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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第二章

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望んだ協力要請

「陛下。先程はフェイル様のご提案をご遠慮なされましたが、協力を得る分には問題ござりませんかの? 勿論、フェイル殿の了承が得られればでござりますが」

「ふむ。どのような協力だ?」


 魔法師団長は考えが纏まったのか、王様に俺の協力の許可を求めた。

 俺としては、できる協力があるならなんだってしたい。ただ、これも恐らく俺の力ではなく、オルフェスたちの力を求められていると思うので、思い違いをしないよう肝に銘じておかないと駄目だが。


「はい。先ずは陛下が派兵された騎士たちについてですが、儂らのところへ向けて進んでいる騎士については問題ござりません。ですが、ヘイズたちのところへ向かっている騎士について、少々案がござります」

「ほう、なんだ?」

「はい。ヘイズたちのところに向かった騎士の数は百名ほどと伺いましたが、その半分にヘイズたちに代わり、フェイル様の国外追放の搬送を継続させて、もう半分には、儂らのところへ向かって欲しいのですじゃ」

「うむ。…それは、偽装の継続と、アゼルたちを挟撃するためか?」

「はい。挟撃できるかは分かりませんが、それでも騎士は多い方が良いかと考えておりますのじゃ。というのも、恐らく、アゼルとデルアックはレイベド侯爵と合流すると思われますので、向こうの戦力が増える可能性がありますでな」


 確かに魔法師団長の言う通り、相手の戦力が増えるなら、こちらの戦力も増やしたい。

 ただ、そうなると気になることもあるが、今は口を挟むべきではないだろう。


「うむ。それで、フェイル殿への協力要請とは?」

「はい、それはですの………」


 魔法師団長はここで言葉を切ると、王様から俺の方に視線を移した。

 王様との会話の流れで、王様と俺への説明と協力要請を一度に行うためだと察せられる。


「オルフェス様にヘイズたちが襲撃された場所に戻ってもらい、そこから街道を北上し、ヘイズたちの元へ向かっている騎士たちに、半数は偽装の継続、そして半数は儂らの元に向かうよう伝えていただきたいのでござりますじゃ」


 俺は魔法師団長からの要請を受けて、オルフェスの方に視線を向ける。

 これに誘われるように他の者たちもオルフェスに視線を移した。


「それは構わんが、俺が行ったところで、その騎士たちは俺のことを信じるのか?」

「それならこれを騎士たちに見せて、オルフェス様の名を名乗っていただければ、問題ござりません。それには儂の家紋が刻まれておりますゆえ、それが分からぬ騎士はおりませんでの」


 オルフェスの問いに魔法師団長は懐から細かい意匠が施された短剣をオルフェスに差し出した。


「そうか、ならば承ろう。それとついでだ。ヘイズたちが襲撃された場所も教えてやろう」

「それは助かりますじゃ。偽装のためのフェイル様方の予備の衣装がヘイズたちの馬車にあるはずですので、馬車の場所が分かれば、新たに衣装を用意せずに済みますからな」


 王様と俺が口を挟むことなく、魔法師団長とオルフェスの間で協力が取り付けられた。

 ただ、王様は会話に口を挟まなかったが、これは同時にオルフェスの協力を了承したということでもある。俺もそれに異存はないので、特に口を差し挟むことはせずにいる。

 だが、ここで話が一段落したことを受けて俺は口を開いた。


「少しよろしいですか? それだと亡くなった方たちの遺体が放置されませんか? もし良ければネルフェアに此処まで運ばせますが、どうですか?」

「それは助かりますが、よろしいのですかな?」


 俺の申し出に王様が答えてくれた。

 俺の身代わりに亡くなった方たちの遺体を放置することなんて、俺にはできない。

 勿論、これも俺の力ではないが、それでも今は、俺に許された範囲でできることをしたい。


「ええ。ただ、一人一人丁寧な運び方はできないと思いますので、それで良ければですが。ネルフェア、頼めるか? 此処にはベルフェもいるので護衛は大丈夫だから」

「はい。かしこまりました」

「それは感謝いたします」


 ヘイズさんと行動を共にしていた騎士たちはまだ二十名以上いる。それを一人一人運ぶのは難しい。だからといって雑に扱うわけでもないが、一度に何人かを運ばないと負担が大きい。それを承知でネルフェアに頼んだ俺もどうかしているのかもしれないが、それでも運んでほしたかった。


「うむ。フェイル様。それともう一つお願いしてもよろしいでしょうかの?」

「はい。なんでしょう?」


 魔法師団長の依頼はまだあるようだ。

 許される範囲であれば、なんでも受けるつもりなので、特に警戒などもしていない。


「明日の夜にもう一度、この書斎に儂を連れてきてくださらんじゃろうか?」

「うん? ガレリック、どういうことだ? それなら此処へ泊ればよいであろう?」


 俺も王様の意見が尤もだと思う。

 此処へ俺が泊まるのは遠慮したいが、魔法師団長は泊まる分には、体の疲れも取れそうな気がするのだが、違うのだろうか?

