それでも俺は
顔を洗い鏡を覗き込んで、ニヤリと笑う。
「顔面の筋肉、よしっ!」
今日の私は一段と可愛い!!
寝癖を直して自室へ舞い戻り、学校指定の制服に着替える。
そして再び鏡を覗き込んで、チャームポイントのピンで前髪を留める。
さすが私っ!何着ても似合うわ!
さすがに声に出しては言わないが、今日は特別な日だ。
そう・・・ずっと前から好きだった幼馴染の彼に告白をするのだ。
自分に自信を持たなければ上手くいくことも上手くいかなくなるっ!!と誰かさんがほざいていた気がする。
今日はその誰かさんの言葉に乗ってみようと思うのだ。
そうこうしているうちに、彼との待ち合わせの時間だ。
「いってきまーす!!」
「気をつけていくのよ〜」
母親から弁当を受け取り、玄関を飛び出して彼との待ち合わせ場所へ。
「おはよ〜!」
「あぁ、真琴。おはよう。てか、その髪に留めてるピンは何だ?」
「あのさ!ノブ!」
「華麗にスルーしやがった・・・何だよ?」
「・・・好きなの!!」
「・・・・・・・・・何が?」
「だ〜か〜らぁ〜、ノブのこと!」
「・・・ちゃんと、顔洗ってきたか?」
「当たり前でしょ!!で、へ・ん・じ・は?」
「そんなのノーに決まってるだろ?」
「・・・え・・・」
私は手に持っていた鞄を取り落とす。
「ひどいわっ!!ちょっと位考えてくれたって・・・・」
「・・・お前は今すぐ自分の性別を確認しろっ!!」
そう言われて、自分の胸を触る。
・・・・。
そこにはたくましい胸板があった。
「え?あ、ああ・・・俺、男じゃん。」
「・・・・・」
そうだった、俺は男だ。
何やってんだ?俺。
「そうだ!!思い出したぞ!!」
「・・・何を。」
「あれは、昨日の夜のことだった。」
「何でそんな語り口調なんだ?」
「俺は思ったんだ。最近の少年漫画はつまらない、と。」
「・・・漫画もいいが、勉強をしろよ。」
「だから妹の部屋にある少女マンガを借りて読んでみたのだ。その漫画の主人公の女の名前は真琴だった。そのせいで、俺はどんどんその主人公に感情移入して行った。」
「・・・健全な男子高校生が少女マンガに感情移入するなよ。」
「でさ、その主人公の大好きな幼馴染の男がお前にそっくりでさー」
「・・・んで、洗脳されたってわけか?」
「うん、まぁほとんど眠りながら読んでたからかもな・・・」
「眠りながら本を読んだら洗脳されるのか?お前は。」
「へ?・・・誰でもそうなんじゃないのか?」
「・・・お前と一緒にするなよ・・・」
「それでも俺さぁ・・・」
「あ?」
「それでも俺は、お前のことが好きだよ?」
「・・・・・・・俺は好きじゃない。」
こうして、俺たちの日常は始まる。
えーっ、勢いで書きました。
即興というやつです。
特に同性愛者を批判するような意識はないのですが、もし不愉快になられた方がいましたら、こんな作品を思いついてごめんなさい。
評価、感想の方もよろしくお願いします。