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王家に墓石の価値はわからぬ

ああ、

ファド・プパリウムの譜面には

記されている。

[王家に墓石の価値はわからぬ・・]

と。


在ろうとする

肉達の執着のオペラと、

全てを神の塵に帰そうとする

虫達のファド・プパリウムは、

墓地でひっくり返った

巨大な沼亀の死肉の上で

今日も、迂遠な対位法を響かせている。


墓掘り人よ・・

ラテン語の死に

湧いた蛆を見たか?

かつては繁栄を誇っていた

気高い肉に集る低地の(ミアシス)を?


尊き者の死体には

悲惨な蠅共が群がり、

全てを奪い去ってしまう。

ああ!!

素晴らしきものは皆

何処かへ連れ去られてしまう!!


組合の人らよ・・

神という名の永遠を十字架に架け、

目前の亀の死骸の腐臭に嫌悪し、

それを自虐的に笑う矛盾の奴隷よ・・


結局の所、

荒野の(ディクトフォル)(ス・スプマンス)の毒で

悶え苦しみ、

見捨てられて死ぬのだ。

お前達の為の

この孤独な死の墓地で・・


ああ、

ファド・プパリウムの譜面には

記されている。

[王家に墓石の価値はわからぬ・・]

と。


紙で作られた

王冠を被る男達が

誰も名を知らぬ娘を嘲笑っている。

如何に盾と剣で

竜や怪物を殺そうとも

その弱さ故に、

お前達は己の卑しさに

かしづく囚人となるだろうに・・


ああ!!

何という救いの無さ!!


地上からかつて失われた

様々な栄光と美を見よ!!

全てが過ぎ去ってしまったのに、

その損失を

誰が嘆いてくれるだろう?


素朴な乞食達の

葬列と埋葬に対して

誰も涙を流さぬ夜・・

そんな中、また

ギターラだけが嘆くのだ。

誰にも知らぬ密葬と

この世の悲しみの真理について・・


そうだ。

ファド・プパリウムの譜面こそが

悲しみと真実を伝える。


誰の賞賛も無く、

客席の人影も無く、

伽藍洞とした酒場で歌う

ファド歌手をご覧。

いつか神が栄光の中で

帳尻を合わせてくれるその日まで

彼女は歌うのだ。

何の見返りも無く、

魚籠に入れられた

魚の死臭が香る町で・・


ああ、

ファド・プパリウムの譜面には

記されている。

[王家に墓石の価値はわからぬ・・]

と。


そうだ・・

本当の棺桶の気高さを知るのは

低地の蠅だけだ。

無垢で、感情の無い神の数理・・


おお、今日も

紙で作られた

王冠を被る男達が

誰も名を知らぬ娘を嘲笑っている。

如何に盾と剣で

竜や怪物を殺そうとも

その弱さ故に、

お前達は己の卑しさに

かしづく囚人となるだろうに・・


それこそ

墓地でひっくり返った

巨大な沼亀の死肉の上で

ただ、虚ろな目で悲し気にロンドを踊る

遥か昔の残響となるだろうに・・

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