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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第二章

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魔物との遭遇

「あの、それはベルフェ様が、わたくしたちに短剣の使い方を、教えていただけるということでしょうか?」


 珍しくフィリエさんが、肘を曲げ両手を胸の前で組んで、懇願するようにベルフェを見ている。

 昨日、みんなで自由に協力するように言ってあるので、これ以上、俺が口を挟むことはしない。

 それに、フィリエさんの懇願は、意外とベルフェに刺さると思っているのも、俺が口を出さない理由になっている。


「いいでしょう。フェイル様のお役に立てるように、私が鍛えて差し上げましょう」

「ありがとうございます」


 だよね。なんとなくそうなると思っていた。

 ベルフェは立ち上がると、フィリエさんを引き連れて短剣の訓練をしている者たちのところへ向かっていく。

 なんというか、ベルフェは、配下とはこうあるべきというような理想を持っている気がする。そういう点でいくと、俺の配下であるガロアやフィリエさん、アイネラたちが強くなることも、そのために教えることも当然のように思っている節がある。

 ただ、その考え方の中心が俺なのはどうかと思うが、ベルフェが優しいのも確かなので、今はそれで充分だろう。


「あのあの、あの…、オルフェス様。もしよければ、私たちに魔法を教えていただけませんか?」

「オルフェス様、我からもお願いいたします」


 ベルフェとフィリエさんが去っていくのを目で追っていたアイネラが振り返ると、意を決したようにオルフェスに魔法を教えてほしいと懇願し始めた。

 これにガロアも便乗している。

 うんうん。これはいい傾向ではないだろうか。俺が昨日言ったことを、即座に実践してくれているのは嬉しい。


「分かった。では、有効な魔法の使い方を教えてやろう」

「「オルフェス様。ありがとうございます!」」


 ベルフェが教えに行った以上、オルフェスが断るとは思えないし、そもそもオルフェスはこういうことに寛大なので、こうなることも予想できた。

 こうして、オルフェスもアイネラとガロアを引き連れて皆が訓練しているところに向かって歩き出した。


「なぁ、お前は何か教えてやらないのか?」

「わたくしはフェイル様の護衛ですから、お傍を離れるわけには参りません!」


 う~ん。こいつだけは、ぶれないな。

 アイネラは最初、オルフェスではなくネルフェアに視線を向けたのだが、こいつは綺麗な笑顔でそれを黙殺したのだ。言外に『わたくしに頼むな』と言われていることを感じ取ったアイネラが、矛先を変えてオルフェスに頼んだことは、俺の目からも明らかだった。

 ネルフェアとアイネラって絶対気が合うと思うんだけどな。まぁ、こいつらが組んだら組んだで、怖くて目が離せなくなるかもしれないが。


 しかしさて、これはどうしたものか。

 俺とネルフェア以外の者が訓練に行ってしまったので、何もすることがなくなってしまった。

 いや、そもそもやることは無かったのだが、話し相手すらいなくなったのは、少し寂しい。

 俺も訓練に参加するか? でも、俺が加わると、みんなが気を遣いそうな気がするので、躊躇われる。

 と、その時、俺の頭に妙案が浮かんだ。


『なぁ、オルフェス、ベルフェ。俺は少し出掛けてくるな』


 俺は即座に、頭の中にオルフェスとベルフェとネルフェアの姿を思い浮かべて、念話を繋いだ。

 別にオルフェスとベルフェに言う必要もないのだが、言っておかないと、彼らが気づいた時点で念話が掛かってきそうなので、俺が心行くまで楽しむためにも言っておくことにした。


『どちらに行かれるのですか?』

『ああ、昨日フィリエさんから聞いた浮遊草(ふゆうそう)の群生地に行ってみようかと思ってるんだ』


 俺は、オルフェスとベルフェに行き先を告げる。

 こうしておけば、俺が帰ってくるまで、彼らも心置きなく教えられるだろう。

 昨日、フィリエさんから聞いた時点で、浮遊草を是非とも体験したいと思っていたので、今が丁度都合がいいと思ったのだ。


『ネルフェアも連れて行かれるんですよね?』

『ああ、そのつもりだ』

『そうですか、分かりました。ネルフェア、フェイル様を頼むぞ』

『ええ、ネルフェア。何があってもフェイル様をお守りしてください』

『ええ、任せてください。わたくしはフェイル様の護衛ですからね!』


 こうして俺たちは、予想外の自由行動をすることになった。

 まぁ、ネルフェアがいるので、完全な自由行動ではないが、こうしてオルフェス、ベルフェ、ネルフェアがそれぞれ異なる行動を取るのは初めてのことなので、自由行動と言っても差し支えないだろう。


「じゃあネルフェア、行くか」

「はい。フェイル様、行きましょう! あ、でも、フェイル様は浮遊草が何処に生えているかご存じなんですか?」

「え? 知らないけど、少し北に行った沼地に群生しているらしいから、取り敢えずは、北に向かって行けばいいんじゃないか?」

「確かにそうですね!」


 なんとも不安な会話だが、これぞ冒険という感じがしてワクワクする。

 それにいざとなれば、ネルフェアの転移で戻って来れるので、迷子になっても問題がない。こういうところも、曖昧な目的地に向かうことに拍車を掛けている。


 こうして結界を抜けて北へ向かうこと暫し。


「なぁ、ネルフェア。此処、何処だろな?」

「何処でしょうね?」

「俺たち、北に向かって歩いてたよな?」

「はい。それは間違いありません」


 そう。俺たちは迷子になってしまったらしい。

 そして何故か、目の前に小郎鬼(しょうろうき)の集落があり、そこから出てきた小郎鬼たちが、粗末な木製の槍などを持って、俺たちの目の前に立ち塞がっている。

 小郎鬼は初級冒険者が討伐できる魔物として有名だ。ただ、集落ともなればこの限りではないが、それでも最近、俺も自分の強さが自覚できてきたため、慌てるほどの魔物ではなくなっている。

