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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第二章

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魔法師団長の興味

「立ち寄る街は予定通り少ないんですね」

「できるだけ先を急ぎたいですからの。ただ、どうしても補給は必要となりますので、大体五日に一度は街に立ち寄る予定で組んでおりますのじゃ」


 魔法師団長が地図で示してくれた、補給で立ち寄る街は六ケ所となっている。

 このことから分かる通り、この国を出るまでにおよそ三十日間の旅になる。その後、国境を越えてからも移住先の王都まで更にその半分程度が掛かる予定なので、合計四十から五十日程度の長旅が予定されている。

 ちなみに、魔法師団長は俺が移住する国の王都まで共に旅をする。これは俺の護送が目的ではなく、その国の祭典に、魔法師団長が王様の名代で参加することになっているためだ。

 簡単な話し、俺たちは魔法師団長に雇われた私設護衛として同行する冒険者という立ち位置だ。

 では、護衛の騎士や魔法師たちが同行する中で、何故冒険者を雇うかという話だが、それは襲撃されて万が一撃退できずに逃走する際に、護衛が冒険者の方が目立たないという名目らしい。確かに冒険者の方が街道や街などでは目立たないが、これだけの騎士や魔法師がいる旅団が負けるなど考えられないので、正直、故事付けと言ってもいい。


「そして、立ち寄る街で特に注意が必要なのが、この街ですじゃ」

「確か、俺を毒殺しようとしたデルアックとかいう副騎士団長の親の領地でしたっけ?」


 俺を毒殺しようとした騎士は貴族の息子で、副騎士団長だったらしい。

 それは聞かされていたのだが、最初の作戦会議の時、俺がどんな人物か知らないことを告げると、騎士団長が丁寧に教えてくれた。

 その説明によると、その騎士は、俺たちが訓練場で騎士たちに取り囲まれた時に、騎士団長の隣にいた人物だったようだ。

 本当に迷惑な話である。その話を聞いて思い出してみたのだが、あれって絶対逆恨みだよな。

 騎士団長に意見して無残にもその意見が却下されたことを、俺の所為にして毒殺までされるとは思わなかった。


「ええ、その通りですじゃ。この街はその貴族が治める領地に隣接しておりますでの。何をしてくるか予想もできぬのですじゃ」


 騎士だけじゃなくて、親まで迷惑なのは本当に勘弁してほしい。

 魔法師団長の話によると、この貴族は野心家で欲が強く、王様の命にも従わない貴族の総元締めだということだ。魔法師団長が息子の毒殺未遂の件を伝えた時にも、笑い飛ばしたそうなので、相当な危険人物だと言える。その上、様々な犯罪に加担していると目されているのだが、巧妙でずる賢く証拠が掴めず捕まえられずいるそうだ。


「はぁ…、俺たちの正体がばれなくても良いってわけじゃなさそうですね」

「うむ。儂を狙ってきて、その罪をフェイル殿に被せるということもあり得ますでの」


 こんなの事前に何をしてくるか分かっていない限り、手の打ちようがない。

 もし、俺たちがこれで襲われたり、罪を擦り付けられたりしようものなら、オルフェスたちが黙っていないだろうしな。まぁ、そういう俺も切れる自信があるので、彼らのことは言えないけど。


「今は考えても仕方ありませんね。注意しておくようにします」

「うむ。そうしてもらえると助かりますじゃ。それ以外は、安心して旅を楽しんでくだされ」


 魔法師団長は暗にそう言うが、その言葉の裏には、ヘイズさんたちの囮がいるからこその言葉だと理解できる。

 フェールたちの護送はヘイズさんたちが担っており、俺たちは魔法師団長の隣国への表敬訪問ということを考えれば、アゼルを含め俺たちを狙う者たちがどちらを襲撃するかは、考えなくても分かる。

