一、そこにある何かの縁【6】
救出は──ギリギリのところで成功する。
魚を掴む感じに、火竜は前足で彼の体を捕まえる。
ミリアーノは歓声を上げた。
「さっすが私の相棒! 頼りになるぅ~」
火竜の背を手でぱんぱんと叩いて誉めてあげる。
その後ゆっくりと元の高度に上昇し、雲海から顔を出したミリアーノは他の三機の行方を目で探した。
すると向こうの方からミリアーノの姿を見つけ、機体を接近させてきた。
ミリアーノはその三機に笑顔で手を振り、そして指先を下へと向けて彼の無事を知らせる。
三機のリーダーと思われる黒服のハンサムなおじさまが、親指を立てて「よくやった」とばかりに甘いマスクで微笑してくれた。
「えへへ」
ミリアーノは顔を赤くし、つられるように照れくさく笑った。初めての救出にしては上出来だったと自分でも思う。
──そんな油断が失敗だった。
ふいに横から流れてきた大きな雲の塊に、ミリアーノはすっぽりと飲み込まれた。
ミリアーノに焦りの色が広がる。
「しまったッ!」
視界の先は薄暗く、どこまでも白い霧状の幕に覆われており、スピードも方向も定まらない。
(もうすぐ航路に入るというのに)
島の周囲にはたくさんの飛空艇や生物が往来していた。そんな中をこのまま突っ込んだら──
(方向を変えなきゃ!)
しかし雲の中ではどの方向を飛んでいるのかさえ分からなくなっていた。さきほどまで一緒に居たはずの小型飛空艇の三機も行方がわからなくなってしまっている。
ミリアーノは手綱を握り締め、ピンと張った。
(速度を落としていた方がいいかも)
いざ手綱を手前に引こうとした、その時!
雲を抜けて、視界が晴れる。
ミリアーノの視界に飛び込んでくる大空、島、そして──
「きゃぁぁぁぁ!」
すぐ目前を過ぎっていく大型の飛空艇の側面。
その後次々に色んな人や乗り物、大型飛翔生物が横切っていく。
手綱を引くことを忘れ、パニックに悲鳴をあげるミリアーノ。
更に追い討ちかけるように翼の生えた人たちの団体が!
「退いてぇぇぇッ!」
叫ぶミリアーノの声で異常に気付いたのか、その団体が散り散りになって逃げていく。
その後続を流れていたモノ達は連鎖するようにどんどん玉突きしていき、その度に罵声が増えていく。
ミリアーノを乗せた火竜は本能で障害物を上手くすり抜けて回避し、風の流れに乗るようにして神々の島の底へと入っていった。
ここならもう誰も通ることは無いだろう。島の底──岩山を丸ごとひっくり返したような荒々しい地形──を逆さまになった気分で飛んでいく。
(どうしよう、どうしよう)
どうすれば航路の流れに入れるか。ベテランの乗り手ならまだしも、ミリアーノはまだ初心者のちょっと上くらいの実力でしかない。
故郷では火竜の乗り手は珍しく、数人しか存在しなかった。その為、何の規制もなくいつも自由気ままに空の散歩をしていたミリアーノ。当然、アクシデントを回避できる術を身につけてなどいない。
何も思いつかないまま、どのくらい飛んだだろうか。
視界がぱぁっと開けて大空が広がった。
島の底を抜け、再び上空へと舞い上がる。
──が、最悪なことにそこは数多の飛行物が往来する、島の係留港の入り口だった。
「きゃぁぁぁぁ!」
鳴らされる警笛と飛んでくる罵声。赤旗を激しく振って危険を知らせる警備員の横をすり抜けて、ミリアーノは逆走していく。
「ごめんなさーい!」
もはや謝るしかなかった。