ブラウザSLG風異世界戦記(下書き)
両軍が対峙してすでに半日が経ち、日が暮れ始める。
こちらの陣容は、エルフ長弓兵200、コボルト長弓兵800、コボルト長槍兵800、
ドワーフ工兵200、ハーピー偵察兵50の計2050である。
陣は緩やかな丘の上に建て、前方には工兵隊に作成させた丈夫な柵がある。
これに対し、敵は重騎兵1000、軽騎兵300、輜重隊200の計1500である。
黒一色の兵装だ。
天気は晴天であり、微風、念入りにハーピーを周囲に飛ばしているが、
伏兵、援軍はいない。
接敵当初に軽く矢合戦は行われた。矢の射程はこちらが圧倒的に長く威力も高い。
敵が弓を構えた瞬間に打ち始めることによって、敵の軽騎兵を30騎ほど倒すことができた。
負傷は100を超えるだろう。
その後は、こちらの射程外に逃げ、ずっと対峙したままである。
この世界は、ブラウザゲームのような世界である。ジャンル名はわからないが、
自分の領地に施設を設置し、食料を生産し、兵を揃え、敵プレイヤーの領地に攻め込むタイプの
ゲームだ。
初詣で異世界に行きたい、異世界に行きたいと願ったら、この世界に召喚された。
この世界は、現在、神々が戦争を行っている最中である。
戦う相手が同じく神ならば、神といえども、死、消滅の恐怖の下で戦わなければならない。
そこで、神々は代理戦争を思いつく。
但し、この世界は、できたばかりであり、今だ、定まった世界の住人はいない。
なので、異世界から知的生物を召喚し、国を作らせ、神の代わりに戦わせようとなった。
私はこの手のゲームを2回しかしたことがない。
1回目は、非効率的プレイをして、あっという間に蹂躙された。
2回目は、ネットで調べて、もっとも高い効率でプレイを行ったが、やはり負けた。
自分の好きなようにやれば、圧倒的に負け、テンプレ通りに機械的にやっても負けた。
だから、つまらんと、3度目はやらなかった。
今、似たような状況で、3度目である。3度目の正直とばかりに次は勝ちたい。
なんせ、自分の命がかかっている。負ければ、基本的には死ぬ。
もちろん、相手が俺を殺さずに、この世界から追放してくれれば、死なずに済むが、
領主を殺せば、寿命が延びたり、いろいろと特典があるらしい。
となれば、まず、殺しに来るだろう。俺なら殺す。
しかし、それでは殺伐としすぎる。仕える神が異なっても、相手が同じ世界出身の場合は、
戦闘をしなくて良いことになっているし、領地替えもしてくれるらしい。
休戦日には、同じ出身地で集まって、宴会くらい開いてもよいことになっている。
始まったばかりで、宴会はまだないが、その機会に情報交換を行いたいものだ。
また、四面楚歌の状態になり、詰んだ場合は、降伏しても良い。
降伏すれば、仕える神が変わる。自分の意志で元の世界に戻ることはできない。
四面楚歌の状態でなくても仕える神は変えれる。天罰は落ちない。
神々が俺達に直接干渉することは、基本的にできない。神々は各領主に神力を供給するだけだ。
その神力を俺達領主は土地や人に配分し、領土を栄えさせ、敵の領土を奪っていくわけである。
神は複数おり、五つの陣営に分かれている。
なので、昨日味方だった隣の領主が、神の都合で敵になることもありえる。
ゆえに、貿易はしても、共同技術開発は慎重に相手を選べと最初に説明を受けた。
同じ神に仕える領主であっても、敵の神に願える可能性もあるからなおさら相手は
慎重に選ばなければならない。
なので、仮に共同開発するならば、同郷の日本出身者と行うことになるだろう。
仕える神は違っても互いに殺しあうことになる可能性は低い。
などなど、諸々の説明が終わると、領地選びが始まった。
地下資源が多いところか、極めて農耕に適した土地かなど、偏った土地から、
万能的広い土地など、様々だ。
偏った土地は貿易相手がいればかなり有利だが、いないと即詰みとなりそうだ。
万能型の土地は、各生産量は少なくなり全体的な成長が遅く、
これまた、周囲が敵ばかりだと詰みやすい。
まずは、領民を増やしやすい、ある程度食料生産の高い土地にするべきか、
あれこれ考えて、とりあえず、疑問に思ったことを神に聞いてみた。
「希望の土地がなかったらどうなるのか?開幕当初は敵勢力はどこにいるのか?」
現在、この世界の大地は、切り取られ、ジグソーパズルのような状態になっている。
そして、神力で加工できるので、完全に希望の土地とはならなくても、
かなり希望を満たせる土地を配給できるとのことだった。
開幕時の配置は、中立神が決めるそうだ。
あまりにも各陣営がまとまって配置されると、そのまま勢力図が完成して、
戦争がおきない可能性があるから、味方だけで固まる配置にはならないそうだ。
かといって、周囲が全て敵ということもないといっていた。
開幕当初にいきなり神々内の同盟関係が変ることも無いともいっていた。
事前説明は、飽くまでそういう可能性もあるよということだったらしい。
もっとも、後半になれば、唯一絶対神になりたい神が現れるだろうから、
勢力関係は、やはりかわるだろうともいっていた。
とりあえず、序盤はだいじょうぶだから安心しろといってくれた。
唯一絶対神になる気はあるのかと聞いたら、にやりと笑うだけだった。
土地選びがなかなか決まらなかったので、どういう種族を領民にできるのか聞いてみた。
竜種を領民にできるなら、生まれ持った牙や鱗が武器防具となる。鉱山はいらないだろう。
トカゲは嫌いと竜種は即却下された。領民となる種族は神が自由に創造できる。
私にあった種族を考えよといわれた。
また、領民や家畜といった種族は、後から変更可能といわれた。
進化というか変異というかそんな感じですでに生まれた者も一緒に変更可能だから適当でも
良いといわれた。が、トカゲは嫌いだけどねと二度いわれた。
もっとも、神の特性に似た種族特性が創造が楽らしい、もって生まれた特性が頑強で
戦闘向きの種族を創造するのはたいへんなんだそうだ。
神に、どんな特性をお持ちか聞いたら、エレガントで知的で美しく賢くとかのたまい出した。
