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世界の基点にいる平民とは?  作者: 御家 宅
第一章

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いざ森へ

 夜も更け、外の喧騒も聞こえなくなった頃、俺たちはいよいよ森へと向かうことにする。

 その前に、幻術で俺たちの分身を作り出しておくそうなので、それを待つ。


「ネルビア。お前が残るなら幻術を頼めるか?」

「仕方ありませんね。これは重要な任務ですからね」


 オルディスがネルビアに幻術を張るよう頼むと、ネルビアは腰に手を当て仰け反るようにして了承した。

 ネルビアの機嫌が良さそうで良かった。

 ネルビアは、ぐるっと牢屋の中を見渡すと、一つ頷いて、腕を横に振る。

 その途端、ベッドの中にネルビアを除く俺たちが眠っている姿が映し出された。

 幻術という言葉を聞いて、もっと幻想的なものを想像していたが、自然な状態で全く違和感がない。

 これなら、触らなければ絶対に分からないだろう。


「凄いな。魔法陣もなく、こんな魔法が使えるのか?」

「ええ、これは魔法ではなく能力ですからね」


 能力って、なんでもありだな。

 オルディスが事もなげに説明してくれるが、ここまでくると、魔法と能力の違いが分からなくなってきた。


「能力と魔法の違いってなんなんだ?」

「能力は、個体ごとに身につけることができる固有の能力で、魔法は能力を他者が使えるようにしたものか、能力を解析して組み合わせたものですね。あとは、これとは別に特殊な魔法もありますが、それは強力過ぎて、そうそう使う機会はありません。まぁ、俺たちのは配下の者たちの能力も還元されているので、大概の能力は使うことができますよ」


 なるほど。魔法は基本的には能力の応用と汎用版ってわけか。

 それにしても、こいつらどれだけの能力が使えるのだろうか? 火や水などの日常魔法に値する能力は、低位の魔物が持つ能力なので、低位の魔物を従えていない彼らは、魔法でしかそれを使えないらしいが、その程度は些細なことだろう。

 もしかして、能力の数だけ魔法も存在するのか?

 魔法を習っていない俺には分からないが、魔法に転移や翼などもあるのかな?

 俺にこいつらの能力を使える適性があればいいが、もしなくても、それに代わる魔法があれば助かる。

 なんだか夢が広がってきた。

 って、待てよ?


「なぁ、お前ら俺と闘ってる時、魔法陣を構築してたけど、あれ魔法だよな。どんな魔法なんだ?」

「い、いや、それは………」


 オルディスは、俺の質問に目を逸らすと、言葉に詰まった。

 ベルファもネルビアもあらぬ方向を向いている。

 ああ、これはその特殊で強力な魔法を使おうとしてたんだな。まさか日常魔法ってことはないだろうし。

 確実に俺を殺しに来てるじゃん。まぁ、闘ってたんだし仕方ないけど。

 それがどんな魔法か知りたいが、知った後の方が怖そうなので、そのうち機会があればということにしておこう。


「はぁ~。もう言わなくても分かったよ」

「「「いえ、あの、申し訳ありませんでした」」」


 俺は溜息をついてがっくりと肩を落とす。

 オルディスたちは、それを見て慌てて謝罪してくるが、謝罪されるようなことでもない。


「いや、闘ってたんだし気にしなくてもいいよ。それより、どんな能力や魔法があるのか、また教えてくれるか?」

「ええ、もちろん構いませんよ」


 オルディスが俺の言葉で安心したのか、快く了承してくれる。さすが、オルディス先生である。頼もしい。

 ベルファもネルビアも胸を撫で下ろしているし、この件は忘れよう。


「じゃあ、ネルビア、留守を頼むな」

「はい。このわたくしめがしっかりと留守をお守り致しますので、ご安心して行ってらっしゃいませ」


 俺は、最後にネルビアに一声掛ける。

 ネルビアが凛とした態度で、恭しく見送りの礼を取っている。

 ネルビアにもこのようにしっかりした一面があるのが、なんだか新鮮な気分だ。

 堅苦しいのは苦手だが、オルディスを見習って常日頃からもう少し真面であって欲しいな。


「では、フェール様失礼します」

「お、おう」


 ネルビアに意識を向けていると、俺はさっとオルディスに抱きかかえられた。

 不意を突かれて焦ったが、それより今の、この体勢に複雑な心境になる。

 その体制というのは、所謂、お姫様抱っこというやつだ。

 脇に抱えられるよりは良い気がするが、これはこれで、なんとも恥ずかしい気分になる。

 まさか自分が抱きかかえられることがあるなど、想像もしていなかったしな。


「では、飛びますね」


 俺の心境を意にも掛けず、オルディスが次の言葉を掛けてきた。

 その瞬間、俺の視界が切り替わった。

 今まで石の壁に囲まれていたのに、一瞬で暗転した空が広がっている。

 下を見ると、王都が掌ぐらいの大きさに見える。

 俺はそれを見て、『うぉ』っと呟いて、オルディスにしがみついた。


「フェール様、ご安心ください。俺の命に代えても離したりしませんから」

「ええ、もしオルディスが粗相をするようなら、私がフェール様をお助けした後、オルディスを殺します」

「大丈夫だ。ちょっと驚いただけだから。それよりベルファ。物騒なことを言うんじゃないよ」


 助けてくれるのはありがたいが、その後、仲間同士で殺し合いとか勘弁願いたい。

 そもそも命を賭けるとか、殺すとか重すぎる。


「フェール様、ベルファを怒らないでください。俺だって同じことをしますからね」

「いや、仲間同士の殺し合いとか厳禁だからな。あ、あと自害も禁止な」


 オルディス、お前もかぁ~。

 オルディスだけは常識人だと思っていたのだが、少し認識を改める必要があるかもな。

 とりあえず、禁止事項として厳命だけはしておく。


「「…承知いたしました」」


 返答に少し間があったけど、大丈夫だろうか? 少し不安になるが、返答は得られたし、いいよね?


