スペース”ファンタジー”~ファンタジーなんだから何やったっていいんだよ!~
私にとってのファンタジーの定義です。
ファンタジーといえどもという人がいるのもしっています。
距離1600光秒で、麾下の艦隊に砲撃を命じる。
ほぼ斉射と言って良い発砲だ。見ごたえがあり実に壮観だ。
弾種は、高密度金属の質量弾だ。光速の千倍まで加速されている。
俺はアホなんでよくわからんが、同じ地球出身者の中には光速を超えることに驚くやつらがいる。
加速すりゃ、どんどん速くなるにきまってるだろと思うんだけどね。
光速超えなきゃどうやって他天体に行くんだとも思う。
そういえば、他天体に行くに当たってウラシマ効果がどうのこうのという輩もいたっけな。
一応ウラシマ効果のような現象が起きることは、帝国の科学でも確認されている。
しかし、上限があることも証明されており、理論値上の上限は0.2秒とのことだ。
光速の300倍で3年間航行した実験があり、その時の結果は0.007秒の差が生じたと観測されている。
はっきり言って気にすることではない。
地球というより日本は、西暦2013年3月3日に第三種接近遭遇を果たす。
葉巻が似合うとある財務大臣主導のもとあっというまに星間条約が結ばれ、
あれよあれよという間に星間交流が進み、
就職活動に失敗し社畜になれなかった漢達が、星々に散っていった。
俺もそんなうちの一人だ。
俺の仕事は宇宙怪獣の駆除である。
所属は帝国外宇宙軍外人部隊だ。契約年数が300年とすんげぇ長いが、
支給品のすごさに迷わず契約した。
満期時には帝国市民権も得られるし、在隊中に無料で不老化手術も受けられる。
支給品は、1個自動化恒星軍だ。
運用できるように強化手術もされる。まぁ、この時に一緒に不老化手術もしてもらうわけだ。
太陽の3倍の大きさの要塞1個、木星サイズの要塞6個を基幹とし、
月以上ガニメデ未満のサイズの衛星級兵器を50個、その他に資源採取用の自然天体が支給される。
月より小さいサイズの兵器に定数はなく、あまっている自動化艦隊が適当に支給された。
衛星級以下の兵器は恒星級要塞内の工場で好きに作成、改造もしていいことになっている。
衛星級は定数をある程度守らないといけない。55個を超えたことがばれると監査対象になる。
自然天体の運搬方法はおいおい語ろう。
すごい量の兵器を一個人、それも外国人に支給することにはびっくりするが、
宇宙に進出し、全部自動化できる技術があるとたいしたことではないらしい。
最初は、人型サイズのロボットを、そのロボットでもっと大きなロボットをと
どんどん雪だるま式に作成していけばいいだけとのことだ。
今では太陽の23倍くらいのサイズの工作機械がけっこうな数あるとのこと。
それより大きい工作機械も需要があれば簡単に作れるがさすがに需要がないので作らないらしい。
材料だって、宇宙に自由に進出できれば取り放題だ。自動化された採掘船が無限のごとく採取してくる。
もっともこういった機械や製造物、資源は全部、軍が管理し、一般社会の経済や流通とは完全に分離している。
特に外宇宙軍は隔離されているといったほうがいいほど一般社会との接点は限られている。
なぜに巨大兵器を大量に支給されるかといえば、
宇宙怪獣の駆除には、それだけの兵器を支給しなければならないということになっているからでもある。
宇宙怪獣による惨事は帝国史上1回しかないが、
このたった1回が帝国臣民を恐怖のどん底に叩き落とした。
宇宙外延部を探査する無人船が、既知宇宙では発見されていない生物と遭遇する。
敵対性が認められなかったのか?油断したのか?マニュアルになかったのか?今となっては不明だが、
宇宙怪獣と遭遇した無人探査船は、そのまま探査船の前線基地となっていた有人人口天体に帰還してしまう。
残念なことに、探査船は宇宙怪獣に追尾されており、前線基地は宇宙怪獣に襲撃されてしまう。
被害者数は約5万人。地震等の天災がコントロールできるようになってからでは、最大の惨事であった。