おもわず笑ったら、腹をグーで殴られた。
神の外見が幼女に見えるからと理由をいうと、顔を真っ赤にして怒りだし、
この姿は自分の本来の姿ではなく、俺の一番のこのみに見える外見を魔法でしてるんだそうだ。
幼女に見えるなら、そういう趣味だからといわれてしまった。
たしかに、幼女は嫌いではないが、20代後半のぼんきゅぼんって女性が一番好きなんだがなぁと
思うと、その姿にかわった。「あ、魔法をかけ忘れてた」とのことだ。
とりあえず、種族はエルフとかといった妖精にすることにした。
妖精なのか妖魔なのかどっちだろうかという種族も、
この世界での種族分類はこれからするのだからといって、自由にして良いといわれた。
エルフはどういった種族なのかといったイメージは直接おれの頭の中をみて作っていくそうだ。
種族候補を見せられた。全て女性というかメスというか染色体がXXな外見しかなかったので、
種族はどうやって増えていくのか聞いたら、「木に実るに決まっておろう」
何を馬鹿のことを聞くんだといった顔をされた。
領地に木を何本かやるから、どういう領民が欲しいか、家畜が欲しいか
穀物の種が欲しいか全て木に願えをいわれた。
神はどうやって生まれるのか聞いてみた。
「突然、ぽこんと世界に現れる。外見がお前達に似ていても、ほれ、ヘソが無いだろ」
といって、さっきの幼女の姿になって、腹を見せてくれた。たしかにヘソがなかった。
「あれ、木に実るのにヘソがあるのですか?」
「木からヘソを通して栄養がいくのだろうが、まったく、そんなことも知らぬのか」
こまったやつだといった顔をされた。
「だから、トカゲの分際で、神と一緒にヘソがないのが許せんのだ」などとも言い出す。
とりあえず、話を次に進めることにした。
ようは、能力の高い領民の収穫には時間がかかり、低ければ早く収穫できるという世界というか
領地にしてくれるらしい。家畜に関しては、雌雄があり、雌雄を一緒にしてると
メスの腹に子が実るということも、この幼女は知っていた。
雌雄が一緒で何をすると実るのかまで知っているのかどうかは確認しなかった。
生産というか出産というか収穫というか、とりあえず、最初の段階である程度戦闘向きの領民を
用意できるならば、武器防具用の鉱山開発より、領民を増やすための食料生産に重点をおくべきだろう。
山の幸、海の幸が取れて、森も多く、農耕にも適してて、将来的には鉱山開発もできる土地を希望した。
怒られるかと思ったら、わかったといわれておしまいだった。
もっとねだるべきだったか。
領地に配属された。
まず、サポート的な領民を収穫することにした。続いてハーピータイプ。
領地全体と周辺領地の把握を急いでしたかった。開幕からいきなり攻め込まれて困る。
俺の希望は、20後半の出るとこは出た、引っ込むとこはひっこんだ美女だったが、
実から出てきたのは、苦手なギャル風の中学生だった。
とりあえず、腹を殴られた。
実から赤子で出てくるのかとも思ったが、いきなり中学生くらいで出てきて
日本語もしゃべれて、裸でもなく、白いワンピースを着ている。
赤子の状態で実を割ることも将来的にはでき、その方が人工増加も速くなるだろうと説明してくれたが、
現状は、成人まで実の中で育てたほうがいいだろうとのことだ。赤子を育てる領民がいない。
その外見で成人なのかと聞いたら、股間をけられた。
時間の流れの体感は速くしたり遅くしたりできる。
寿命もとりあえず、1000年分あるらしい。当分、人は殺さなくてもいいのか、
それとも、たった1000年しかないのか、まだわからない。
ハーピー達が、森や山の幸を取ってきてくれる。
驚いたのは、兎をとってきたことだ、領主の生態系とは別に、領地独自の生態系も存在するらしい。
サポートタイプの娘には適当に名前を付けてやった。
「今日からおまえはナビちゃんな」
顔を真っ赤にしたので、安易な名前で怒っているのかと思ったら、
照れて喜んでいるようだった。もっと真面目に考えてあげるんだった。
最近の漫画だと、ハーピーは鳥頭の娘設定だが、俺はそんなアホな設定にはしなかった。
命がかかっているので、アホな娘はいらない。
しっかりと偵察任務がこなせる知能と、地上からの攻撃を防げるよう風魔法を使えるよう魔力も
高めな種族設定にした。
もっとも、魔法に関しては、魔力があるからといってすぐ使えるわけではなく、
領地として、魔術体系を開発し、固体として魔術を習熟しなければ使用できない。
したがって、魔術開発専門の固体も生産を開始する。
ハーピー達は、羽を器用に使用して、ある程度のことはできるが、やはり手のような細かい作業はできない。
天使のような有翼人種にしたかったが、そういうタイプの種族の収穫にはかなり時間がかかる。
いずれ有翼人に進化させるとして、今はがまんだ。
ハーピー達のおかげで、領地の輪郭がわかってきた。
配置的には欧州のフランスを南北に180度反転させた立地だ。
東と南は海で、南東に島があり同陣営の領地がある。北方にそこそこの高さの山脈があり、敵領地がある。
西方には大河と山地があり、これまた敵領地だ。
果敢にも敵地の奥まで侵入したハーピーによると、西は鉱山の多い工業国家であり、
北は巨人の国とのことだった。
ハーピーの次にドワーフとコボルトを実らせた。
ドワーフといっても、ヒゲもじゃずんぐりもっくりではなく、
小学生高学年から中学生の種族だった。ナビちゃんはドワーフかと聞くと
どちらかというとドワーフですとのことだった。同じ種族がいなくてかわいそうになったので、
もう1人増やすか聞くと、別にさびしくないといって腹を殴られてしまった。
種族特性はいわゆるドワーフなので、農耕はあまりやりたがらなかった。
北方山脈と西方の山地で鉱石がとれそうだというので、そちらの方に散っていった。
多産で農耕的種族をと望んだら、コボルト達が収穫できた。
犬耳、犬しっぽ、犬っぽい鼻のケモノ度20%くらいのかわいい種族だ。
但し、これまた身長130前後の小柄な種族である。
