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 翌日。

 日曜日。

 甘木が帰った後、俺は、甘木の意見をいくつか取り入れて『男子高校生が異世界に行ってみたらこうなった』の最新話を書いてみた。

 大きく取り入れたものを挙げると、新キャラの追加だ。

 腹黒メガネ。

 ヤンデレ。

 甘木からウケると勧められたこの二キャラクターを追加した。

 両方とも、主人公と同い年の〝男性キャラクター〟だ。

 今日書いた『男子高校生が異世界に行ってみたらこうなった』の最新話の流れを紹介すると、こんな具合だ。

 ――まず主人公は今、チート能力を使いすぎて懸賞金をかけられた身になっている。

 メインヒロインのぼくっ娘とサブヒロインのツンデレはそれでも主人公に付いていくが、広まった悪評のせいで主人公一行は行く先々で恐れられてしまう。

 立ちはだかる相手は賞金稼ぎしかいなく、敵と戦うばかりの毎日である。

 これでは三人だけで話を回すしかない。

 そこで登場するのが、先の腹黒メガネとヤンデレの二人だ。

 この二人は賞金稼ぎではなく、主人公の強さに惚れ込んで仲間になりたいと願い出た二人組である。

 癖の強いこの二人が新たに仲間に加わって、主人公一行の冒険はこれまで以上に賑やかになるだろう――

 といった按配が、最新話の流れなのだ。

 俺自身、この二属性のキャラクターのことをよく知らないので上手く書けたかどうかは正直いって微妙なのだが……、どうだろう。

 小説のほうには、甘木からの感想は来ていない。

 作品に出してしまった以上、今後はこの二キャラクターを仲間にして物語を進めていくつもりではある。それ用の展開だっていろいろ考えた。

 ただ感想欄を見てみると、あまりウケがよくないように感じた。心なしかPV数も減ったような気がするし。

 …………。

 ……やっぱりダメだったんじゃないか?

「うーん……」

 読者の意見を取り入れて小説を書いてみたものの、なんか――違うと感じてしまった。

 おかしいな。

 読者の意見を取り入れるのは、間違ってないと思うのだが。

 なにがおかしいのだろう。

「まぁいいか」

 ウケがよくないように見えるのも、PV数が減ったように思えるのも気のせいだろう。俺自身が疑問を抱いているからそう見えてしまうだけだ。

 いや。

 そもそもその〝俺自身が疑問を痛いでいる〟というところがおかしいんじゃないか?

 疑問を抱いたままで書いていてほんとうにいいのだろうか……。

 どうなんだろう。

「ん」

 そんな具合で、自分の部屋でベッドに寝そべり、自作のアクセス解析をスマホで眺めていると、LINEが通知してきた。

 送ってきたのは友人である。

「起きてる?」

 と送ってこられた。

 現在時刻はもう十三時半である。よほど疲れていない限りふつうは起きている時間だ。

 俺はLINEを開いて、友人に送る。

「起きてるぞ」

「そっか。よかった」

「なにか用か?」

「うん。もしよければ、マックで勉強会しないかなって思うんだけど」

「えー。なんでまた勉強会なんか。休日くらい休ませてくれ」

「うーん。でもアルク、前のテスト赤点ギリギリだったじゃない? 次こそヤバいと思うよ?」

「う……」

「ほらー、勉強しないと留年しちゃかもよ~? それでいいの~?」

「それはぜったいに嫌だけど……」

「ね、お願い。いっしょに勉強しよ?」

「……ったく。しょうがねぇな」

「やった! じゃあ二時に駅前のマックに来てね!」

「おう」

「あ、言っとくけど服装には気をつけてね! ジャージとかで来たらダメだから!」

「おう。わかった」

 そこで会話を終えて、俺はスマホを横に置いた。

 俺はふと思う。

 ……なんか友人、ちょっと変だったな。

 引っかかりを覚えたところを挙げると、「服装には気をつけてね」というセリフだ。

 ふだんのあいつなら俺がどんな服装をしていようとも気にしない。何を着ていってもわりと褒めてくれる。

 そのあいつが今回に限って「服装には気をつけてね」か。

 なんだろう。なにかがあるのかもしれない。

「はは、俺とデートするつもりだったりしてな」

 それならそれで面白い。

 勉強自体は乗り気になれないが、あいつといっしょになにかをするのならどんなことでも楽しくなる。

 ちょうど小説を書くのに行き詰まっていたところだし、すこし遊んでくるか。

「面白い小説を書きたいなら、小説ばかり書いていてもダメだって言うしな」

 いろんな経験が小説を面白くする。だからこそ小説以外の経験を積んでいくことが面白さへと繋がる。

 よし、と俺はノートと教科書と筆記用具をカバンに詰めて、それからそれっぽいオシャレをしてから部屋を出た。

 ちょっくらマックで男の娘と遊んでくるぜ。

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