ちょい設定変更版VRMMO
あとはキャラを動かしていくだけ。いつもそこで書き進めなくなる
俺は現在、「ザ・マネー」というVRMMOをプレイしている。
このゲームの一番の特徴は、ゲーム内マネーをゲーム終了時に運営が、
リアルマネーに換金してくれる点であろう。
ゲーム内のアイテム等をリアルマネーで売買するリアルマネートレード(RMT)と
似て非なるものである。
RMTは買い手を見つけないとアイテム等を売りようがないが、
ザ・マネーの場合は、買い手を捜す必要がない。
なんでもとある大金持ちがスポンサーになって、賞金をだしているそうだ。
無法地帯に突如現代人が投げ込まれたら、どういう行動を取るか
社会秩序はどのように形成されていくのかなど、
人の行動を観察するのが目的らしい。社会実験ってやつだ。
他の特徴として、ログインは一人1回しかできないというのもある。
ゲームの攻略情報をネットで検索させないためにだそうだ。
旧世紀のMMOと異なり、VRMMOはログイン中は攻略情報を
ネットで検索することはできない。
したがって、裏技等が発見されても、多くのプレイヤーに急速に広がることはない。
運営側も不具合を利用してゲーム内マネーを稼ぐことは問題ないと強気に発言している。
但し、不具合や不正な手段で再ログインした場合は、詐欺罪で告発するとも発表した。
基本システムはスキル制だが、キャラクターLVもあるし、称号システムを利用した
クラスシステムもある。
例えば、死者の蘇生を行うスキルは、「神の代理人」というレア称号がないと
取得できない。また、肉体破壊時に魂となって浮遊できる時間は
キャラクターレベルに依存する。そして、スキルを取得するために必要なスキルポイントは
キャラクターレベル上昇時に獲得なので、相手のキャラクターレベルが高ければ
多数のスキルを取得しているということがわかる。
また、キャラクターレベルはパッシブスキルの効果に反映される。
パッシブスキルというのは、自分の意思では発動できず、
条件が整うと発動するスキルである。自分の意思で発動できるスキルではないので、
スキルレベルを上げるのがかなり難しい。それゆえ、パッシブスキルの効果には
キャラクターレベルも反映される。
スキルの基本は、ファイヤーボールとか上段切りといった細かいものではなく、
剣術とか魔術とかかなり大枠の設定となっている。
剣術スキルを取得することによって、剣戟にMPを込めることができるようになり、
一振りでモンスターをぶった切れる一撃となる。剣の振り方は各自の自由だ。
毎回、毎回、同じモーションでは対人戦闘の時にあっさり避けられてしまう。
せっかく現実と区別ができないほどリアルな体感ができるVWMMOなのに、
攻撃モーションが毎回一緒では悲しい話である。
したがって、実際に武道経験のある人間が有利であり、近接攻撃スキルを
一切取得しないで、近接戦闘を行う者もいる。
ところが、魔法や遠距離スキルに関しては、スキルが無ければ一切発動しない。
いくら呪文を唱えても奇跡は起きず、リアルで弓の名手であっても、弓は一切飛ばない。
逆にスキルがあれば、どんなノーコンピッチャーでも100発100中の手裏剣の名手にもなれる。
それゆえ、初心者は魔法や遠距離スキルを取得し、ベテランは近接スキルを
取得する傾向にある。リアルでまってく運動しないピザデブでも、
VRMMOで体を動かす訓練をすれば、VR世界では常に武術の達人でいられる。
遠距離から単純作業で攻撃するよりは、肉体操作をして戦闘をしたほうが
楽しいからだろう。
スキルレベルが上がれば一振りに込めれるMP量は増え、
込めるM量Pが少なくても威力があがるようになり、詠唱の文言が短くなったり
弓の連射速度が上がったりする。
また、キャラクターレベルが上がったり、物理系の戦闘スキルが上がったり
バフで能力を上昇させると、戦闘時の体感時間が変化する。自分より能力の低い
相手より流れる時間をゆっくりに感じることができるようになる。
したがって、突如、脈絡もなく、時間の流れがゆっくりになった場合は、
奇襲攻撃を受けていると気づくわけである。
初期のVRMMOでは複数の人間が対人戦闘を行う場合、処理がうまくいかないこともあったが、
最新のVRMMOではまったく問題なく処理されている。
剣術や魔術といった大枠の設定になっているのは、基本スキルが多く、
上位のスキルになると、専門動作を必要とする必殺技っぽいのもある。
例えば「居合い」スキルは、武器を鞘に入れ、抜刀するという動作が必要だ。
旧世紀のMMOの多くが採用したキャラクターの生命力(HP)の表示はない。
VRMMOのダメージ判定はかなり複雑で、体感具合で判断する。
「ザ・マネー」の場合、ダメージのフィードバックはプロスポーツ選手のトレーニング用と
同等で最高ランクだ。このレベルのフィードバックはVRMMOではかなり稀であり、
痛みに耐え切れず、精神になんらかの障害を起こす可能性があるレベルである。
そのため、「ザ・マネー」は成人年齢以上しかゲームに参加できず、ゲームによって受けた
精神障害に対する損害賠償は受け付けない旨利用規約に記載されている。
同様にスキルの使用によって減る精神力(MP)の表示もない。
疲れ具合から、残り何回スキルを使用できるか、体験で覚えるしかない。
この当りは、昨今のVRMMOと同様だ。
PKメインのVRMMOだと、攻撃力や防御力といったステータスも
認識できない場合があるが、このゲームはその当りの表示はある。
ゲーム内マネーをリアルマネーに換金する賞金目的で、
大勢のVRMMO未経験者が参加することから妥当であろう。
ゲームサービス開始前にある程度の仕様が発表されていたことから、
攻略予想が行われた。換金可能額には限度が設けられていたが、
その限度額は天文学的金額で、仮に地球の全人口が参加しても、
一人当たりの限度額は1000万円であった。そして、総人口の
1%すら参加はしないであろうから、一人当たり10億円は
獲得できるなと、皮算用が始まる。
このことから、プレイヤーは互いに助け合いプレイヤーキル(PK)を行うのは
やめようという呼びかけが広まり、事前交流サイトが立ち上がって、
ゲーム開始前からギルドを作成する動きが広がった。
金額が金額だけに、既存のVRMMOからの流入予定者も多く、
俺が「ザ・マネー」の前にプレイしていたVRMMOでも、ギルド丸ごと
移住することになったものである。
ゲームの特徴は他にもあるが、あとはゲームを進めながらおいおいしていくことにしよう。
ゲーム内の時間はすでに10年ほどたった。リアルでは3日と8時間だ。
「ザ・マネー」のゲーム内の1年間はリアルの8時間で、サービス期間はゲーム内の1095年間、
リアルの1年間を予定している。1年間プレイヤー本人に栄養供給や排泄処理をしてくれる
特殊カプセルが設置済みの施設利用も格安で提供されており、
おれは実家を出て、その施設からゲームに参加している。
プレイヤーキャラには寿命が設定されているので、延命スキルやアイテムを取得しないと、
いずれで寿命でゲームオーバーとなってしまう。俺は運良く不老スキルを獲得できる
称号を取得できたので、その心配は最早ない。
ゲームは0年1月1日から開始され、1年は12ヶ月、360日、1日は24時間、
地域によって季節が有ったりなかったりだ。