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「ラブレターかこれ?」
それから放課後、俺と友人はいつもどおりに帰ろうと下駄箱を開けた。すると、一通の手紙が入っていた。
まだ中身は確認していないが、俺が無意識的にそういうと、友人は「えぇっ!?」とものすごい反射神経でこちらに振り返ってきた。
歩み寄りながら友人は言う。
「え、え、え……う、うそ」
「いや、なんか俺のとこに入ってたし」
「う、うそだ……。そ、そんな、アルクに告白する女子がいるなんて……」
「失礼だよな、それ」
「そ、そういう意味じゃなくて……。う、うぅ……」
まあ確かに俺に告白する女子なんて、当の俺自身もいないと思っていたところなのだが。
しかし……今どき下駄箱にラブレターというのはどうなのだろう。古典的な人物なのか、それとも単なるイタズラなのか。どちらかというと後者な気がする。
俺は自分の意見を言う。
「どうせイタズラだろ」
「あ、アルクはどうしてそんな冷静なの!? もしかしたら本物かもしれないんだよ!?」
「こういう類のは、はなから信用してないからな」
それに今日は、ラブレターよりもさらにものすごい事件が起きた。自分の小説がランキング一位を取った件だ。それのせいでラブレターのインパクトが弱まっているのかもしれない。
ふだんの俺なら友人といっしょにパニックになっていただろうが。
友人は興味津々に言う。
「と、とにかく中身を見てみようよ! ね?」
「そうだな。気になるもんな」
そういって俺と友人は手紙の中身を見た。こういうプライバシー色の強いものを受取人以外の人に見せるのはどうかと思うが、ここで友人に見せないというのも酷なのでいっしょに見た。
手紙の内容を俺は読む。
「『旧二年五組の教室に来てください。話があります。 byとある女子』……?」
「う、うわぁぁ……! や、ヤバいよこれ!? 本物じゃない!? これ本物なんじゃない!?」
「そうかぁ? いかにも嘘くさいと俺は感じるぞ?」
「そ、そうかな」
「そうだろ。とくに最後の『byとある女子』って部分。ここなんか、露骨に女子であることをアピールしててすげぇ嘘くさい」
「いわれてみればそうかも……」
「まぁ十中八九、どっかの男子が俺を引っ掛けようとしてるだけだろうな。もしくは罰ゲームか」
「そんな、罰ゲームって……」
「罰ゲームで告白とか、リアルでさせるのはどうかと思うけどな」
ハッキリいって、陰湿である。
罰ゲームを受ける人だけでなく、その告白に選ばれる人にまで被害が及ぶからかなり質が悪い。しかもそれが周囲に誤認されて、学校中に噂が広まる危険性まである。人をおちょくる行為としては最低の部類だろう。
だが俺は言う。
「でもまぁとりあえず行ってみるわ」
「えっ!? い、イタズラだってわかってるのに行くの……?」
「そりゃあな。もしかしたらって可能性もあるし、それに予想通りイタズラだったとしても、それくらいのイタズラなら俺は甘んじてやるよ」
「…………」
「最初から期待してないからこそ、傷付く恐れもないってわけよ」
「アルクがいいんならそれでいいけどさ……」
俺のニヒルな発言に、友人はそこはかとなく腑に落ちないような表情をした。
俺はニヤリとして言う。
「そんな暗い顔すんなよ――じゃあ行ってくるぜ」
「うん、行ってらっしゃい……」
「ついてくる?」
「……やめとく。あんまりこういうもの、見たくないし」
「ふぅん。そっか――じゃあまあ、結果だけはあとで報告するわ」
「うん……」
友人は手を振って学校を出た。
俺は上履きを履いたまま、旧二年五組の教室へと向かった。