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魔王たちの主  作者: 御家 宅
第一章

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強さの証明

「…そ、それは…、まさか…元素魔法(げんそまほう)…」


 魔法師団長は、その魔法陣を見て、言葉を詰まらせた。

 額から一筋の汗が滴り落ちているので、相当な驚きが魔法師団長を襲っているのが分かる。

 騎士団長とギルド長は、眉間に皺を寄せて魔法陣を見ている。こちらは、恐らく魔法陣自体は知らないのだろうが、魔法師団長の様子から危険なものだということは理解したような感じだ。


「ほう。良く知っていたな。そうだ、これは元素魔法< 物質分解(ぶっしつぶんかい)>という魔法だ。今は発動させていないが、これが発動すれば、この街は一瞬で何も残らず更地になる魔法だな」


 オルディスが魔法の解説を行ったことで、その魔法の危険性を理解したのか、全員が慌てふためいている。

 斯く言う俺も、驚きで言葉が出ない。

 というか、こいつらこれを俺に使おうとしてたのか? って、こいつら馬鹿じゃないか? 頭大丈夫か?

 これはあとで使用禁止にしておかないと、とんでもないことになりそうだ。


「では、ガレリックだったか…。これが発動しないように、全力で魔力を当てて消滅させてみろ」


 いや、発動しないように、じゃなくて、発動させるな!

 俺はとっさに突っ込みそうになったが、万が一、その拍子に発動しては困るので、思いとどまる。

 その代わりと言ってはなんだが、オルディスを睨んでおいた。


 魔法師団長は顔を引き締めると、立ち上がって魔法陣に向かって手を突き出した。

 発動しないと分かっていても、このように言われると止めようとするのが人の性というやつだ。

 しかし、いつまで経っても魔法陣は消滅することなく、そのうち魔法師団長が諦めたようにがっくりと肩を落とした。

 その様子から、魔法師団長が魔法陣に向けて魔力をぶつけたが、消滅しなかったことが窺える。


「では、フェール様。この魔法陣を消滅させてもらえますか?」


 オルディスは魔法師団長を見て取ると、今度は俺の方に向かって声を掛けてきた。

 魔法師団長が消滅されらなかった魔法陣を俺に消させることで、俺の力を示そうという魂胆だろう。

 俺はその要望に応えるように、魔法陣に向けて手を突き出して、魔力を放つ。

 すると、魔法陣はガラスが割れた時のように、小さな光の粒をまき散らしながら、ぱりんと弾け飛んだ。

 それを見た魔法師団長を筆頭に、全員が目を見開いて固まっている。


「フェール様。お見事です」


 オルディスが称賛の言葉をくれるが、俺は全く嬉しくない。

 前に一度、許しているとはいえ、こんな魔法を俺に使おうとしていたことが、どうしても燻ってしまう。

 まぁ、以前に彼らに言ったように、闘いの中でのことなので、言っても仕方ないことは分かっているのだが。


「さて、これでフェール様が、俺たちより強いことは理解してもらえたかな?」


 魔法師団たちは眉間に皺を寄せながら、オルディスの言葉に頷いている。


「どうやら、分かってもらえたようだな。それで、お前たちに質問だが、フェール様はいつまで此処にいる必要があるんだ? フェール様がお前たちの指示に従っておられる間は、俺たちもそれに従うが、フェール様がお亡くなりになられた後に残るのは、この国と俺たちの怒りだけだということは理解しているんだろうな? もちろん、此処からフェール様が出られた後も、フェール様に不利益があったり、不快な思いをされた場合も同様だが………」


 俺は、オルディスがこんなことを言い出すとは思っておらず、しばらく呆けてしまい行動が遅れてしまったが、その言葉が頭に浸透すると同時に、慌ててオルディスの後頭部目掛けて掌を振り抜いた。

