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幻想 《 ファンタジア 》   作者: 高瀬 悠
三章 陰謀を阻止せよ
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三、陰謀を阻止せよ【21】

※ お気に入り登録をしてくださった方々ありがとうございます。

  そして継続して登録してくださっている方々、本当にありがとうございます。

  心よりお礼申し上げます。


 ファルコム皇帝達が地下遺跡を出て行った後。



 クレイシスの背後にいた不死鳥の姿が徐々に消えていく。

 闇は透けて薄まり、そして静けさが戻る。

 何事もなくその風景、その全てが戻った頃。

 糸切れた人形のようにクレイシスは地面に倒れこんだ。



「クレイシス!」

 ミリアーノの声が地下に響く。

 駆け寄ろうと腰を浮かせたグランツェに向け、ミリアーノは叫んだ。

「お願い、この縄を切って! 早く!」

 グランツェがミリアーノに訊ねる。

「何があったんや?」

「説明は後でするから! 急いで、早く!」

 疑問符を浮かべながらもグランツェは背負っていた荷物から小型ナイフを取り出し、彼女等の縄を切る。切りながらぶつぶつと、

「やっぱまだ前の仲間と繋がってたんやな、あの大魔法使い。急に俺らに味方して怪しいとは思ってたんや。められたんか?」

「違うの、そうじゃないの!」

「僕がいけないんです! 変なタイミングで騒いだから」

「なんや、ようわからん」

「ねぇまだ切れないの?」

「待てや、今切っている。アーレイ、お前のはもう切れてる」

「え? あ、はい。すみません」

「急いで!」

「わかってる。今やっているとこや。──ほら、切れた」

 自由になるやすぐに、ミリアーノはクレイシスのもとへと駆け寄った。

 うつ伏せて倒れている彼を仰向けにし、ミリアーノは必死に声をかけて肩を揺する。

「ねぇ起きてお願い! 目を開けて!」

 もう死んでいるのではないかと思うほど顔色がない。

「おい、どうしたんや? 何事や?」

 グランツェとアーレイが心配そうにこちらに来る。

 ミリアーノはグランツェに助けを求めた。

「どうしよう! クレイシスの顔色がないの!」

「なんや? 貧血か何かか?」

 不安を浮かべながら、ミリアーノは首を弱々しく横に振る。

「わかんない。でも、もしかしたらまた魔力ストックが最小限になって防衛本能が働いたのかも」

「なんやて! お前それ、ただ事やないやんか!」

 ようやく焦りをみせるグランツェ。急いでミリアーノと場所を入れ替わり、彼の肩を激しく揺する。

「おい! しっかりしろや、魔法使い! 意識があるんなら目を開けろ!」

 アーレイがグランツェに言う。

「これ以上このままにするのは危険です。あまりにも魔力ストックの低い状態が続けば最悪の場合、脳死や脳への深刻なダメージを負うことがあるって聞いたことがあります。今は急いで島の精霊を探し、イベントを抜けて地上の精霊に魔力をもらわなければ、このままだと確実に手遅れになります」

「そやな、アーレイの言う通りや」

「わかったわ。私も探す」


「ちょっと待ったでございます!」


 入り口の階段から姿を現し、こちらへと駆け寄ってくるフレスヴァ。

 すると虚空からポルメルも姿を現し、フレスヴァの後を追って遅れてこちらに歩いてくる。

 ミリアーノはフレスヴァを見て泣きつくように駆け寄った。

「フレスヴァ!」

 拾い上げて胸の中で抱きしめる。

「どうしよう、フレスヴァ。クレイシスが……」

「わかっております、ミリアーノお嬢様。わたくしめ、お嬢様の身の危険を知ってすぐにポルメルを呼びに行ったのですが、助けに入ろうにもどうしても召喚神具が怖くて近づけなくて」

「ばぅ」

「ありがとう、ポルメルも来てくれたのね」

 ミリアーノは遅れてやってきたポルメルに抱きついた。

 事情の飲み込めないグランツェとアーレイ。互いに顔を見合わせるも、すぐにアーレイが行動に出る。ポルメルに恐る恐る近づき、

「あの……僕達をすぐに街へ戻していただけないでしょうか? 僕達はこのイベントを棄権することに決めました」

 ミリアーノもポルメルにお願いする。

「私からもお願い。あなたの力で私達を街へと戻して。このままじゃクレイシスの命が危ないの」

「…………」

 ポルメルは無言のまま二人を見つめていた。

 やがてミリアーノの胸元から咳払いが聞こえてくる。

 注目が集う。咳払いした本人であるフレスヴァへと。

「ミリアーノお嬢様。本当にそれでよろしいのですか?」

「当たり前じゃない、フレスヴァ! 早くしないと──」

「わかりました。では、このままファルコム皇帝の陰謀に目をつむられるのですね?」

「そ、それは……」

 ミリアーノは言葉を失い、顔を俯けていく。

「目の前にある小さな可能性をもお捨てになり、短絡な結果をお選びになって。本当にそれで後悔はしませんね?」

 ミリアーノは疑問に呟く。

「目の前にある……小さな可能性?」

 フレスヴァが再び咳払いをし、

「ミリアーノお嬢様。ほんと、わたくしめを何だと思っていらっしゃるのですか?」

 その言葉にポルメルが口の中から小の白衣を取り出す。

 ポルメルから小の白衣を受け取ってフレスヴァ。それをかっこよくビシッと着こなし、

「わたくしめは森の精霊にして番人、そしてミリアーノお嬢様の頼りある執事ですぞ? もしもの時は頼ってくださいと申し上げていたでしょう」

「あ、そっか。フレスヴァは──」

「魔力ストックが無いのであれば、わたくしめの魔力を差し上げれば良いことです。せっかく魔法使いが命懸けで得たチャンスを無駄にしてはいけません。

 さぁ、魔法使いのことはわたくしめに任せ、ミリアーノお嬢様達は白羽神具の謎をお解きください。きっと白羽神具の幻影に関する何かがあの壁画に隠されているはずです」




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