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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第二章

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伯爵領の街

 俺たちは大所帯になったにも関わらず強行軍で進行した。

 騎士たちがアゼルを捕えるという目的で一致団結し、脱落者が誰一人出ずにいられたおかげだ。

 そして、決戦の街まで半日も掛からない場所で野営し、いよいよ今日、決戦の街であるウィアズ領の領都へ入ろうという段階まできた。

 ただし、これだけの大人数で昼間に入ると目立ち過ぎるため、街の偵察も兼ねて先触れを送り、その情報を加味した上で、日が沈んでから街に入る予定になっている。


「魔法師団長、ただいま戻りました」

「うむ。して、どうであった?」


 先触れとして街へ向かっていた騎士が、日が南中を少し過ぎた頃に戻ってきて、天幕の中に入ってきた。

 そして、魔法師団長の前に跪くと、帰還の報告を行った。


「はい。街にアゼルたちが潜んでいるという情報はございませんでした。ウィアズ伯爵にもお目通りができ、魔法師団長からの書状を渡し、今夜、魔法師団長、および、騎士と魔法師百五十余名、冒険者四名が入場することを伝えております」

「うむ。それで、ウィアズ伯爵はなんと?」

「は! その場で魔法師団長からの書状に目を通され、至急、街の出入りの監視、街の巡回警邏を行うとのことにございます。ただ、領主館での宿泊は、魔法師団長と冒険者、および、騎士数名が限界で、その他の騎士、魔法師は街の宿屋を利用してほしいとのことでございます。なお、宿屋の手配については、ウィアズ伯爵がご手配してくださるとのことでした」

「うむ。そうか。ご苦労であったじゃ。下がってよいぞ」

「は! それでは失礼いたします」


 アゼルの気配がないのであれば、俺たちの方が早く街へ到着できたと考えて良さそうだ。これで少しは安心して入場できるだろう。ただ、それでも相手側の密偵が潜んでいる可能性もあるので、油断はできないが、街の出入りや巡回を行えば、あちらも派手な動きはできなくなる。

 それにしても、俺も街の宿屋が良かったんだけどなぁ。魔法師団長の護衛ということになっているため、魔法師団長から離れられないし、離れない方が良いので仕方ないが、俺には領主館など敷居が高い。


「それではバルア。出立の準備が整い次第、出発じゃ」

「は! 至急、準備を行い出発します」

「うむ。では、フェイル殿、儂らは馬車に移動しますかの」

「はい。分かりました」


 この足で俺たちは馬車に乗り込み、その後、すぐに馬車は出発をした。

 もともと先触れが戻ってきて天幕さえ片付ければ出発できるように準備されていたので、それも当然だ。

 この分だと、日が暮れて程なく街に着きそうだ。


 馬車が出発してから数刻後、ゆっくりと馬車が停止した。

 外は日が沈み暗くなっているので、街に着いたと思われる。

 それから程なくして、再び馬車が走り出した。その馬車から外を眺めていると、街の外壁の門を守る騎士が忙しなく動いており、物々しい雰囲気が漂っていた。それは街の中でも同様で、街の中を騎士が駆け回っているのが見受けられた。


「あれも王国騎士団の方々ですか?」

「いえ、あれはこのウィアズ領が抱える私設騎士団でござりますじゃ。あの胸に刻まれた文様が、どの領地かを示しておりますのじゃ」


 俺が窓から見た騎士に疑問を抱き、魔法師団長に尋ねてみた。

 俺が何故、疑問に思ったかというと、騎士の鎧が明らかに俺の知る騎士たちより貧相だったからだ。それに、此処の騎士が纏う鎧には、見知らぬ文様が胸に刻まれている。俺の知る騎士たちの胸には国旗と同じ文様が描かれているので、それとは違うことは確かだ。

 俺のこんな疑問に、魔法師団長が的確に教えてくれた。

 なるほど。それぞれの領地で騎士団を設けて、その騎士の胸元には領地の文様が刻まれているというわけだ。これなら見間違えることはなさそうだ。


「あとで、副騎士団長の領地の文様を教えてもらえますか?」

「うむ。そうですな、お教えしましょう。それと、その副騎士団長は手配犯で既に解任されておりますのでな。犯罪者のデルアックでよろしいですぞ」

「はい。分かりました」


 その『犯罪者の』という修飾は不要だと思うが、デルアックと呼ぶことに異存はない。

 デルアックの親が此処へ攻めてくる可能性もあるようなので、知っておいた方がいいだろう。敵方の文様が分かれば、混戦になった時に誰が敵かを見分け易い。


 俺たちがそんな会話をしていると、馬車が再び停止した。

 そして待つこと暫し。馬車の扉が二度『こんこん』と叩かれて開けられた。


「魔法師団長、到着いたしました」


 魔法師団長はその声に『うむ』と一言呟くと、徐ろに立ち上がり、馬車の外に出ていく。俺たちもそれに倣い、魔法師団長の後ろを付いて馬車から降りた。

 俺たちが馬車から降りると、目の前には立派な四階建ての館が聳え立っていた。勿論、王城などには遠く及ばないが、それでも王都の貴族街にある館よりは余程大きい。


「ガレリック様、ようこそおいでくださいました」

「うむ。エスワール殿、久しいの。息災なようで何よりじゃ」

「ガレリック様も、お元気そうで何よりでございます」

「うむ。まだまだ若い者には負けてはおれんでな。それで、今日はティルセア嬢はおられんのか?」

「ティルセアなら、話を聞いて訓練場に行きました。晩餐には来るかと思います」

「そうであったか。相変わらず動き回っておるようじゃな」

「はい。お転婆娘で困ったものでございます。少々甘やかし過ぎたのでしょうか」

「一人娘であれば、それも仕方なかろう。それに儂としては好感の持てるご令嬢だと思うとるでな」

「ガレリック様にそう言っていただけると助かります。っと、少々長話をし過ぎたようでございますな。積もる話は後ほどということで、まずはお部屋へご案内させますので、どうぞ旅の疲れを取ってくださいませ」

