ソフトデスゲーム
書き溜め中だけど、書き溜めてる間に似たもの書かれると悔しいので
下書きを順次UP
いよいよVRMMO「ザ・マネー」のサービスが開始した。
ザ・マネーの一番の特徴は、ゲーム内マネーを
ログアウト時に運営が、リアルマネーに換金してくれる点だ。
ゲーム内のアイテム等をリアルマネーで売買するリアルマネートレード(RMT)と
似ているが異なる。
RMTは買い手を見つけないと売りようがないが、
ザ・マネーの場合は、買い手を捜す必要がない。
なんでもとある大金持ちがスポンサーになって、
無法地帯に突如現代人が投げ込まれたら、どういう行動を取るかなど、
人の行動を観察するのが目的らしい。
ゲームの攻略情報を隠蔽するために、ログインは一人1回しかできない。
旧世紀のMMOと異なり、VRMMOはログイン中は攻略情報を見ることができない。
したがって、裏技等が発見されても、多くのプレイヤーに急速に広がることはない。
不具合を利用してゲーム内マネーを稼ぐことは許されるが、
不具合や不正な手段で再ログインした場合は、詐欺罪で告発するとのことだ。
他の特徴に関しては、ゲームを進めながらおいおいしていくことにする。
まず、キャラ作成上の特徴として、このゲームにはチート職やチート種族が存在する。
ユーザー発案によるオリジナル設定職や種族が実装されているのだ。
ユーザーのオリジナル設定には当然ながらデメリットもある。
プレイヤーキャラクター間の単純な強弱比較に採用されるキャラクターレベルの成長が遅く、
初期開始位置が一般キャラと異なり、一部アイテムや施設の利用に制限がある。
キャラクターレベルに関してカウンターストップ、つまり上限が非公表なため、
せっかくチートキャラを作成しても、圧倒的高レベルの一般キャラにPKされる
可能性がある。
また、世界地図の事前公開がないため、迷い続けて開始地点から永久に
他のプレイヤーと会えないという可能性がある。
キャラの死亡によるゲームオーバー時は、ゲーム内マネーを換金してもらえない。
決められた日時に、決められた場所でログアウトしなければ
換金はされない決まりになっている。したがって、チートキャラでいくら稼ごうが
ゲームのサービス終了までに、換金できない可能性があるのだ。
但し、デメリットの程度に関しては、一律ではなく、ユーザーオリジナル設定によって受けるメリットに
合わせて、デメリットの程度は反映される。
全採用にならない場合でも、部分採用する場合もあるとのことだったので、
採否は開発運営しだいと割り切って、勝手に採用水準を設定せず、ちょっとした小技から
荒唐無稽奇想天外な案まで、思いつく限りの設定を書きまくって送った。
その結果、採用されたのが種族「仙人」、職業「仙術使い」だ。
職業「仙人」でもいいじゃないかと思ったが、まぁ、開発の都合もあるのだろう。
キャラクターレベルが上昇した時に獲得できるスキルポイントで
スキルを獲得し、スキルの使用によってスキルレベルが上昇するタイプのゲームだ。
旧世紀のMMOの多くが採用したキャラクターの生命力(HP)の表示はない。
VRMMOのダメージ判定はかなり複雑で、体感具合で判断する。
このゲームのダメージのフィードバックはプロスポーツ選手のトレーニング用と
同等で、最高ランクだ。このレベルのフィードバックは
VRMMOではかなり稀である。
各国の成人年齢以上しかゲームに参加できず、ゲームによって受けた
精神障害に対する損害賠償は受け付けない旨利用規約に記載されている。
同様にスキルの使用によって減る精神力(MP)の表示もない。
疲れ具合から、残り何回スキルを使用できるか、体験で覚えるしかない。
この当りは、昨今のVRMMOと同様だ。
PKメインのVRMMOだと、攻撃力や防御力といったステータスも
認識できない場合があるが、このゲームはその当りの表示はある。
換金目的で、大勢のVRMMO未経験者が参加することから妥当であろう。
一応、他の種族のステータスを確認すると人間が基準になっていて、
エルフは知能が高い、ドワーフは力が強いといった風に定番の構成になっている。
外見が竜人のドラゴニュートに至っては、全てのステータスが
人間の5倍となっている。仙人は全てが人間の0.2倍だった。