俺も男だ、そろそろハーレム的種族を希望したい。
他の種族の1.5倍以上の時間がかかったが、ついにエルフのお姉さん達を収穫できた。
身長は165前後で、俺と同じくらいの身長だ。胸も尻も今までの種族よりある。
はっきりいって手を出しても犯罪にならない外見だと思う。
また、これまでの種族全般そうだったが、インプリンティングというのか
刷り込みというのか、幼子が親にとるような態度で俺に接してくれる。
ナビちゃんも、ツン成分が多いが基本は同じだ。
いよいよ俺も大人になる時がきたかと思った。
しかし、そういった気持ちが匂いというかフェロモンというか体から出てしまったのか、
コボルト達にばれてしまう。
コボルト達が発情しだし、俺はコボルトにもみくちゃにされた。いわゆる嬉れションしだすコボルトまで現れた。
それならいいが、甘噛みしだす娘までいる。歯並びはほとんど人間と一緒で、八重歯がするどいだけなのだが、
この八重歯がプスプス俺の皮膚に刺さってけっこう痛い。
その騒ぎを聞きつけてやってきたハーピーまで発情しだし、コボルトと喧嘩をしだす。
やっとのことで、ナビちゃんに救出されたが、ナビちゃんも発情していた。
大人になることができたが、ナビちゃんに襲われ、結局、臭いを追跡しておいつてきたコボルト達に襲われ、
後をおってきたハーピーにも襲われ、1000年の寿命をもつよう強化されていなければ、
干からびて死んでしまったのではというくらいに絞り取られてしまった。
ちなみにエルフ娘達はとくに発情はしなかったようだ。この娘達まで発情していたら確実に死んでいただろうと
思う反面、残念でもあった。
領民達は全員金髪だったのだが、この騒動の後、黒髪の娘がちらほら見受けられた。
ナビちゃんもしばらくどこかに行っていたのだが、黒髪の娘を連れて戻ってきた。
特に何もいってこなかったが、娘に名前を付けて欲しいというので、アンと付けてあげた。
名前にとくに意味はない。
黒髪の娘達は他の娘たちより、少し魔力が高いことがわかった。増産を検討する。
とりあえず、発情騒動がまたおきないように、ナビちゃんに定期的に相手をしてもらうことになった。
なんどもいうが、おれにはそういう趣味はない。が、エルフ達は森林地帯にいってしまった。
また、コボルト達が暴れても困る。いたしかたない。いたしかたないのである。
ちなみにナビちゃんは、一月ごとにぽこぽこ生んで同族を増やしているようだ。
家族が増えて最近は嬉しそうである。
などと、鬼畜なこともしつつ国づくりと子づくりに励んでいると、
突如、北方の巨人族が攻め込んできた。
いよいよ開戦である。かなり焦った。
戦争準備は日々進めていた。巨人を屠れる大きな弩の開発には成功していたが、
量産がタッチの差間に合わなかった。
早熟な種族で、開幕すぐに部隊を編成し、まだ準備ができていない領地に攻め込むのは
よくある手ではある。だからこそ、こちらも木からの収穫だけでなく、自らも子作りに励んできたわけだ。
最近では、エルフやドワーフといったナビちゃん以外とも、子作りをがんばってきた。
が、子作りにがんばりすぎて、兵器開発が少し遅かったかもしれない。反省である。
偵察のハーピーによると、巨人の数は200、防具は無し、武器も棍棒というよりも、
単に生えている木を引っこ抜いて手にもっているだけとのことだ。
対して、北方地帯のドワーフの人口は500にまでは増えていた。
数は2倍以上である。武器もそれなりの開発が進んでおり、長槍重装歩兵が組めるとのことだった。
しかし、いかんせん体のサイズが違いすぎる。巨人の身長は3メートル前後あるとのことだ。
俺は、まず、西方にハーピーを飛ばして、北方との共同作戦がないか念いりに確認させた。
案の定、西の国もわが領地に攻め込む準備をしていることがわかった。
西方奥深くまで進入した果敢なハーピーのおかげで、早期発見ができたのである。
賢く、勇気のある娘達である。
西方は鉄と馬の国であり、重騎兵部隊を主力にしている。数は2000には行かないだろうとのこと
西の山地のドワーフは人口が少なく200名しかいない、その後に続く森林地帯のエルフも200しかいない。
しかし、中央から南東の平野部のコボルトは2000以上はいる。
おとなしくかわいい顔をしているが、繁殖力の強い種族なのだ。
そして、領地開墾開始時からいるハーピー達もコボルト並の繁殖力だ。食料事情からあまり繁殖させていないが、
海で魚を取ったり、野山で山菜や野兎をとったりと、農耕以外から生活の糧を得る能力も高い。
ハーピー達も1500人ほどに増えている。はっきりいって、人口は全領地中でもトップクラスと勝手に自負している。
つまり、数だけでいえば二方面作戦を余裕で遂行可能な数なのだ。戦略面では負けていない。
あとは戦術だ。だんだんと落ち着くことができた。
特に西方の重騎兵対策には自信があった。以前から低い山地しかない西方には気を配っていた。
敵が騎兵を主力にしていることは確認済みだ。対騎兵作戦は準備済みである。
長篠やクレシーを再現すれば良いだけだ。
というわけで、まずは北方の巨人対策だ。
正直、わざわざ山脈を越えてわが領地に攻め込んでくるとは思わなかった。
北方のさらに北方が極地で南進しかできないというならわかるが、
北方のさらに北方は極地ではない、普通に領土がある。
我が領地北方の山脈は大山脈といえる。巨人やハーピーには容易に越えれる山脈であるかもしれないが、
他の種族が山脈を越えることは容易ではない。
占領後の領地運営を考えるとメリットの無い進行といえる。
まぁ、その考えが油断となり、ハンニバルに対するローマのごとく恐慌におちいったしだいでもある。
北方ドワーフ達には村を放棄させ、退避させていた。
巨人達は、ドワーフ達が放棄した食料や資材を奪っていったん戻っている。
これで終了かと思いたいが、再度、200の巨人が山を越えて侵攻してきてるとのこと。
冬季であれば雪崩にでも巻き込むかと思ったが、今は夏季である。
対巨人用弩は2台もってきてあるが、相手がその100倍では焼け石に水か。