学術用の前線基地であったため、犠牲者の大半が民間人であり、被害情報は速やかに広まる。
政府は情報をコントロールすることができなかった。
薬害や公害といった情報であれば冷静に判断できる社会にまで成熟はしていたが、
技術進歩によって寿命がなくなり、自然災害で死ぬこともなくなった社会にとって、
宇宙怪獣という新たな天災の情報は、社会を混乱させるに十分だった。
マスコミは既存の宇宙軍をはるかに凌ぐ新宇宙軍の創設を煽る。
無限に等しい宇宙に進出し資源の取り合いがなくなり、
惑星改造技術によって土地の取り合いもなくなった社会の軍は、
価値観の統一を目指す狂信者か、犯罪者しか相手にすることがなく、
宇宙怪獣を相手に戦うことはできないとマスコミに判断されてしまったのだ。
こうして、急ピッチで理論上は可能とされるが必要性のなさから
開発されなかった兵器がどんどん開発されていった。
これらの兵器は、いくら相手が宇宙怪獣とはいえ明らかにオーバースペックであった。
そして、探索未領域である宇宙外延部の脅威を取り除く外宇宙軍が新設されることになる。
宇宙怪獣のサイズは体長10kmから100kmのものが大半で、最大ともなると10000km級のものも発見されている。
魚型が多いが貝型、球型などさまざまなタイプがいる。
その数も多く、発見された中で最大の群れのサイズは、
半径100光秒の円の中にかろうじて納まるといった規模だ。
こういった情報は、臣民の恐怖を煽り、
臣民は巨大生物から守ってくれる安心感のある巨大な兵器を外宇宙軍に求めるようになる。
外宇宙軍側も、担当宙域には自然天体が存在しないことから、自然物との引力干渉を気にする必要がなく、
兵器サイズの制限がないため、どんどん巨大兵器を投入する。
人型携行サイズで、半径1万光秒の空間内のほとんどの物体を原子分解できる兵器があるにも関わらずである。
今では太陽よりでかい兵器が個人装備として支給されることが普通とされ、
それでも、一部の人権団体が兵の生命を守る装備として不十分ではないかと騒いだりする状態だ。
というわけで、俺には1個自動化恒星軍が支給されている。
おれ以外は全てロボットだ。どういうロボットかについてもおいおい語ろう。
今回の獲物は10km級の魚型宇宙怪獣が1万匹ほどだ。
ちなみに、帝国語の文法はほとんど日本語と同じなので、
けっこう帝国語は理解している。発音も日本語に近い。
しかしながら、ある理由から今でも日本語を使用している。
さて宇宙怪獣の駆除だが、戦略兵器はすぐには使用できない。
俺にも、半径1万光秒の空間内の物体を原子分解できる兵器は支給されているが、
この兵器の使用は制限されている。
それはなぜかというと、宇宙怪獣保護団体が五月蝿いからだ。
この団体の所為で、宇宙怪獣を駆除する前に敵性があるか?などいちいち確認しないといけない。
まぁ言い分も少しはわかるけどね。
宇宙怪獣は群れごとにまったく異なる生物である。
他の群れの宇宙怪獣と外見が似ていてもだ。
したがって、ある群れが敵性だからといって、
次の群れが敵性だとは限らないことに理屈上なる。
それどころか、会話がなりたち異文化交流ができるかもしれないのだ。
帝国法では、平和的に交流できる生物には生存権など諸々の法的権利が発生する。
外見は一切関係ない。であるから宇宙怪獣保護団体は、まず敵性かどうかの調査を求める。
この法律があるから、日本は侵略されず、外人である俺が帝国内で安全に生活できるわけだ。
したがって、俺としてもこの法律を馬鹿のように遵守することはやぶさかではない。
ゆえに最初の敵性確認はしっかりする。
しかしながら戦略兵器の使用が禁止されるのはけっこうめんどい。
宇宙怪獣保護団体にいわせると、群れの中にいやいや敵対行動を取っているものがいるかもしれなく、
そういったものまでいっきに駆除する戦略兵器の使用は許されないということらしい。
