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神通力上昇中〜惟神学園二年、皇弥勒  作者: 乘越唯響


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第八四話 神通力上昇中

 三人はラーメンを食べながら、落ち着いたひとときを過ごす。

「安心すると腹が空くものだ。巳代君、君も食べなさい。冷めたラーメンは不味いぞ」

 そういいながら、周布もまたカウンターに座り、食事を摂りだした。それは餃子とチャーハンであった。それはカリカリに焼けた羽付きの餃子と、胡椒の香りが食欲を刺激する、パラパラのチャーハンであった。

「安心したら腹が空く。体は心の一部だということだな。一方で、空腹になれば良からぬ考えばかり浮かんでくる」

「このラーメン、本当に美味しいですよね。福岡の豚骨ラーメンが美味しいとは聞いたことがありましたが……ここでラーメンを食べるまで、こんなに美味しいものとは思っていませんでした」

「簡単には作れないが、美味いラーメンが作れる様になれば、こんなに狭い店でも人が来てくれる。お陰で世俗に馴染めたよ」

「美味い飯を作れる人は、偉い人だと思います。どんな大物政治家や名家の当主よりも、偉いと思います」

 周布は「若いのに悟ってるな」といって、笑った。

「俺はガキの頃、自分が有馬家という名家の人間だからと奢り昂って、美味くい飯が食えることを当たり前だと思っていました。贅沢をしている自覚さえ、ありませんでした。しかし歳を取って、先祖の有馬新七は貧乏でサツマイモばかりを食べていたことを知って、自分を恥じました。そして、自分で飯を作って、失敗して初めて、当たり前の様に美食を作ってくれる料理人がいることを尊く思いました」

「自分が恵まれていると、気付いたんだな」

「はい。そして、当たり前に用意された恵みを享受するには、役目を果たさなくてはならいと思いました。それを放棄すれば、飯を食わせてもらって当たり前だと考えている幼稚なガキと同じ、破廉恥はれんちな男になると思いました」

「だから、すめらぎの守り人として生きていると。口の悪さと異なって、真面目だな」

 巳代の身の上話がなされているあいだ、弥勒は一人でラーメンを食べ続けていた。二人の会話など聞こえていないし、気付きもしなかった。真に五感の内の一つを失うという悲劇に見舞われても、不安を感じることなく、ただ無我夢中でラーメンを食べながら、安心を享受していた。

 弥勒が食べ終えたあと、周布は弥勒へ症状の説明を始めた。

 巳代は、簡潔に書かれたメモを覗き見た。

「熊本校長の言葉に間違いはなかったのか……。神通力を使いすぎると、一時的に力を失う。しかし次第に魂が癒えて力が戻る。潜在能力が高い人間や神通力をよく理解し、扱いに慣れた玄人は負荷に耐えることが容易くなり、神通力を用いて心や物体に攻撃をしたり、炎や雷など八百万の力を行使し、果てには時間や空間を超越し命の際限を超える……! それらを行使しようと神通力を強めている状態を、神通力上昇中と呼び……それは人の魂が八百万に近づいていることを現す……!」

 巳代は、周布が記した神通力の力の本質、存在意義に対し、心身が震えた。

「神通力の求道者が行き着く果ては……神……!」

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