とそこで、村長のドワ子が俺に声をかけてきた。
名前は適当だが、村一番の美女である。ドワーフにしてはかなり背も高く150センチあり、
胸も大きい。但し、残念なことに黒髪である。自分の娘に手を出すほど鬼畜ではない。
ドワ子がいうには、巨人達の知能はかなり低く、よく躓いて転んだり、
前の巨人が立ち止まっても止まらずに何度もぶつかって歩いていたそうだ。
そして、落とし穴を掘れば、全部が落ちるかもしれないといいだす。
たしかに、この戦いはゲームとは違う、立体的に縦横無尽に、自由に地形を生かし、変更し戦えるのだ。
さすが俺の娘である。もっとしっかりと名前を考えてあげるのだった。
名前の件は伝えず、落とし穴を思いついたことを誉めると、とても喜んでくれた。
喜ぶ娘はかわいいものである。
というわけで落とし穴を用意する。
用意する場所は前回巨人が通った場所を第一候補とし、次に村を通らずに領府へいくコースを第二候補とした。
ドワ子は、3メートルを越える巨人200体分を落とす落とし穴を、巨人がくるまでに3個は作成できると豪語する。
巨人が臭いで村の場所を特定したとも考えられるので、村ではいつもどおりに食事を作らせる。
巨人以外の種族が斥候として動いている可能性もあるので、
ハーピーには念入りに偵察を行わせ、普段みない獣や鳥がいないかも念入りにチェックさせた。
落とし穴に関するドワ子の発言は的確だった。ドワ子達は採掘用に土魔法を開発しており、
魔法を使ってさくさく穴を掘っていく。硬い鉱山に比べて、ただの平地は余裕しゃくしゃくだ。
第3候補をどこにするか考えるが思いつかなかったので、止めた。
ハーピーの報告では、前回とまったく同じ道を同じ様に歩いており、
斥候や誘導する他種族はみあたらないとのことだった。一応、巨人の中にリーダーらしきものはおり、
その巨人が他の巨人を先導しているようだが、その巨人も賢いようには見えないとのこと。
そして、巨人はものの見事に落とし穴に落ちていった。
落とし穴の中には当然ながら、串刺しになるように杭を配置している。
巨人に有効かと弩も、穴の上から撃ってみたりした。
こちらの損害は1回目の侵攻時に奪われた食料等のみであり、人的被害のないままに巨人200を屠ることができた。
圧勝である。
と、喜んでいたら、急使のハーピーがやってきた。
西方の騎馬隊がくるにはまだ余裕があったはずだがと、思いつつ手紙を読む。
「敵に砲あり」と短い文が書かれていた。
俺は急いで西方戦線に移動することにした。
北方はとりあえず、ドワ子に任せておけばだいじょうぶだろう。
任せることのできる人材がいるかいないかが今後重要になっていくだろうと、敵の巨人のリーダーの死体をみつつ、
8人ほどのハーピーがたらすブランコのようなものに乗って、俺は西方戦線に移動していく。
敵の砲はなにがなんでも無力化しなければならない。
西方戦線の作戦の骨子は、安全な場所から、敵騎馬隊に遠距離攻撃をするというものである。
敵を向かい撃つは、領境を越えて、山地に簡易築城した陣地だ。
騎兵の突撃を防ぐ柵が肝である、これを砲で破壊されては、重騎兵の突撃を防ぐことはできない。
領内の森林部分でゲリラ戦を行っても良いが、そうなると、山地にあるドワーフの村を放棄しなければならない。
北方で巨人に勝ったとはいえ、北の村の財産は敵領内に運び込まれている。
ここで西の村まで放棄するのはかなり痛い。
ハーピー達には、事前に何かでかいものを飛ばすような装置があったら急いで知らせろと伝えていた。
砲の外観を絵に描かせると、回転して石を飛ばすカタパルトだとわかる。
が、それでも弓より射程は長いだろう。数は全部で4台。敵は軽騎兵を走らせ、こちらの陣地の場所は把握
しているとのことだった。
ハーピーも発見されており、すでにカタパルトの周囲には護衛の弓兵がびっしりいるとのこと。
敵はこの陣地を迂回するコースはとっていないとのことだ。
カタパルトがあるから陣地破壊をする自信があるのだろう。
迂回してこちらの領内に入れば、こちらもそのまま敵領内に侵攻するだけの話でもある。
進行隊形から今回は落とし穴は通用しまい。もっともカタパルトという時点で
かなり安堵もしていた。航空戦力たるハーピーを用意しておきながら、
準備していないわけがない。もちろん、投下兵器である。
今だ火薬の開発に成功はしていないが、酒の生産には成功している。
酒といえばドワーフ、ドワーフいえば高アルコールの酒、高アルコールの酒があれば火炎瓶の作成は容易である。
ドワーフ達は嬉々として高性能の蒸留設備を完成させており、度数70を越える酒の量産は完了している。
そして、ハーピー達には、エルフが誇る長弓の射程外からの投下訓練を既に行わせており、
はっきりいって鉄製の砲でないことを知った瞬間、勝ったと思った。
巨人に使用しなかったのは、巨人の対空能力が未知数であるからだ。
後はどのタイミングで投下作戦を行うかだ。
できれば巨人達のように敵騎馬隊は殲滅したい。はっきりいって俺が今後とれる侵攻方向は西方しかない。
ここで殲滅したら、このまま一気呵成に進行しちゃってもいいくらいだ。
が、作戦はとくに思いつかなかった。娘達の損害を無視して良いならいくつか作戦はあるが
その作戦を実行に移す胆力というか気力というか覇気がなかった。
北方での戦いでこちらの被害がゼロだったのもある。
ここでの戦いでも被害ゼロで済ませたいと考えてしまった。
というわけで、ハーピー隊には、目標を捕らえやすい開けた地で、まず、油の瓶を投下させた。
この時点で敵はカタパルトから離れる。敵も愚鈍ではない。そして、高硬度から火炎瓶を、投下し
カタパルトの破壊い成功した。
で、現状、お互い手詰まりで対峙しているわけである。
ハーピー隊に輜重物資の攻撃はまださせていない。できれば貰いたい。
もらえないとわかった時点で火炎瓶の投下である。
ハーピー隊は日中の視力向上と引き換えに鳥目のため、真っ暗になる前に輜重物資に攻撃するか悩む。
