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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
おまけ

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【コミカライズ1巻発売! 記念SS】クロエ、ぬいぐるみ目覚ましを作る(4/4)


10月17日に発売されるコミカライズ1巻、発売記念SSです!

本日は最終話、クロエが作った最強のぬいぐるみ目覚ましをチェルシーが発見したところからです。

 

「ん?」



 彼女は、クロエの寝室の棚の上に

 ピンクの太ったウサギのぬいぐるみが置いてあることに気が付いた。



「へえ、妙に太っているけど可愛いじゃん」



 チェルシーはウサギを撫でた。

 暗い寝室に一匹だけいるそれは、何だかとても寂しそうに見える。


 抱っこしてあげようと持ち上げてみると、なぜかズシリと重い。



「あれ、もしかして、何か入っている?」



 後ろにチャックが付いているのを発見するが、

 中に入っているのがお金かもしれないと思うと、変に触らない方が良いかもしれないと考える。



(まあ、いずれにせよ、この空き家に置いておかない方がいいよね)



 彼女はウサギの頭をポンポンと軽く叩くと、ニカッと笑った。



「よし、じゃあ、お姉さんがうちに連れて行ってあげよう!」



 ちなみに、このウサギはかなり重い。

 重量約2kg、小玉スイカ1個ほどの重さがあり、通常のぬいぐるみとは一線を画すズッシリ感だ。

 普通の女性であれば、警戒して持ち帰らなかったかもしれない。

 しかし、チェルシーは元冒険者なだけあって、腕っぷしが強かった。


 彼女はぬいぐるみをひょいと持ち上げて小脇に抱えた。

「このぬいぐるみパンパンじゃん」などと思いながら、薬屋を出る。


 その日一日は虎の尾亭で働いたあと、彼女はぬいぐるみを一人暮らしの家に持ち帰った。


 シャワーを浴びて寝間着に着替えると、

 寝室の隅にある、自分のぬいぐるみが並べてある棚の上に

 クロエのぬいぐるみを置き、その頭をぽんぽんと頭を叩いた。



「あんたここなら寂しくないでしょ、おやすみ」



 彼女は大きな欠伸をしながらベッドにもぐりこんだ。

 棚と窓を背に横になると、眠りに落ちていく。



 ――そして、約6時間後の朝五時半。



 チェルシーは、何かの匂いで目が覚めた。

 目をつぶったまま、ぼんやりとその匂いを嗅ぐ。



(……これは……スープ?)



 たまねぎや野菜をコトコト煮込んで作ったような

 とても美味しそうなスープの香りがする。



(……誰か朝食でも作っているのかな)



 目をつぶりながら、もうひと眠りしようと思っていると、まぶたの向こうが明るくなってきた。

 同時に小鳥の鳴き声が聞こえてくる。



(……あれ、窓かカーテン閉めないで寝ちゃったかな)



 幸せにスープの香りをかぎながら、ぼんやりとした光の中、小鳥の鳴き声に耳を傾ける。


 しかし、だんだんと目が覚めてくると同時に、彼女は違和感を覚え始めた。



(……ちょっと、スープの香り、強すぎない?)



 まるで、部屋の中で誰かがスープを煮込んでいるかの如くの匂いの強さだ。

 しかも、



(この鳥、ずーっと鳴いてるわよね?)



