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世界の基点にいる平民とは?  作者: 御家 宅
第一章

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摩訶不思議な状態

 俺はこうやって、横道に逸れながらも、自分の魔力を探り出した。

 は、いいんだけど…、なかなか壁に行き着かない…。これもしかして、同じところをグルグル廻っていなか?

 魔力って目印とか、方向とか分からないから、今一つ、上手く探れないな。


 そう思いながら、とりあえず、真っ直ぐ探っていくことを心掛けて、探ること暫し。これ以上、探れないという限界に辿り着いた。

 でも、なんというか、壁って感じじゃない。というのも、その先に進めるからだ。

 ただ、進めるんだが、進むとふっと知覚が途切れる感じで、ここが知覚できる限界って感じなんだよな。

 知覚できる限界なら、これが壁ってことで間違いないのか?

 俺は、とりあえず、それを壁だと判断して壁伝いに部屋の大きさを測っていく。しかしこれが、どうにも上手く進まない。というのも、限界の先に進めてしまうがために、限界を見極めながら進めないといけないので、時間が掛かってしまうのだ。

 そろそろ集中力切れそう…。みんなこんなことをしているのか? 尊敬するぞ。


 俺は、そんなことを考えながら、なんとか測り終わって目を開ける。


「なぁ、オルディス。小部屋がなかったんだけど?」


 そう。俺は頑張って壁伝いに魔力を辿り、俺自身の魔力自体は把握できた。

 しかし、その壁のどこにも小部屋に繋がる扉がなかったのだ。

 俺の問い掛けに、オルディスが思案気に眉を寄せる。


「そうですか…。フェール様御自身の魔力量は分かったんですよね?」

「ああ、でも、比較のしようがないから、多いのか少ないのか、分からないけどな」

「というとこは、御自分の魔力の器の境界も分かったってことですよね?」

「この大きな部屋の壁のことか?」


 俺は、オルディスが床に描いた図を示しながら、オルディスの言う器の境界について確認する。

 恐らく魔力の器の境界というのがこの大きな部屋の壁のとこだろうと推測できたが、念のための確認だ。

 こういう些細なことを怠ると、後々、痛い目を見そうなので確認しておくに限る。

 今の話だって、冥界の王を俺が勝手に解釈したことが始まりだしね。


「ええ、そうです」

「ああ、それなら分かったぞ。それ以上進むと、魔力が知覚できなくなる限界だよな。でも、限界を探りながら魔力量を測らないといけなかったし苦労したよ」


 俺は、あの苦労を思い出して、疲れがどっと押し寄せてきた気分になる。

 もう二度と測りたくない。と思えるほどには神経を削られた気がする。


「え? 進むと魔力が知覚できなくなる限界ですか?」


 オルディスは俺の答えに驚いた顔をして、問い返してくる。

 うん? 何か、変なことを言っただろうか?


「ああ、そうだけど、何かおかしいのか?」

「ええ、おかしいですね…」


 オルディスはそう言うと、目を閉じて何やら考え込み始めた。

 俺には何がおかしいのか、さっぱり分からないので、オルディスが考え終わるのを待つしかない。


「フェール様、これは俺の推測なんですが…」

「うん? なんだ?」


 オルディスは考えが纏まったのか、口を開いた。

 推測でも構わないので、全く分からないよりは断然良い。


「え~っとですね、その前に確認なんですが、俺たちの魔力に繋がる扉がなかったってことですよね。ちなみにですが、その知覚が途絶える先に何かありそうな感じでしたか?」

「ああ、扉はなかったぞ。それと知覚が途切れる先か? う~ん。まだ先に魔力がありそうなのに、知覚が途切れるから、俺にもよく分からないんだよな」


 俺も、あの知覚が途切れる感覚が気になっていたので、感じたままを答えた。

 あの先にもまだ魔力がありそうなのに、ふっと途切れるのが、なんとももどかしい感じなのだ。

 俺の返答を聞いたオルディスが一つ頷いて、俺の方に向かって居住まいを正した。


「普通は、この図のように魔力の器には大きさがあります。そして、服従させると、その魔物の魔力の半分の器がこのように繋がるんです。しかし、フェール様の場合は、恐らくこの魔力の器の境界がありません」


 俺は、オルディスが説明してくれた内容に首を傾げる。

 境界がないって、どういうこと?