 その掌は狙い違わず、『スパーン!』という小気味良い音を響かせている。


「うぅ…。フェール様、何をするんですか…。もの凄く痛いんですけど。死ぬかと思いましたよ」


 オルディスは、相当痛かったのか、涙目で後頭部を抱えて蹲っている。

 ネルビアとベルファが、それを痛々しい顔つきで哀れそうに眺めているのが見て取れる。


「何をするんだ、は俺の言葉だ! お前は馬鹿か!? 皆さんを脅してどうするんだよ!」

「いや、しかしですね………」

「しかしもへったくれもないんだよ。俺が死んだあとは、確かにお前たちの自由だが、今は穏便に事を進めるために話し合ってるんだから、それは無用なんだよ。俺のことを思ってのことだというのは分かるし、話があるなら後で聞いてやるから、今はそれ以上は言うな。分かったな」

「はい。分かりました…。先走ったようで、申し訳ありません」


 オルディスが上目遣いで何やら訴えてくるが、俺はそれを聞かずに今の状況を言って聞かせた。

 オルディスはまだ何か言いたそうだったが、それは後で俺が聞けば済む話だ。

 俺には穏やかに聞けることでも、魔法師団長たちには、そうではないのだ。


 俺が魔法師団長たちの方に視線を戻すと、魔法師団長たちは、目を見開いて顎が外れるくらい大きな口を開いていた。

 ほら、見ろ。オルディスが変なことを言うから、皆さん驚いているじゃないか。


「うちのオルディスが変なことを言って、申し訳ありませんでした」


 俺は、そんな魔法師団長たちに向かって、深々と頭を下げて謝罪した。

 魔法師団長たちは、俺の謝罪ではっとしたように口を閉じると、首を横に振った。


「いや。オルディス殿の言うことは、間違っておらんよ。儂たちの事情に巻き込んでいるのは間違いないからの」

「そうだな。フェールは冒険者登録で魔物を召喚しただけで、それを受け入れられない我が国に問題があるのだしな」

「ふむ。ここまで話をして分かったが、オルディス殿たちは話が通じるし、今までも被害は出ておらん。それを考えても、それを受け入れらない我が国の問題じゃろうて」


 魔法師団長と騎士団長が一様にオルディスを肯定してくれる。ただし、オルディスに敬称がついてることで、その心情が今までとは異なっていることが分かる。


「ほら、オルディス。皆さんこう仰ってくださってるんだ。それが分かったら、お前からも謝罪しろ」


 俺もこの国の一員なので、魔法師団長たちの言葉への返答に困ってしまい、話をオルディスに振る。

 俺がそれを肯定するのも、お礼を述べるのも、何か違う気がしたのだ。


 オルディスは俺の言葉で立ち上がると、魔法師団長の方に体を向けた。


「すまなかった。許せ」


 オルディスは軽く会釈するように謝罪の言葉を口にした。

 オルディスが後頭部を擦っているのは、まだ痛いのか、それとも照れ隠しだろうか?


「いえいえ。滅相もございません。儂らの考えは先程、お話しした通りですのでな」

「ああ、感謝する」


 オルディスたちは俺を最優先にするあまり、他を蔑ろにしがちだが、基本的に道理も通じるし、何より優しくて、俺の自慢の仲間なのだ。

 俺は、その光景を微笑ましく見ていた。


「それで、ガレリック様。俺からの話はオルディスが説明してくれた通りなんですが、今後についての話をしませんか?」


 取り合えず、一旦、良い感じに話が落ち着いたので、俺は魔法師団長に今後について尋ねてみた。

 ここからが本日の話し合いで最も重要な部分だ。


「ああ、そうじゃったな。…だが、少し待ってはくれぬか。今聞いた話で、儂らも考えねばならぬことが増えたでの。それに、さすがに儂らだけで考えるには荷が重い。明日はアゼルの件で国王陛下に奏上する予定だったが、今回の話も交えて、国王陛下のご意見をいただいた上で、今後の方針を決めたいんじゃが、構わぬか?」


 魔法師団長の申し出には反対する要素はないので、俺の方としてはそれで構わない。

 オルディスが脅した際に魔法師団長たちが言っていた、国が受け入れられないのが問題というのを真に受けるならば、これはもう国王陛下を交えての案件といっても差し支えないだろうしな。