 俺としては、寧ろヘイズさんたちの方が心配なのだが、魔法師団長たちはそれを億尾にも出さない。

 俺はヘイズさんたちのことを思い浮かべてみる。あれだけの精鋭の騎士や魔法師がいれば、アゼルたちが相手でもそうそうのことはなさそうなので、魔法師団長たちは安心しているのかもしれないが。


「ありがとうございます。楽しめるかは分かりませんが、護衛冒険者として気は抜かずにお供させてもらいます」

「ふむ。こちらこそですじゃ」


 いずれにしても、野盗などの襲撃への警戒は必要なので、気を抜くことはない。

 そんなことは魔法師団長や騎士の皆さんも充分理解しているので、俺の言葉に異論はないようだ。


「あ、そう言えば、旅が始まれば俺たちは一介の冒険者ですので、ガレリックさんだけじゃなく騎士の皆さんも、俺たちのことは呼び捨てでお願いします」

「ふむ。致し方ありませんな。バルア、外ではそのように呼ぶように皆に申しつけておいてくれるかの」

「はい、かしこまりました」


 魔法師団長はわざわざ『外では』と付け加えたが、俺としては場所など関係なく敬称はなくしてほしい。

 これ、本当に居心地が悪いのだ。かなり慣れたとはいえ、それでもなくしてくれるなら、その方が嬉しい。


「あ、オルフェス、ネルフェア、ベルフェ。お前たちも、外では俺を呼ぶ時は『様』を付けないようにしてくれ。それと、ガレリックさんたちには『様』を付けるように頼むな」

「「「は! かしこまりました」」」


 実のところ、魔法師団長や騎士の皆さんより、オルフェスたちの方が心配だったりする。

 こいつらは俺の指示に命すら平気で賭けるので、敬称なしで呼ぶことができるのか不安になる。冒険者同士で『様』を付けるとか絶対あり得ないし。

 返事だけはいいんだけどな。


「確認は以上ですが、他に何か質問はございますかの?」

「なら、一ついいでしょうか?」

「うむ。なんでござりましょう?」

「俺たちはガレリックさんの私設護衛として一緒に馬車に乗ると聞いてたんですが、ここにいるテオ…、灰色狼たちは、馬車の周囲に配置すればいいですか?」


 魔法師団長の説明が終わったので、テオたちの配置について確認してみた。

 こいつらを一緒に馬車に乗せるわけにもいかないし、かといって俺たちと離れた状態の魔物が周囲を彷徨いていても良いのか判断ができなかったためだ。とはいえ、離れ過ぎても困ることになるので、判断が難しい。


「配置はそれでかまいませんじゃ。それよりも、その灰色狼たちには名前がございますのか?」


 配置については問題ないとの了承を得られたが、魔法師団長はなんとも不思議そうな表情でこいつらの名前について尋ねてきた。

 

「ああ、はい。みんな灰色狼で呼び難いので、名前を付けたんです。一番左がテオで、その隣がテラ、その横がテグで、最後がテナです」


 俺が彼らの名前を紹介していくと、俺に名前を呼ばれた灰色狼が立ち上がり、魔法師団長に向けて『クォン』と一鳴きしていた。

 それを見て、魔法師団長が更に不思議そうな表情を深める。


「ほぉ、これはまた賢い灰色狼でございますな。まるでフェイル殿の言葉を理解しているようですじゃ」


 俺もオルフェスたちに教えられるまでは知らなかったが、知能がある魔物は会話することができる。

 赤髪猪や砂蜥蜴などは、彼らの鳴き声に念は込められているが、それは欲望だけで会話にならないとのことだ。

 このため、冒険者が従属させる魔物の多くは命令に対する教育が必要なのだが、此処にいるテオたちは知能があるため会話が成立するので、教育の必要もなく俺たちが言っていることを理解する。