「うむ。忝い」


 領主館の前で、俺たちを出迎えてくれたエスワールという、一際綺麗な装束を来た男性と魔法師団長が、長い挨拶を交わした後、俺たちは部屋へ案内されることになった。

 テオたちは馬と一緒に騎士舎にある厩舎へと連れていかれている。厩舎には魔物の世話もできるものがいるらしく、何も心配はいらなそうだ。一応、念話で大人しく付いて行くように言ってあるので、大丈夫だろう。

 そして、俺たちは、この館の執事と侍女に導かれて部屋へ通された。と言っても、通されたのは魔法師団長が宿泊する客室にだ。俺たちは魔法師団長の護衛として、この部屋の隣に設けられた護衛用の部屋で寝泊まりすることになるらしい。当然、交代で休むための部屋なので、豪華な装飾も無く、簡素な部屋になっている。俺がそれを知って胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。


「それでは、晩餐までこちらでお寛ぎください」


 ソファーに座った魔法師団長に侍女がお茶を出すと、執事と侍女が丁寧にお辞儀して退室していった。


「うむ。では、フェイル殿たちもソファーにお掛けください。バルア、フェイル殿たちにお茶をお出ししてくれるかの」

「はい。かしこまりました」


 魔法師団長は、執事たちが退室していくのを見届けると、俺たちに着席するように促してくる。


「いえ、誰か来るかもしれませんし、俺たちはこのままでいいですよ」

「いえいえ、それでは儂が落ち着きませんじゃ」


 俺たちは今、魔法師団長の後ろに俺とネルフェアが、扉と窓の横にオルフェスとベルフェが、魔法師団長を守れる位置に護衛として立っている。今、俺たち以外に此処にいる騎士はバルアさんだけで、他の騎士の方たちは俺たちの交代要員として既に隣の部屋で仮眠を取っているはずだ。


「フェイル様、お言葉に甘えましょう。バルア、お前はフェイル様にお茶を入れたら、ガレリックの後ろに立て、ネルフェアはフェイル様の後ろに立ってくれ。俺とベルフェはこのまま警戒します」

「はい。かしこまりました」

「ええ、それで問題ないでしょう」

「ええ、分かってます」


 何故かオルフェスがバルアさんに指示を出して、この場を仕切っている。

 これには魔法師団長も苦笑気味だが、別に口出しをするつもりはないようだ。どちらかというと、魔法師団長の苦笑は、バルアさんがオルフェスの指示に素直に従ったことに対してのような気がする。

 まぁ、こいつらが守っているなら、何が襲ってきても大丈夫だ。


「それじゃあ、失礼します」


 俺は全員が異議を唱えない状況に流されて、魔法師団長の向かいのソファーに腰を下ろした。

 俺も魔法師団長の護衛なんだけどな。こういう風に流されるから、周りが勘違いして仕事がなくなるんだろうな。そんな風にも思うが、ここで流れに逆らっても、面倒な問答が増えるだけなのも確かだ。


「うむ。それでは、まずはこの街についての情報をご説明しますじゃ」


 それから説明された内容によると、この街は北東と南西に門があり、それぞれを北門、南門と呼んでいるらしい。それを結ぶように大通りがあり、その中心にこの領主館が立てられている。それ以外の街の造りは概ね王都と同じで、中心地に貴族街、その周りに商業区や工業区があり、更にその周りに市民の住宅街が造られているようだ。

 あと、この街には騎士が百名弱いるようで、この領主館の隣に併設されていると教えてくれた。

 そして最後に、この街がある領地の領主が、領主館の前で出迎えてくれたエスワール・ウィアズという伯爵になるそうだ。


「今晩、晩餐の後にエスワールと会談し状況を説明する予定になっておりますじゃ。それを明日には、この街の住民と冒険者ギルドに伝える予定でござりますじゃ」

「分かりました。それで、その冒険舎ギルドへは俺たちは行かなくて良いんですか?」


 魔法師団長が簡単な街の説明の後、今晩と明日の予定を教えてくれる。


「うむ。今晩の会談次第ですが、エスワールに伝えてもらう予定でおりますのでな。儂らは行く必要はござりませんじゃ。必要ならば、この街の冒険者ギルド長がこちらへ来ることになりますでな。ただ、フェイル殿には晩餐と会談には護衛として出席してもらうことにはなりしょうがの」

「分かりました。護衛としてなら大丈夫です」


 来賓として出席しろと言われたら全力でお断りするが、護衛というなら問題ない。寧ろ、冒険者としての仕事なので、経験を積めると考えると大歓迎だ。


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