ドラゴニュートはその分、寿命が短く人間の50年に対し、10年しかない。
仙人は初期から不老となっている。気になってマニュアルの寿命の項目を読む。
開始時にキャラ年齢を寿命より高く設定すると、ゲームフィールドに降下した
直後に死亡すると注意書きされている。
ドラゴニュートを選んで、実年齢が20歳だからと20歳のキャラを作成すると、
開始即、死亡となるわけだ。なかなか酷なゲームである。
他にもこういった酷なことがないか心配になり、マニュアルを隅から隅まで
読むことにした。
キャラの外見は基本的には作成時のままで、キャラ年齢の経過によって老けたりはしない。
但し、外見変更アイテムは実装されており、老化や若返りといった外見変更アイテムは
比較的容易に入手できるらしい。
デフォルトでは年齢は、寿命の20%に設定されており、そこから年齢を加算すれば
初期スキルポイントが増え、基本ステータスも上がり、年齢を下げれば初期スキルポイントや
基本ステータスは下がる仕様になっている。
全ての種族が0歳時の初期スキルポイント、基本ステータスは0とかなりシビアだ。
ドラゴニュートの場合、1歳時のスキルポイント、ステータスが2歳時の5%しかないので、
まず、2歳時からの開始となるだろう。寿命は10年だが実質ゲーム内の時間は8年間しかない。
長いような短いような時間だ。
このあたりをどう判断して、ドラゴニュートを選ぶかという当りも観察したいのだろう。
「ザ・マネー」のゲーム内の1年間はリアルの8時間で、サービス期間はゲーム内1095年、
リアルの1年間を予定している。1年間プレイヤー本人に栄養供給や排泄処理をしてくれる
特殊カプセルが設置済みの施設利用も格安で提供されており、
おれは実家を出て、その施設からゲームに参加する。
各種族の延命アイテムも実装されているとのこと、但し、獲得難易度は種族ごとに異なり
寿命が短いほど獲得難易度は上がるとマニュアルに記載されている。
ゲームは0年1月1日から開始され、1年は12ヶ月、360日、1日は24時間、
地域によって季節が有ったりなかったとのことだ。
俺は念入りに隅から隅まで、マニュアルを読み、キャラの作成を開始した。
仙人は不老だから、開始年齢を1万歳とかにしたら、すげぇスキルポイントが獲得できるのでは
と一瞬狂喜乱舞したが、201歳以上からは、初期スキルポイントもステータスも増加
しなかった。さらには、ご丁寧にも年齢を上げると開始地点の難易度が上がるとの記載まである。
まぁ、無難に開始年齢を200歳に設定しておく。残念ながら、スキルポイントを
無限に獲得はできなかった。それでも、標準種族に比べれば格段に多い初期
スキルポイントで開始できる。これはかなりうれしい。
ステータスに関しては、200歳時点でやっと人間のデフォルト年齢である10歳と同等になった。
種族、年齢と決めたら次は外観決定だ。
スキルポイント0で選べる外観はフツ面、消費して選べる外観はイケ面が多い。
ブサ面を選んでもスキルポイントは獲得できないようだ。
さらにスキルポイントを消費すれば、より詳細に設定できる。
このゲームは外観のリーチは、戦闘システムに反映されるので、
接近戦を専門に行う者は外観に拘るだろう。
筋肉量や脂肪量はステータスに反映されない。したがって、性差はない。
プレイヤー本人の容姿をそのまま反映させることも
できるが、反映させるにはスキルポイントを消費するようだ。
お金も絡むゲームなので、あまりメリットを感じない。
ゲーム終了後の出会いを求める場合には反映させた方がいいかもしれないがね。
性による性能差はないが、このゲームはフィードバック率が高いので、
本来の性でプレイすることが推奨されている。
生来もっていない器官のフィードバック情報は脳にかなりの負担を強いるからだ。
俺は接近戦を主体にする気もないので、消費0ポイントの量産型フツ面外観にしようと
思ったが、ランダム容姿を選択するとスキルポイントがごく微量だが増えるので、
ランダム容姿にした。このVRMMOは遊びじゃないからな。少しでも有利に
進めたい。
外観の次はいよいよ、初期職業選択、そしてスキル選択だ。
初期職業は、設定認証を受けた仙術使いを選ぶ。
仙人が仙術使いを選ぶとスキル獲得ポイントの低下や