 それって、魔力が駄々洩れしてるってことじゃないのか? 何それ、怖い。


「え? ちょっと待てって。それで俺の魔力は大丈夫なのか?」

「ええ、それは問題ないと思います。先程、羽虫とフェール様の能力が同じではないかと申し上げましたが、その羽虫の能力について俺なりに仮説を考えてたんですが、今のフェール様の御話と併せて考えると、一つの推測が成り立ちます」


 オルディスたちは、天使の王から自慢されていたようだし、対策は考えていて当然だろう。

 できれば、自分の能力として習得したかったに違いない。俺も、考えて手に入るものならば考えるしな。

 オルディスも自分の推測に自信を持っているようだ。


「それで、どんな推測なんだ?」

「はい。先程も言いましたが、フェール様の魔力の器に境界はありません。分かり易く言えば、例えばですが、この国全体がフェール様の魔力の器だとします。しかし、地に立った状態では、この国全体を一度に見渡すことはできませんし、見える範囲は限られます。それと同じようにフェール様に知覚できる範囲も限られているということです」


 う~ん。分かりやすく言ってもらっても、話が壮大過ぎてピンとこない。


「それって、俺を中心にして見える範囲しか見えないのと同じで、俺の魔力も俺を中心にして知覚できる範囲しか知覚できないってことか?」

「はい。その通りです」


 確かに、知覚が途切れた先にも魔力があるような感じだったので、感覚的には合っているような気もする。

 しかし、そうだとすると別の疑問が出てくる。


「でも、なんで全部が知覚できないんだ?」

「それは、恐らくですが、それがその能力の本質だとしか言いようがありませんね…」


 本質? 全てが知覚できないことが?

 それって俺的には、単に制限されているだけに思えるのだが、違うのか?

 俺は、オルディスの回答に腕を組んで『う~ん』唸ってしまう。


「フェール様、それほど難しい顔をされずとも、ここからがその能力の本題です」

「本題? まだ先があるのか?」


 オルディスは、俺と違って制限のような戒めとは思っていないようで、自信に溢れた顔をしている。


「はい。フェール様は俺たちの魔力の器がなかったと仰いましたが、それはなかった訳ではなく、既にフェール様が知覚された中に含まれているのだと思われます」

「うん? どういうこと?」


 俺はオルディスが言ったことが即座に理解できずに問い返してしまう。

 そもそもの話、オルディスが図で示してくれた話から大きく異なっているので、頭の切り替えが追い付いていないというのもある。


「それはですね。この図の大きな部屋がもともとフェール様が視認できていた範囲だとします。普通はこの図のように服従させた魔物の魔力が扉で繋がるんですが、フェール様の場合はそうではなくて、視認できる範囲がこの小部屋まで広がっているって感じですね」

「それって、視野が広がってるってこと?」

「はい。そうです」


 オルディスは微笑みながら、頷いている。

 オルディスの図を基に説明されて、漸くその違いが理解できた。

 部屋が繋がるのと、視野が広がるのでは全然違う。いや、使える魔力量としては同じかもしれないが、仕組みが全く異なったものになる。


「このように考えると、我々の魔力が繋がってもフェール様の身体が崩壊しなかったことにも説明が付きますし、何より、フェール様が中級冒険者に負けていたにも関わらず、俺たちに勝てたことにも説明が付きます」


 確かにそうだ。俺がニールさんと訓練していた時は、視認できる範囲が狭く、こいつらを召喚して、こいつらの魔力の半分を視認できるようになったために、こいつらに勝てたと言われれば、頷くしかない。

