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 書き終えた小説を投稿して、パソコンの電源をオフにした。

「ふぅ……。お疲れ、俺」

 ベッドに横たわる。

 小説を書いた後はどうしても眠くなるな。集中しすぎているからだろうか。

 他の作家はどうなのだろう。書いた後も元気でいる作者や、執筆から解放されたことを喜ぶ作者、すぐに推敲を始める作者とか、書き足りなくてさらに書き出す作者などなど――いろんな人がいそうだ。

 俺は寝る。

 執筆後は疲れがマックスです。

「……。うん。面白いよな」

 書いた話を思い出して、その出来について自賛した。

 話に関しては満足のいく出来である。

 大筋。

 主人公の仲間になった二キャラクターが実はスパイだった。賞金欲しさに寝込みを襲うも主人公の不意を打つことは叶わず。しかし事情を聞いた主人公が二人にお金を恵んでやった。こうして立て直せるだけの金銭を得て二人は主人公たちの下を去る。

 三人に戻った主人公たちの活躍を、これで無事に書けるようになった。

 腹黒メガネとヤンデレの絡みも、あざとすぎないように書けた。これならBLというよりも男の友情という感じが出て、ふつうの読者にもウケはいいだろう。

 それにポンとお金を出してやる気前の良さに、主人公の株も上がるはず。

 またサブヒロイン(ツンデレの子だ。お金大好きという設定がある)が、主人公の行動に怒るというオチも面白い。

 話の展開は、完璧とまでいえた。

「ここ最近の話では一番の出来だろうな」

 これを読んだ星海と甘木の感想が気になるところだ。

 まず星海は満足してくれるだろう。お気に召さなかった二キャラクターを仲間から外したことは、星海が望んでいた展開だ。それをスッキリした展開で見せることができたのだから文句などいうはずがない。

 問題は甘木のほう。

 甘気がどう思うかは、すこしわからない。

「とにかく二人をくっつければいいやって思ってたけど――もし主人公との活躍をもっと見たかったとか言ってきたら……」

 その時は仕方がない。

 済まないと謝るしかないだろう。期待に応えられなかったわけなのだから。

「期待、か」

 思えば不思議なもんだ。

 書き出しのころはあんなに読んでもらいたいと思っていたのに、読む人が多くなると今度は思うように書けなくなってしまう。

 読者がいることはありがたいことに違いないけれど――過ぎたるは猶及ばざるが如し、読者も多すぎると作者の自由がなくなるものか。

 大事なのは、期待に押しつぶされない強い心。

 作者ってやつは、堂々としていないとな。

「その結果が振るわなくても泣かないように」

 ぜったいにウケると思って書いた話が滑ることもあるだろう。

 星海の件といい友人の件といい、なにかと空回りの多い俺だ。今回書いた話が、甘木のお気に召すかどうかは――まったくもってわからない。

 明日はどっちに転がるか。

「なんて不安になってみても、もう後戻りはできねぇっての」

 すでに投稿してしまった話や、それへの反応にビクビクしていたってしょうがない。

 今日はもう寝よう。

「おやすみなさい」

 電気を消した。

 やってくる明日に備えて、今はぐっすりと寝た。

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