「それにしても、綺麗だな」


 空から見る光景ってこんななのか。

 風も街中で感じるものとは違い澄んでいて、さらに上空を見上げれば星々が綺麗に見える。まるで、空一面に無数の小さな宝石が敷き詰められているかの如く輝きを放っている。

 物凄く綺麗で、広大な景色に感動が押し寄せてくる。

 空を飛べない人間には絶対に見ることができない景色だ。


「これからは、いつでもご覧になれますよ」

「ああ、そうだな」


 オルディスが微笑みながら、嬉しいことを言ってくれる。

 俺も自然とオルディスに微笑み返していた。

 こういう景色が観れるなら、お姫様抱っこも悪くない。


「それではフェール様、森へ向かって飛びますね」

「ああ、頼む」


 俺が一通り景色を堪能したのを見計らい、オルディスは俺に一声掛けると、森へ向かって飛翔し始めた。

 遠目に俺の視界に入る光景は、それほど動いていないように見えるが、物凄い速度で森が近づいてくるので、かなりの速度が出ているのだろう。間違いなく馬などよりも圧倒的に早い。

 王都から森へは馬で往復で半日強なので、それほど遠くはないが、これだとあっという間に着きそうだ。

 鳥が飛ぶところを想像して、馬よりは早いだろうと予想していたのだが、それにしても早過ぎる。


 そんなことを考えているうちに森の上空まで到達した。

 オルディスはそこで飛翔するのを止めると、森を見渡し始める。


「あの辺りが良さそうですね」


 そう言うとオルディスは、森を数リードほど入ったところにある、少し開けた場所に向かって降下し始めた。

 ベルファもオルディスの横を付いてきている。

 此処ならば人間も入って来ないので誰かに出くわすこともないだろう。危険な魔物が多い森で此処まで生きて入ってくる者はいない。入れても精々一リード程度だ。


「じゃあ、フェール様、降ろしますね」

「ああ、頼む」


 オルディスは着地すると、一度、周りと足場を確認してから俺に告げてきた。

 俺はその言葉に了承して脚から立つように降ろしてもらう。

 上空から見た限り狭いように感じたのだが、降り立ってみると、それなりの広さがある。

 とはいえ、周りは木々に覆われていて、先程までの光景はどこにもない。


「なぁ、オルディス。此処って大きな魔物か何かの棲家とかじゃないよな?」

「そうかもしれませんね。ただ、この草の生え方だともう此処にはいないと思いますよ。辺りにもそれらしい魔物の気配はありませんでしたし」


 なら、安心か。

 それなりの広さが開けているので、大きな魔物か群れの棲家かと思ったが、今は違うようだ。

 本当にオルディスとベルファが魔王級なら問題ないのかもしれないが、違った場合が怖過ぎる。何しろ俺にはまだ実感がないのだ。


「此処にいれば、魔物の方から近付いてくるでしょう」

「そうなのか?」

「ええ、上空から確認した際、数匹の魔物の気配がありましたからね」


 オルディスが上空で森を見渡していたのは、このためか。

 どうやって魔物の気配を感じたか分からないが、これも能力だろうか? それとも、他者の魔力が見えると、魔物の気配も分かるのかな? 俺には全く分からなかったから、恐らくはなんらかの能力だろうとは思うが。


「ふふ。来ましたね」


 ベルファの声に俺が視線を向けると、ベルファが嗤いながら木々の隙間に視線を送っていた。

 その木々の隙間から三頭の灰色狼(はいいろおおかみ)が牙を出して鋭い視線をこちらに向けながら出てきた。

 完全に俺たちを獲物として認識している眼だ。


 灰色狼は、冒険者でなくとも森では頻繁に見掛ける魔物として知られている。

 こいつらは獰猛で、強さもそこそこあるため、初級冒険者では歯が立たない。そんな魔物が三匹ともなると、少なくとも中級冒険者が数名以上での対処が必要となる。

 このため、森に薬草を採取する際は、数名の中級冒険者に護衛を依頼することになるのだが、それだけの費用が余分に掛かるため、薬の類は往々にして高価な物となってしまう。冒険者にとっては良い稼ぎになるが、薬が欲しい庶民からは忌むべき魔物となっているため、庶民でも知っているというわけだ。


「ベルファ、段取り通りに頼むぞ」

「ええ、分かっていますよ」


 俺は、オルディスとベルファの会話に首を傾げる。

 オルディスとベルファが対処について確認を行っているが、なんの段取りだろう?

 俺が寝ている間に、何かを相談していたのかもしれない。

 ただ、こいつらが本当に魔王級なら灰色狼などに後れを取ることはないと思うので、倒す以外の何かだろうか?


1リード=1.6kmになります。

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