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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第一章

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脅威の予感

 王様との最後の話を終えて気が楽になった俺は、牢屋で魔法師団長の作戦を冷静に復習しながら時間を潰し、皆が寝静まる夜半にいつも通り森へやってきた。

 昨日、みんなに勢力拡大をする気がないことを告げているので、予定外の事態は起こっていないはずだ。


「「フェイル様、お待ちしておりました」」

「ああ、今日もよろしく頼みますね」


 俺たちを見て、フィリエさんとガロアが近付いてきた。

 種族を代表して、いつもフィリエさんとガロアが一緒に俺のところへ挨拶に来るので、アイネラも一緒なのかと思っていたが、違ったようだ。

 もしかして、新人だから遠慮してるとか、すでに序列ができていて、アイネラ含めて飛妖女(ひようめ)たちは他の灰色狼や樹木の精と同列扱いになっていたりするのかな? 魔物の世界はよく分からないけど、あり得そうだ。


「フェイル様~。お待ちしておりました~」


 俺がアイネラがいないことについて考えていると、遠くから明るい声が響いた。

 俺はその方向に顔を向けると、アイネラが上空から一直線にこちらに手を振りながら降下してくるのが見えた。

 彼女は俺の前に降り立つと、背筋を伸ばしてとびっきりの笑顔で敬礼してくる。


「周辺を巡回しましたが、周辺に敵はおりませんでした!」


 なるほど。アイネラは上空から警備をしていたのか。

 って、そうじゃない! こいつ、こんな性格だったか!?

 言葉は一見丁寧なんだけど、全く重みを感じない。

 昨日は、もの凄く真面目で厳格な印象だったのに、急に変わり過ぎだろ。


「なぁ、お前って、そんな性格だったの?」

「はい。そうですけど、何か変ですか?」


 昨日と変わり過ぎていることに驚いて尋ねてみたのだが、アイネラは俺の質問に不思議そうに首を傾げて問い返してきた。

 そうかぁ~、こいつ無自覚か~。これ、ネルフェアと同類だわ。

 ネルフェアの同類は、あまり増えて欲しくないと思っていたが、どうやら増えてしまったようだ。


「あ、いや、変じゃないから大丈夫だ」

「それなら、良かったです!」


 いや、思いっきり変だけどね。

 それを言うと、落ち込んだり気落ちしたりするのはネルフェアで経験済みなので、そんな愚行は犯さない。

 こういうやつは、どうしても注意が必要な時以外は、伸び伸びと活動させるのが一番周りの被害がなくて済んだりする。


「あ、フィリエちゃん、フェイル様とのお話の邪魔しちゃった?」


 アイネラの横でおろおろしているフィリエさんが目に付いたのか、アイネラがフィリエさんに問い掛けた。

 軽いな~。気遣いはできているんだけど、そこじゃないんだよな~。

 フィリエさんは言葉遣いが丁寧なので、きっとアイネラの言動に冷や冷やしているのだと思うよ。

 それにしても、昨日の今日で、『ちゃん』付け呼びは、もしかして、あのネルフェアを越えているかもしれないな。

 なんだか一気に頭が痛くなってきた。


「あ、いえ、そうではないのですが…。そうですね。お話の途中でした。フェイル様、すでにお食事の準備が整っておりますので、お席の方でお待ちくださいませ。皆様方もご一緒にお席の方でお待ちください」


 フィリエさんもアイネラの扱いに困っているようだ。

 うんうん。それ、分かるよ~。後でこっそり扱い方を教えてあげた方が良いかな?


「ありがとうございます。じゃあ、行こうか」


 俺はフィリエさんの勧めに応じて、オルフェスたちに声を掛けるといつもの席へ移動する。

 王様との話で頭を使ってお腹が減っているので、すぐに食べられるのはありがたい。

 そういう意味では、肉料理ができるアイネラが加わったのは助かっている。

 それに、意外と場を明るくするので、ネルフェアが此処にいない時の雰囲気作りには打って付けだろ。

 こういう者たちと付き合うのに重要なのは、楽しむことと慣れなのだ。


「じゃあ、私も手伝うね~」


 フィリエさんが料理を取りに移動したのを見て、アイネラも元気にフィリエさんの後を追っていく。

 まぁ、仲良く仕事をしているなら、今はこのままでもいいだろう。


「お待たせいたしました」

「お待たせいたしました~」


 俺たちがいつもの場所に腰を下ろして少しすると、フィリエさんとアイネラが食事を運んできてくれた。

 うん。同じ言葉なのに全然違うものに聞こえる。

 王様の書斎にいた給仕と、街の酒場の給仕の違いと言えば分かるだろうか。

 俺はその違いに思わず声を出して笑いそうになってしまった。


「ありがとうございます」

「今日は赤幻鳥(せきげんちょう)でございます。どうぞお召し上がりください」


 俺はフィリエさんにお礼を言って、食事を受け取った。

 名前に『鳥』が付くので、今日もアイネラが狩ってきたのかな?

