戸惑い
異世界ファンタジー。
流血や四肢欠損など残酷描写を入れる場合がありますので初めからr15とさせていただきます。
ここは、どこだ?
僕は自分の部屋にいたはずだ
いや、知らない場所でこんなことを言うのがまちがいなのかもしれない。
尻もちをついた体制は長く持たず、左足左側面をペタリと床につけた。違う、
左足に当たったのは草やその下に敷き詰められた土の感触で、ここは僕の部屋じゃない。
靴下を通して伝わる土と砂つぶの冷たさに、
(靴下汚しちゃった、母さんに怒られる。)
体温をゆっくり足先から奪われた。
正常な思考は頭の奥で僕が現実を見るのを待っているだけで、役には立たなかった。
手をつく。
細長いよく道端に自生する雑草が掛けた体重に比例して、地面にしなって折れてめり込んだ。
手についた土と雑草の屑をはたき落とす。
浅くついた赤い跡が雑草達の仕返しに思えて
僕はため息をついた。
空を見上げた。
一人で突っ立ってる僕を満点の星空が見下ろしていた。
ここが知っている土地ならば、満喫できたのかもしれない。
ここにテントや毛布、飲食物があれば一夜を凌たかもしれない。
でも、どっちの選択肢もこの状況を解決はできないだろう。
周りを見渡した。
ここは平野で、民家や明かりを見つけることはできなかった。
月明かりの助けを借りて僕は自分のポケットをまさぐった。
近くにあった平らと言うには凸凹している石の上に広げる。
圏外スマフォ1個、
以上。
頭を抱えても、有用な持ち物は増えなかった。
メールを送れず検索や地図を見ることの出来ないスマフォは、デフォルトでついているライトで僕の足元を眩く照らした。
すぐに電源を落として電力の消費を抑えることとなったが。
少し目を凝らすと、左に森があった。
木々の間は暗く、"何か"が出そうで進むのをためらった。
川にさしかかれば、飲み水や海、もしかしたら民家に行き着くかもしれなかった。
だが生憎、暗い夜道を迷いなく歩く土地勘やサバイバル技術を持ち合わせてはいなかった。
悩んだ結果僕は、平野を歩くことにした。
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月明かりがあっても、都会の光に慣れている僕には雑草が黒い絨毯で、もしかしたらここに落とし穴があるかもしれないと錯覚させた。
そう思わせるのに十分で、恐怖を抱く僕の歩幅を狭くするのは当然だった。
吐く息が白い。
腕に沸いた鳥肌を擦って無くす行為にすら体力を消費するように思えてきた。
それ位時間が経った。
なんにも見当たらない。
民家も明かりも人影も。
いつもはうっとおしいとすら感じていたそれらに早く出会いたい。
後ろから風が吹く。
うなじが粟立つのを感じた。
「…?」
頬や鼻に掠める風にしめりが混じっている。
振り向いた空の向こうに星々を飲み込む濃灰色の雲が迫っていた。
「まずいかも」
追って来る雲の中で光と腹に響く重低音が聞こえて来て、これから大荒れになることがよく分かった。
雨風を打たれない…欲を言うなら、寒さを凌げる所が必要だ。雨に濡れれば視界は悪くなるし、体温も奪われるだろう。
それは辛かった。
雨の音が耳から離れない。
上がった息の音が耳に届く前に大半が大雨に撃たれて消えてしまう。
「あっ…」
ぬかるんだ地面に足を取られたと、地面に転ば無いよう受け身をとろうとしたが地面が無かった。
(…やばいっ!)
「う、うわあぁ… !?」
踏み抜いた足から周りが一瞬歪んで底なし沼のように沈む。
何もできずに投げ出された体は暗闇の下へ下へと落ちていった。