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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第一章

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警戒態勢の指示

「なぁ、オルフェス。妖鬼って魔物のことを知ってるか? 知ってたら教えてくれ」

「妖鬼は、冥界からこちらに召喚された幽鬼が、この生界で受肉してこの生界に留まった者の子孫ですね」

「ええ、軟弱なやつらです」


 妖鬼の詳細な情報を知りたくてオルフェスに尋ねてみたところ、思った以上の情報が出てきた。

 幽鬼の王のネルフェアからすれば、逃げた者たちぐらいに思っているのかもしれない。


「受肉ってなんだ?」

「俺たちの体って魔素で構成されているというお話はしたと思うんですが、この生界により適合するために、生物の死体を糧に生物と同じ体を得ることですね」

「それって、殺した人間や魔物の死体を使って新たな肉体を造ったってことか?」

「ええ、そうです。それなりに死体の数が必要になるので面倒ですし、普通はしないんですが、冥界に戻りたくなかった者たちが、この生界で暮らせるように受肉したんです」


 オルフェスの話を聞く限り、ネルフェアの言葉通りなのかもしれない。

 それにしても、この生界に留まるために、そこまでするかね? まぁ、冥界は此処より過酷そうだからあり得なくもないか。


「元が幽鬼で、この生界に適合してるなら、それなりの強さがあるってことだな…」

「ええ、まぁそうですね。確か北の大地に国を築いていたはずなので、この森にもいるとは思いませんでしたが」

「え?」


 俺はオルフェスの言葉が衝撃的過ぎて驚いてしまう。

 北の大地に国を築いてるって、それ、魔王じゃないか!

 う~ん。そういうことなら、それに対抗できる魔物がここに十体前後いることが凄いことなのかもしれない。


「オルフェス、ネルフェア、ベルフェなら対処可能か?」

「ええ、何の問題もありませんよ」

「はい。お望みなら、今すぐにでも北の大地へ行って、その国を滅ぼしてきます」

「ええ、いつでもお申し付けくださいませ」

「いや、滅ぼさなくていいから!」


 対処可能か聞いただけなのに、何故かとんでもない答えが返ってくる。

 それに、今対策が必要なのは、北の大地にいる妖鬼じゃなくて、この森にいるやつだからな。

 まぁ、本気ではないだろうが、ネルフェアとベルフェが自然な微笑みを携えているのが、ほんの少し本当にやりそうで怖い。意外とこいつら仲間想いだからな。


「ちなみに妖鬼って空を飛べるのか? その、上空にいる飛妖女(ひようめ)たちが襲われることがあるのか知りたいんだけど」

「いえ、あいつらは受肉した際に翼をなくしてますから、空は飛べませんね。上空に向かって魔法を打つことはできるでしょうけど、それも届く範囲が限られていますし、アイネラたちが高度を保っている限りは大丈夫だと思いますよ」


 それを聞いて俺は少し安心した。地上はどうしようもないが、安全圏があるのとないのとでは大違いだ。


「アイネラ。お前たちは上空から攻撃する手段ってあるか?」


 俺はアイネラの方に視線を向けて尋ねてみた。それによって、できることが違ってくる。

 魔法はそもそも苦手のようだが、射程圏を考えれば、あっても役に立たないし、他の手段があることに期待する。


「弓は使えますけど、高度があると牽制ぐらいしかできないと思います」

「そうか、ありがとう。それでも、あるだけ充分だ」


 今情報として欲しいのはこれぐらいか。

 どういう攻撃手段を持っているかなども知りたいが、取り急ぎ、こいつらに戦わせる気はないので今はいい。

 俺は得られた情報から、できる限りの対策を考えてみた。


「それじゃあ、アイネラたち飛妖女には、上空からの警戒を頼む。巡回中は決して高度は落とさないように。もし妖鬼と思わしき者を見つけたら、連携を取ってみんなに即時連絡をしてくれ。アイネラたちから連絡があったら、全員、この結界まで即座に撤退するように。あと、アイネラたちからの連絡がなくとも、妖鬼と遭遇したら即座に撤退すること。撤退する際に連絡ができればいいが、その余裕がなければ撤退を優先だ。アイネラも撤退している者たちがいたら、連絡と同時に弓で撤退の支援をしてくれ。それと、ガロアとフィリエさん、アイネラは、それをネルフェアかベルフェに連絡を頼む。ネルフェアとベルフェはみんなからの連絡は受け漏らすな。あと、ベルフェはアイネラたちに弓と矢を造ってやってくれるか? 連絡を貰った後は、どう対処するかは状況を見て考えることになるだろうが、必ず命を最優先して行動するようにしてくれ。以上だ 」

「「「は! かしこまりました」」」


 これで、取り合えずは大丈夫だろうか?