 普通、鳥は鳴き止んだり羽ばたいたりするものなのに、

 チュンチュン、と同じ調子でずーっと鳴いている。


 目をつぶりながら、チェルシーは思った。

 何かがおかしい、と。


 と、そのとき。


 突然、鳥の声が止んだ。

 スープの匂いも薄くなる。


 そして、次の瞬間、ガタッという音がして、部屋の隅で何かが動く気配がした。

 同時に、何か霧状の冷たいものが顔に降ってくる。



「……っ!」



 チェルシーは反射的にガバッと起き上がった。

 素早く音の方に目を走らせ、



「……っ!!!!!!」



 思わず息を飲んだ。


 それは、目を光らせた黒い物体だった。


「オハヨウ オハヨウ オハヨウ」と口をパクパクと動かしながら

 チェルシーに向かって飛び掛かって来る。



「魔獣!」



 チェルシーは瞬時に体制を立て直した。

 足を高く上げて、飛び掛かってくる黒い物に向かって強烈なケリを食らわせる。


 ガンッ


 チェルシーの強烈なキックを受けた黒い何かは、思い切り壁に叩きつけられた。

 ピクピクと動きながら、「オハヨウ オハヨウ」と何度か言ったあと、動かなくなる。


 窓際に走り寄り、バッとカーテンと窓を開けてその物体を見て、チェルシーは目を丸くした。




「え、ぬいぐるみ?」



 そこに転がっていたのはピンク色の太ったウサギのぬいぐるみだった。



「え? 動いたよね、これ?」



 チェルシーは、警戒しながら足でぬいぐるみを転がした。

「ごめんね、ココさん」と言いながら、背中についているチャックを下げると、中に何か筒のようなものが入っているのが見えた。

 筒には「ON」「OFF」のボタンと時計が付いており、時刻は5時30分を差している。


 この時計を見て、チェルシーはピンときた。

 もしかして、これはココが言っていた「絶対に目が覚める目覚まし時計」ではないだろうか。



「……ぷっ」



 ウサギの正体が分かり、チェルシーは思わず笑い出した。

 お腹を抱えてベッドの上を笑いながら転げまわる。



(確かに、これは絶対に目が覚めるわね)



 その後、もう一度時刻を合わせて動かしてみたところ、



 1.スープのにおいを充満させる

 2.目から光を出して部屋を明るくする

 3.鳥の鳴き声を流す

 4.霧状の水を出す

 5.「オハヨウ」と叫び出す

 6.ベッドの上で激しいダンスを踊り始める(殺傷力高)



 という機能が順番に稼働することが分かった。

 チェルシーは感心した。



「これ凄すぎでしょ。こんなのどこで買ったんだろ?」



 そして、スイッチを「OFF」にぬいぐるみを棚の上に置くと、

「もうちょっと寝よう」とベッドに潜り込んだ。



(すごい目覚ましだとは思うけど、私はココさんじゃないし、ここまではいらないかな)



 そんなことを考えるチェルシーではあったが、この目覚ましは意外と活躍することになる。



「……これ、もしかして、結構いい?」



 チェルシーは、月に何度か冒険者活動に参加することがある。

 そんな日の前日は、飲み過ぎると次の日に起きられなくなるため、いつもお酒をセーブしている。


 しかし、このぬいぐるみは絶対に起こしてくれるため、安心してお酒を飲めるのだ。

 何度か使って、チェルシーは評価を改めた。



「いいじゃん、これ! 最高!」



 防御力が高く、チェルシーの蹴りにも耐えられるのも素晴らしい。



 という訳で、ぬいぐるみはチェルシーの元で大活躍することになった。

 飲んだくれたチェルシーを起こし、たまに蹴られたりするものの、「ありがとう! 偉いぞ!」と褒められたり、たまに洗ってもらったり、幸せな日々を送る。


 そして、半年後、クロエが帰って来た際に、チェルシーが



「この子ちょうだい! もうこの子なしでは生きられないの!」



 と懇願したことにより、緩衝材を増やされたぬいぐるみは、正式にチェルシーの家の子になったという。






 おしまい






コミック1巻の表紙より、クロエとオスカー&ぬいぐるみたち

挿絵(By みてみん)

SSはこれにて完結です。

お付き合いいただきましてありがとうございます!


そして、コミカライズ1巻好評発売中です!

書影は↓で、とても鮮やかで可愛い感じになっております!

ぜひお手にとって頂けると嬉しいです!


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― 新着の感想 ―
コミック電子書籍で購入しました。 毎回クスって笑っています。 新刊楽しみにしています。
よくぞ耐え抜いたぬいぐるみ
面白かったです。
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