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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

男女貞操逆転世界等の転生勧誘にご注意ください

作者: みね
掲載日:2026/01/15

(……ぼく、死んじゃったんだよね?)

 真っ暗で何も見えない。白い空間とか、三途の川なんかもない。


 ジャージャンッ!

 スマホの目覚ましに使ってるアラームとは違う電子音がする。

 耳を傾けずにはいられない音だ。


〈男性の皆さん! 本日は、あなたに耳よりな転生のご案内です!〉

「は?」


 今度は通販番組でよく聞くおじさんみたいな明るくて早口の声がした。

 ぼくがたまに考えた死後の世界と違いすぎてポカンとしてしまう。



〈性欲は生物の三大欲求ともいわれますが、日本の皆さんは、性欲を満たせないまま人生が終わってしまった方が多いのではないでしょうか?〉


 フリまで通販っぽい。


〈奥さんが応じてくれない、結婚できる収入がない、そもそも容姿が女性に好まれない、理由は様々でしょうが、性欲が満たされない人生を送っていたあなた!〉


「いやいやッ、ぼくはそこまでひどくないよ!」

 思わず、そうツッコむ。


 童貞ではあるんだけど。だって、高校生でセックスなんてしてるほうが少数じゃないか。

 クラスメイトにはもうカノジョとセックスしてるってやつもいたけど、ぼくは特に好きな子もいなかったし、誰かに告白して断られたら気まずいし。

 大学生になったらカノジョつくりたいよなって仲のいいクラスメイトと話すくらいが普通の男子高校生だ。だよね?



〈わたくしどもの世界では、女性が多く、男性パートナーにあぶれています。なんと男性1人に対して女性は9人! あなたが誘えばどんな女性もよろこんでセックスに応じる世界です! しかもですよ? 生殖は自然生殖のみ! 献精なんてまどろっこしい義務も一切ありません!〉


 それはすごい。1日2回だとしても5日で1巡だ。

 


〈仮に結婚できても、何時間も働いて、疲れて帰れば皿を洗っておいてなんて言われる。セックスできる頻度だって週1回もあればいいほう。 ですが! こちらでは違います! 皆さんに求められるのは女性を孕ませることだけ!〉

 たしかに、ぼくの両親はふたりとも働いていて家でも料理とか洗濯とか忙しくしてることが多い。平日にスマホを見てゴロゴロしたりしてるのは1時間もない。

 ぼくが大人になれててもそんな大変な生活が待っていたんだろう。


〈職業、収入、こちらの女性はそんなもので男性をえり好みしません! あなたから誘わなくても積極的な女性達と毎日セックスできます!〉

 セックスか……やっぱり、オナニーより気持ちいいのかな……



〈しかも、今回は特別に! 先着10名様に転移オプションをおつけします! 育つまでの10年あまりを待つ必要もなくオトクですね。

 チビだからこのままの身体はちょっと…思っているそこのアナタ! ご安心ください! こちらでは背が低い男性がモテます! そもそも、セックスに積極的なだけで女性達は泣いて喜びます!

 行きたいと念じるだけでこちらの世界へ転生できます! ただし! 人数が定員に達し次第締め切ります! どうぞ、お急ぎください!〉

 ぼくが生きていた世界よりは楽なのかもしれない。ぼくはもともとインドア寄りだからひきこもり生活でもたえられそうな気がする。



「どのくらい進歩してる世界なんですか? 誰でも本くらいは読めるんですか?」


〈男性の皆さん! 本日は、あなたに耳よりな転生のご案内です!〉

 また、同じ音声が聞こえはじめた。

 こっちの声は聞こえてないみたいだ。


 どうしよう。定員があるって言ってたし、とりあえず、行きたいって願ってみようかな。



『待ちなさい! あちらへ行ったら死ぬまで戻れない! こちらとの縁も薄くなるため、こちらから一方的な声さえ届けられなくなるぞ!』

「へ?」

 さっきとは違う真面目そうなおじさんの声が引き止めてくる。


〈あなたが誘えばどんな女性もよろこんでセックスに応じる世界です!〉

 一方で、通販みたいな男の人の声はこっちの状況なんておかまいなしに流れている。


「あなたもあっちの世界の人ですか?」

『違う。私はここの世界に所属しているものだよ』

 こっちのおじさんとは、会話が成立する!


