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神通力上昇中〜惟神学園二年、皇弥勒  作者: 乘越唯響


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第八八話 手打ち式

 抗争の果て、疲れ果てた工藤組は山内組の仲介で手打ちを行う。

 山内組伊豆会会長の青山は、単独で戦い抜いた参加の浪川なみかわ組組長の梅沢うめざわをよく褒めた。

「昔からお前は頭の良かヤクザやと思っとったばってん、 お前は度胸もあるおとこやった。そやけん、兄貴分としてお前が誇らしか」

 また同様に、工藤組総裁の工藤悟、道仁組組長の福田、太洲組組長の日高へも、賛辞を贈った。

「工藤さんは、今時のヤクザもんの中では考えられん位の実直さで、その尊厳ば守る為には手段を選ばんおとこたいね。福田さんも、今はもう兵隊とは呼ばんばってん、忠誠心の強か人ばいっぱい従えとって、親分として素晴らしか。日高さんも、力が小さか組ばってん、頭の回らんチンピラば上手く使って、良く戦った。まだ誰も降参する様な弱音は吐いとらんばってん、もう手打ちにせんばいかんやろうが。のう?」

 その問いに、その場にいた幹部を含め、全員が頷いた。

「うちんとこの若い衆が、今年の夏頃から、街へ出れば至る所で警察に職質しょくしつばされて、シノギも上げられんし、なんも出来ん。人権がなかってことたいね。家を出て職質されて、解放されても十分も経てば、また職質たい。事ば沈静化させる為にも、大人しくせんばいかんやろうが」

 大人しくしろという青山の言葉を遮って、工藤は口を開いた。

「大人しくしたら、舐められるだけやけんね、腰抜けち。なんも知らん市民の女子供からジジババに、嘲笑われるだけ。おいは許せんね。今はお互いの為にも、そして青山さんの顔ば立てるためにも手打ちにはするがね、生き方を変えはせん」

「工藤君、悪いことはいわん。大人しくせんね」

「無理やね。若い時分に兄弟分になった溝下みぞした前総裁も、ここで引いたら漢じゃなかというやろうね。止まらんよおいは」

 青山は、呆れた様な顔をした。しかし顔を逸らし、挑発しない様に気を使った。工藤悟の茶色のサングラスの奥にある攻撃性に満ちた目は、青山にとっては時代遅れな目に見えた。

 暴力団も時代と共に変わったのだということが、工藤には理解出来ていないのだと、そう思ったのだ。

「良かか工藤さん、こん福岡では、多くの血が流れた。ヤクザは最早、アメリカとの戦に敗れた後の少ない物を人が奪い合って、ぶつけようのない怒りや不満を互いにぶつけ合っていた、そんな治安が悪かった時代に、頼りにならん警察に変わって治安を安定させた親分とは違うとばい。市民に慕われる存在では無くなっとる。やけんがね、君は先代の草野高明総裁にはなれんし、おいも三代目の田岡一雄さんごた親分にはなり得ん訳たいね」

「魂ば捨てたら生きているとはいえん!」

 工藤は声を荒らげた。手打ち式にはあるまじき殺伐とした空気が、部屋を包んだ。 

「時代は変わっとるけん、先代にならんでも、おいが新しいか時代のドンになる。ここにおる内のなん人かは知っとるやろうけども、九州ば手中に収めようとしとる胡散臭い宗教家がおるなぁ。そうやろうが、青山さん」

「やっぱり君も知っとるとや。あん男ば」

「あん男は自分を九州のドンば気取っとるけどもね、拳で争えん小綺麗な中年のガキがおいんごた歴戦の、叩き上げのヤクザば出し抜けると勘違いしとるけどもね、あんなまやかしの男も、おいがこの手で殺してやるぞ!」

 そういって、工藤は声高らかに笑った。

 にわかに広がっていた、得体の知れない術を使って人を殺す謎の男への恐怖も、工藤のその威勢の良さで吹き飛び、その場にいた誰もが笑いだした。

 だが、青山だけは、決して笑わなかった。

田岡一雄……詳細

この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。 (2009年2月)

田岡一雄(生:1913年3月28日〜没:1981年7月23日)……山内組三代目組長。山内組を1万人規模の大組織へと成長させた実力者としてヤクザ史に名を刻む一方、実業家としても大成した。


草野高明(生:1922年〜没:1991年)……北九州地区のヤクザ組織草野一家の組長にして、工藤組の二代目総裁。福岡にて、ヤクザが激しく争う抗争の時代を引き起こした。


溝下秀男(生:1946年〜没2008年7月1日)

)……当時福岡の雄であった工藤組と草野一家を一本化させ、九州一の巨大組織である工藤草野連合を発足させた。後に名を工藤組と改め、草野高明より総裁職を継承した。

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