闇夜に紛れて移動されたらお終いだ。悩みつつ相手の陣容を確認する。
こちらは日の丸の旗を掲げているが、相手はこれといって旗を揚げていない。
相手が地球人なら気づくだろうと日の丸を掲げている。
なんの応答もないなら違う世界の住人だろう。
長篠やクレシーの戦いのように突撃もしてこないか。
火炎瓶を投下しても騎兵ならばさっさと逃げてしまうだろう。
重騎兵といえどもかなりの速度はでる。当てにいって高度をさげれば弓の餌食だ。
敵も手詰まりだろう。巨人の応援でもまっているのだろうか。
巨人を壊滅させた証拠に首か耳でももってくるべきだったか。
などと考えていると、ついに日が暮れてしまった。新月というかこの世界、月がないので毎晩かなり暗い。
一応、星のような煌きはあるが、配置が毎日異なる。遠洋航海技術の開発は無理かもしれない。
敵陣に動きがあるのが音でわかる。輜重隊を逃がし出したか、もったいないことをしたと思っていると
夜目の利くエルフ隊が一斉斉射を始めた。
それに続いて、コボルト隊も斉射を始める。
薄暗い森の中で暮らすだろうし、なんとなくという気持ちでエルフには
高精度な夜目の能力を与えておいた。が、コボルト隊は犬っぽい外見の割りに、夜目は人並である。
ドワーフは鉱内がメインの活動場所だ。当然ながら夜目が利く。
敵の黒一色の兵装がまさかこんな複線とは思わなかった。
ついでにおれも夜目はほとんど利かない。領主の能力は時間と領地の発展によって上るといわれている。
一騎当千で領主無双といった行動もとれるとのことだが、不死身というわけではない。
領主といえども、魔術を開発しなければ魔法は使えない。
この開始時期で、領主無双する領主は少ないと考えている。なにより領主一人では占領ができない。
無双する領主からこちらはひたすら逃げていればいいのだ。
なので、俺の能力は繁殖方面に伸ばしている。自然と伸びたのではなく、伸ばしたのだ。
今では、一日に、100人くらいは相手にできるぜ。
などと考えつつ、近場にいるエルフ娘に、コボルト隊の弓が敵に当たっているか確認すると、
コボルト弓隊担当の正面柵に騎兵が突撃してきた。かがり火に照らされているので、
なんとかコボルト槍隊が応戦している。
ドワーフ工兵隊が、ハーピー対から火炎瓶を受け取り投擲を開始する。
小さい体ですごいパワーだ。火炎瓶は100メートル先くらいまで飛んでいく。
てか、誰も特に指揮していないのにすばらしい連携だ。
俺なんて、300メートルは離れている柵に、漆黒の重騎兵が取り付いたのをみて少しちびってしまった。
娘達は肝っ玉が据わっているのか、誰も恐怖にかられることもなく、もくもくと戦っている。
ドワーフ達が位置を指示しだして、コボルト弓隊の矢があたりだしたという。
ドワーフ特性の柵は頑丈であり、コボルト隊の槍は敵騎兵の槍よりも長い。
ハーピー隊の魔法で肉薄してきた敵軽騎兵の矢を防ぐ。
最初の突撃で何名かの負傷者は出たようだが、死者はいないとのこと。
10数名いるナビの娘達が治療を開始する。彼女達は回復魔法などを日ごろ研究しているのだ。
一度始めた突撃を止めることは難しい。こちら夜間戦闘の準備をしていたと気づいても
最早、止めることはできない。1300騎の突撃は柵を突破することなく終わる。
生き残りは100騎に満たない。追撃するか悩む。主力の重騎兵1000を囮にしての作戦はないとおもうが
ここまで死者ゼロである。ケチを付けたくなかったので、追撃は指示しなかった。
西方戦線での作戦も終了とした。
日が昇ると、敵の死体しかなかった。やはり、輜重隊は逃げてしまったようだ。
死体を漁るのは気が引けたが、鎧の構造や製鉄のレベルを知りたい。
というか既にドワーフ娘たちが嬉々として漁ってる。
死体の顔を覗き込むと、まず血の色が緑だった。破瓜の時に流れる娘達の血の色が俺と一緒で赤いことから
想像するに、西方の領主はまず地球人ではないだろう。気が楽になる。
死体の顔だちは目が2つ、その他の特徴もみていくが、構造上はほとんど地球人とかわらなかった。
血の色が緑という以外の違いはなかった。
このままでは、戦費分の収穫がないので、侵攻計画を練る。
各20名の計50部隊、総勢1000名のハーピー隊を偵察にだす。
800名のコボルト弓兵は、輜重隊に編成しなおし、西のドワーフ村や、エルフ村から食料を運ばせる。
最終的には領府からも食料を運搬しなければならないだろう。
この土地はなんとなく、ドイツっぽいのでドイツと呼称することにした。
南北逆だが、配置的にはドイツ的位置だ。
周辺領主の動向を探らねば、占領政策を策定できない。
南は海であり、やや南西よりの先に半島がある。この半島が、船で侵攻してくる可能性を考えるに
その可能性は低いだろう。
島である味方の領地、ことらも面倒なのでイギリスと呼称する。イギリスとは
連絡をとりあっている。海峡は狭くハーピーが休まず飛べる距離だ。
イギリスは飛行種族ではなく、海洋種族の国家だった。人魚や魚人など両棲系の領民だという。
領主もカエルのような種族とのことだった。で、船なんかあんま必要なさそうな領民構成だが、
物資を大量に運搬できるので、やはり大型船を開発しているとのことだった。
周囲を海に囲まれて、かつ、最強の海兵種族を揃え、陸軍なんか養成せず、船の開発に傾注している領地で
いまだ、大型船の開発に成功していない。まず、半島から船で襲ってくるということはあるまい。
北方は我が領地から続く山脈が延びているが、標高はいっきに高くなり、夏でも山頂は白い。
ここを越えて攻めてくるとは考えにくいが、警戒はしておかなければならない。
何より、巨人族と騎兵は連携して攻めてきている。たまたまとは考えにくい。
わが領内を通って連携した形跡はない、となれば、あの真っ白な山脈を越えて連携したと考えるべきだ。
峠を越える道がないか念入りな調査が必要であろう。
ドイツからさらに西方には、大森林地帯がある。ここは無主の地とのこと。
以外と周囲に敵が少なくイージー難易度な状態で開始したんだなぁとも思えてきた。