 視認できていないだけで、俺の魔力の器自体はもっと大きいため、こいつらの魔力分が増えたとしても、俺の身体がそれに耐えられずに崩壊することもなさそうだ。

 そうなると、今の俺は、単純にこいつらの魔力量の一・五倍ぐらいが視認できている計算になるのか。


「う~ん、筋は通っているんだけどな…」


 俺は、再び腕を組んで唸り始める。

 確かに強さについては、魔力の視認範囲が増えた事で俺の身体能力が上がったことで説明はできる。

 だが、それ以前の問題があるのだ。


「他に何かございますか?」


 俺が悩ましそうにしているのを見て、オルディスが不思議そうに問い掛けてきた。

 オルディスは、自分の推測に満足しているようだが、それだけではないのだ。


「この説明だと、おまえたちが魔王級ってことになるけど、そうするとアゼルさんが見た覇気っていうのの信憑性が出てくるだろ。俺はその覇気っていうのを見てないんだよ」


 そう。これが一番重要なのだ。

 今回の問題として、これが一番の焦点ともいえる。

 これに対して、オルディスがまたまた何やら考え出した。

 しかし、今回はそう長くもなく、直ぐに顔を上げると口を開いた。


「覇気っていうのは、フェール様も御自身で発せられていて、俺が説明したので既に御存じかと思っていたのですが、違ったのですか?」

「あれは、魔力のようなものだろ? そうじゃなくて、空間が黒く揺らめいて見えるやつのことだよ」


 俺の言葉に、オルディスが不思議そうな顔をしている。

 今まで黙っておとなしく話を聞いていたベルファもネルビアも驚いた顔をしている。


「一緒ですよ?」


 オルディスがきょとんとした顔で答えてくる。

 いやいや、そんな筈はないだろう!? 魔力みたいなものと、空間が揺らめくのじゃ全く違う。


「え? いや、だって俺も魔力みたいなものだと感じたから、違うだろ?」

「ええ、その感覚は間違ってませんよ。覇気は、魔力が見えない相手にも怒りや威圧が伝わる様に、魔力を変質させて発しますからね。同じものです」


 え? そんなことをさらっと言われても、普通は同じものだと思わないだろ?

 騎士団長も魔法師団長もギルド長も、違うと言っていたし。


「話からすると、フェール様に俺たちの覇気が見えなかったことに疑問を抱かれてるのかもしれませんが、フェール様なら見えなくても不思議じゃないですよ」

「え? なんで?」


 さらにオルディスが続けて口にした言葉の意味が全く分からず、俺は首を傾げてしまう。

 覇気の性質も、理解はできても呑み込めていないところに、見えなくても不思議じゃないと言われても、俺には不思議が詰まった袋にしか見えないんですけど?


「覇気っていうのは、強さの差によって見え方が変わるんですよ。覇気を発した者より弱い者は、その差が開くほど、より黒く揺らいで見えますし、強い者は差が開くほど、色も薄く揺らぎも少なく見えます。で、あまりに開きが大き過ぎると見えなくなるんです」


 え? そうなの?

 さっきのもそうだが、騎士団長も魔法師団長もギルド長も、誰もそんなこと言わなかったけど?

 って、よく考えたらそうか。人間が覇気を発することなどないので、その性質が分かるわけもない。それに、人間は覇気を発する魔物より遥かに弱いから、弱い方は分かっても、強い方なんて分からない。体験した者がいないのだから当然だ。


 でも、もし、そうだとしてもだ…

 こいつらと俺とじゃそれほど開いているようにも思えないのだが?


「どれぐらい開くと見えなくなるんだ?」

「う~ん、三倍ぐらいですかね」


 ほら。やっぱり。それほどの開きが必要なら、俺に見えていない筈がないのだ。


「さっき話してたように、俺の視野が広がったとしてだよ。それでも、お前たちの魔力の半分程度なんだから、それだけの開きがあるのは、おかしいだろ?」

「確かに、俺たちの魔力の半分だとすると、一・五倍くらいになりますけど、フェール様は見えなかったんですよね? だったら、それ以外の要因で三倍程度になったんじゃないですか?」


 俺の問いにオルディスは、何の不思議もないと、当たり前の如く返してくる。

 いや、なんで、それ以外の要因で納得するの? もっと不思議に思おうよ。


「いや、それ以外の要因ってなんだよ?」

「それは、分かりませんが…。例えば、俺たちを召喚した際に、俺たちの魔力とは別に、俺たちに対抗できるように知覚できる範囲が広がった。とかですかね?」

「はぁ?」


 なんとも曖昧な答えに変な声が出てしまった。

 というか、今までの理路整然とした答えはどうした!?

 それじゃあ、俺の技量と同程度の魔物が召喚されるんじゃなくて、俺の方が召喚した魔物の技量に合わせてるみたいじゃないかよ。


「いや、だって、フェール様ですからね。もう何があってもおかしくないかと…。それにその能力のことはよく分かりませんし、事実だけを捕えると、それ以外の要因としか言いようがないですよ」


 こいつ考えるのを諦めやがったな!

 オルディスは肩を窄めて首を左右に振っている。

 オルディスが頼りなのに、こいつが諦めたら話が進まなくなってしまうじゃないか。

 とはいえ、こいつも知らないことは分からないわけで…。これは仕方ないのか?

 まぁ、俺も人のことを言えないしな。


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