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 誰かに読んでほしい、と思った。

 幸い俺には親友がいる。それもとてもいい親友が。

「ん……」

 ちょっと恥ずかしいけども……、あいつなら俺の初めての小説だってバカにはしないだろう。そう信頼できる。

 俺は、スマホからLINEを開いた。

 そうして友人に報告する。

「小説書いてみた」

 一分もしないうち既読がついて、返信がやってきた。

「え、ほんと?」

「おう」

「読んでみたい」

「いいよ」

 と送って、俺は自分の書いた小説のリンクを貼り付けた。

 それから友人は送ってくる。

「ありがとう。でもどうして書こうって思ったの?」

 俺はその言葉にすこし考えた。

 どうして俺は小説を書いたのだろう。

 ちょっと考えてみて、それがとても単純な理由だったことにすぐ気付く。

 その理由を、俺は、友人に送信した。


「楽しそうだから書いてみた」


 ただそれだけの理由で、俺は小説を書こうと思ったのだ。

 勉強するのが嫌だ。学校や社会の規則に縛られるのが嫌だ。だから俺は楽しさを求めた。

 楽しそう――決して立派な理由ではない。だけど確かに純粋な気持ちだ。趣味ですることなんだから、立派な理由なんてべつに要らないだろう?

 そのはずだ。

 それに――丁度、なにかをやりたいと思っていたところだった。

 退屈を打ち破るために、なにかを始めたかったのだ。

 友人は送ってくる。

「そっかぁ」

 友人も、そんな俺の立派ではない理由を受け容れてくれたようだった。

 それから立て続けに、

「じゃあ、読んでみるね」

 と送ってきた。

 俺はちょっとニヤリとして、それから送る。

「おう。じゃあ俺寝るわ」

「うん。おやすみー」

「おやすみ」

 そうして俺はスマホを置いた。

 そのままベッドに寝転がる。

 俺は思う。

 ――おいおい、小説を書くのってこんなに楽しかったのか!

 こんなに晴れ晴れしい気分になったのは、いつ以来だろう。

 体に溜まった疲労感が、今の俺には充実感に感じられた。

「……くくっ」

 明日になったら、友人から感想を訊きまくってやろう。どこが面白かったかとか、どのキャラクターが好きかとか、そんなことを訊きまくってやろう。

 明日が楽しみだ。

 すごくワクワクしながら、俺は眠った。

 この時――俺はまだ、その起こってしまう大変な事態をまったく予想できていない。

 俺が『小説家になろう』に初めて投稿したあの小説が、日刊総合ランキングで一位を取ったということを知るのは、明日、学校に行ってからの話になる。

 そう。

 俺の戦いは、俺の知らない間に始まってしまったのだった――

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