 しかし、魔法師団長は王様の言葉に首を振っている。


「陛下。それはできませんじゃ。儂は本来此処にいない身でございますしの。それに、野営地で待っておる皆にも早く知らせたいですし、可能な限り先を進みたいのでございますじゃ」

「そうであったな。皆も待っておろうでな。して、明日此処へ戻ってくるのはどうしてだ?」


 此処から出られないのであれば、確かに残るよりも、一旦戻った方が都合が良いかもしれない。


「はい。できれば陛下がご用意される手配書をいただきたいのでござりますのじゃ。それがあれば、儂も行く先々で先手が打てますでな」

「なるほど、それは良い案だな。分かった。明日の夜までには準備させよう。そうだな…、それでは、レイベド侯爵が出てきた時のために、書状を認め、それも渡しておこう」


 俺は魔法師団長の案に納得した。

 確かに手配書があれば、アゼルも動き難くなるし、何より彼の最大の味方である名声が地に落ちることで、彼を追い詰めやすくなる。

 王様の言う書状が何なのかは分からないが、それでも、王様の書状があれば貴族であれば下手のことができなくなることくらいは想像できる。


「分かりました。明日の夜に此処に運びます」


 これについては、オルフェスたちの誰に頼むかは明日の夜にでも考えよう。

 オルフェスがまだ戻っていない可能性もあるし、ネルフェアには今日この後無理をさせるので、ベルフェに頼むことになりそうな気もするが。ただ、もし俺も一緒に来ることになれば、俺から離れないネルフェアで決まってしまう。


「うむ。感謝いたしますじゃ。それでは、これらを踏まえて今後の作戦をご説明いたしますじゃ」


 今ので俺への協力依頼は終わったようだ。

 魔法師団長は最後に俺に礼を述べると、今後の作戦を地図を使いながら説明してくれた。

 要約すると、最注意の街でアゼルたちを迎え撃つという案だった。

 俺たちの方に向かっている騎士たちは、恐らくアゼルたちよりも早く俺たちまで到達する予想らしい。その騎士たちと合流し、アゼルが来る前に最注意の街でアゼルたちの手配書をばら撒くそうだ。これによって、アゼルが現れても誰も彼を信じようとは思わなくなるのが狙いとのことだ。

 そして、オルフェスが向かう騎士たちの半数は、確実にアゼルより遅く到着することになるため、上手くいけば挟撃が可能となる。そうでなくとも、もし、アゼルがレイベド侯爵領に立ち寄ったりして準備に手間取り遅れた場合は、半数の騎士がこちらに合流するので、こちらの兵の増員ができるというわけだ。


「しかし、アゼルがその街に到着する前に襲ってきたら、どうするつもりだ?」


 王様が魔法師団長の作戦を聞いて、真っ当な意見をぶつける。


「儂が今日野営地に戻るのも、そのためですじゃ。こちらも明日以降の移動の速度を速めて、アゼルより早く街に着けるようにするしかござりませんでな」

「ふむ。ある種、賭けのような気もするが、それが最善か…」


 王様は魔法師団長の言葉を吟味するように、顎に手を当て思案気な表情をした。


「はいですじゃ。ただ、アゼルよりも早く騎士が合流するのは間違いないと思われますので、それほど悲観せずとも対処は可能かと思っておりますじゃ」


 正直なところ、向こうの戦力が分からないので確実なことは言えないが、最悪、俺たちも冒険者としての参戦は許されているので、陰から支えることはできるし、負けることはないだろう。


「それで、アゼルが街に来なかったら、どうするんだ?」

「街で待つしかありませんの。アゼルの狙いはフェイル様たちですから、そのフェイル様たちが儂と一緒にいると思ている以上、必ずこちらに来るしかござりませんでの」

「うむ。それしかないか。下手に動くよりその方が良さそうだな」

「はい。それに陛下の名代についても余裕をもって出発しておりますゆえ、数日街に滞在しても問題はござりませんからの」


 どうやら俺たちは、アゼルが襲ってくるまではその街に滞在することが決まったようだ。

 俺たちは、可能な限り目立ちたくないので、宿屋に籠りっきりになりそうな予感がする。


「それで、アゼルたちはどのように攻めてくると考えておるのだ?」


 ここで、王様が核心ともいえる質問を魔法師団長に投げ掛けた。

 普通に考えてこれが尤も重要なことだ。

 しかし、これに対して魔法師団長が緩く首を横に振った。


「残念ながら、そこまでは分かりませんじゃ。盗賊やデルアック、レイベド侯爵までもがおりますでの」

「確かに狡猾で厄介な奴らばかりだな」


 魔法師団長の話を聞いている限り、冒険者、盗賊、副騎士団長に、暗躍に長けた貴族と、確かに狡猾な者ばかりのような気がする。

 流石の魔法師団長もここまで揃うと読み切れないようだ。


「はいですじゃ。だからこそ街で迎え撃ちたいと考えておりますのじゃ。あの街は小さいながらもしっかりとした外壁も施された、防衛がし易い街ですからの」

「うむ。そうだな、それしかないな。分かった」


 幸いなことにその街は外壁で覆われた防衛に適した街のようなので、確かに魔法師団長が説明してくれた作戦と合致する。やはり適時対応というのが現実的な対処策ということだろう。

