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藍猫古書堂  作者: 神寺 柚子陽
現代編
15/26

伍.【風由】筆頭“藍紫の子”




「探したよ。やっと見つけた。よければ貴方(あなた)の話を聞かせてくれないか? 現、四十九院家(つるしいんけ)神戸(こうべ)別邸(べってい)()(もの)(ふう)じの武家(ぶけ)屋敷(やしき)”の管理人(かんりにん)傭兵(ようへい)諜報(ちょうほう)集団(しゅうだん)()(ゆう)の者】筆頭(ひっとう)総大将(そうだいしょう)表裏(ひょうり)一体(いったい)の四十九院家、(うら)次期(じき)当主(とうしゅ)(あい)()の子”四十九院(つるしいん) 遊楽(ゆら)さん」


 かつり、腐りかけた木の床をスニーカーで踏みしめて。ゆっくりと藍色がかった艶やかな黒髪の少女が振り返る。

まだ幼くはあるが将来はさぞ美しくなるだろうと思われる美少女だ。儚げな雰囲気と浮世離れした雰囲気を併せ持つ童顔の和風美人といったところか。

 腰まで伸びた綺麗な長い黒髪。色白の抜けるように白い肌。優美に整った和風の顔立ち。そっと伏せられたタレ目な二つの(アメ)水晶(ジスト)の如き(そう)(がん)化粧(けしょう)()などなくとも、うっすらと桃色に色づく桜唇。すらりとした一見華奢(きゃしゃ)肢体(したい)は実用的に鍛え上げられ、しなやかな猫を思わせる。―――(どう)長短(ながたん)(そく)純日本人(じゅんにほんじん)体型(たいけい)である柚之木にとって(くや)しいことに、―――胴に対して足は長く美脚だった。服装は藍色の猫型フード付き白のパーカーに黒の短パンというラフな格好だが、よく見れば、ポケットが少し膨らんでいた。柚之木は少し警戒を強める。


 妖しく目を細めて皮肉(ひにく)げな笑みを浮かべた少女は得体のしれない軽やかな調子で(うそぶ)く。

 

「おやおや、誰かと勘違いしていませんかお嬢さん。僕はそんなたいそうな人物ではありませんよ。この屋敷の庭に眠るある方の仏壇に花を手向けに来ただけの、通りすがりのちゃちで阿呆で愚かな、ただの小学六年生です。ふふふ、害も罪も“まだ”なにもない幼気な少女ですよ~」

「モノホンは自分で自分を幼気などとは言わんだろ。無邪気に笑ってきょとんとするだけだ」

 

どこまでも面倒くさそうに気だるくぞんざいな口調で切って捨て、柚之木は呆れたように腕を組んで少女を見やる。


「そうでしたね。もっと精進しなければ不気味がられてしまいますね」

「安心しろ。もうすでに不気味で私のなかでは危険人物であると同時に修正効かん」


 真面目(まじめ)くさった口調で本音をいってやると遊楽は腹を抱えて噴き出した。


「あっはっはっはっはっはっはっは! なにそれ酷いな~本当に。僕の名前はユカリ。君の名前は?」

 

 飄々(ひょうひょう)と油断なく目を光らせながら嘯いて、にまっと悪戯っぽく笑う少女。

 柚之木は表情を変えず、声色のみ驚きの色をにじませて腕を組み直す。


「ほう? あくまで知らばくれるか。私は作家見習いの大学生、柚之木(ユズノキ) (シン)()。貴方の話が聞きたいんだ。逃げるなよ? 四十九院(つるしいん) ()(らく)。ユカリはまた別の輪廻においての偽名だろう。輪廻(りんね)転生(てんせい)を果たしたことはある筋からの情報で知っているんだ。サァ、私の趣味(しゅみ)()甲斐(がい))に付き合ってもらおうか。(へん)異種(いしゅ)()()、【災厄(さいやく)(ねこ)】の天津(あまつ)(くう)()(けい)約者(やくしゃ)今生名(こんじょうめい)四十九院遊楽(ユラ)さん」


 遊楽はにんまりと、まるで悪戯好きな猫のように幼くも儚げな美貌を無邪気に歪めた。



短くてごめんなさい。

キリがいいので、区切りました。

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