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世界の基点にいる平民とは?  作者: 御家 宅
第一章

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包囲網の理由

「俺は、冒険者が俺の登録試験を観覧するのは、いざという時の安全のためだと教えられました。しかし、実際には誰も俺を助けることなく、凶悪な魔物に犠牲者として差し出されたんです。幸いにも俺が召喚した魔物が冒険者の方々が判断したような凶悪な魔物ではなく、俺が勝てるような魔物だったから死なずに済んでますけどね。ただ、逆に言えば、今回の事情聴取では、俺の魔物が凶悪なのかどうかが焦点になると思ってるんですが、その場合、騎士団を招集した立場のギルドに、俺は再び見捨てられるじゃないかな?と思わなくはない、と言いますか…」


 俺からの事情聴取の際に、ギルド長が同席すると、俺の話を捻じ曲げようとするのではないかと伝える。

 俺は殊更それが正論であるかのように、間違ってますか?と首を傾げた。

 もちろん、話の途中にさり気なく俺の魔物が凶悪ではないことも強調しておくことも忘れずに。


「き、貴様…!」


 ギルド長が机を両手で『ダン!』と叩いて、立ち上がった。

 あまりにも勢いよく立ち上がったためか、その拍子に椅子が彼の後ろに倒れ込んだが、彼はそれを気にも留めず、怒り満ちた表情で俺を睨みつけてくる。そんなギルド長の顔には、誰が見ても分かるぐらいに血管が浮き出ていた。

 これでは俺の言葉を肯定しているのと同じことだ。恫喝して俺の言葉を捻じ伏せようとしているのだから。

 そのギルド長に向けて、騎士団長と魔法師団長が怪訝な視線を向ける。


「ロイラン! 落ち着け! お前がギルド長として公平な立場で何が正しいのかを正確に見極めて、正しい判断を下せば良いだけだ。もし、それができないというのであれば、この場から去ってもらう」

「ふむふむ、確かに今の其方の態度は、フェールの言葉を肯定しているようなものじゃな」


 騎士団長がギルド長を窘めると同時に、ギルド長がどういうつもりでこの場にいるのかを問う。

 それを後押しするように、魔法師団長がギルド長の態度を咎める発言をした。

 騎士団長と魔法師団長の二人がギルド長の行為を不適切と論じたことで、ギルド長が『なっ』と呻いて仰け反りながら一歩後退る。


 俺は二人が俺の言葉に同調してくれたことにそっと胸を撫で下ろした。後はギルド長の出方次第だが、彼の次の行動で俺の今後が決まると言っても過言ではないので、冷静に彼の動向に注視する。


 ギルド長は、しばらくそのまま固まっていたが、大きく息をすると一度目を瞑り、その後、静かに椅子を起こすと、そこに着席した。


「取り乱してすみません。俺はギルド長として公平な立場で同席させてもらいます」


 よし! 言質は取った! 俺は心の中でぐっと拳を握る。

 彼の立場なら、この場から去るのが難しいことは容易に予想できる。もし、この場を去れば、それは騎士団長と魔法師団長の信頼を失うことと同義なので、そんなことはしないだろうとは思っていた。しかし、万が一、彼がこの場を去れば、それは今後俺が冒険者として活動できないことも意味していたため、内心は気が気ではなかった。なにしろそれは、彼が今回の冒険者たちの立場を守って、俺を切り捨てるということに他ならないからだ。そんなことになれば、俺の無実が証明されても俺の冒険者としての全てが終わる。

 俺のような弱者には真っ当な交渉など用意されていない。だから今回、俺は敢えて危険な綱渡りのような手段を取るしかなかった。ギルド長が公平な立場に立ってもらえるように、俺の道を広げて、彼の道を塞いでいくという、あまりにも危険な賭けなのは分かっている。幸い騎士団長が公平な人だと知っていたので、それに望みを賭けたが、俺はその賭けに勝てたことに安堵した。


「フェール、ロイランはこう言っているが、同席させても良いか?」

「ふむ、今後、ロイランが君の証言と異なることを吹聴した場合、それは偽証罪や扇動罪に当たるからの。相応の重い罰が与えられることになるから、彼もそんなことはせんじゃろう。どうじゃ?」