ポイント消費の無い自動取得スキルが多いので、
悩む必要もない。
俺のスキル選択のコンセプトは、先制発見、先制攻撃、先制撃破であり、
できるだけ攻防一体の技を選んで、ポイント消費を抑え、
なにがなんでも、まずは生き残れるキャラを目指すというものである。
まず、索敵系のスキルをいくつか獲得する。仙術スキルの中には、式神スキルなども
紛れ込んでいる。開発には日本人以外もいるので、その変はあいまいなのかもしれない。
スキル説明を良く見ると、陰陽術でもペナルティ無しで獲得できる旨の記載があった。
一部の職業専門スキルは、他職でもポイントを多めに消費すれば
獲得できる。中には複数の職にまたがる専門スキルもあるようだ。
スキル検索欄に妖術と入力すると妖術もあった。
便利そうなスキルがあれば他職のスキルも獲得していきたい。
マニュアルによると、専門スキルの中には、他職が獲得できないだけでなく
スキル名すら閲覧もできないスキルもあるそうだ。そういったスキルを閲覧してしまうと、
職業が固定されて変更できなくなると注意が記載されている。
まちがって、閲覧して、仙術使い以外にならないように、職業は仙術使いで確定しておく。
遠距離攻撃と自動攻撃を主体に選んでいく。そして火力が高いスキルを数個選ぶ。
刀術スキルの一刀両断というバフスキルに着目する。”一刀両断対プレイヤー時、
キャラクターLV+スキルLVの相手キャラまでダメージの100%を与えることができる。”
というスキルだ。一刀両断なら、対モンスター時に同様の効果が発生する。
相手がモンスターの場合は、キャラクターLV+スキルLVx2と、対人より緩和はされている。
刀術スキルだが、切り属性の攻撃全てに反映されるので、使い勝手がよさそうだ。
このゲームは、相手のキャラLVが1高いと、与ダメージが10%軽減されるとマニュアルに記載されている。
したがって、10LV上の敵には通常攻撃でダメージを与えることはできない。
キャラレベルの上昇が遅いユーザーオリジナル種族なので、かなりありがたいスキルである。
バフスキルなので、使用すればしばらく効果があり、切り属性なら
通常遠距離攻撃にも効果が乗るので、コストパフォーマンスもよさそうである。
生存性を高め攻防一体といえるスキルが分身系のスキルだろう。
忍術にも分身スキルがあるが、忍術の分身は実態を伴わない幻で
その分、発動が早く、分身の数も多くなっている。
仙術の分身は、実態を伴うが、発動に時間がかかり分身の数も少ない。
ゲームの攻略に便利そうなスキルも獲得していく。
ある程度取得したら、試用モードで実際の使用感を確認する。
基本的にスキルはゲーム開始後も獲得できるが、キャラ作成時よりもポイント消費量は
多くなる。全部使い切って、開始後に即詰み状態になるのが怖いので
いくらか残すが、残しすぎても損をする。
キャラ作成時にしか習得できないスキルがないかチェックする。
スキルにソート機能がないのがつらい。
キャラ作成はゲーム開始の1日前から可能で、開始まではまだ時間がある。
丁寧にスキルをチェックしていく。スキル説明欄に、ゲーム開始後も習得可能という
注意書きがあるため、逆にキャラ作成時しか取得できないスキルがあるのではないかと
考えたが、閲覧できるスキルは全てゲーム開始後も取得可能と記載があった。
閲覧できないなんらかの職の専用スキルにもしかしたら、キャラ作成時しか
取得できないスキルがあるのかもしれないが、あったとしても、
どの道、閲覧できないスキルは取得できない。諦めることにする。
最後に初期装備を選んでいく。初期装備は選んだ職業の装備しか見れない。
初期装備もスキルポイントを消費して獲得していく。
如意棒とかあるが、獲得ポイントがべらぼうに高くて手がでない。
ゲーム開始後の獲得難易度も記載がある。
ゲーム開始後の獲得難易度が高いのに、初期獲得ポイントが低い装備を
探していく。仙術用の占い道具がまずそれだ。
初期開始位置からどちらに移動するのが吉か占う大事な道具である。
一番良いやつを選んだ。仙術は汎用性が高く、攻撃に物理属性も
魔法属性も両方あり、MPをほとんど消費しないで使用できる技もあるので
初期武器は獲得しなかった。まぁ、性能が極めて低い、ただの近接武器か
