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向日葵の監獄  作者: さとうさぎ
プロローグ
13/32

第13話 初めての超能力講座 ―ソラの場合―


「まずは、私が超能力を発動させる。小野原は近くでよく見ておけ」


 そう言い、葉月先生がソラの前に一歩踏み出した。


 直接本人の口から聞いたわけではなかったが、やはり葉月先生も超能力者なんだな。

 そんなことを思いつつ、肩の力を抜いて葉月先生のほうを眺めていると。




 葉月先生の前に突然、大きな()が出現した。




「……おお」


 オレは思わず感嘆の声を漏らしていた。

 ぱっと見た感じでは正方形に近い。

 大きさは、縦横で各1mずつぐらいはあると思われる。

 鏡自体が僅かに発光し、七色の光が辺りを柔らかく照らしていた。


「すげぇ……」


 だが何より驚いたのは、予備動作が一切なかったことだ。

 オレなんて超能力を発動させるまでに、まだ十秒はかかる。

 それも、目を閉じて集中してからの話だ。

 葉月先生のレベルになれば、それこそあの化物に対抗するのも容易だろう。


「『鏡壁ミラーウォール』――特殊な攻撃を反射することができる防御壁の超能力だ」


 葉月先生がそれを軽く撫でると、『鏡壁ミラーウォール』は空中に霧散するように消えた。


「小野原、次はお前がやってみろ」


「は、はいっ!」


 ソラの顔には、緊張の色が濃く見える。


「ソラ! 頑張れよ!」


「大丈夫よ。落ち着いてやれば、きっとできるわ」


「その通りです。兄さんでもできるんですから」


「おい、どういう意味だそれ」


「頑張れ、ソラ」




「う、うん……!」


 ソラは、オレたちの声には応じつつも、緊張が解けていないようだ。

 でも大丈夫だろう。ソラなら。

 根拠は無いが、そんな気がする。


「やり方はわかるか?」


「大丈夫です。……それじゃ、いきます」


 葉月先生にそう返事して、ソラは目を閉じた。

 オレたちは、その様子を見守る。


 ……しばらくしても、ソラに変化はない。

 自分の身体の中にあるモノが見つからないのだろうか。


 オレの場合は、身体の中でうねっているものの正体=触手、みたいなイメージがあったから、かなりとっつきやすかった。

 だが、ソラの超能力は『複写トレース』とかいう、形がイメージできないモノだ。

 その分、オレよりも超能力を使用することの難易度が高いのかもしれない。


 その辺のことを葉月先生が言っていなかったのが気になるが……。

 もしかして、さっきの『鏡壁』をイメージすればいいのか?

 いや、でもオレのときなんて『見てからのお楽しみだ』とか言ってたぐらいだし、イメージはあまり重要ではないのかもしれないな。


 ……そうだ。

 そういえば、オレも最初は自分の超能力の形なんて把握していなかった。

 そう考えると、ソラも、条件はオレと大差ないのか。


「ッ!」


 そんなことを考えていると、ソラが、大きく目を見開いた。

 次の瞬間。


「――――っ!!」


 ソラの前には、七色の光を発する鏡が出現していた。


「やった……のか?」


 大きさは一回り小さいものの、確かにそれは先ほど葉月先生が発動させた『鏡壁ミラーウォール』に他ならない。

 間違いない。

 ソラは、超能力の発動に成功したのだ。


「七割ぐらいか。スゲェな」


 善希が感嘆したような声を上げる。

 睦月も声には出さなかったが、驚いているようだ。


 『鏡壁』はすぐに消えた。


「やったじゃんソラ! おめでとう!」


「うん。ありがとう秋二!」


 オレにそう返事をしたソラの声は明るかったが、覇気がなかった。

 どうやら、少し疲れているようだ。


 初めて超能力を使ったからだろう。

 オレも、化物を相手に初めて超能力を発動させたときは頭痛がしたし。


「大丈夫? 頭、痛くない?」

「お疲れ様。ソラ」


 梦とユークも、ソラに労りの声をかけた。


「実はちょっと痛いんだよね……。これってすぐに治まるのかな?」


「オレはすぐに治まったな。まあ安静にしてりゃ大丈夫だろ」


 とにかくこれで、ソラも超能力者の仲間入りだ。


 羨ましいとか、超能力っぽくていいなー、なんて思わなかった。

 ちょっとだけ、ほんのちょーっとだけ羨ましいとか……いや、思ってない。思ってないから。


 いいんだ。

 オレは触手と一緒に生きていくさ。


「実は、最初は秋二の触手を出そうと思ってたんだけど……全然できる気配がなかったから、途中でイメージを変えたんだよね」


「そうなのか?」


「うん」


 オレの超能力は使えなかったのか。

 何でだろう?


「『複写トレース』は、たまにコピーできない超能力もあるからな。単純に、仲原の触手とは相性が悪かったのだろう」


 オレたちの会話を聞いていた葉月先生がそう言った。

 なるほど。

 相性なら仕方ないな。


「……むー」


 ソラは少し不服そうだった。

 いいじゃねぇか。

 触手はオレに任せてくれよ。


「本日の講座はこれで終了とする。二人とも、ゆっくり休むといい」


「はい!」


 こうして、オレとソラの初めての超能力講座は無事に終了したのだった。

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