「はい。俺の方もそれで問題ないです」

「うむ。助かる。国王陛下との話し合いの結果は、明日の夕方にでもまた知らせに来るので、それまで待っていてくれ」

「はい。分かりました」


 この俺の了承を最後に、魔法師団長たちは席を立つと、牢屋の前から去っていった。

 その後すぐに、ヘイズが椅子を回収しに来たが、特にこちらのことを気にする様子もなく、椅子を持って立ち去っている。


 俺はいつも通りの牢屋に戻ったことを確認して、後ろにいるオルディスたち体を向けた。


「オルディス。説明をありがとう」

「滅相もございません。俺もいらぬことをして、申し訳ありませんでした」


 オルディスは、再度、深々と頭を下げた。


「謝罪はさっき受け取ったから、もういいよ。ただ、そうだな…。俺はこの国の人間なんだ。だから、この国の法に従う義務がある。もちろん、簡単に理不尽を受け入れようとは思わないし、回避できるように足掻くつもりだ。まぁ、それでも駄目なら、その後のことは状況を見て判断することになるだろうが、それまでは俺がこの国の人間であることを忘れないでもらえると助かる」

「「「はっ! 確かに承りました!」」」


 俺は理不尽な死を受け入れてまで、この国にいようとは思わない。ただ、だからといって進んで国を捨てたいとも思っていない。もし、藻掻いて足掻いて、それでも駄目なら逃げる道を選ぶ自信があるが、それまでは俺はこの国で生活するつもりでいるのだ。


「それで、フェール様。今晩の食事はどうされますか?」


 ネルビアがこの暗い雰囲気をぶち壊すが如く、食事の話を持ち出してきた。

 うん。ネルビアはときに良い仕事をする。基本的に考え足らずなところはあるが、ネルビアが場を明るくしているのは間違いないので、これはこれで捨て難い才能だと思う。


「森で食べるよ。もう毒は盛られていないみたいだけど、森での食事の方が美味しいしな」

「はい。分かりました」

「はい。その方がよろしいかと。万が一ということもございますので」

「そうですね。ガロアもフィリエも楽しみに待ってるでしょうからね」

「ああ、そうだな」


 その晩、俺たちは、いつも通り森に転移して食事をした。

 そこで驚きだったのが、スープが昨日より美味しくなっていたことだ。

 フィリエさんが昨日言っていたように、スープの具材を一度捨ててから、別の具材を入れ直して作ったそうだ。

 それに加えて、ガロアたちとフィリエさんたちが協力して、今日も砂蜥蜴を狩って具材に入れていたことにも驚かされた。昨日、俺たちが帰った後に、ガロアとフィリエさんが砂蜥蜴の倒し方を話し合って、それを協力して実践したということだった。だが、オルディス曰く、自然界では普通はそんなことは起こらないらしく、これも俺の影響だろうと言っていた。当然、『俺の影響ってなんだよ?』と突っ込んでみたが、『フェール様の分け隔てない接し方を見習った結果ですよ』と言われ、反論できずに終わっている。俺としては、オルディスたち三柱の仲がいいのが原因だと思っているが、それを言うと、こいつらがぎくしゃくしそうなので黙っておいた。こいつら、意外に自分の優しさに気付いていないしな。


 そんな楽しい一時を過ごして、俺たちはいつもより早めに牢屋に戻って床に入った。

 明日は魔法師団長たちが再びここを訪れるため、それまでに起きておきたかったのだ。ここ数日で完全に昼夜が逆転していたので、これも良い機会だろう。

 それにしても、森で食事をして良かった。フィリエさんのスープも、ガロアとフィリエさんが協力して狩った砂蜥蜴も無駄にならずに済み、何より楽しかった。これで今日も心地よく眠れそうだ。

 俺は最高の仲間に恵まれたことを感謝しながら、今日も眠りに就いた。


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