ドイツは俺にちょっかい出さずに西の大森林地帯の開拓でもしてればよかったのにと思う。
周囲の状況が把握できたので、このまま占領作戦を継続していく。
領民よりは家畜の方が生産しやすい。大量の馬と牧草地帯は無抵抗で占領していく。
鉱山や工房地区は抵抗が激しそうなので、包囲して終了。
敵の領府の包囲も済んでいる。
ドイツの領府はがっちりとした石組みの砦だった。
開始からの期間を考えると、よく作成できたものだと思う。
疑問に思ったのは、農耕地がほとんどなかった点だ。
飯を食わなくても死なない種族なのか、霞を食べる種族なのか。
それだとかなりやっかいだ。補給網はしっかり構築できたが、じりちんである。
嫌な予感がして、港湾施設をみにいく。
浜しかない。しかし、バイキング船のような喫水の浅い船なら、これで十分であると聞いたことがある。
味方が開発に成功してないから敵が遅れをとっていると考えてよいわけがない。
そもそもイギリスのカエルさんが開発しようとしているのは喫水の深い船だ。
カエルさんもおれも船っていったら大型帆船だよねぇって頭だが、バイキング船で悪いわけがない。
急いでハーピー偵察隊を編成しなおし、爆撃隊を編成する。
間一髪で間に合った。半島から20隻からなる大船団が出航していた。
間一髪というかベストなタイミングだったかもしれない。常時ハーピーを偵察に出していれば
その存在がばれ、船を出さなかったかもしれない。
本日の天候は、「天気晴朗ナレドモ波高シ」だった。
帆もある船だが、風はほとんどないので帆がはらむこともなく、
波がたかいので、櫂は空中を漕ぐ。船の速度は遅く、ハーピー達は余裕を持って投下することができた。
1隻に50人は乗っていただろうか。1000人の大部隊はあっというまに火達磨になり
海の藻屑となって消えていった。その中には領主もいたようだ。
領主の死によって大きな力を得た感じがわかった。
その領主の土地を占領できないのが残念である。
ドイツはこの船団から食料を輸入していたのだろう。
攻城戦にもどった。もちろん、海上の偵察は引き続き行う。
ドイツ側が砦内に抱える食料の量は未知数であるが、わが優秀な工兵隊が敵の水脈を遮断することに成功した。
夏季も終わろうとしているが、まだ、日中は暑い。
水脈遮断成功から、3日後、降伏勧告の申し出があった。
受諾するか悩むところである。はっきりいって、緑の血を流す生物を殺すことに罪悪感はない。
何より、領主を殺すことによって得られる高揚感というか、体内のエネルギーの上昇というか、快感というか
表現しようがない、それが凄まじかったのである。
一度、それを味わってしまった以上、最早、領主を見逃すという選択肢はなかった。
領民の生命、財産は見逃すが、領主は割腹と返答すると、領主は最後の突撃を敢行してきた。
すでに、砦は三重に柵で囲み、深い堀も掘ってある。ドイツ領主は包囲網を突破することなく
コボルト隊の槍衾に貫かれて死亡した。残念だったのは前回より領主殺害で得られる高揚感が少なかった点だ。
1人分から1人分の吸収と、2人分から1人分の吸収では伸び率が違うといった感じだった。
砦内を調査していると、宝玉があった。これはなんだと生き残った騎兵に聞く。
遠方の領主とこれで、連絡を取り合っていたという。
なるほど、これで、巨人族や、バイキングがタイミング良く攻め込んできた理由がわかった。
さらに騎兵を痛めつけると、これを使用して共同研究も行っていたという。
経過時間の割りに技術進歩が早いわけである。
この宝玉自体はどうやって手に入れたのか気になった。ズルなのかそれとも開始時に言えば貰えたのか
神に確認をとりたいが、神と更新をするためには、100人を生贄に捧げなければならない。
とりあえず、開発班に敵の技術継承をさせる。
言語が異なるため、けっこうな日数がかかった。どうやって聞き出したかは聞かなかった。
この世界にジュネーブ条約はない。とりあえず、技術継承が終わった時、ドイツ領の生き残りが100人いなかった。
この結果に、開発班はかわいい顔でしまったという表情をして反省していた。
が、半島からバイキングの難民が流れてきた。
船の技術も聞き出すことができ、前の生き残りも合わせて、今度はちょうど100人生き残っていた。
ドイツや、バイキングの領民は全部領主のクローンだった。
ちょうど100人しかいないから、生かし続けるという選択肢はない。
我が領の娘達からは、キモイと嫌われていて、早く生贄にすべきといじめられている。
おっさんだからか、血が緑だからかはは聞かなかった。少し同情した。
聞き出す、技術情報もなくなったので、こいつらを生贄にして神を召喚した。
幼女神は寝転がって、日本の低年齢向け少女コミックを読んでいた。
目があった瞬間、顔を真っ赤にして、消えていった。
100人が無駄になったと気づき愕然としていると、厳かな音楽が鳴りだし、出るとこは出た妙齢の女性が出現した。
「何用であるか」と気取ったことをいったので、つぼにはまり、おもいっきり笑い転げてしまったら、
涙目になって、また消えてしまった。
心の底から、笑ったことを謝罪したら、幼女の姿でまた出てきてくれた。
腹を数回殴られたあと、ジャンプの続きが読みたいとお願いしたら、読み終わったりぼんならくれるとのことだった。
「次からは、日の出から正午の間に呼び出すのじゃ」
「わかりました。」じゃってとこで少し笑顔になったら、また、腹を殴られた。
「その語尾、かわいいですよ」といったら顔を真っ赤にして照れていた。
「ではの」といって帰ろうとしたので、慌てて呼び止める。
いくら罪悪感の湧かない連中といえども、100人も殺してこれで終わるわけにはいかない。
神に、ドイツで手に入れた宝珠を渡す。
「ほー、きれいな玉じゃな、殊勝である。が、わらわは甘いものを貰ったほうが嬉しいのぉ」
と、的外れなことを言い出すので、宝珠について説明する。
開始の初期段階からこのようなアイテムがあるのはズルではないのか?
