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貴方に逢えるはずが無いのに

私は、少年の村へと連れていかれた。

…いや、これだと語弊を招きそうだ。

一応、連れていってもらった。


馬でここまで来たらしい。帰りも馬に乗っていた。私は操縦(?)出来ないので、少年の馬に一緒に乗っていった。


村に着くまでは、お互いに一言も話さなかった。


もしかしたら、風を切る音がうるさくて聞こえなかっただけかもしれないが…




村は意外にも大きかった。

高い建物こそ無いし、家も造りがかなり簡素だ。まさしく、『組み立てただけ』という感じである。

しかし、集落としての規模はとても大きく、ディズ○ーランドよりも広い気がする。人も多そうだ。

規模の大きい、弥生時代の集落という言葉がぴったりな気がする。




「ねぇ、何処に行くの?」


私は、手を後ろ手に組み、辺りの村の様子を眺めながら、先導している少年に後ろから尋ねる。


「村長の所だ。」


少年は振り向かずに答える。


「…なぁ、『なぎ』って誰だ?」


少年は続けて、今度は質問をした。


「ん、あぁ…知り合い。何か顔が凄く似てたから…つい、ね。」


私は少しにごすように答えた。



凪は、私の幼馴染みだ。

いつも私を助けてくれる。

私は彼の事が好きだった。彼はどう思っていたかは知らないが。

この気持ちは、まだ凪には伝えていない。そんな勇気も無かったから。



「…ふーん。」


少年は少しの興味も示さないような素振りで答える。答えを濁したことは明らかだが。

だったら話振るなよ…


そこからはお互い話すことは無く、1つの大きな家の前で立ち止まった。


「ほれ、着いたぞ。」


少年は再び歩き出し、家の中へと入っていく。

その背中を追うように、私も家へと入っていった。



壁は全面布でおおわれている。壁紙なのだろうか。すだれのように風は流れ込んで髪を揺らす。

棚や箪笥たんすが並んでおり、その上には小物が置いてある。ただ、どれもいたんでいて、そっと触っただけでもばらばらと崩れてしまいそうだ。

しかし、ここはどうも『家』と言うよりも『部屋』っぽい。



「おぉ、お帰り。ティム。今日は全滅したのかい?」


奥で座っていたお婆さんがけたけた笑いながら言う。さらっと恐いこと言ったんだが…


「あぁ。やっぱ新人はいかんな。」


ティムと呼ばれた少年は頭を掻きながらお婆さんに近づく。


「と言うか、久し振りだな。祭壇のとこに偶像出たのは。」


続けて言う。


「ほう。祭壇の所に…」


「んで、そこにこの子がいたんだが…」


お婆さんは振り返った。

私は目を見開いた。

余りにもあり得ない光景で…

もう、


会え


ない


はず…




* * *




「…い。おい。」


少年の声で私は目を覚ました。

倒れてしまったらしい。


「…ここは…」


私は辺りを見渡す。先程とそう変わらない部屋(家?)のベットで寝ていた。


「俺の家だよ。」


少年は呆れたように言いながら、ベットの近くに置いてある椅子に座った。


「…何かあったのか?」


少年は割と不安そうな顔で私に訊ねた。心配してくれているのだろう。


「…ん。いや、大丈夫。」


再び言葉を濁す。

そのお婆さんは

見間違えようの無い


死んだ私のお婆ちゃんの顔だ。


視線を窓の外にらす。

先程よりも多くの人が村を歩いている。

しかし、皆どこか見たことあるような顔ばかりで…


「おい、大丈夫か?」


少年は再び私に声を掛けた。


「平気、平気。」


私はにこりと笑いながら言う。

取りあえず、話題を変えたい。


「貴方、名前ティムって言うの?」


私は先程の会話から、まともそうな話題をチョイスした。


「あぁ。『ティム』って、呼び捨てでいいぞ。」


ティムは誇らしげにいった。


「…あのさ、お前、もしかして祭壇の文字…読めたりする…?」


…え?


「なんで?」


「いや、石碑の前でじっとしてたから…」


そこから見てたんかい。


「…ティムは読めないの?」


「え、読めないよ。」


読めない…?


「ねえ、ティム。『本』ってある?」


「あぁ、あるよ。」


ティムは近くの棚から本を一冊取りだし、私に渡した。

大分だいぶ風化が進んでおり、乱暴に扱えば、粉々になるだろう。

私は神経を集中させて、ゆっくりと本をめくる。


そこには、


理解不可能な文字列が並んでいた。


「…これ、読めるの…?」


「え、うん。」


この世界は、『言語』は一緒だが、『文字』は違うらしい。

めんどくさいな…


「そういえば、お前の名前は?いつまでもお前じゃ呼びづらい。」


ティムは私に訪ねる。


「あ、うん。私は…ほのか。」


本名は矢羽々やはば 仄。だが、この世界ではどうやら、名字は無いようなので、名前だけを名乗っておく。


「ホノカ…か。了解。」


ほら見ろ。カタカナになった。

まあ、別にいいんだが。


「あ、因みに、おさの名前はシオンだ。覚えとき。」


シオン…か。



「失礼する。」


少しして、一人の長身の男が入ってきた。


「ティム、報告書。」


長身の男はそのままティムに近付いて、手を伸ばして用件を端的に言う。


「あ、わりぃ。」


ティムは引き出しから紙を1枚出し、手渡す。

私には読めないが。


「…そちらの方は…」


長身の男は私の方を向いて、首をかしげた。


「えっと…」


どのように自己紹介すればいいのだろうか。


「ホノカだ。祭壇で倒れてたところを保護したんだ。」


ティムが代わりに説明してくれた。


「なるほど。私はヤマと申します。副村長をしております。以後、お見知りおきを。」


お堅い方だ。ちょっと苦手だな…


「なんだよ、ヤマ。いつもみたいに『チィーッス!!ヤマでーす!!しくよろー!!』とか言えばいいのに。」


え、なに、そのテンション…

感嘆符かんたんふ付きすぎて読みづらい…)


「そぉい!!」


突如、ヤマはティムにジャーマンスープレックス(相手の腰を掴んでそのままブリッジして相手を頭から落とす技。良い子は真似しちゃだめだよ。)を決めた。


「痛ぇ!!」


ティムが叫ぶ。


「では、私はこれで。」


ヤマは私に目を合わせずに、そそくさと去っていった。


悪い人じゃ無さそうだな…。


「…ティム…大丈夫?」


私はひたすら転がるティムに声を掛けた。


「…だいじょばない…」


ティムはそのままうつ伏せになって、動かなくなった。


「…ふふっ。」


私はつい、笑ってしまった。


楽しさはもう、元の世界あっちでは手に入らなくなったから…






あれ?



また、変なことを…



私は



何を…



分からない…

















『独りにしないで…』









『私がなにしたの…?』












『ねぇ…』














『やめて…』




















『…謝る…から…』






































『グシャ』

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