 騎士団長と魔法師団長がギルド長の同席を求めてくる。

 俺に問い掛けながら、器用に彼が公平な立場を維持するように釘まで刺している。

 ギルド長は魔法師団長の言葉に『うっ』と肩を跳ねさせたが、俺は見て見ぬ振りをした。

 ここでそれを問うても、話がややこしくなるだけなのは分かっている。

 俺は表情に安心感を乗せて『はい。よろしくお願いします』とギルド長の同席に同意した。


「ふむ、では早速じゃが、本題に入らせてもらおうか」


 この場を取り仕切るのは、現場にいた騎士団長とギルド長ではなく、魔法師団長のようだ。


「先程は別室で冒険者側から事情は聴いたが、ここにはフェールもおる。凡そのことは推測しておるようじゃが、まずは経緯の確認から行うのが良いじゃろう」


 魔法師団長の言葉に全員が頷いて同意する。

 俺も何故、こういう事態に至ったかの推測はできても詳細までは知らないので教えて欲しい。


「ただ、その前に今回召喚された魔物についてじゃが。アルノルトよ。それらの魔物は、悪魔と幽鬼(ゆうき)と死霊で間違いないのかの?」

「ああ、間違いない。あの目の色は悪魔と幽鬼と死霊だ」


 最初に俺が召喚した魔物について確認が行われる。

 確定した情報に対する認識合わせが主な目的だと思われる。

 認識合わせと言っても、彼らは既に知っていることなので、俺に教えるためだけなのは理解している。

 ただ、俺にそれらの魔物の知識がないので、俺が召喚した魔物の種族を知った以外に何も言うことはない。


「ふむ。では、ロイランよ。騎士団を呼ぶまでの経緯を説明してくれるか」


 魔法師団長の要請に、ギルド長は背筋を伸ばして襟を正すと、口を開いた。

 騎士団長と魔法師団長、それに俺は静かにギルド長の話に耳を傾ける。


「フェールが登録試験を受けている頃、俺はギルドの執務室で書類仕事をしていました。そこにアゼルが真っ青な顔で飛び込んできたんです。俺はあいつのあんな顔を見るのは初めてだったので、取り急ぎ、何があったのか聞きました。するとアゼルが『訓練場に凶悪な魔物が召喚されたから、騎士団を招集してくれ』と告げてきました。俺はそれを聞いても直ぐには理解できなかったため、詳細を彼に求めたのですが、それに返ってきたのが『今日、冒険者登録試験を受けている奴が、強力な黒い覇気を放つ悪魔と幽鬼と死霊を召喚しちまった』ということでした。俺は慌てて状況を確認しに行こうとしたんですが、執務室から出るとロビーには、アゼルだけではなく、全員が顔を蒼褪めさせていて、中にはカタガタと肩を震わせて怯えている者までいました。俺はそれを見て、確認している場合ではないと判断して、その足で騎士団に招集を掛けるために、騎士団庁舎に向かった次第です」

「ふむ、其方自身は魔物を確認しておらんのじゃな?」

「はい。尋常な状況ではないことは分かりましたので、騎士団の召集の方が先だと判断しました」


 この話を聞いて、俺は推測通りだと納得する。

 ただ、この話の中に一点だけ理解できないことが含まれていたので、それを伝えるために、俺は大きく首を傾げてみせる。


「うむ? フェールよ。今の話に理解できない点があったか?」


 俺の仕草を目敏く拾った魔法師団長が、俺に問い掛けてきた。

 この話も俺以外は既知の情報だろうから、俺のために説明してくれていることは間違いない。

 その俺が理解できていなければ話を先に進められないので、当然の問い掛けではあるが、確認してくれることに感謝する。


「はい。魔物の種族は俺も知らなかったので教えてもらえて助かったんですが、黒い覇気を放つ魔物というのが分からなくて…、覇気って魔力みたいなものですよね? 見えるもんなんですか?」


 基本的に魔力は無色で感じるものであって、見えるものじゃないと聞いている。

 それが『黒い』というのが理解できないのだ。

 俺の質問に、三人が訝しそうに視線を向けてくる。


 うん? 俺、何か変なことを聞いたか?