 もっとも、人間が魔物と会話すること自体がなく簡単な命令を伝えるだけなので、今のように紹介した時のような魔物の反応を、魔法師団長は初めて見たのだと思う。


「ああ、理解してますよ」

「うむ? それは、その灰色狼たちが人間の言葉を理解しているということですかな?」


 魔法師団長が俺の返答に困惑気味に問い返してきた。


「人間の言葉というわけではないですけど、言葉の意味は理解していますね」

「言葉の意味とは、どういうことですかの?」


 これからテオたちと旅を共にすれば、俺たちが会話しているところを頻繫に見られることが予想される。

 このため、魔法師団長とバルアさんには、テオたちが理解していることを知っておいてもらった方が良いと思ったのだが、俺の言葉が回り諄かった所為か、魔法師団長には理解してもらえなかったようだ。

 まぁ、半分は魔法師団長の興味からの質問だと思えるが。


「言葉には念、簡単に言えば想いというものが込められていて、それを受け取ってるんですよ」

「念? 想いですかの? そのようなものが言葉に込められているというは、初めて聞きますの…」


 魔法師団長は俺の回答を聞いて難しい顔で考えている。

 その反応は尤もだ。念を知っているなら、そもそも既に魔物と話せる者がいるということになる。


「俺もオルフェスたちに聞くまでは知りませんでしたから、知らなくても当然だと思います」

「それはもしかして、オルフェス殿たちも、その念というものを受け取れるのですかな?」


 普通に考えれば、念を知っているなら、受け取ることもできると考えて当然だ。特に不思議なことはない。


「はい。そうですね」

「うむ。では、もしかして灰色狼たちとも、念を通じて会話をされているということですかな?」


 念を受け取れる者が、念を送れないなど不自然なことだと誰もが思ので、この疑問も不思議ではない。

 それに、そこを否定しても、では何故、テオたちが念を受け取っていると断言できるのか、と突っ込まれて終わる。

 話した内容にテオたちが正確に反応しているから、と説明できなくもないが、何処かで破綻する気がする。


「まぁ、そうなりますね」

「なんと!? それはもしかして、フェイル殿もですかな?」


 魔法師団長の質問が止まらないが、ここが一番知りたいところだと予想できる。

 隠す気はないので問題はない。

 それに、俺としては、できれば魔物と会話をする人間が増えて欲しい気持ちもある。

 念が受け取れると言っても、主従などで繋がっていなければ念話ができるわけではないし、通話の魔法陣も知らないので、魔法師団長が通話の魔晶石を作れるようになり、命を狙われるということもないだろう。

 そう考えると、魔物と会話する人間が増えることにより、人間の魔物に対する認識が変わってくれればと思う。


「はい。できますよ。苦労しましたけど」

「そうでしたか…。それは、なんとも驚きですな。それで、それは儂にもできそうなものなのですかの?」


 魔法師団長の質問が、俺の期待通りの質問であったことに満足する。

 ただ、人間の言葉を聞きながら、言葉と同じ内容の念を感じ取るのは難しい。

 俺は、オルフェスの方に視線を向けた。俺の時のように、オルフェスたちが協力してくれたらできるかもしれない。

 オルフェスは、俺のその視線に肩を窄めて、やれやれと軽く首を横に振っている。


「いいですよ。協力いたします。ただし、ガレリック。報酬はもらうぞ」

「ええ、それは勿論でございますじゃ」


 魔法師団長はオルフェスが協力してくれることに相好を崩した。

 っていうか、報酬取るのかよ。まぁ、俺たちは冒険者だから依頼に報酬は付き物だけど、でも俺たちのためにここまでしてくれている人たちから報酬を獲るのは忍びない。


「報酬はおいといて、オルフェス、頼むな」

「分かりました。では、ガレリック、明日から始めるとしようか」

「はい。よろしくお願いいたしますじゃ」


 報酬の件はそれとなく流しながら、オルフェスに依頼する。

 これで、魔法師団長が念を受け取ることができるようになれば、魔物と話す者が増えるかもしれない。

 淡い期待かもしれないが、これを契機に魔物に対する人間の認識が変わることを願ってしまう。


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