性能がチートクラスの伝説の武器の両極端しかなかったというのもある。
仙術には仙丹というポーション作成スキルもあるので、その道具も獲得する。
これも一番いいやつを選んだ。
防具に関しては幅広くあり、護符関係も充実している。
即死攻撃の身代わりをしてくれる札は、10枚ほど獲得しておいた。
ダメージを身代わりしてくれる人形も、10体ほど獲得しておく。
状態異常系の攻撃を防ぐアイテムも複数獲得する。
飛行系の移動用アイテムも欲しかったが、ポイントが高くて諦める。
金斗雲が欲しかった。説明には邪な心があっても乗れますと書いてある。
近接戦闘をする気はないので、防具自体は獲得しなかった。
奇襲対策のアイテムで十分だし、下手な防具を獲得するより
アイテム類の方が融通が利き良いと思う。
但し、移動速度が向上する靴は獲得しておいた。
ステルス系のアイテムも獲得しない。
光学どころか、熱や匂いといったものも隠す、いくつかの隠形スキルや
幻術スキルを獲得している。
ゲーム開始の4時間前に満足のいくキャラ作成が完了した。
ゲーム開始時間前に、完了ボタンをクリックすると、
訓練フィールドへの移動となる。キャラレベルを上げることはできないが、
スキルレベルを上げることはできるフィールドだ。
体感時間の経過はゲーム内と同じになるため、今押すと
半年間訓練フィールドに滞在しなければならない。
訓練フィールドは殺風景で孤独なフィールドなので
長期滞在には向かないという注意が記載されている。
俺は、そんなことは気にせず迷わず完了をクリックした。
なぜなら、休眠(石)というスキルを獲得しておいたからだ。
スキル発動前に期間を定め使用すると、定めた期間
綺麗さっぱり夢をみることもなく意識をなくし、
時間を経過できるスキルである。
ゲーム開始後、詰み状態になったら使用して、1095年間を過ごしたり、
訓練フィールドに飽きたら使用しようと考えて取得した。
サービス期間中は、ゲーム内の毎月15日に、ゲーム内各国首都の定められた場所から
ログアウトしないとゲーム内マネーは換金されないが、ゲーム終了時は
どこにいようが、ゲーム内マネーは換金されるとマニュアルに記載されているのを見て
取得した。
休眠(石)の上位スキルには休眠(金剛)という上位スキルもある。
ありとあらゆる攻撃に耐えれる金剛の体になって、休眠するスキルだ。
かなりのスキルポイントが必要だったので、(石)でがまんした。
それに(石)には、かなりうれしい付属効果もあった。
なんと、あらゆる石化攻撃が無効となるのだ。
まぁ、石化攻撃を受けたら、数秒の期間を定めて自ら石化して
休眠が明けたら石化無効にできるので、なら、いっそ最初から無効でいいのでは
となったのかもしれない。石化攻撃を行うモンスターもそれほどいないのだろう。
というわけで、たとえ半年間殺風景な空間に閉じ込められてもかまわないので、
躊躇なくキャラ作成を完了させ、訓練フィールドに移動した。
訓練フィールドは本当に殺風景な場所で、建物一つなかった。
広い空間に、案山子と、ベットと台所等があるだけだった。
生産スキルの訓練用素材もあったので、なんだかんだ半年間、休眠することもなく
すごせた。
スキルの試用モード時のキャラ外観は、俺本体の外観だったが、
訓練モード時の外観は10歳前後の美少女だった。
付いているモノはしっかりと付いていたので、男の娘ってやつだ。
しかも、外観効果の説明に、同性を邪な気にさせ、異性を不快な気分にさせると
いった効果までついてやがる。
しかも、運営アドバイスなんて項目まであり、「ケツの穴に注意しろ!」
なんてふざけた記載まであった。ゲームの第一目標は
外観変更スキルの取得に決まる。
まぁ、俺の場合は、外観変更スキルがポイントさえたまれば容易に取得
できる点が有利だ。もっとも、ランダム外観を選んで獲得したスキルポイントの量を考えると
かなりの赤字となる。
俺がこのゲームをプレイするに当たって考えた生存率の向上方法は、
本体はアイテムボックスに隠し、普段は分身を活動させるというものである。
けっこう卑怯というか裏技的というか、もしかしたら無理かなというか
まず、無理かなと思った方法だったが、試用モード上ではうまくいき、
訓練モード上でもうまくいった。