 オルディスが『覇気は魔力みたいなもの』と言っていたし、実際、ベルファから覇気を抜く時も見えなかった。

 俺は不思議な気分で首を傾げることしかできない。


「其方が何をもって魔力みたいなものと言ったか分からぬが、覇気とは魔王やそれに準じる魔物が纏う気力のようなものじゃ。魔王が覇気を放つと空間が黒く揺らめいて見え、それを見たものは恐怖を感じ、耐性がない者が見ると最悪、恐慌状態に陥り、最悪死に至ると言われておる」


 俺は魔法師団長の話を聞いてさらに首を傾げる。

 オルディスと魔法師団長が教えてくれた『覇気』が異なるものだということは理解したが、それは『冥界の王』と同じで、魔物と人間の言葉の意味が異なるだけなので置いておくとしても、それ以上に理解不能な話が飛び出してきたからだ。


「それはおかしいです…」

「うむ? 何がじゃ?」


 俺の疑問に、魔法師団長が不愉快な表情で返してくる。

 どうも俺の言葉が、魔法師団長の説明が間違っていると言ったように受け取られたようだ。

 俺は慌てて自分の言葉を訂正する。


「あ、いえ。ガレリック様の説明が間違っているということじゃなくてですね…」

「では、何だというのだ?」


 魔法師団長は明らかに機嫌を損ねている。

 俺は体の前で手を振って、急いで続きを説明する。


「いや、俺は、魔物たちを召喚してから服従させるまでの間、その黒い覇気というのを見てないんです」


 先程までとは一転、俺の言葉に三人が大きく目を広げた。

 俺には何故、彼らが驚くのか分からないが、根拠を示せば納得するに違いない。


「その覇気を放つ魔物って、魔王級なんですよね? そんな魔物を俺が倒して服従させるなんて不可能です。それに俺がその覇気を見ていたら間違いなく恐慌状態になってますし、闘いどころの話じゃなくなります」


 俺は自分の弱さを説明して、俺の話に信憑性を加える。

 俺の根拠を聞いて、三人が三者三様に俺の言葉を吟味し始めた。

 吟味するほどかな?と心の中で呟いてみるが、彼らにとっては情報の食い違いこそが重要なのだろう。


「ふむ。確かにフェールのいうことにも一理ある」

「ああ、冒険者からの聴取では、召喚魔術の服従術式が早々に効いたのだろうという結論になったが、覇気を目の前にしては服従させるどころか闘うことすらできんな」

「うむ、闘う前に殺されておったであろう。それに闘う前から服従術式が効いておったなら、魔物たちが覇気を発することもないしの…」


 魔法師団長と騎士団長がお互いの考えを擦り合わせし始めた。


 なるほど。俺が魔物を従えられたのは、服従術式が効果を発揮していたことになっていたのか。

 でも、それって、諸々無理があるよね。

 魔法師団長と騎士団長が言うように、覇気を放たれた瞬間に瞬殺されているはずだ。もし、仮説通りなら、俺が恐慌状態になったのを魔物たちが何もせずに眺めていて、その間に服従術式の効果が出たことになるが、召喚されて覇気を発するほど怒っている魔王級の魔物が、それほど悠長にしているとは思えない。

 いや、魔王級だからこそ余裕で眺めていられるのか? う~ん、それにしても間抜け過ぎる。罠の上で呆然と立っていたら罠に嵌りましたなんて、笑い話にもならない。

 それに、仮にそうだとしても、その後俺は魔物たちに怯えて命令など怖くてできないだろう。


 しかし、二人の会話を聞いてギルド長が立ち上がり、待ったを掛ける。

みなさん大晦日はどうのようにお過ごしでしょうか?

年末から投稿し始めて間もないですが、この物語を読んでいただいている皆様には感謝しております。

来年も1日から投稿を続けていく予定ですので、よろしくお願いいたします。

それでは、皆様、良いお年をお迎えください。


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