 この結界内に逃げ込めれば、後はなんとでもなる。まずは全員がこの結界内に入ることが最優先だ。

 俺の方も、国外への移動中を狙われるかもしれないので、最悪の場合、俺の方と此処での同時対処が必要になる可能性もある。このため、状況を見て臨機応変に対処できるようにしておいた方がいいだろう。

 俺たちの旅の出発日の話から、とんでもない話に派生したが、事前に分かって良かった。


「あ、そうだ、ガロア。こんな時に悪いけど、俺たちが人間の国で暮らすために、灰色狼を四体借りたいんだけど、連れて行ってもいいか?」


 俺はもう一つ大事なことを思い出して、ガロアに声を掛けた。


「四体でございますか? それは構いませんが、それは、その者たちが人間の国でフェイル様方と一緒に暮らすということでしょうか?」

「ありがとう。ああ、そうなるな。俺たちが人間の国で冒険者をするために魔物を従えておく必要があるんだ。だから、基本的に一緒に暮らしてもらうことになると思ってくれ。ただ、寝泊りは魔物用の厩舎になるから、そこは済まないけど了承してほしい」


 俺は人間の国に灰色狼を連れていく理由と、暮らしについて簡単に説明した。

 何もない時に、街中を魔物を連れて歩けないので、四六時中一緒とはならないことも合わせて告げておいた。


「そうですか…。それは皆が行きたがるでしょうから、選別が熾烈化しそうですね…」

「あ、いや、弱い者を四体でお願いしたんだよ」


 俺は皆が行きたがるという話を聞いて、即座に連れていきたい者の条件を補足する。

 ガロアたち魔物は弱肉強食が基本だから、彼らに任せると強い者が選ばれそうだが、それでは困るのだ。


「強い者ではなく、弱い者ですか?」

「ああ、人間の国では、お前たちは強い方なんだよ。だから強過ぎると目立ってしまうから困るんだ」

「分かりました。では、弱い者を中心に四体選別するようにしておきます」

「ああ、頼む。出発は四日後だけど、連れて行くのはそれより数日あとになるから、それまでに選んでおいてもらえると助かる。ちなみに無理強いだけはしないでくれるか」

「はい。了解いたしました」


 うん。ガロアからも了承を得られたので、これで大丈夫だろう。

 もし、誰も行きたがらなければ悲しいことになるが、その時は、俺がみんなに直接頼み込むしかないかな。

 それでも駄目なら、その時考えよう。最悪、他の灰色狼を見つけて、強制的に連れて行くしかないだろうけど。


「他に誰か、気になることや報告することがある者はいないか? あれば、遠慮せずに教えてくれ」


 俺は念のため、みんなに聞いてみる。

 しかし、皆が軽く首を横に振って、誰も口を開く者はいなかった。

 もし、妖鬼みたいな情報が他にあるなら知っておきたかったのだが、そんなことがそうそうあっても困るので、他に報告がなかったことに少しばかり安堵した。


「いないみたいだな。それじゃあ、オルフェス。通信の魔法陣を教えてくれるか?」


 他に報告するものがいないことを確認してから、俺はオルフェスに声を掛けた。

 ベルフェはアイネラを隣に呼んで、早速弓を造り始めている。


「はい。分かりました。では、今から俺の掌の上に魔法陣を描きますので、それを覚えてください」

「ああ、分かった」


 俺の頼みに答えてオルフェスが掌の上に魔法陣を出してくれる。

 俺はそれが良く見えるように覗き込んで、頭の中に写し取っていく。


「今は、魔法陣が分かり易いように大きく描いてますが、これを魔晶石より小さく描いてください」

「ああ、分かった。やってみるな」


 俺はオルフェスに言われたように小さく魔法陣を描こうとしてみたが、失敗に終わってしまった。

 その後も何度か試してみるが、どうも上手く描けない。

 魔晶石より小さくするためには、線を細く繊細に描く必要があるのだが、どうしても線が太くなり、重なり合ってしまって魔法陣が潰れてしまう。

 オルフェスたちが簡単に魔法陣を描いていたので、俺にもできるだろうと思っていたが、想像以上に難しかしい。


「最初は小さくなくても、綺麗に描くことだけを意識して描いてみてください。そこから線を細く小さくしていけば良いと思いますよ」


 確かにそうだな。まずはちゃんと描けないことには始まらない。

 魔法陣に魔力は流したことはあるが、魔法陣自体を魔力で描くのは初めてなので、最初からできるはずもないか。

 俺はもう一度、自分で描ける太さに合わせて魔法陣を描いてみる。


「う~ん。魔法陣は描けたけど、大きいな…」


 俺は自分の掌の上に描いた魔法陣を見て肩を落とす。

 俺の描けた魔法陣は俺の掌より一回り大きかった。

 これを小指の先程度の魔晶石より小さくすると思うと、少し気が遠くなる。


「最初は描けるだけでも充分凄いことですよ」

「ええ、フェイル様ならすぐに描けるようになられるかと思います」

「そうです! フェイル様ならすぐです!」


 気落ちした俺を見て、オルフェスとネルフェアとベルフェが俺を励ましてくれる。

 こいつらは俺を褒めることに全力なので、どこまで信じていいのか分からないが、それでも気力が湧いてくる。

 いつの間にか弓を造り終えて、ベルフェも俺たちのことを見ていたようだ。本当に物質創造って反則だよな。


「ふえ~。初めてで魔法陣が描けるなんて、フェイル様ってやっぱり凄いですね」


 ベルフェに呼ばれていたアイネラも、作業が終わった後に俺を見ていたようで、感心したように呟くと、自分の掌に視線を向けた。


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