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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第一部 子爵令嬢、婚約破棄騒動に介入する
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05.婚約破棄に介入するに至るまで(4)


本日5話目です。

 

(来てはみたものの、どうやってオスカー様に話しかければいいのかしら)



 王宮のそばにある、すり鉢状の騎士団訓練場にて、クロエは一番後ろの席に座りながら頭を悩ませていた。



「キャー! オスカー様!」


「かっこいいー! こっちむいてー!」



 前方に鈴なりになっているのは、黄色い声援を上げる女性達。

 目を輝かせながらキャーキャー叫んでいる。



(武術大会のときも思ったけど、オスカー様ってモテモテね)



 闘技場の中では、訓練服姿のオスカーが周囲の騎士たちと話をしている。

 クロエは頬杖をついて、クールな表情の彼をながめた。



(確かに、綺麗な人よね。コンスタンスと同じ銀髪と青い瞳も綺麗だし、背も高い。美人の兄は美男子なのね)



 クロエがそんなことを考えていると、オスカーがふとクロエの方に目を向けた。

 目を見開いて二度見すると、ほんの少しだけ表情を緩ませる。



「キャー! オスカー様が笑ってくれたわ!」


「わたしに笑ったのよ!」


「いいえ、わたしよ!」



 そんな騒ぎを尻目に、もしかして気が付いてくれたかもしれない、と思うクロエ。


 彼女の目の前で、オスカーが隣に立っていた男性に何か言って、建物の奥に入っていく。

 入っていくときに再びチラリとクロエを見たところを見ると、どうやら本当に気が付いたようだ。



(これなら、会いに行っても大丈夫かしら)



 オスカーが出て行ってしばらくして、クロエは席を立った。

 通路に出て、方角的には右かしら、と歩き始めた、そのとき。



「君が、クロエ・マドネスさんかな?」



 振り向いて声の主を見ると、それは赤毛に緑色の瞳が特徴的な、陽気そうな若い男性であった。

 闘技場にいた人だわ、と思いながら、クロエが尋ねた。



「はい、クロエ・マドネスです。あなたは?」


「セドリックだ。オスカーはちょっと手が離せなくてね、代理で迎えにきた」



 にっこり笑う青年を、クロエは注意深くながめた。



(この人、多分だけど、すごく魔力量が多いんじゃないかしら)



 近づくと、圧迫感のようなものを感じる。

 この時代で、これほどの魔力量の持ち主を見るのは初めてだ。


 赤毛の男性が不思議そうな顔をした。



「俺の顔に、なんか付いてる?」


「あ、すみません。魔力、すごく高いなと思って」


「さすがマドネス家のお嬢さん、よく分かったね」と笑うセドリック。



 その後、彼と一緒にしばらく歩いて、大きな扉をくぐり抜けると、そこは騎士が複数いる中庭のような場所だった。


 突然現れた若い女性に、騎士たちの熱い視線が集まる。

 そんなことは毛ほども気にせず、ここは闘技場の裏かしら、とクロエが考えていると、横に立っていたセドリックが大きな声を出した。



「オスカー! こっちだ!」



 セドリックの視線の先を見ると、遠くからオスカーが手を振りながらやってくるのが見えた。

 半袖の訓練着を着ているせいか、意外と筋肉質なのがよく分かる。


 彼は、「お前、ものすごい分かりやすいな」「うるさい」という軽口をセドリックと交わすと、心配そうな表情でクロエの顔をのぞきこんだ。



「どうした、なにかあったのか?」


「急にお邪魔してごめんなさい。お話ししたいことがあって」



 クロエの只ならぬ雰囲気に、オスカーが「とりあえず、むこうに行こうか」と、人気のない所へ彼女を連れて行く。そして、真剣な目で尋ねた。



「なにかあったんだな?」


「……ええっと、その……」



 クロエは言い淀んだ。頭に血が上って来てしまったものの、実際オスカーを目の前にして、果たして自分が言うべきなのかどうか分からなくなってしまったのだ。


 彼女の様子を見て、オスカーが察したような顔をした。



「もしかして、コンスタンスの件か?」


「……ご存じだったんですか?」


「何となく聞いてはいた。まさかとは思っていたが、君が気付いたってことは、本当ってことだな」



 クロエは微妙な顔をした。なんだか、ちょっとディスられた気がするが、それはさておき。

 実は、と先ほどあった、ナロウ王子が突然文句を言ってきたことを、包み隠さず話す。


 聞き終わったオスカーが、その青い瞳に怒りの色を浮かべた。



「なるほど、聞いたより十倍は酷いな」



 そして、「すまない」と怒りを逃すように大きく息を吐くと、クロエを真っすぐ見た。



「知らせてくれて感謝する。家族と相談の上だが、なんらかの策を取るつもりだ」


「策、ですか」


「ああ、恐らくだが、我が家から王家に質問状を出すことになると思う。コンスタンスに何か問題があるなら、問題解決のために教えて欲しいと」



 そして、ふっと表情を緩めた。



「クロエはコンスタンスを信じてくれるんだな」


「当たり前です! コンスタンスが嫌がらせなんてするハズありません!」



 ぷんすか怒るクロエに、ありがとう、とつぶやくオスカー。

「中には嫉妬に狂ったコンスタンスがやったんじゃないかと言う奴もいるんだよ」と苦笑すると、微笑んだ。



「少し待っていてくれるか、学園まで送ろう」


「はい、ありがとうございます」



 これでとりあえず大丈夫だろうと思い、胸を撫で下ろすクロエ。


 その後、オスカーがなにか手を打ったのか、学園内は平和を取り戻した。

 コンスタンスの顔は明るくなり、クラスの女性達の表情も和やかになった。


 やや不穏な空気は感じるものの、静かに過ぎていく日常。


 そして、遂に卒業パーティの日がやってきたのだが、



『コンスタンス・ソリディド! お前との婚約は破棄する!』



 そこで予想外の出来事が起こることになる。





『婚約破棄に介入するに至るまで』はこれで終了です。


明日から、いよいよ婚約破棄騒動に入っていきます。



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