これは仙人だから可能な方法である。仙人は体を動かさなければ無呼吸でも問題ない点が
まず大きい。アイテムボックス内の空気がなくなる度に、アイテムボックスを
開閉するのは面倒だし、本体を隠していることがばれてしまう。
さらに食事も不要で、排便も必要ない。
このゲームは排便不要のスキルを取得しておかないと、排便する必要がある。
次に問題に感じたのは、本体をアイテムボックスに隠しておいて、
分身を操作できるか心配だったのだが、まったく制限なく操作できた。
しかも、索敵スキルで本体を探してみたが、アイテムボックスに隠れている
痕跡は見つからず、分身を本体としか認識できなかった。
これでとりあえず、なんとかゲームオーバーは防げると感じたものである。
但し、スキル一覧を見ていて油断はできないとも感じた。
盗賊系スキルにアイテムボックス等からランダムで物を盗むスキルがあったのだ。
アイテムボックスに隠している本体が盗まれたらどうなるのか不明だが、
まずい結果にしかならないだろう。
しかし、これに対抗するスキルとして、盗み妨害のパッシブスキルがあった。
当然ながら取得した。パッシブスキルというのは、普段は発動しておらず、
条件が整うと発動するスキルである。自分の意思で発動できるスキルではないので、
スキルレベルを上げるのがかなり難しい。それゆえ、パッシブスキルには
キャラクターレベルも反映される。俺の場合、キャラクターレベルが上がりにくいので
高レベル盗賊は天敵となるだろう。だが、幸いにも取得ポイントは大量に必要であったが、
スリスキルは取得でき、自分に使用して、盗み妨害スキルを発動させ、
盗み妨害スキルのレベルを上げることもできた。
普段操作することになる分身は”分身(完全)”というスキルによって作成される
分身である。このスキルで分身を作成するのはかなりたいへんだ。
まず、スキルを発動させしばらくすると、腰の当りにコブシ大の瘤ができる。
その瘤をもぎ取ると、もぎ取った当りに口があり、その口で食物を食べだす。
そして、本人と同じ体積の食物を食べることによって、分身は完成する。
完成した分身の能力は本人とまったく同等であり、使用したスキルの経験値は、
本人が使用した分と同等に溜まっていく。したがって、分身と本人でスキルを使用して
人より早くスキル経験地を溜めていくことがきる。
但し、MPは本人一体分しかないので、MPを大量に消費するスキルを
短期間でアップさせることは難しい。
分身(完全)で作成した分身の外観は、本体とまったく同じであり、
外観効果も引き継がれる。
分身(完全)には派生スキルで、分身(完全・種族変更)や
分身(完全・性別変更)などのスキルがある。ドラゴニュートなど
人間と大きく異なる外観の種族になれば、容姿はさすがに
かわるだろうし、性別を変えれば好意を持たれるのが逆転するはずだから
いいかもしれない。
また、幻術系スキルの容姿変更(完全)を取得すれば、
見た目だけでなく、実際に触られる状態での外観変更も可能となる。
当座の目標はこのあたりのスキル取得となるだろう。
スキルレベルが上がると分身の操作はAIに委ねることも可能になる。
訓練フィールド期間中に完全分身は3体ほど作成しておいた。
近接戦闘用の肉体ではないので、あまり作成しても無駄である。
俺が獲得したアイテムボックス系のスキルは、”どこでも倉庫”という
スキルで倉庫内の容量はかなりでかい。本体プラス分身2体くらいは余裕で
入る。そして、さらにこの”どこでも倉庫”を、俺は
2個取得している。容量を2倍にしたほうがポイント消費は少ないのだが、
倉庫の入り口をゲームフィールド側で開閉しなくても、2つの倉庫内で
アイテム整理ができたことからだ。ゲームフィールド側で入り口を開閉した時に
本体を格納している倉庫に進入されないように、安全策として倉庫を2個取得した。
副次的効果として、スリスキルで盗まれるアイテムはゲームフィールドと
接続した倉庫の方から盗まれる確立が高いという効果もあった。
さらに補助として、外観より多くのものが入る肩下げかばんも取得してある。
人前で”どこでも倉庫”を使用したくないからだ。
VRMMO経験者ならアイテムボックス系のスキルは必須スキルとして
取得するだろうが、今回は未経験者が多いと予想されている。