「あの声の世界って、どのくらい文明の進んでる世界なんですか? 誰でも本くらいは読めるんですか?」

『いいや。こちらの世界でもそうだが、本は存在しても読む余裕がない人間がほとんどだ。こちらでいえば18世紀末くらいの発展具合ではあるんだが』


「よかった。中世は過ぎてるんだ」

 そのくらいだったら暇つぶしに読む本だってありそう。


『だから、待つんだ! 戒律上、偽りを告げることはできないが勘違いさせる情報しか述べないことは認められている! おそらく、きみが想像している男女貞操逆転世界とあちらは違う!』


〈皆さんに求められるのは女性を孕ませることだけ!〉

「じゃあ、女の子と結婚したらセックスする以外のことは相手がしてくれるっていうのも本当だってことですか?」

 なら、やっぱりこっちよりいい世界なんじゃないかな。アイドルみたいに可愛い子なんて高望みができないのはこっちだって同じなんだし。


『結婚と呼ばれる制度はあの世界のどの国にも存在しないさ。あちらの世界の男に女と同じ権利はないからね。そのほとんどが脚の腱などを損なわれて、陰茎を酷使されて生きている』

「脚を損なう? 歩けないってことですか?」


〈転移オプションをおつけします!〉

『杖をつかえば歩けはするように調整されているね。仮に、君が転移できたとしても、ニコニコと案内してくる女についていけばそんな処置をされることになる』

「脚を折られるんですか!?」

 そんなのただの暴力じゃないか。


『たぶん、家畜の角や牙を無くす感覚なんじゃないか? あちらの世界の女にとって男は気持ちよくしてくれる棒を持った生き物だからね。セックスは気持ちいいけれども、逃げられたら面倒だから男に走れる機能は要らないと考えている。』

「そ、そんなことしたら、働く人がいなくなって困るんじゃないの?」

 胸がギュと搾られるようになる。この暗やみにもっと不安になる。


〈職業、収入、こちらの女性はそんなもので男性をえり好みしません!〉

『男のほうが女より3倍は優秀な労働力であるだけだね。女ができない職業なんて男娼くらいさ。

 職業や収入で差別するはずがないんだ。あちらの世界の男は職業に従事できないんだから。1日に10人もの女とセックスをしていたら休む以外のことはできなくて当然だがね』

「人間って、10回射精なんてできるものなんですか??」

『ああ、そもそもそこを勘違いしているのか。あちらの女が主に求めるのは繁殖ではなく快楽だ。勃起していればよくて「射精するタイミングに当たったらもっと気持ちいいからラッキー」としか思っていない。向こうの先進国といわれる国でも男を女が組になって3時間以上かわるがわる陰部で咀嚼する。それを1日2回やる』


 文明が進んでいる国でそれならばそうじゃない国ではどうなるんだろう。

 戦争中は国をあげて侵略した国の人を売春婦にしていたとか。性病の心配がないからとついには10歳にもならない売春婦が求められるとか。

 そんな怖い話が浮かんでくる。



『転移オプションなんてね、それだけ切羽詰まっているのさ。科学が流行っている先進国では陰茎に器具を入れて勃起させたままにしようなんて摂理に合わない器具開発に躍起になっている。消毒の概念もないから死者が絶えない。摂理に反さず休息を与えて勃起させるのが最良だと認められるまでに何年かかるのやら』

 そんな世界に騙されて転生させられそうになってたんだと思うとぼくはしばらく言葉もでなかった。


「どうして、向こうの女達は男にそんなひどいことをするんですか? 他のことはするほど男が好きだっていうなら、優しく接してもいいものでしょう?」

『難しい質問だね……創造者は、男も女も気軽にセックスを楽しめる世界にしようとしたんだ。人が増えて地に満ちるように』

〈なんと男性1人に対して女性は9人!〉

『私は、10人のなかに目にみえて1人違う者がいれば仲間とはみなされない。人間はそういう生き物なのかもしれないと思うよ』


「ぼくはどうなるんですか?」

〈行きたいと念じるだけでこちらの世界へ転生できます!〉

 こんな暗いところでぼくを騙そうとする声を延々と聴くのも嫌だ。

『私は日本に転生することをお勧めするよ。性別は女になるけど記憶がなければ気にならないだろう?』

「わかりました。それでいいです」

 あんな世界よりは未来の日本のほうがいいに決まっている。




『はあ…嫌な仕事だよ、まったく…』


――いつ絶滅するか分からない日本人の女なんて嫌ですよ。おひとり様で逃げきれるかもあやしいし

――ありがとう。にっぽん人になればいやなかおもされないね

――嫌だよ。次世代の日本なんか破綻してんじゃないのか? 産油国の金持ちになれないのか?

――ニッポン! いいね、うまれながらの金持ちになれる!

――ああ。女なら、戦争で死ななくて済むな


『……貧困や戦争に苦しむ地があったとしても、そんな世代へ進む先頭に立った人間は危ないと分かってるんだ。転生するのは無知だった人間しかいない』

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