 それに、ガロアやフィリエさんやアイネラたちの方が遥かに強そうなので、小郎鬼たちを見ても恐怖心が全く湧いてこない。慣れって恐ろしいよね。


「なぁ、これどうしたらいいと思う?」

「蹴散らしますか?」

「いや、それはまずいだろう? というか、俺たちが迷い込んで迷惑掛けてるだけだしな」


 これは逃げた方が良いのだろうが、俺たちが呑気に喋っている間に、後方にも小郎鬼が数体回り込んでいた。

 途中で、迷子かなとは思ったので、ネルフェアに空から見てもらおうとはしたんだよ。でも、ネルフェアが俺から離れるわけにはいかないと頑なに拒否したために、場所を確認することもできずに迷子になった挙句、今、小郎鬼に取り囲まれているというわけだ。


「お前たちは何者だ!?」


 俺たちがどうしようか思案していると、小郎鬼の方から声を掛けてきてくれた。

 口を開いたのは、小郎鬼たちの真ん中にいる少し老いたように見える小郎鬼だ。

 その声に俺は思わずほっと息を吐く。話が通じるなら、なんとかなりそうだ。


「あ、俺たちに戦う意思はないんで、安心してください」

「戦う意思がないだと!? ならば、大人しく俺たちの食い物になるがいい!」


 俺はまずは話をする前に、戦う意思がないこと伝えて戦闘態勢を解いてもらおうとしたのだが、なんと返ってきたのは、俺の予想を裏切る非情な言葉だった。


「ほぅ、お前たちは、フェイル様を食べるというのですか?」


 ネルフェアは小郎鬼の言葉に一瞬で怒気を露わにし、手から業火を吹き上がらせた。

 うん。まぁ、そうなるよね。ネルフェアだしね。

 もちろん、ネルフェアも本気で小郎鬼たちを焼く気はないようだ。というのも、こいつが本気ならすでに小郎鬼たちは消し炭になっている。


「「「ひぃぃぃ!」」」


 ネルフェアの業火を見て、小郎鬼たちが悲鳴を上げて怯えだした。


「もう一度言いますけど、俺たちに戦う意思はないんで、武装を解いてください」

「ほ、本当か!?」


 俺は、改めてもう一度武装解除をお願いしてみる。

 ただ、小郎鬼たちは完全に怯えきっていて、俺たちのことを信用できないようだ。

 業火を見せた時点で完全に脅迫になっているので、信用しろといっても難しいのも良く分かる。


「ほぅ、まだ、フェイル様を疑いますか」

「「「ひぃぃぃ」」」


 ネルフェアは、小郎鬼たちの態度が気に食わないのか、業火を携えたまま一歩前に踏み出した。

 それに再び小郎鬼たちが悲鳴を上げる。

 このままでは埒が明きそうにない。


「ネルフェア、やめろ。それと、その火を引っ込めてくれ」

「はい、フェイル様。かしこまりました」


 俺はネルフェアに火を消すよう指示をしてから、再度、小郎鬼たちに向き合う。

 小郎鬼たちは、俺がネルフェアに命じたことで、驚愕の色で俺を見ている。

 これで漸く話ができるかと思い、俺は一歩足を踏み出した。

 その途端、小郎鬼たちが一斉に両足を揃て地べたに座り、頭を地に付けた。


「も、申し訳ございません。ど、ど、どうか、お許しください」


 う~ん。小郎鬼たちの落差が酷い。

 食べると言ったかと思うと、今度は土下座。脅した俺たちにも責任はあるが、もっとこう最初から敵対行動をとるのではなく、話し合いをするという習慣はないのだろうか?


「ああ、別にあなたたちをどうこうしようとは思っていないので、安心してください。それより、俺たちは南から来たんですけど、どうも迷子になってしまったみたいで、困ってたんです。この辺に浮遊草が群生している沼地があるはずなんですけど、何処にあるか知ってますか?」


 俺は頭を地に付ける小郎鬼たちを宥めながら、聞きたかったことを問う。

 俺たちは目下、迷子なのだ。たまたま小郎鬼たちの集落に行き着いただけで、本来なら今頃沼地で楽しく遊んでいるはずなのだ。って、いうか、本当に此処どこ?


「あ、あの…、沼地ですか…。あのような恐ろしいところへ行かれるのでしょうか?」


 小郎鬼たちは、俺の質問に驚いて、隣にいる者と互いに顔を見合わせている。

 返答の内容から小郎鬼たちは、沼地を知っているような気配だが、どういうことだろう?


「恐ろしいところ?」

「は、はい。あそこには沼蜥蜴(ぬまとかげ)という恐ろしい魔物がおるのです」

「なぁ、ネルフェア。沼蜥蜴って知ってるか?」

「はい。沼に棲む砂蜥蜴みたいなものですね」


 俺が小郎鬼たちに問い返して出てきた魔物の名前についてネルフェアに確認すると、簡潔な答えが返ってきた。


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