アイテムボックス系のスキルではなく、アイテムを使用してると
錯覚させて、貴重なアイテムを守る作戦である。
倉庫からのアイテムの取り出しは、倉庫スキルが上がることによって、
入り口を大きく開けなくても取り出し可能になり、
さらには、出したい物だけを、ぽんと空間に出せるようになった。
したがって、出し入れの点では、2個必要なかったかもしれない。
訓練フィールドで主に訓練した攻撃スキルは、
操気術(大気)というスキルだ。仙術の専門スキルである。
気を大気に練りこみ、大気を加工して攻撃するスキルだ。
俺が考えて採用されたオリジナルスキルでもある。
操気術には他にも(火炎)(水流)(大地)(氷雪)(紫電)
などがある、(火炎)や(紫電)は威力の高い加工品ができ、
(大地)や(氷雪)は防御の高い硬い加工品ができる。
(水流)は雨天時や水中戦闘用と、あまりメリットは設定時に
思いつかなかった。
そんな中、(大気)のメリットは何かというと、目に見えづらいという
点である。夜間であればまず見えず、日中でもわずかに光の屈折の
違いで見えるかなという程度である。
俺はこのスキルが対人戦の切り札になると考えている。
目に見えない刃などで攻撃を繰り出し、ほぼ回避不能な攻撃になると期待している。
単なる真空波を飛ばして攻撃するのと何が違うのかというと、
あまり違いはない。初動のMP消費が多いというデメリットもある。
このスキルのメリットは一度加工したら、加工品はアイテムとして取り扱いができる点だ。
一対一の短期決戦では意味がないが、一対多の長期戦などで効果が出てくる。
前もって、作成しておけば、少量のMPで操作できるスキルとなっている。
また、操気術でも分身が作成でき、その分身の操作をAIに任せることに
よって、一対多をより楽にこなせるスキルなのだ。
まぁ、多弾頭誘導弾系の遠距離スキルでもいいんじゃないともいえるかもしれないが。
あとメリットとして、思いつくのは操気術(大気)でいろんな応用作業をして
スキル経験値を溜めることができる点だろうか。
(大気)(火炎)などを使用して纏めて操気術でスキル経験値が溜まれば
よりよかったのだが、開発運営はそこまで甘くはなかった。
でも、よくよく考えるとあんまメリットなかったかもしれないと
考え出す。まぁ、大きなメリットあるとゲームバランスが崩壊するから
致し方ないといえる。大量のスキルポイントを獲得してゲームを開始できたから
よしとしよう。
操気術で作成する分身は、腕だけとかも可能だ。腕力は本体のステータスではなく
操気術のスキルレベルに依存する。訓練期間終了間際には、かなりの膂力を備えた
豪腕を4対作成でき、すばやく身動きできる人型も2体作成できた。
各分身は本体から200メートルまで離れて行動できる。
そして、ついに壮大な社会実験VRMMO「ザ・マネー」が開始する。
訓練モード中に作成した分身はそのまま引き継がれてることを確認して、
安心する。予定通り、本体はどこでも倉庫内にあり、今は分身が倉庫外で活動の状態だ。
訓練中に作成した仙丹類も効果はかなり低いが全て持ち込めている。
周囲を確認する。洞窟内のようだ。仙人は光がない真っ暗な状態でも、
周囲の状況を確認することができる。
確認範囲を広げようとした矢先、突如、頭上から生暖かい何かを被せられ、
身動きができなくなる。頭上に大きな生き物の気配を感じる。
開始直後にいきなり、なんらかの攻撃を受けたようだ。
蜘蛛系のモンスターに粘着質の糸を大量に吹きかけられたのかと、
咄嗟に、別のVRMMOでの経験から、思いつく。
炎の鎧を全身に纏い、さらに頭上に炎の盾を出現させる。
操気術の炎や雷で自分がダメージを受けることはない。
体に付着した粘着質の膜が焼き払われ、頭上の大蜘蛛が目に入ってくる。
軽自動車並みの大きさだ。デザインは洗練されていて、タランチュラ系の蜘蛛なので、
デフォルメされていなくても、醜悪さは感じないが、
VRMMOの初心者が見たら腰を抜かすかもしれない。
蜘蛛は、威嚇行動を取っていたが、炎の盾をものともせずに、頭上から飛びかかってきた。
洞窟内であるが、円形の広い広場になっており、軽自動車並みの蜘蛛を避けることができた。
移動速度を上げる靴を履いていなければ避け切れなかったかもしれない。
