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第六六話 海を見ながら

 水辺の森公園で涼む五条と鷲頭。五条は鷲頭が自分に向ける特別な感情について、問う。

 五条と鷲頭は水辺の森公園から、長崎の海を眺めていた。

 サッカーをして遊ぶ少年数人が、ベンチに並んで座る彼女ら二人を、チラチラと見ていた。

 タイプは違えど、長崎にも博多美人と同じレベルの美人は多い。だがそれでも、人目を引く程のポテンシャルが二人にはあった。

 こうしてチラチラと見られるのは、二人にとって、よくあることだった。

「歩き回って疲れたね、衣世梨」

「そうねぇ〜でも久々に天神とか博多じゃない所を歩けて、結構満足やぁ〜」

 五条は腕を伸ばし、のびのびとした。

「なーんか綺麗に三組に別れたみたいやね。皆、楽しそうな姿をインスタに載せとーね」

「あの子ら、インスタしてるんだ」

「有馬君と厚東ちゃんはなんとなくイメージできるけど、皇君と渋川ちゃんは意外やん」

「渋川って子、田舎臭いわよね」

「杏奈からしたらみーんな田舎臭くて幼稚に見えるんやない? だって杏奈って、大人だし」

 五条は鷲頭の悪い癖である人の悪口への対処法を、熟知していた。鷲頭を褒めて、話を逸らすのだ。

「杏奈はいつか学園から離れようとしている。ご両親の様に惟神庁に入って、その監視下で月並みの公務員をやりながら莫大な富を得ることを拒んで、尊敬する親戚の様に本物のビジネスパーソンを目指しとる。いつか神通力を奪われて、第六感を使用したら怒られちゃうから、そういう個性も失う。それでも、本当のビジネスパーソンの道を目指して、大人達と弱肉強食なビジネスの世界で戦っとる」

「だから大人ってこと?」

「そう。顔つきが出会った頃と違うもん。理不尽と戦って来たんやなって感じる。私の親戚達とか、学園の大人達とは違うやん。安泰に不抜けとらん」

 五条が周囲の大人を馬鹿にした様な態度をとったことで、鷲頭は安心した。自分が変わったといわれて、それがいい意味なのか分からず不安になったが、その必要はなかったと悟ったのだ。

「杏奈はちょっと他の人と仲良くするのが苦手だなって、傍から見てて思うっちゃん。それもそうだよ。生きてる世界が違うっちゃけん、対等に仲良くなんかできんで当たり前やん。ねぇ杏奈。杏奈って、どうして私には優しくしてくれるん? ほら、あんまり睨んだりせんし、よく笑顔になるやん」

 鷲頭は、悟られている様に感じた。それは、自身が抱く、衣世梨への好意のことである。五条は誰よりも、こういう事に対しての感は鋭い人だ。だから鷲頭は、嘘をついても無駄だと思い、本心を隠せないと思った。

 言葉に詰まっていると、五条が「赤くなってる」といいだし、喉元まで出かかったいい訳の言葉がまた腹の中へと消えていった。

「いつからなん?」

「なにが……?」

「そっか、いいたくないんやね」

「だからなにが……!」

 少し経って、五条は鷲頭の手を取った。そして妖艶な笑顔を鷲頭へと向けた。

「五条衣世梨は皆のものだよ、杏奈。でも、杏奈は特別なファンだよ」

 友達ではなくファンといったことに対し、鷲頭は含みを感じた。友達以上恋人未満だと認識し合っているという意味だと思ったが、ハッキリと言葉で明言して貰わないと納得ができない。曖昧な言葉では納得できない。ビジネスパーソンとしての性が、慟哭を止めてくれなかった。そんな生き方をしてきた自分を呪いたいと、にわかに思ってしまった。

 鷲頭は五条を見つめていた。自分を見つめる五条の目は、泳いでいた。その大きく潤んだ目の中に住んでいる自分は、不安に満ちた顔をしていた。

 ずっと、この大きな瞳の傍に居て、その一人の中に住んでいたかったのだ。

 家族に愛されず、友達も出来なかった自分を特別扱いしてくれた、たった一人の女の子。心が満たしてくれ、無条件に自分に笑顔を見せてくれる特別な人。それが、鷲頭にとっての五条だった。

水辺の森公園……長崎にある公園。繁華街の近くにあり、市民の憩いの場になっている。

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