれたままだ。


「さて、ここでもう一度乾杯――――したいところですけど、さっき飲んじゃいましたからねー」

「ひと運動した後ゆえ、我は一向に構わぬがの」

「俺は不完全燃焼だっつの……まぁ、いい。今後の方針を決めようぜ」

「マスターの意向――に従うとは言っても、今の彼には酷よね。わたしたちで意見を提示して決めて貰うのはどうかしら?」

「落としどころとしちゃそんなもんか。もげっちもそれでいいか?」

「はい! お任せします」


 本音を言えば、彼のギルドなだけにこういった方針の提案に心苦しい思いがあるのは一同共通だろう。

 風の吹くまま気の向くまま――でも構わないのだが、


「じー…………(きらきら)」


 もげ太本人が、皆が思っていた以上にギルドに対して前向きの様子だった。

 元々、色々なコミュニティでやマスターをやっていただけに、こういった集まりが好きなのだろう。

 ならば意見を述べないわけにはいかない――のだが。


「……よくよく考えたら、俺もほぼ知らねーな」

「ぼっちじゃからの」

「…………くっ」


 否定できないのが、ネームレスの痛いところだった。

 ことギルドに関しての知識では、あまり役立つことが叶わないらしい。


「では、ここは――」

「俺たちの出番だな」


 ここぞとばかりにズイっと前に乗り出してくるのは、肩身の狭い二人組みことリリルとエルニドだ。


「む? 別に、我とスズランとて――むぐっ!」

「ささ、焔天さん。どーぞ!」


 にこやかな顔で、後ろからキリュウの口元に謎の布巾を押し付けるリリル。

 助けようにも、相手が相手なだけにスズランも身動きが取れないようだ。


「…………そうだな。せっかくギルドを作ったんなら、ギルドハウスを購入してもいいんじゃないか?」

「おい、今後ろの遣り取りをなかったことにしただろ」

「気のせいだ」


 ネームレスによる指摘を、真顔で否定する。


「ハウス?」


 もげ太にしても、頼るべき親友の助言ほど貴重なものはない。


「名案ですよ、焔天さん! わたしも大賛成ですー」

「な、なんかわざとらしいわね……」

「スズちゃん?(にこにこ)」

「い、いえっ、わたしも同意見です!」


 笑顔で睨まれ、即座に両手を上げる白花。

 そんな中、あわやブラックアウト寸前で抜け出した少女は、


「――ぶはあっ! げほっ、げほっ…………こっ、殺す気か光の――!? ここで呼吸を止められたらセーフティが働く恐れもあるのじゃぞ――!?」


 真っ赤に紅潮した顔で、必死に訴えた。

 厳密には落ちる前に自然呼吸が解放される仕組みにはなっているのだが、苦しいことに変わりはない。


「キリちゃんもまだまだですねー?」

「い、意味が分からぬわ!」


 先の件で、心境あまり晴れやかでないネームレスにとって「ざまぁみろ」――とまでは行かずとも、ちょっぴりせいせいした感もあったのだが。

 よくよく考えてみれば、あの戦天がここまで呆気なく手玉に取られるなど、おふざけにしろ冗談のひと言で片付けられないのではなかろうか。


「……あまり光天を怒らせなない方がいいようだな」

「お、おう」


 焔天も同じ感想を得たようだった。

 知らぬは、ニコニコと無垢な笑顔を浮かべる少年くらいか。


「それで。どうだ、もげ太?」

「ギルドハウスって、言葉通りに捉えていいのかな?」

「あぁ。ギルドメンバー共用の家だ。許可さえ貰えれば、俺や光――リリルだって出入りができるぞ」

「うん! じゃあ、そうしよう!」