炎の盾は粉砕されたが、その炎は蜘蛛の体に燃え移りその身を焦がしている。
焦げた良い匂いが鼻腔をくすぐる。実際に蜘蛛を焼いたことはないので、
もしかしたら違うかもしれないが、ゲーム上の演出であろう。
蜘蛛は威嚇行動を行い、それが終わると詰めよってきた。
蜘蛛は横に広い形をしているので、蜘蛛の足に捕まりそうになるが、
なんとか避けきる。
蜘蛛は再度、威嚇行動。威嚇、攻撃、威嚇、攻撃の繰り返しだと気づく。
さすがに、ゲーム開始即、息もつかせない連続攻撃という難易度ではないようだ。
蜘蛛が威嚇行動をとっている間に攻撃系の自己バフを発動させる。
このサイズだと、切り属性の攻撃より、突属性の攻撃で体の内部まで
攻撃しないと効果はないだろう。”一気貫通”を発動させる。
効果は、”一刀両断”の突属性版だ。スキルレベルは10まであげてある。
レベル21までのモンスターなら、こちらの突攻撃のダメージは100%通る。
余裕はないが、ノーダメージで、三度目の蜘蛛の攻撃を回避し、
回避と同時に、操気術(大気)で作成した豪腕で、炎の槍を叩き込む。
叩きこんど炎の槍は、蜘蛛の頭の右半分側を貫き、さらに爆発を起こす。
頭が吹き飛ぶのを予想したが、爆発によるダメージはほぼ皆無のようだ。
鑑定スキルで、蜘蛛のステータスを見るとレベルは10となっている。
炎の槍の爆発ダメージは、追加効果でしかなく、基本ダメージの20%しかないから
余裕でダメージが通っていない。
蜘蛛の弱点属性を見たかったが、判明したのは、モンスター名と
モンスターレベル、そして、エリートモンスターであるという3点だけだった。
訓練期間の半年間では鑑定レベルは5までしかあげれず、レベル10のモンスターの
情報を全て鑑定することはできない。
訓練場には、鑑定難易度の高いアイテムが無く、経験値をあまり稼げなかった。
じょじょに難易度の高い行為をしないとスキルレベルが一切上がらない
スキルもある。鑑定スキルはそのタイプだ。
バフスキルのように、使用さえしてれば、どんどん経験値が溜まっていくスキルもある。
エリートモンスターというのは、ノーマルモンスターより体力があり、
攻撃力や防御力といった各種ステータスも高くなっているモンスターのことである。
基本的にはパーティー組んで戦闘するモンスターであり、単独で戦う敵ではない。
もっとも、ノーダメで攻撃を回避できるエリートモンスターは、
廃人ゲーマーにとって、経験値の美味しい敵でしかない。
瀕死になると攻撃パターンが変わるタイプのモンスターもいるので
油断はできないが、長期戦を覚悟して、戦闘を続ける。
弱点属性が不明のため、さらに氷の槍と雷の槍を作成し
攻撃を続ける。怯み具合から雷が弱点属性のようだ。
雷の槍をさらに5本作成し、操気術(大気)で作成した4対の腕と、2体の
分身で攻撃を繰り返す。この程度であれば、MP切れの気絶は
おきないのは訓練期間中に確認済みだ。
ゲーム開始前に安全な場所で、どのくらいでMP切れの気絶が起きるか
把握できたのはかなり助かる。スキルレベルが上がれば消費MPも減る
タイプのVRMMOなので、訓練モードの利用は、利用しなかった人に
比べてかなり大きなアドバンテージになったといえよう。
蜘蛛の後ろ側からも攻撃を行う。ある意味、良いAIといえよう。
後ろから攻撃するとその方向を蜘蛛は確認する。
本体扱いの分身だけを見て攻撃してくるかと思ったが、
攻撃された方向を向いてくれる。6方向から攻撃すると
蜘蛛はぐるぐる回転して、攻撃回数が格段に下がった。
操気術(大気)で作成した分身の動きはかなり早いので、
攻撃回避もかなり楽である。
もはやハメ殺しの状態だ。レベル差は10もあるが、弱点属性で6人分の
手数で攻撃でき、さらにダメージが100%通ることもあり、
思ったよりもかなり早く討伐できた。
蜘蛛は瀕死時に行動パターンを変えることもなく生きたえ、
ドロップアイテムを残して、その姿を消した。
ドロップアイテムは、「珍味:蜘蛛の足」「裁縫素材:蜘蛛の絹糸」
「占い水晶:蜘蛛の魔眼」と銀貨5枚銅貨20枚だった。
キャラクターレベルは一気に2上がり、3になった。
上がりにくいといわれているオリジナル種族なので
うれしい。
