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フレンド登録!

2016/07/27

本文修正しました

 



 [返信があります]


 ――――――――――――――――――――



 あれ、もげ太さん?

 昨日はプレイされたんですよね?


(コメントは非公開に設定されています)

 ――――――――――――――――――――


 はい……

 慣れない操作に手間取ってしまって……

 申し訳ないです><


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]


 [返信があります]


 ――――――――――――――――――――


 ありゃりゃ。

 それは仕方ないですね……。

 でも、もげ太さんらしいです^^


 まぁ、のんびり楽しみましょー!


(コメントは非公開に設定されています)

 ――――――――――――――――――――


 ありがとうございます!

 頑張ります!


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]


 ――――――――――――――――――――


 で、今日インするの?w


(コメントは非公開に設定されています)

 ――――――――――――――――――――


 今からしますよ!

 昨夜、ベンデルさんの稽古が終わりました!


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]


 [返信があります]


 ――――――――――――――――――――


 ベンデルwwwww


(コメントは非公開に設定されています)

 ――――――――――――――――――――


 かっこいいですよね!

 僕もいつかあぁなりたいです!


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]


 [返信があります]


 ――――――――――――――――――――


 それはやめとけwww


(コメントは非公開に設定されています)

 ――――――――――――――――――――


 えー(笑)


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]


 [返信があります]


 ――――――――――――――――――――


 今からインする

 時間合ったら遊ぼう


 ――――――――――――――――――――


 ちょうど僕も入るよ!


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]


 [返信があります]


 ――――――――――――――――――――


 お、タイミングいいな

 そっち行くしフレンド登録よろしく


 ――――――――――――――――――――


 了解!


 ――――――――――――――――――――


 [送信しました]





 ◇





「おーい。待たせたか?」


 大柄な男が、片手を上げてのしのしと少年のもとへやってきた。背中には大剣、胸には大きな獅子のバックル。装備品は肌を覆う面積より露出している面積の方が明らかに大きい。ぱっと見では露出趣味にも見えるが、隆々な筋骨を見ればその手の人とも受け取ることもできる。そういうアバターだ。

 そんな男の姿に少年は見覚えはなかったが、男の声には聞き覚えがあった。


「もしかして……“トモヤス”?」


 もげ太は、その心当たりの名前を口にした。


「お。よく分かったな?」


 仮想世界において、現実の肉体が声を出して会話を行っているわけではない。しかし、自身の声色や口調などは脳がはっきりと記憶をしている。アバターで使用される声には、それが宛がわれていると考えて差支えはない。

 ただし、時に脳が認識している声と他人が認識している声とで多少の差異が生じることはある。幸い、今回は問題なかったようだ。


「やっぱり! 分かるよー、だってそっくりだもん!」

「……そ、そうか?」


 少年の言うそっくりとは、本当に声のことなのか。トモヤスと呼ばれたプレイヤーは無意識におでこの辺りに手をやった。

 もし、リアルであれば色々と苦労しているのであろう痕跡がそこに浮かび上がっている。男の太い指がしっかりと四本収まってなおお釣りが出ていた。

 しかし、少年がそこに何か見出した様子はない。男は普段の口調で告げる。


「でも、今後ゲーム内で本名は呼ばないでくれよ。互いに色々と不都合もあるからな」

「うん、分かった!」


 ふと呼んでしまった名前からネットワークサービスを通じて身バレしてしまうケースもないとは言い切れない。それを差し引いても、ゲーム外の個人的な情報を口にするのはオンラインの世界においてあまり良いものではなかった。

 男は、初心者にありがちなマナーを序盤の段階でしっかりと教え込む。


「じゃあ、“エルニド”って呼べばいいかな?」


 エルニド――それは、男の頭上に表示されているアバターの名前だ。

 自身からは見えないが、相手からは少年の上にも“もげ太”という名前が表示されていることだろう。


「あぁ、そうしてくれ。じゃあ早速と」



 [エルニドからフレンド申請が届いています]



 テロリンというサウンドエフェクトとともに、少年の視界にシステムメッセージが表示されていた。


「端の方に通知が見えるだろう? そこを指でなぞってみてくれ」

「うん!」


 人差し指を伸ばし、右肩の前あたりを撫でる。何かに振れた感触こそなかったが、操作はこれでOKのようだ。

 新たなウィンドウが立ち上がり、次のメッセージが表示される。



 [エルニドからのフレンド申請を受諾しますか?]