ズルでないならこちらも同様のアイテムは貰えるのか聞いてみた。
「ズルといえばズルといえる。が、開始前に同じ出身地のものが、同じ陣営内で事前に示し合わせ、
開始直後に自らの知識と技術で通信手段を作成し、それを使用して連携を取るのは禁じられてはおらぬ。
この玉は、こやつらの世界では比較的簡単に作成できるものじゃ。お主の世界の鉱石ラジオのようなものかの。」
さすが幼女であっても神である。その博識ぶりに驚くと、すごいドヤ顔になった。
「お主も、前世界の知識を利用して、火炎瓶を投下しておる。こういった前世界の知識の利用はズルではなく、
当然、というよりこの戦いの前提になっておるのじゃ。誰を領主に選ぶか神の采配の見せ所といえるの。」
初詣で祈願した俺を即効召喚しておいて、采配も何もないような気もするが、
それに、日本人同士で事前に打ち合わせくらいさせて欲しかったなと思っていると。
「ああ、わが配下の日本人はお主だけじゃよ」
顔にでてしまってたか。
「わらわの姉神が10人ほど召喚していたので、試しにわらわも主を召喚してみたのじゃ。
わらわはお主のような無礼なものが好きではないゆえ、お主以外の日本人は召喚せぬかった。」
「なるほど」
とりあえず、俺以外に10人の日本人がいるのか。
「そういえば、聞いておりませんでしたが、お神の直接配下の領主は何名いるのでしょうか?」
いまさらそんなことを聞くのか、こまったやつだという表情をしながら、
「お主を入れて、24名じゃ。現在、わらわが、全神中単体で最大の勢力でもあるし、わが陣営も
5陣営のなかで最大である。勝って当然の戦いゆえ、まぁ、お主は気楽にいくがよい。」
おお、そいつは良いことを聞いた。
「へへー、ありがたや」といって、頭をさげる。生きて日本に帰れそうだ。というか
このまま寿命まで、領主でいられそうだ。
「当然じゃ。そうだ。わらわを呼ぶのにいちいち100人も殺すのは忍びない。
というかルールを作成した中立神は冗談のつもりだったようじゃ
今後はこれに呼びかけるがよい。」
といって、先ほど渡した宝珠に口付けをし、祝詞のようなものを唱って宝珠をおれに渡してくれた。
おいおい冗談で100人も殺させたのかよと思いつつ、
「家宝に致します」といって宝珠を受け取る。
幼女神は今度こそ帰るといった感じで、「じゃぁの」といって消えていった。
数日後、宝珠から聞きなれぬ声がしだした。技術情報を聞き出していた娘がこれは
ドイツ領で使われていた言語であるという。意味はなんとなくわかり、
呼び出ししているようだとのことだ。
翻訳機能でもあればいいのになぁと思うと、ことば急に意味を持ち出した。
「カイン、カイン、聞こえるか?こちらアベル」
「カイン、カイン、聞こえるか?こちらアベル」
どうやら、呼び出しているようだ。試しに、
「アベル聞こえている。こちらカイン」
と答える。
「おお、生きていたか、しばらく連絡できず、すまなかった。
巨人を山脈越えさせた後に、急に周囲から攻め立てられて、逃げ回っていたんだ。
やっと、落ち着いて、通信球も再度作成できたよ」
「おお、そうだったのか、こちらこそ助けにいけずすまなかった。」
「いいってことさ。カインも篭城していたんだろ。セトの救援が間に合ったようで
よかったよ」
「ああ、本当にセトには感謝してもしきれないよ、おかげで盛り返して、敵の領地を占領することができた。」
「なんだって、じゃ、私の北の領地は今、カインの領地ってことかい?」
「そういうことになるね、今度、遊びにおいでよ、いや、俺の方から遊びにいこうか?」
「なにいってるんだい、こっちきたって何も遊べるものはないよ。愚かで鈍い巨人しかいないんだ。
村どころか、俺が生活するための家すらないよ。占領した領地には何かいいものはあったかい?」
「いいものだらけさ、かわいい女の娘もたくさんいるぜ。」
「おお、どうしんだいナルシストの君が女の娘を勧めるなんて、セトに強引に自分のクローンを勧めていたじゃないか
そんな君が、女の娘を俺に勧めるなんてびっくりだよ」
「ははは、会話の流れってやつさ。いらないなら俺のクローンで歓迎するよ」
「待て、待て、待て、誰もいらないなんていってないだろ。軽い冗談さ。歓迎はぜひ女の娘たちで頼むよ」
「わかった、わかった、じゃ、もうすぐ雪解けの季節だ。峠が通れるようになったらおいでよ」
「おいおいアベル何をいってるんだい、この程度の雪なら対したことないよ、明日、早速そちらにいくさ」
「カイン、どうやって、この雪の中をくるんだい。」
「そんなの巨人の背中に乗っていくにきまってるだろ。」
「巨人なんかで来たら、女の娘達が怯えてしまうよ」
「だいじょぶさ、巨人は移動用の1頭だけしかつれていかないよ。
前の北伐で、200頭もの巨人が戻ってこなかったんだ、やつら頭がわるすぎるよ
あの後、残った50頭の巨人で、三方面の敵と戦ったんだぜ。めっちゃ大変だったよ。」
「ははは、200頭の巨人なら俺のことを助けてくれて、さらに西の方に移動していったぜ」
「糞ったれ、なんてこったい、その200頭がいなくて俺がどんなに苦労したことか、
だけど、カインの助けになっていたなら、まぁ、よかったよ。じゃぁ早速そちらにいく準備をする。またな」
「待ってるよ、気をつけて来てくれ」
都合のよすぎる通話内容だった。そもそも、翻訳機能はいつ付いたのか?
って女神が口付けした時に決まっているか。
この状況を利用して良いのかも悩み所だ。ルール違反にならないだろうか?
と悩むが、そもそもどんなルールがあるのか知らない。
俺達領主は、生きるか死ぬかの状況だ。通信機が敵に盗まれ利用されるといったことは当然想定すべきことだ。
想定してなかったら、そいつがアホなだけである。戦国の世なればアホは死に領地をとられるしかないのだ。
今の通話だって、ところどころに符号をいれ、俺が本当のカインか偽者か確認なんか容易にもできた。
バイキングの領主名がセトとも限らない。通話終了の〆の符号もあったかもしれない。
向こうも偽者としって悪乗りしていた可能性がある。
が、せっかくなので、巨人一頭で来たときように捕獲準備をする。
陽動作戦かもしれないが、領内の部隊配置を変更する必要性はないだろう。
200頭の巨人を屠ったのは昨夏だ。まだ1年経過していない。この領地周辺は四季がある。
いくらなんでもそんな短期間でさらに200頭揃えることは無理だろう。
50頭分の落とし穴なら、峠を移動しているのを確認してからでも掘ることは可能だ。
500名のドワーフ隊と50名のハーピー隊で相手をすることにした。
領主に暴れられてもこまるが、その時は俺が相手をしよう。
翌日、1頭の巨人が南下しているのを確認する。
さらには、背中に輿を背負い、1名が座っていることが確認できたという。
俺は、爆弾の可能性をあるという考えに至る。最早、それくらいしか最悪の事態は想定できない。