 ソーシャルアプリに理解のあるもげ太は、名称の響きだけで何となく仕組みを理解できたようだ。

 二つ返事で当面の方針を決定する。


「じゃあ、ギルドハウスで決まりですねー」

「む、むぅ……何やら釈然とせぬが」

「いあいあ。ここからはキリちゃんが大活躍するシーンですよ? ハウスの購入となれば、色々と入用ですから……ごにょごにょ」

「――ぬ! ……くくく、相分かった。その時は、我に任せておくのじゃの!」


 リリルに何事かを耳打ちされ、左扇で顔を仰いでドーンとふんぞり返るキリュウ。


「何言ったか、大体想像は付くが」

「共有財産についでまで、俺が口出す権利もないな」


 もげ太個人に対する直接の援助は極力控える方向で団結していた彼らだが、対象がギルドとなればまた話は別だ。


「ふふっ。どうせなら立派な家が欲しいわね」

「お前もか。言えた筋合いではないが……ある程度の自粛は勧める」


 見た目の上ではもっとも羽振りの良さそうなスズランに、エルニドは困惑の色を浮かべた。

 出来立てホヤホヤのギルドとはいえ、参加メンバーのうち三人は二つ名持ちの有名プレイヤーだ。

 その気になれば、ワールドに存在する大概のアイテムは買えてしまうだろう。


「どうせなら、やはり和がいいのう」

「平屋か?」

「たわけめ。誰がそんなみすぼらしい居を構えるか」

「城郭――となると、結構掛かりますが……」

「お、お城ですか?」

「おいおい。せめてもげ太の意向は汲んでやってくれ」

「無論じゃ! …………で、どのような城が好みかの?」

「全く汲む気ねぇだろ――!?」

「えーと、吉野ヶ里とか?」

「――って環濠かよ!」

「…………意外と詳しいな、ネームレス」

「真面目か」

「真面目ね」

「うっせぇ!」


 など、わいのわいのとエバフレメンバー他が盛り上がる中、頬に人差し指を添えた少女は、ぽつりと、だが皆に聞こえるようにはっきり呟いた。


「――あ。でも、ランク1のままじゃ何も拡張できませんよね?」

「ほえ?」

「あ?」

「む?」


 リリルが告げたひと言に、三者は三様に首を傾げる。


「確かに、言われてみれば……そうね」 


 意味を理解する者も一名いたが、少なくとも知るべき立場の人数とは合っていない。


「えっと。どういうことですか?」

「最低でもランク2までは上げないと……ギルドとして何の機能も使えないのよ」


 説明のため、スズランは和傘の先端で地面に何かを描こうとしたものの、ギルト全く無縁な謎の哺乳類の誕生に、眉を潜めながら足でザリザリと消去した。


「そ、そうなんですか……」

「ふーん、そうなのか」

「――なな、なんとっ!」

「……いや、お前さんが知らないのはおかしいだろう」


 何故か驚く楓柳の元マスターにエルニドは不安げに眉根を寄せた。


「むぅ……その辺りはゲンマやスズランに任せ切りじゃったからのう……」


 キリュウは腕を組み、大粒の汗をひとつ浮かべては流す。

 感情と動作が簡易エモートとリンクしたのだろう。


「そうですね」


 婉曲な指名を受けたことで、スズランは苦笑しながらも改めて説明に移った。

 今度は、謎の生物絵は無しだ。


「いい? ギルドのランクについてだけど――」


 スズランが前置きをして続ける。


 話を要約すると、ギルドには“ランク”というプレイヤーにとってのレベルに相当するステータスが定められており、これが特定の数値まで到達しないと拡張を行えないようになっている。