「あとは『はい』を選んでくれればOKだ」

「分かった!」


 そして、同じように指を重ね、フレンド申請に対し「はい」を選択した。


「これからよろしくね、エルニド!」

「あぁ、よろしくな、もげ太。……はは、今更だがリフレ相手に呼ばれると結構違和感あるな」

「あは。そうかな?」


 何かくすぐったいような恥ずかしいような。これが全くの他人であれば気にもならないようだろう。

 二人は顔を見合わせて笑った。


「しかし、初期エリアも久しぶりに来ると懐かしいな。なんというか……こう、初心時代に戻ったような感慨がある」

「僕も色々と感慨深いよ?」

「そうだろうそうだろう。第二と自分というかこの身体とか景色とか……時代もここまで来たかぁって感じがするよな。あの頃は俺もそうだった」

「エルニドは、いつ始めたの?」

「そうだな。今からだと……二年――いや、Cβ(クローズドベータ)まで遡るともっとか」

「わあ、結構長いんだねー」

「だろう? それなりに名も知られてきたかな。何か困ったことがあれば何でも言ってくれ。すぐ力になる」

「ありがとう!」


 最古参のプレイヤーのひとりなのだろう。彼の装備も実力もそれに比肩するに違いない。

 エルニドは穏やかな笑みを浮かべた。


「さて、これからどうする? 装備の調達でもするか? それともレベリングでもするか? 散策やクエストも有りだな」

「あ……それなんだけどね。エルニドって、やっぱりレベル高いんだよね?」

「うん? まぁ、そうだな。フレ登録もしたことだし、もし興味があるならフレンドリストからある程度は見られるぞ」

「そうなんだー。ちょっと待って! えっと、めにゅーめにゅー……」


 少年は、覚束ない操作でメニュー画面を開いた。そして、表示された項目[フレンドリスト]から[エルニド]を選択。すると新たなキャラクターウィンドウが立ち上がり彼の情報が表示された。




 ◆




 エルニド Lv283


 右手:烙炎の大太刀(両手)

 左手:(不可)

