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神通力上昇中〜惟神学園二年、皇弥勒  作者: 乘越唯響


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第三十話 弓の道の泰斗

 弥勒は和弓を扱うべく鍛錬を行う。その最中で弥勒は墓地での件を持ち出し、伊東の心の奥底にあるなにかに気づく。

 弥勒は和弓を手に取った。そして、二メートル以上もあるその大きさに息を飲んだ。先人達は、こんなものを手に取って、馬上から射ていたのか。先人には、人を凌駕する化け物の様な人も居たのだと、思い知った。

「さぁ左手で弓を持って、弦を右手で引くんだ」

「硬い……!」

 和弓を引くには、約二十キロの力が必要になる。それは片手で引く力だ。弥勒には、こんなにも細身な伊東が、どうやってこんなにも硬い弦を引けるのかと、感嘆した。

「自分の腕で引こうと思わなくていい。神通力を使うんだ。君があの跳躍力やバランス能力を発揮するあの時の感覚を呼び起こすんだ」

 耳元で優しく囁く伊東に従い、弥勒は集中した。すると、弦は指先に込めた軽い力のみで大きく伸びた。

「凄いぞ……! 意識をそのまま、的をよく見るんだ。後は自分の視覚を信じて真っ直ぐ放つだけだよ」

 数十秒後、放たれた矢は的を射た。弓を下ろして集中が途切れた瞬間、どっと疲れた。

「やったね弥勒君! 凄いじゃないか!」

「でもどっと疲れちゃって、連射なんて出来そうもないです」

「当たり前だ。今までは下半身を強化することにしか神通力を使っていなかったようだしね。すぐに慣れるよ。それになにより、その細い指先で、本当に弦を引けたことが驚きだ。まるで将棋の駒を置くような軽やかさだった」

 伊東には、包容感があった。初めて会った時は、こんな人となりだとは思わなかった。

 稲葉曰く、伊東は弓の事となれば誰にも負けないほどの天才だが、その他の事に於いてはヘタレなのだそうだ。これが伊東祐介という男の真の魅力なのだと悟った。

「さぁ練習を続けようか。連射、したいんだろう? 数をこなすしかないよ」

「連射ができないと役に立てないから……続けよう!」

「役に立てないって、一体なにをするつもりなんだい? 中世版サバイバルゲームでもするのかい?」

 弥勒は、ボロが出てしまったと思った。怪異と殺し合いをするかもしれないと思ったなどと、口が裂けても言えない。そんなことをいえば、墓地で想起した九州の諸問題について質問をした時、余計な不安を与えかねないでは無いか。いや、これ程までの弓の泰斗に、そんな遠慮は必要ないのではないかと思った。最早聞いてしまえと思い、弥勒は意を決して尋ねた。

「墓地での出来事を覚えてる? 稲葉さんの言葉に、皆が暗い顔をしていた。暗く、なにか心当たりが有りそうな顔を……。伊東さんはあの時、なにを思え浮かべて居たのか知りたい。僕は……九州のことをもっと良く知りたいんだ」

 伊東は「急だね」と困惑した。

「まぁ詳しいことは知らないんだけど、長崎の諫干問題とか、色々。まぁ政治家の不祥事なんて多いしね。問題という意味では、暴力団とか色々あるし。でもこの九州は、優秀な政治家も、故郷を愛する人も多いと思うよ。だから……特になにかを想像してたって訳では無いんだ」

 どこか要領を得ない回答だった。そんなものなのだろうかとも思ったが、それは違うと感じた。彼が胸の内に、なにかを隠していると気づいてしまったからだ。そしてそれは、稲葉も同様だった。弥勒程の神通力の潜在能力がなければ、二人の心の奥底にある本音とも信条ともいえるものを、こうして感知することは出来なかっただろう。

 その内容は、これ以上質問をしても、暴けないと思った。稲葉同様、笑って誤魔化されてしまう気がしたのだ。だが、暴く必要すらないと思った。二人の心の奥底には迷いや悪意はなく、二人が大友修造に関係する危険思想の持ち主ではないと悟ったからだ。つまりそれは、これ以上有益な情報は二人からは引き出せないということを、意味していた。

「そんなんだ……よし、練習を続けよう!」

 弥勒は和弓を手に取り、そういった。伊東もまた、「そうしよう」といって、笑顔を見せた。

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