昨今のVRMMOは、モンスターからお金がドロップしない仕様が主流となっていたので、
モンスター退治でお金がドロップするのも、かなりうれしい。
リアルマネーとの換金はゲーム内貨幣のみなので、
いくらレアアイテムを所有していても一銭にもならない。
貨幣が直接ドロップするなら、アイテム換金のために街に行く必要がないので
他プレイヤーと接触する機会は格段に減り、プレイヤーキル(PK)される
リスクが格段に減る。
蜘蛛の魔眼は占星術用の装備アイテムだ。正確に鑑定はできなかったため、
レア度などはわからない。ただ、食料や装備アイテムもドロップすることから
一切街にいかずに装備を整え、生活していけることが判明した。
この当りはマニュアルにも記載がなかったので、うれしい発見である。
スキル獲得も街の教官から習うタイプではなく、ポイントが溜まったら
フィールドで獲得できるタイプである。一切、街に行く必要がない
仕様になっているといえる。但し、スキル獲得は、他プレイヤーから
習得すれば獲得ポイントを軽減できるというシステムもある。
巡回タイプのモンスターが来ても困るので、索敵を開始する。
聴勁という半径20メートル以内の空間把握スキルをまず使用した。
このスキルのいい点は、ステルス系のスキルも看破可能な点だ。
但し、相手のステルススキルのレベルが高ければ看破できない。
まず、半径20メートル以内に敵はいない。目で見てわかる範囲なので
あまり意味はなかった。次に使い魔の作成を行う。
陰陽術の式神のようなスキルであり、仙術の場合は”使者再生”というスキルになる。
”死者再生”ではない。
札を使用して、使い魔を作成するのではなく、
動物の一部に気を込め。使い魔を作成する。
使い魔系は分身よりもかなり遠くまで移動させることができる。
洞窟内であるから、200メートル先まで移動させることができる
分身でも十分であるが、せっかくなので、使用してみる。
犬の牙と、鳩の羽を初期アイテムとして獲得してある。
より有益な動物の一部は、いっきに獲得ポイントが高くなるので
この2種類になった。
使者再生スキルはアイテム消費タイプのスキルだが、
毎回アイテムを消費するのではなく、使用したアイテムは
ランダムでロストする。スキルレベル上昇時は、
アイテムロスト確立を減少させるか、使者のステータスのどれかを向上させるか
などを選べるカスタム系のスキルでもある。
戦闘には分身を使用するので、アイテムロスト確立の減少をメインに上げた。
犬を再生してみる。犬は夜目が利くというが、完全に真っ暗な
洞窟内では、まったく目が利かなかった。
素直に分身で索敵するかと考えるが、珍味:蜘蛛の足を思い出す。
試しに、使者再生を使用すると、バスケットボール大の
先ほどの蜘蛛が再生された。食材でもいけるらしい。
モンスターを再生できるのもかなりうれしい。
スキル説明には動物の一部と記載されているので、無理かと思ったが、
動物系のモンスターなら再生できるようだ。
今いる場所は、円形の部屋であり、天井は高いが、天井に穴は無く、外に繋がっている
気配はなかった。出口は一箇所で、出るとすぐT字路になっている。
左右どちらに移動したらいいか、占ってみることにした。
占い盤の吉方は左右ではなく、壁の先の前方だった。
レベルが低くてあまり役に立たない。
致し方ないので、まずは右手の壁に沿って使い魔を進ませることにする。
分身の1体は左手に配置して、巡回モンスターを警戒させておく。
ダンジョンではないから、壁に沿って移動する手法が通用しないほど
複雑な迷路にはなっていないと期待したい。
フィールドでソロ活動をメインにと考えていたので、
ダンジョン攻略系のマッピングスキルなどは取得していない。
あまらせておいたスキルポイントで獲得はできるので
いよいよとなったら獲得して地道にマッピングするしかないだろう。
宝探し用のスキルも獲得はしていない。使用すれば
この部屋内にアイテムが落ちていないか一発でわかる。
宝探しスキルがない場合は、目に付くものをかたっぱしから
鑑定していくしかない。
操気術で火を灯し、一通り部屋内を鑑定したが、何もなかった。
50メートルほど使い魔の蜘蛛を進ませると、レベル8の大蝙蝠が3匹天井に
ぶらさかっていた。エリートモンスターではなく、ノーマルモンスター