 頭:戦神の宝冠

 胴:覇王の鎧

 手:竜王の篭手

 足:天翔具足

 アクセ1:アテナリング

 アクセ2:精霊の祈り


 ステータス:非公開




 ◆




「す、凄く高いよ?」

「ぬ」


 ――しまったか。


 エルニドはそんな風に感じてしまう。

 少年に対し、装備まで公開設定にしたのが返って仇となってしまったかもしれないと。


「も、もげ太も続けていればいずれそうなっていくと思うぞ?」


 目を丸くするもげ太に、エルニドはやや慌て気味のフォローそう告げた。


「そうなの?」

「あぁ、そうだ。あとはもげ太次第……かな?」


 無論、ただ続けるだけで容易に到達できる数字ではないことは本人とて承知している。


「よーし、僕もなるべく早く追い付けるように頑張るね!」

「お、おう。その意気で頑張れ!」


 少々無責任なことを言ってしまったかな、とも思いつつ、エルニドはできる限りの協力は惜しまないことを心に誓った。


「じゃあ、早速だけどやることは決まったね!」

「というと?」

「レベル上げ!」


 そんなやる気に満ちたもげ太の反応に、エルニドは「ほっ」と大きく安堵した。


「よし。じゃあ、その辺を歩いてる“MOB”でも適当に倒してみるか」

「もぶ?」


「雑魚敵のことさ。道から外れると……ほら。うようよいるだろう?」


 エルニドは、遠く町へ伸びる道――から横に逸れた方向を指差した。

 視線で追うと、彼の言うように何やら草食動物のような生き物があちらこちらを徘徊していた。


「うん。いっぱいいるね」

「こいつらを倒してくと経験値が溜まってレベルが上がるんだ」

「なるほど!」

「ならば手本――」


 と言いかけて、このエリアのMOBでは、彼がどれだけ加減しようと文字通り指先ひとつで片付いてしまうことに気が付いた。


「……は見せられないが、ここでお前を見守っててやる」

「ありがとう!」

「あぁ。大丈夫だと思うが、危うくなったらすぐに助けに行く」

「分かった! じゃあ行ってくるね!」


 そして、もげ太は、“ベンデルさん”から貰った剣を右手に構えた。



 [もげ太は≪初心者の剣≫を装備した]



 主武器:初心者の剣(白)

 攻撃力+5



 システムにより装備変更によるステータスが更新された。

 少年は早速装備した武器を振り上げ、


「やあっ!」


 一番近くにいた、羊のようなもこもこの生き物――《ラム》に向かって剣を振り降ろした。



 miss!



「あれ?」


 剣を眺めながら、表示されたフォントに首を傾げた。


「少し遠いか」


 慣れないうちは、VRによる主観戦闘は距離感の把握が非常に難しい。攻撃対象がMOB――魔物ということで腰が引けてしまうから尚更だ。


「もう少しリーチの長い武器を使ってみようか。

「?」


 もげ太が首を傾げている間に、《エルニドからトレード申請がありました》という文字が表示された。

 申請を承諾すると、四角い升の中に剣のアイコンがドロップされる。



 主武器:木剣(青)

 攻撃力+30

 防御力+15

 敏捷性-3



 刃を潰してある鍛練用の剣だが、錬成――装備強化による補正が大きいのか、初心者の剣のステータスを上回っていた。持ち替えてみると、グラフィックが更新され、これまでより長い剣が右手に現れる。


「店売りの装備だが、強化はしてある」

「強化?」


 聞き慣れない単語を耳に、エルニドに尋ね返した。


「同じ装備や同じランクの練成石を使うとステータスを上げられるんだが……ま、それは追々かな」

「なるほど!」

「今度は前よりリーチの分楽になってると思うぞ」

「やってみるね!」


 そうして、モンスターに向き直り、同じ距離で剣を振る。

 今度はギリギリのところで攻撃が届いたようだ。



 32!



 数値化されたダメージが表示され、モンスターの体力バーが一瞬にしてゼロになる。小さな効果音とともに経験値とアイテムの取得がシステムメッセージ表示。その後、羊型モンスターは悲しげに「メェ」と鳴いて横たわり、ややあってから消失した。


「よしよし。いいぞ、その調子だ」

「何か、ちょっと可哀想だね」


 ノンアクティブMOB――プレイヤーから攻撃を仕掛けないと反撃をしてこない魔物は、言い換えれば人間と非敵対関係にある。

 見た目の愛らしさもあって、罪悪感が沸いたのか。


「狩場を変えるか……いや、安全の方が第一だな。手に入った素材は後々お金になるから大事にしておくんだぞ」

「うん、分かった!」


 こうして、少年のVRMMO二日目はラム狩り。

 何とかレベルが4まで上がったところで幕を閉じた。




※しばしば登場する単語の補足とか

リンクソーシャル……現代のスマートフォンみたいなイメージで作ってます。

リンクソーシャル用のデバイスですかね。

スマホは親機として特化しているのに対し、リンクソーシャルは親機としても使えますが、もげ太などがダイブに使用しているマシンの子機としてのポジションが強いです。持ち歩き端末みたいな感じかなと。

親機とリンクしてるので、ダイブ中でもメールや通話など外部と連絡が取れるようになっています。

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