第八五話 登校再開
神通力が戻り、登校を再開した弥勒を見て、五条は喜ぶ。
それからの数日間、弥勒は投稿を見送った。弥勒の神通力がオーバーヒートしてしまったことを、周囲に晒さない様にする為である。
足利でさえ、弥勒が神通力を一時的に失ったことを、認識したのかは不明である。それほど、現在はまだその状態を秘匿出来ているのである。
これが発覚すれば、どんな刺客を送られるか分からない。既に大友一派を嗅ぎ回っていることが知られ、命を狙われている今は、とにかく姿を晒さないことが大切であった。
つまり、巳代と渋川もまた同様に、一時的に不登校となった。
そんな三人を、五条や厚東は心配していた。だが情報を開示するべきではないと巳代は判断し、とにかく五条の善意からの追求を逃れた。
数日後、弥勒の神通力は回復し、失う前と変わらない程の神通力を取り戻した。そして三人は登校を再開し、弥勒は五条に、そして巳代は厚東に、釈明をした。
弥勒は五条に対し、一時的に神通力を失ったことを白状した。そして周布の助言で時間が解決するのを待っていたことを伝えた。
五条は泣いて喜んだ。とにかく弥勒が心身共に無事であることを理解して、安心したのだ。
弥勒は自分達を大友一派から守る為に、五条を泣かせてしまう程不安にさせてしまったことに胸が傷んだ。
五条は「なんでもっと早くに教えてくれんかったん!」と、詰問した。友達に隠し事をされたことが悔しく、辛かったのだ。
弥勒はその胸の内を直に感じ取り、浴びる様なその負の感情に、胸が張り裂けそうであった。だが痛みを感じる程に、話してはいけないと思った。大友一派を探っているなどと話せば、彼女をこの生死を掛けた戦いに巻き込んでしまう。非力な五条は身を守れず、命を奪われるかもしれない。
渋川でさえ、逃がす時間を稼ぐだけで、助けてはあげられなかった。これ以上、友達を危険に晒すことは出来ないのだ。
「ねぇ弥勒君……。君が良か人なのは知っとる。足利君があんなことをして……無関係じゃないっちゃろ……? 私達をあんなことする人達から守る為なんやろう……?」
「ごめん……いえない」
「私が周布さんと引き合わせたことで、弥勒君がそんな苦しいことに合う羽目になったん? 私のせいだよね……お願い話して。私の責任やん!」
「いえないよ……分かってくれ! ただ一緒に居ただけで……鷲頭さんが危うく怪我をするところだった。それなのに……これ以上……皆には迷惑はかけられないじゃないか。だから……」
「ありがとう。ありがとう……」
五条は目を赤くし、大きな目から零れ落ちる涙の雫を拭っていた。弥勒が自分達をただ一心に守ろうとしているということを理解したのだ。その善意と熱意、慈愛に満ちた友愛の存在を悟ったのである。
五条は、自信がただひ弱な庇護対象だと思われていることが嫌だった。自分に責任を感じ、理由もなく責任逃れを許されていることに、憤りを覚えていたのだ。ただの少女扱いをされていることが、名家の尊厳を守ろうとする自分が実は、全く頼りにならない自尊心が高いばかりの子供扱いをされていたのだと、思い込んでしまったのだ。
だからこそ、弥勒の真意を理解したことで、感謝した。
「杏奈も弥勒君に感謝してたんだよ。今度、ありがとうって、いわせてあげて。迷惑やったらごめん。勘違いされやすい杏奈の代わりに、私が謝る」
「迷惑じゃないよ。でも……今日はもう難しいかな」