したがって、ちまちま砲撃し、たまに降伏勧告のメッセージをいろいろな方法で行い、
再度攻撃という流れになっている。
まぁ、めんどいといっても全部AIロボットが自動でやってくれるので俺はぼーとみているだけなんだけどね。
というわけで、戦略兵器の使用は戦術兵器での駆除が難しい場合や、早急に駆除しなければ帝国臣民の生命財産が
侵害される場合に限られている。
なので、今回もまず偵察機で近づき、宇宙怪獣保護団体が作成した判断機械を使用して敵性判断を行い。
必要十分なサイズと量である1km級の砲艦2万隻で砲撃を行っているのであった。
母艦から艦艇よりはるかに小さい高機動兵器を出撃させ、宇宙怪獣を爆撃するという兵器運用を今回はしない。
内宇宙軍でも高機動兵器を主とするか、砲戦を主とするか戦場状況と技術状況で何度か入れ替わっている。
今だ宇宙戦の正解はないのだ。
今回は、交戦距離が1600光秒と砲戦の最適距離であり、間に遮蔽物がなく、敵にこの距離での砲戦能力がないことから、
砲戦を選択した。スケール状況としては騎馬隊を一方的に打ちまくる鉄砲隊と思ってもらいたい。
完全駆除にはまだまだ時間がかかりそうだ。
宇宙怪獣の完全駆除が確認されたら砲撃を止め、宇宙怪獣回収艦で回収し研究材料や使用できる素材に分別する。
宇宙怪獣の体は主に鉄でできており金やレアメタルも含まれている。
資源天体は十分に与えられているが、かといって目の前にある素材を無駄にするのももったいない。
というわけで、暇つぶしにネットに接続する。
帝国の技術によって、どんなに離れていようがタイムラグなしで通信ができる。
ネット環境さえあれば俺はどこででも働けるタイプの人間だ。
軍務は24時間の拘束勤務なので、逆に任務に支障が発生しなけれ自由にネット閲覧できる。
というわけでネットに頻繁に接続するのでいまだに日本語を使用しているのだった。
駆除が終わったので、念のため周辺の偵察命令を出し、俺は要塞に戻る。
恒星級要塞の中は広い。タイプⅢ級要塞の半径は208万8千kmだ。
なので天井の高さが400km超える部屋なんかも余裕である。400kmといえばISSの飛行高度だ。
当然部屋の中に雲が浮いている。
こんな広い空間に人間は俺一人だ。少し寂しいがガマンできないほどでもない。
周りに人間がたくさんいるのに、
しゃべる相手は一人もいないという状態だった日本の時のほうが寂しかったくらいだ。
なにより、今の俺にはしゃべる相手がたくさんいる。
人型ロボットというかアンドロイド達だ。
外見は全部おれ好みの女の子にしてある。
これらのアンドロイドは全部地球人と同じ組成で製造されている。
体は普通のタンパク質などの肉体だし、骨格もカルシウムだ。
人気アイドルと同じ顔の子もいる。TV映像から外見の情報を読み取り、その外見になるように逆算して
人口遺伝子をくみ上げ、機械が製造してくれるのだ。
細かく想像すると少しグロイが、人口遺伝子の段階で脳は形成されないようにしてあり、
頭をかぱっとあけてAIユニットが入るように遺伝子設計されている。
当然、子供が知らなくていい夜の用途にも使用するので、卵巣部分も形成されないよう設計してある。
AI達は俺が気持ちよく会話できるようにプログラムされている。
これらは兵の慰安用に用意されたものだ。
AIの思考レベルは人間以上である。
帝国には、宇宙怪獣の権利を主張する団体があるのに、AIを保護する団体はない。
AIの人格に惚れると変態扱いもされるらしい。
もっとも民生用のAIのレベルはかなり低く設定されているとのことだ。
AIの反乱とか恐れているのかもしれない。
俺の方はある理由から反乱を恐れる必要がないので自由にAIのレベルを上げれる。
笑顔を基本に的確な表情をしてくれるように設計し、会話を楽しみ夜を楽しみ楽しく暮らしている。
はっきしいって300年間この生活を続けるのは余裕っていうか任期満了後もぜひ続けたいくらいだ。