 魔法師団長から最注意と言われていた街が、決戦の最前線になるとは思わなかった。


「はい。儂からの説明は以上ですじゃ。皆様、何かござりますかの?」


 最後に魔法師団長がみんなに意見がないかを投げ掛ける。

 だが、誰もが納得の表情で、意見の声は上がらなかった。

 そこで、俺は魔法師団長の作戦とは異なるが、思いついたことを口にした。


「先程、ヘイズさんが持っておられたという物の中に、通信の魔晶石があると聞こえたんですが、間違いないでしょうか? もし、間違いないなら、それを偽装を継続される騎士の方に渡すことはできませんか? その代わりと言ってはなんですが、あと二つほど通信の魔晶石を用意しますので、それは、アルノルトさんと、念のためガレリックさんに預けさせてもらいますね。そうすれば、今回のように騎士を派兵された場合でも、こちらに連絡をもらうこともできると思いますので」


 俺の言葉を聞いて、王様と魔法師団長と騎士団長が驚いた顔でお互いを見合わせていている。


「それは構いませんが、それほどご用意していただいて大丈夫なのですかな?」

「はい。それなら大丈夫です。それくらいなら魔晶石は残ってますので」


 嘘ではない。実際のところ魔晶石はもっとあるが、ここで正直に伝える必要もないだろう。


「うむ。では、フェイル殿のお言葉に甘えさせていただきます。それでアルノルト、ヘイズたちのところへ向かった騎士に通信の魔晶石を預けられる者はおるか?」

「はい。それであれば、第三部隊副隊長のボエルが適任かと思います」


 俺の提案を受けて、王様と騎士団長が預けられる者を選出してくれた。


「分かりました。それじゃあ、オルフェス。騎士の皆さんのところへ向かう前に通信の魔晶石を預かって、そのボエルさんという方に渡してくれるか」

「はい。かしこまりました」


 これで偽装を継続する騎士の方たちからの連絡も可能となった。すでにアゼルが俺たちの方に向かっているのなら、彼らが襲撃される可能性は低いだろうが、それでも何があるか分からないので、持っていて損はない。

 ただし、ヘイズさんの事例もあるので、安心はできないが、それでも無いよりは良いと思える。


「うむ。フェイル殿、何から何まで感謝いたします」

「いえ、それは俺の方もなので、お気になさらないでください」


 王様が感謝の念を伝えてくれるが、それはお互い様だと思う。

 先程、王様から苦言を呈されたので言葉を飲み込んだが、正直なところ、俺が原因だという思いを完全に消し去ることはできないでいる。


「ふむ。それでは、他に意見がある方はおられませんかの?」


 俺の話も一段落して、魔法師団長が再び意見の確認をする。

 だが、ここでも誰からも意見が出ることはなかった。


「うむ。では、ガレリックが説明してくれた作戦で行く。フェイル殿、オルフェス殿、ネルフェア殿、ベルフェ殿、お手数をお掛けしますが、ご協力をお願いします」

「はい。分かりました」


 こうして、アゼルの襲撃によって急遽行われた緊急会議は終わりを迎えた。

 その後、オルフェスとネルフェアがヘイズさんが襲撃された場所に転移した。ネルフェアだけは、その後も遺体を何度か運んでは転移を繰り返していたが、ほどなくそれも終わりを告げた。この時、俺はネルフェアが、盗賊たちの遺体も証拠にと運んできたことには驚かされたが、これはこれで役に立つので歓迎されていた。

 う~ん。ネルフェアも俺がいないところでは優秀なんだよな。俺がそう思ったのは内緒である。


「フェイル殿、ネルフェア殿、感謝いたします」

「いえ、お役に立てたようで何よりです」

「それでは、フェイル様、儂らも戻りましょうかの?」

「ええ、そうですね。それでは失礼します」

「ええ、それでは明日もお待ちしております」


 最後に王様から感謝の言葉を貰い、最後の別れの挨拶を済ませると、俺たちは野営地に転移した。

 この時、何故か王様から明日も来いと言われた気がするが、これはきっと気のせいだろう。

 そして、俺たちが野営地に戻ると、魔法師団長が早速とばかりに騎士たちを集め、今日あったことや決まった作戦を告げていた。それを聞いた騎士たちの顔には悔しさと怒りが入り混じっていたことは言うまでもない。

 この間に、ベルフェには森へ行ってもらい、魔晶石を二つ取ってきてもらっている。明日、王様のところに行くまでに魔法陣を刻めば良いので、これについては明日にでも作業をする予定だ。

 こうして着々と準備を進めながら、俺たちはこの感情を秘めたまま、翌朝から速度を上げて決戦の街まで馬車を走らせることになる。


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