 見た目は、引き締まった感じではなくぷりぷりした肉質に見える。

 肉厚があるので、それなりに口を開かないと口に入らなさそうだ。


「これもアイネラが狩って来たのか?」

「それはガロアさんとフィリエちゃんたちと、みんなで協力して狩りました~」


 アイネラの答えが想像していたものと違っていて、俺は首を傾げる。


「うん? でも、ガロアもフィリエさんも空を飛べないだろ?」

「それは鳥ですけど、飛ばないんです。こうやって、地上を歩いてるんです」


 アイネラは何を思ったか、片方の手を嘴のようにして口につけて、腰を前屈みに曲げながら、ぴょこぴょこと歩き出した。

 うん。分からん。赤幻鳥を真似ているのだろうが、どんな鳥でも地上を歩いたら全部そうなる。

 というか、それ必要か?

 俺の横では、ネルフェアが楽しそうに手を叩きながら感心しているが、オルフェスとベルフェは呆れたような眼差しで見ている。やっぱりネルフェアには通じるものがあるようだ。


「赤幻鳥はわたくしの腰ぐらいの体高で丸みを帯びた体型をしていて、歩くのも遅く狩りやすい魔物なのですが、周囲に擬態するために、見つけるのが難しいのでございます。今回は、少し変わり種をということで、ガロア殿とアイネラ殿たちと協力して、見つけ出しました。味は淡白ですが、食感はお楽しみいただけると思います」


 アイネラの説明では分からないだろうと思ったフィリエさんが、赤幻鳥について教えてくれた。

 ガロアが嗅覚と聴覚、アイネラが空から視覚を使って探し出したということか。フィリエも視覚かな。

 どおりで肉が締まっていないと思った。


「じゃあ、食べてみますね」


 俺はそう言うと、大きな口を開けて肉に噛り付いた。

 噛んだ瞬間、最初は歯に押されて潰れるような感触なのに、次の瞬間、ぷちっと弾けるように身が切れた。

 確かに面白い食感だ。恐らく弾力があり過ぎてこんな食感になっているのだろうが、最後の『ぷちっ』と弾けるように切れる瞬間が実に楽しい。

 淡白な味ではあるが、思った以上に脂も乗っており、その脂の甘みを引き出す絶妙な塩加減が効いている。


「楽しい食感ですね。味も塩加減が絶妙で美味しいです」

「お気に召していただけたようで、何よりでございます」


 偶にはこういうのもいいな。

 肉の味だけではなく、食感まで味わえると思ってもいなかった。

 こうして俺たちは、未知の体験を含めて一風変わった食事を楽しんだ。

 森に来てから数日なのに、日に日に食事が進化していて満足感が常に満たされている。


「あ、そうだ。ガロア、フィリエさん、アイネラ。俺たちの出発日は四日後の明朝になったから、此処に来れるのは明々後日の夜までになる。ただ、明々後日の夜までは来るとは思うけど、食事をしたらすぐ戻ることになりそうだ。次の日、朝早いしな。あ、それと、出発した数日後に此処で二泊ほどすることになると思う」


 食事を終えて落ち着いた頃を見計らって、みんなに旅の出発日を告げた。


「フェイル様の出発日をお聞きした途端、急に寂しさが襲って参りますな」

「私は昨日、フェイル様の配下になれたのに、こんなに早く会えなくなるのは寂しいです」

「明後日の明朝でございますか。寂しくなりますが、仕方がございませんね。それまでに、フェイル様の改名の宴が催せれば良いのですが、少々、気になることもあり、もう少し先なることをお許しください」


 ガロア、アイネラ、フィリエさんがそれぞれ寂しい気持ちを口にした。

 こいつらのことだから、社交辞令ということはないだろうが、こういう言葉を掛けてもらえるのは、仮にそうだだとしても嬉しくなる。

 ただ、それ以上に、少し気になる言葉を耳にして、俺の意識がそちらに向いた。


「フィリエさん。宴はもっと先でもいいんですが、気になることってなんですか?」


 フィリエさんは、一瞬言葉に詰まったように口元に手を当てて、しまった、とばかりにガロアとアイネラの顔を見た。

 ガロアとアイネラは、フィリエさんの視線を受けて互いに顔を見合わせ、困ったように眉を下げながら、小さく頷きを返している。


「フェイル様へご報告して、お手を煩わるつもりはなかったのですが…、ここ数日、妖鬼(ようき)の動きが活発化しておりまして、度々、ガロア殿の縄張りで見掛けるようになったのでございます」


 フィリエさんの話によると、此処から少し西に行った処に妖鬼という魔物の集落があり、彼らの偵察隊と思われる者たちが、ガロアの縄張りに入ってくることがあるそうだ。そもそも彼らは、森の中心に向けて勢力を伸ばそうとしていたはずなのだが、何故か反対方向のこちらへ部隊を送っているので、それが気になっていることを付け加えてくれた。

 それで、今日俺が此処へっ来た時に、アイネラが『周辺に敵はいませんでした』と報告してきたのか。てっきりいつのも警備程度に思ってわ。


「それで、その妖鬼って強いんですか?」

「此処にいる、わたくしの同胞たちですと、妖鬼と対等以上に渡り合えるのは、わたくしを含めても数体程度でございます」

「我の配下も同じようなものでございます」

「私のところも同じです」


 う~ん。全員合わせても対抗できるのが十体前後というところか。

 妖鬼の集落があるみたいだし、心許ないな。

 此処には結界があるけど、結界の外に出ることもあるだろうから対策が必要だ。

 ただ、対策を練るにしても、その妖鬼という魔物の情報がもっと欲しい。


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