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第四話 最近の子

 父正仁は、弥勒の旅の伴とする為に、一年上の有馬巳代を転校させることを弥勒へ伝える。

 数日後、弥勒みろくが転校することが、クラスで公となった。数名の友人を初め、彼の才能が他所へ行ってしまうことに対して、惜しいと感じていた。

すめらぎが転校してしまうというのに、お前ら泣きもしないんだな」

 老齢の担任は、少し呆気に取られたような顔をしていた。最近の若いやつはドライだな、などと思っていた。しかし、それは見当違いというものであった。友人らは薄情な訳では無い。ただ、転向をするといっても連絡は取れるし、顔も見える。一般人よりは厳しい環境かもしれないが、国内程度であれば、会おうと思えば会えないこともない。

 弥勒みろくは「老人と若人わこうどのあいだにある深いジェネレーションギャップは、到底埋められまい」と、少し悪い感情を抱きながら、思った。

 普段から心の声を互いに感知することで会話をしているだけあって、弥勒みろくは、心の声が外へ漏れない様にするのも得意技だった。

 内心で生徒に呆れている担任を、内心で時代に追いついていない老人だと馬鹿にする。この場で最も高みに立っている感覚に陥り、彼は優越感から微笑んだ。

「まぁすめらぎも寂しがってない様だし、まぁいいか。向こうでも友達ができるといいな。でもそんな心配は杞憂でしょうね。なぜならばすめらぎは、誰よりも高貴な出自であるにも関わらず、良い意味でプライドがない。親しみやすいすめらぎなら、きっと上手くやれるだろう」


 それからの数日間、弥勒みろくは品川校で友人らと普段通りの日々を送った。

 品川校生活最終日の朝、父は弥勒みろくに対し、思い出したかの様にあることを告げた。

「転校するのはお前だけじゃないぞ。お前と話してる姿を見たことは無いが、仲良くしてあげなさい」

「え、誰」

有馬巳代ありまみよ君だ。幼稚舎から同じらしいが、お前の口から彼の名を聞いたことはないな。顔、分かるか?」

「分かるけど……」

 有馬巳代ありまみよは一学年上の、剣道部で主将を務める男であった。なん度か話したことはあったが、弥勒みろくは彼のことが苦手であった。その理由は、自分でもよく分からなかった。強いていうのならば、あの鋭く尖った眼光だろう。

 弥勒みろくは登校して、休み時間に三年三組へ向かった。有馬ありまと、少しでも仲良くなろうと思ったのだ。

「あ、有馬巳代ありまみよ君。今、暇かな?」

「あん?」

 有馬ありまは強烈な目付きで弥勒みろくを睨みつけた。父は、弥勒みろくの為に有馬ありまを転校させることにしたと、話していた。彼の能力は、必ず旅で役に立つからだと、そういっていた。

 しかし今、弥勒みろくはこう思う。

「あぁ……こいつ嫌い……!」

「聞こえてんぞ」

「ヒィィィ……!」

 有馬ありまは席から立ち上がると、弥勒みろくがいる入口までゆっくりと歩いた。

「聞こえない様に呟いたつもりだったんだけどな……」

「俺の方が神通力のコントロールが上手いんだろうな。伊能いのうがいってた通り、神通力がダダ漏れだぜ」

伊能いのうは他人にそんなことまで吹聴してやがったのか」

「ああ。あいつの口はお前同様、ダダ漏れだからな。まぁそんなことはどうでもいい。一緒に九州へ行くんだろ? 仲良くしようぜ」

「エエ……」

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