三、陰謀を阻止せよ【14】
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「うわぁ、なにココ。すごい……」
階段を下りてすぐ、辿り着いた地下はとても深く広い闇の空間が広がっていた。
空間には太く大きい白柱石が建ち並び、暗闇の天井を支えている。
クレイシスが前方の道を照らし、
「このまま真っ直ぐだ。側面には行くなよ。両端とも底の深い水溜めの溝がある」
「わかったわ。真っ直ぐ行けばいいのね」
ミリアーノとクレイシスは白柱石が導く回廊を歩き出した。
二人の足音が響く。
静寂な空間に滴り落ちる水。その音。
ミリアーノは物珍しげに見回しながら先を進んだ。
白柱石に絡みつく木の根。床は天井から滴り落ちてくる水に所々で鍾乳石が生まれている。
「ねぇクレイシス、ココって埋まっているの? それともこういう造りの建物なの?」
「もう少し声を落とせミリアーノ」
「あ、ごめん」
反響する自分の声に気付いて、ミリアーノは慌てて口を閉じた。
クレイシスが答える。
「ファルコム皇帝に古代歴史の興味が少しでもあればココの解明もされただろうが……見ての通りだ。兵力にならないものに興味は無い」
「だからってこのまま放置するなんて──」
「それでもこのままで、オレはいいと思う」
「どうして?」
「この場所は精霊が結界で守っていたほどだからだ。精霊が結界を張って守るのには二つの理由がある。一つは聖域、もう一つは知られたくない場所」
「知られたくない場所?」
「この島には多くの謎が隠されている。お前の母親はその一つを見つけたんだ」
「どうやって?」
「さぁな」
と、肩をすくませる。
「ポルメルにでも聞いたんじゃないのか?」
「あ、それあり得るかも。お母さんって、なぜか精霊と会話が出来たのよね」
「まさかお前も出来るとか」
「出来たらフレスヴァに通訳を頼んでないわ」
「そうだよな……」
その後、二人は無言で歩を進める。
しばらくして、
「あ。行き止まりだわ」
ミリアーノは壁を目の前にして足を止めた。
クレイシスが右方向に指を向ける。
「ここを右だ」
「え、でも右に行ったら水にドボンなんでしょ?」
「それならオレも右に行けとは言わない」
納得して、ミリアーノは指示通り右へと壁沿いに歩き始めた。
程よく進むと、クレイシスがミリアーノを引き止める。前方に向けていたランタンを急に壁際へとかざし、
「ここだ」
「ここ?」
目を向ければ、ぽっかりと開いた空間。
そこから更に下へと続く階段があり、全体を照らすような強い明かりが漏れていた。
クレイシスが手持ちのランタンの明かりを消し、表情に緊張を走らせる。さきほどよりも声を落とし、
「皇帝もリズもこの先にいる。慎重に行こう。見つかれば命はない」
「わかったわ。──あ、待って。いざという時のためにフレスヴァをここに置いておくわ」
ミリアーノは装着していたポシェットを外すと、中に居るフレスヴァにそっと声をかけた。
「フレスヴァ、私の声が聞こえる?」
ポシェットから顔をのぞかせてフレスヴァ。
「聞こえております。お気をつけくださいませ、ミリアーノお嬢様。ピンチの時はポルメルを連れ、最大限をもって救出いたしますので」
「お願いね」
ミリアーノはポシェットを壁際に置くと、クレイシスとともに足音を忍ばせ階段を下りた。