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第七六話 筑紫春子

 筑紫春子と名乗る同級生に、突然声をかけられる

 夕暮れ時、二人が学校を出ようとした時、誰かに声を掛けられた。振り返るとそこには、眼鏡をかけた、中肉中背の女生徒が立っていた。こういう見た目の生徒は、硬派な学生が多いこの学園では平均的で、それが誰なのか二人には分からなかった。

「明日……天草へ行くんですか?」

「あ、え、うん。それがどうかしたの?」

「五条さん達と行くんですか?」

「うん。えっと、名前なにさんだっけ……?」

「あ、あぁぁあの私、筑紫春子つくしはるこっていいます。先週の長崎旅行に五条さんからお誘いを頂いてたんだけどその……別の用があったもので」

「そうなんだ。知らなかったよ。初めまして、僕は皇弥勒で、こっちが有馬巳代だよ。明日は一緒に天草へ行くの?」

「いえ、その明日も別の用があってお断りをさせてもらったんだけどその……伝えて起きたいことがあったのでつあた、お声掛けをさせてもらってしまってあの」

 オドオドする筑紫に巳代はいつもの調子でいった。

「一旦落ち着け、なにいってんのか分かんなくなんだろうが」

「あはぁあのいや、すみません。スーーー ハーー」

「口でスーハーいったって息吸えてねぇだろうが。ちゃんと深呼吸しろよ」

 筑紫が相当の変人であることが、弥勒には分かった。つくづく、五条の人を引きつける才能には驚かされるなとも思った。

「伝えたいことが二点ありまして、有馬さん」

「おう、なんだ?」

「まずアイドルの件なんですが、私は知っています。お二人が危惧されていた通り……九州出身のアイドルや影響力を持つ有名人が、ここ最近、具体的には一年ほど前から、政治批判や暴力団批判を始める様になりました。それによって悪政を敷く与党の清由党や、数週間に一度のペースで事件を起こす山内組や浪川組、工藤組といった暴力団への排斥を求める意識が高くなってるん……です。これが一つ目です」

「いきなりなんでそんな話を俺達にしだしたのか不気味で仕方ないが、まずは二つ目も聞いてやる」

「そして二つ目ですが……長崎や天草のカトリック組織は……そういう集団と繋がりがあります。芸能事務所の元締めをしている暴力団や、事務所の幹部と直接繋がりがある宗教団体が、事務所を通して有名人に世論を先導する様な発言をさせるんです」

 その話は丁度、周布がしてくれたことであった。彼女がなに者なのか、知る必要があると弥勒は思った。

「筑紫さんはいったいどうしてその話を僕達に? そして、どこでそんな情報を知ったの?」

「五条さん達と長崎や天草に行く弥勒君や巳代さん、渋川さんを見て、悟ったんです。カトリック教会や、与党への嫌悪を持つ人々を探っているのだと。だとすれば……私が知りうるこれらの情報もお伝えしなくちゃって思ったんです。突然怖がらせてすみません。そして……」

 そういって筑紫は少し俯いた。

「これらの情報は真実です。でもなぜそういい切れるのかは、いえません。いえば……私がどうなるか、それすらもいうことがはばかられます。相手は傍若無人な暴力団なんです……それだけで分かってください」

 そういって筑紫は去っていった。その重苦しい態度から、二人は、筑紫が意味の無い嘘をつく愉快犯には思えなかった。だからこそ、より一層強く、天草で会う神父に対し、警戒心を強めた。

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