のこのこ近づいたところで、ボンだ。なので、通常よりもかなり深い落とし穴を作らせた。
進行方向は前回、前々回と同じと予想を立てる。
山側で、村から一番遠い場所に掘らせた。爆破対策だ。
前世界の知識があり、魔法のような通信機器を作成できる種族である。
魔法のような爆破物を作成していてもおかしくない。
巨人は予定通り落ち、その後、領主が死んだことによる力の上昇を感じた。
しばらく様子をみていたが、爆発することはなかった。死体を動かすと爆発するかもしれないので、
確認したりはせず、そのまま埋めてしまった。
うむ、あっさりしたものである。
この後、北方4領地への侵攻計画し実施した。
巨人の愚鈍さを考えると落とし穴に逐次誘導することは可能と考えられた。
また、先の通信内容から、巨人によって三方向の領地の兵数は減っていると予想された。
そして、大量の馬をドイツから得たことにより、エルフとコボルトの騎兵化が進んでいた。
優秀な将官クラスの娘達も育っていた。
この機会を逃す理由がなかった。
バイキングから得た造船技術は、イギリスのカエル卿に伝えてある。
旧バイキング領の半島勢力への侵攻を依頼し、カエル卿は承諾してくれていた。
南方に憂いはない。
北方での巨人との交戦はなかった。ここの領主を倒したことによって、私に服従するようになっていたからである。
だから、バイキング達は私を新たな主と考え、私の下に逃げてきたのかと気づいたが、最早遅い。
私の下に来たわりには反抗的だったしね。
巨人族は、愚鈍だからか本能に強く従い、極めて従順である。
巨人は北方領地中央付近にある、採石場のような所で石の中から誕生する。
皮膚は岩のごとく硬く、近距離でなければエルフの長弓をもってしても貫通しなかった。
わずか50頭で、三ヶ国の侵攻を防いだのは伊達ではない。
しかしながら、産業はまったく発展しておらず、われわれが着いた時には、半数以上の30頭が
食料不足から餓死を防ぐために半分石化して休眠状態となっていた。
早速、予備の馬と輜重隊の食料が巨人に供された。
本土、北方領地からさらに北には半島領地があり、これをイタリアと呼称することにした。
最初に所有していた本領地をトラシア、本領地から北の領地はブルグンドと呼称した。
ブルグンドの東、トラシアの北東にも半島領地があり、そこはイベリアと呼称し、
ブルグンドの西の領地をユーゴと呼称し、3領地侵攻計画を練る。
今回もわが精鋭、ハーピー隊を偵察に出し、三ヶ国を調査する。
三ヶ国侵攻軍は以下である。
ハーピー隊1200名を各400名にわけ、3個中隊
エルフ隊200名1個中隊
元対ブルグンド方面に配置していたドワーフ隊500名を各250名に分け2個中隊
コボルト隊2000名は、輜重隊800名、槍隊800名、弓隊400名に分け、
これをさらに200名からなる中隊にわけてある。
全員を騎乗させている。但し、騎乗戦闘できる固体は少ない。
ドイツ守備隊には、ドワーフ200名。トラシア守備隊兼各地との連絡係りににハーピー300名を配置し、
衛生隊兼本部要員にナビ一家20名を配置した。
少数の配置として、魔法開発要員や装備開発要員はそのままであり、輜重隊には一部農耕を継続させている。
巨人族は25名づつにわけ、戦闘方面ではない2領地の備えに置く。
巨人族はさらに10名が参戦可能であった。
イベリア領は、森が多く、領民は小柄で弓を主に使用していた。
イベリア領の北には海峡がありその先の領地をモロッコと呼称する。
モロッコは久しぶりの同陣営だった。モロッコの東は海であり、北は砂漠地帯で無主の地、
モロッコは現在西の領地と交戦中でここをアルジェと呼称することにした。
モロッコの祭神は幼女神ではなかった。
イタリアは山間部が多くここも鉱山が主のようだ。重装歩兵が主力。ユーゴと同陣営である。
ユーゴは平原が多く農耕が主のであり、騎兵が主力だ。イタリアの鉄で重装かが進んでいる。
調子にのって巨人に突撃し、壊滅する姿が目に浮かぶ。
ユーゴのさらに西の領地も同陣営だった。順調に攻略できても地続きの攻略はユーゴで終了
といった感じになりそうだ。ユーゴの西の領地をギリシャと呼称することにした。
ギリシャは現在、北と西の領地と交戦中らしい。
イベリアの森林部に侵攻すればゲリア戦をしかけられ、被害甚大であると判断し、まずイタリアに侵攻することにした。
イタリアに侵攻すると、イタリア軍はすぐに砦に篭ってしまった。
砦の石組みはドイツに比べれば児戯に等しい荒いものであったが、山を元にして建造しているので
脆弱ということもなかった。
砦には大弩も設置されていたので、巨人族により強行は行わなかった。
砦を囲み、巨人に付近の岩を投げあせていると、ユーゴからの援軍が船で来た。
ユーゴ側に配置した巨人を突破する兵力はなかったといえる。
喫水の浅い櫂船であり1本マストの船だ。バイキング船というよりはギリシャ船といった感じの船である。
未だ艦というほどのできではない。
大きさはバイキング船と同じくらいだ。人型なら50名はのっているといえる。それが2艘きた。
100名ほどの増援で、何ができるかわからないが、みすみす上陸させるわけにもいかない。
ハーピーによる火炎瓶の投下を実施する。
たちどころ火達磨になり、船が沈んでいく。バイキング船との違いは、
春前なのに水温が高いのと、陸が近い点か、半数が上陸に成功した。
泳ぎついたところにエルフ隊が弓を射掛けると、魔法で防がれた。
攻撃魔法で反撃されたらヒヤリとしたが、そこに巨人隊が投石を敢行する。
巨人がなげる石のサイズは人の頭ほどあるだろうか、
敵の魔法部隊はその石も防ぐが、さすがに弓と石を防ぐので精一杯のようで
反撃の攻撃呪文は打ってこない。固まってしまったところに、
再度、ハーピー隊が火炎瓶を投下する。火炎瓶の炎足元から術者をあぶり、
魔法の防壁を解除させる。そして、その隙を矢と石が襲う。
何名かは再度海に逃れたが、上陸した大半を殲滅することができた。
人魚部隊がいれば海に逃げた者達を追えたな。創設を検討する。
ドワーフ工兵隊は今回も見事水脈の遮断に成功する。魔法も使用して井戸水がでないようにしているらしい。
井戸があると水甕に水を蓄えたりはしないものである。
3日後に降伏の使者がきた。雨が振る前に決着をつけるかと考えると
ハーピー隊が魔法で膜をはり、雨水が砦内に入らないようにできるという。
ドワーフ隊も地面を伝って雨水が入らないように陣地構築できるというので、
降伏を認めなかった。
結局、雨も降らず、二週間が過ぎた時に領主が死亡した感触を得る。
巨人族に門を破壊させ、砦内に侵攻した。
一部領民はまだ生存していたが、歩ける状態ではなかった。
技術情報が欲しいので、介抱させる。砦内の兵数は300とけっこう多かった。
内生存は10名だった。水がなくてもけっこう生存できるものだ。
まぁ、こいつらは地球人ではないから地球の常識は通用しないか。