 設立時のランクは【1】、この時点で行えることは、メンバーの勧誘とリストの閲覧のみだ。

 ランクが【2】に上昇すると、“ハウス”と呼ばれる拠点を設けることができるようになり、それを基点に様々な機能を付加できるようになる。

 最初に目指すべきポイントだ。

 目ぼしい機能を挙げるならば倉庫や金庫だったり、いずれは工房やショップ――といった様々な施設を構えることもできる。

 例えば、そのようなギルドハウスが一箇所にいくつも集まり、町としてひとつの完成形を迎えたのが“キヨウ”なのだ。


「なるほど……勉強になりました!」


 メモ帳を片手に、ひっきりなしにペンを動かすもげ太。

 LSDという携帯端末を仮想世界にも持ち込めるにも関わらず、こういった原始的な動作があるのは運営に何かこだわりでもあるのか。


「で。そのランク2の条件ってのは?」

「いい質問よ!」


 自身やもげ太が関わる物事ならば積極性が増すのか、ネームレスはいち早く問い掛ける。

 彼とこういった立場になることが珍しいのか、スズラン先生もノリノリのようだ。


「でも、簡単よ。決められたギルドクエストのクリア――それだけね」

「ほう。そういえば、昔皆でやった記憶があるの」

「なんだ、大したことはなさそうだな。んなもんさっさと終わらせちまおうぜ」

「そうですね! えーと……クエストの受注先はどこでしょうか?」


 もげ太が尋ねると、ふと顎に手を当てながら考え込み、口を開いては閉じてしまうスズラン女史。


「……あん? もしかして、忘れたのか? 肝心なとこで役に立たねーな」

「違うわよ。そうじゃなくて…………確か受注条件があったはずなんだけど」

「受注条件、ですか?」

「はて? そんなものあったかの」

「鋼刃でも特に気にはならなかったが」

「あー、キリちゃんや焔天さんのとこなら気にならないかもですねー……」


 うほん、と咳払いをひとつ。

 リリルが説明役を交代する。


「と言っても、条件――なんて厳しいものでもないんですけどー」

「勿体ぶってねーで、さっさと言え。もげっちも待ってんぞ」

「…………………ですねー」


 恨めしげにネームレスを見つめては、わずかに唇を噛み、やがて諦めたように溜め込んだ息を吐き出してうな垂れるリリル。

 もげ太を持ち出されたこともあったが、カフェスペースでの彼とのやり取りが思っていた以上に大きい評価に繋がっていたのだろう。

 それも、ここで全て使い果たしてしまったようだが――無論、ネームレスの知るところではない。


「人数、ですよー?」

「人数……って、ギルドのメンバー数か?」

「ですですー!」


 まともな受け答えに、普通のことながら落差のせいで喜んでしまう法則のリリル。


「ランクアップクエストを受注するには、所属メンバー5人以上(・・・・)でパーティを組む必要があるんですよ。もちろんクリアもですねー」

「あぁ、なるほど。そういうことか」

「ふむ。それならば、条件に気付かなかったのも納得じゃ。楓柳は設立時点で6人おったからの」

「こっちは10人は越えていたな」

「…………焔の、それは我に対する当て付けかの?」

「そんなつもりで言ったんじゃない。結果的には、人数もギルド規模もそっちとは比較にならないだろう?」

「ふむふむ。結果で見れば…………我は流浪人の末に至るわけじゃが?」


 じろり、とねめつけるキリュウに、「うっ」と後ずさりをするエルニド。

 言われてみれば、失言だったのかもしれないと。


 ――だが、聞き咎めたのは別の男だった。


「おい、クソガキ。エバフレに不満があんならいつ抜けてもいーんだぞ?」


 無表情で告げるネームレス。

 一戦やらかしたばかりなのに――いや、だからこそなのか。体勢は臨戦へ刻々と移行せんとする足取りだ。


「だ、誰もそんなことは言うておらぬであろ!」

「いーや、言ったな。もげっちのギルドに入っておいて流浪人とは――あ、成り行きも含めて当て付けか? よくもほざいてくれたもんだ」

「こ、言葉の綾じゃろ! そのような些細なことで目くじらを立てるなど……おぬしの器が痴れるの!」

「あぁ? やっぱり、喧嘩売ってんのか、テメェ……第二ラウンド始めっかぁ?」

「望むところじゃ! 再び我が神宝の供物にしてくれようぞ!」

「上等だ、次はこっちも出し惜しみしねぇぞ……方舟見せてやるぁ!!」

「お主こそ我が布瑠之言(ふるのこと)があれだけとは思うてくれるな――!?」


 ギリギリと歯を食い縛り、至近で鼻先を突き付き合うように火花を散らす二人――――そこに。


絶・光天刹戮覇破(マジカルリリルボム)ですー」


 〈ちゅどーん!!!!〉


 なんて、可愛げのあるSEなら良かったのだが、背後から襲った光爆の奔流は一歩間違えれば二天のHPを全損させかねない程の威力を伴っていた。

 とある棟梁が見れば、咥えていた煙草をポロリと落としていたかもしれない。


「めっ、ですよー? もげ太さんだって、二人が喧嘩ばかりしてたら激おこプンプン丸なのですー」

「あ、あばば……」

「ひゅっ……ひゅぅ……」

「あわわ! たっ、大変ですっ!」


 (たしな)めるリリルとピクピク痙攣する二人。

 破壊力だけに留まらず、どうやら昏倒の付加効果まであるようだ。

 回復POT両手に、もげ太が周囲を駆け回る。


「それで、クエストに五人必要――って話だったな?」


 まるで何事もなかった――ことに決めたのだろう。

 エルニドが話を進める。


「……熱血漢かと思えば結構ドライなのね」


 かのモラリストも、小さな友人に直接の被害がなければ仲間内のいざこざに大して関心はないのか。

 それとも同格ゆえの杞憂と考えているのか。


 内心はやや複雑だが、これが平常ならば慣れるしかない――とどこか観念をしたスズランは嘆息混じえ、空き瓶を抱えた少年の頭を優しく撫でるのであった。




(旧あとがきです)

ステータスに関してはレベル表記(あるいは+HP程度?)だけでも良かったような気もしたのですが、序盤に触れていることから今も数字はあります――といった感じです(汗)

あとは、もげ太以外のステータスですが……総合値で言うと当たり前ながら仲間たちの数値がずば抜けているので、並べて書くのは少し抵抗がありますかね。

なお、クラスによるステータス補正は、例えば攻撃力+○○や×○%のように直接掛かるのではなく、与ダメージ或いは被ダメージ~といったな形を取ってあります。

ステータスに直接影響するのはパッシブスキルの方ですね。


元々アンバランスなPTで片側に焦点を当てにくいので、細かいところを記載するだけ読みづらくなるかなと……。

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