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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
おまけ

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【コミカライズ1巻発売! 記念SS】クロエ、ぬいぐるみ目覚ましを作る(2/4)


10月17日に発売されたコミカライズ1巻、発売記念SSです!(全4話)


こちらは2話目。

クロエとオスカーが街に「最強のぬいぐるみ目覚まし」を作るための材料を買いに行くところからです。

 

 翌朝、いつも通り冒険者に叩き起こされて、薬屋の営業を終えた後、

 クロエは作業机に向かって、真剣な顔で設計図を書いていた。



(いい感じの物が作れそうだわ)



 この1年、古代魔道具を分解しまくって、新しい知識を手に入れた。

 それを応用すれば、最強のぬいぐるみ目覚ましを作れるに違いない!



(やるわよ!)



 彼女は、定規やコンパスなどを使いながら、熱心にぬいぐるみの内部設計を始めた。

 骨組みや構造を考案し、紙にどんどん書き込んでいく。


 そして、大体の設計が終わり、彼女は考え込んだ。



(大枠はこれでいいとして、問題は搭載機能よね)



 以前のぬいぐるみには、歩行機能とダンス機能が付いていた。

 5分以上鳴って起きないと、ベッドの上で激しめのダンスをするのだ。

 お腹をキックされるなど、相応のダメージは受けるが絶対に目が覚めるので、とても重宝していたのだが……



(前と同じっていうのも、芸がないわよね)



 それに、前のものは、無理矢理起こされた感じがあって、目覚めがあまり良いとは言えなかった。

 もうちょっと自然な感じで目覚めるような目覚ましを作りたい。



(どんな機能がいいかしら……)



 彼女がうんうんと唸っていると、

 チリンチリン、と裏門のベルが鳴った。


 裏庭に出て門を開けると、そこには紺色のローブ姿のオスカーが立っていた。

 どうやら様子を見に来たらしい。



「どうぞ、お入りください」



 中に招き入れると、彼は、ふと机の上の設計書に目を止めて、不思議そうな顔をした。



「これは……、ぬいぐるみ……の中身か?」

「はい、昨日言っていた目覚ましを作ろうと思って」



 オスカーが、なるほど、という顔をした。



「そういえば、廃教室にあった君の部屋に、ぬいぐるみがあったな。目覚ましということは、音が鳴るのか?」

「ええ、まあ、そうするのもアリなんですけど、それだけだと、ちょっとつまらないかなあと思って」



 そして、クロエはオスカーに尋ねた。



「オスカー様ってどうやって朝起きてます?」



 オスカーは寝坊するというイメージが全くない。

 なんなら、10分前には起きているイメージだ。

 彼の起きる技術を取り入れれば、最強のぬいぐるみ目覚ましが出来上がるのではないだろうか。


 そんなことを考えるクロエではあったが、オスカーの答えは予想外のものだった。



「基本的に、前日に〇時に起きる、と3回唱えて寝るようにしている」

「……え?」

「3回唱えて寝ると、起きられるんだ」



 オスカー曰く、騎士は睡眠の訓練もするらしく、

 寝る前に念じれば目覚ましなしでも起きられるらしい。


 クロエは呆気にとられた。

 まさか、この世の中にそんなことができる人間がいるとは思わなかった。



(この人、本当に同じ人間なのかしら)



 驚くクロエに、オスカーが「参考になれずに済まない」と申し訳なさそうな顔をする。

 そして、ふと思いついたように口を開いた。



「ただ、目覚ましは使ってはいないが、起きられるように工夫はしているな」

「工夫?」

「ああ、早く起きる時はカーテンを開けて寝るようにしている」



 オスカー曰く、部屋が明るいと目が覚めやすくなるらしい。



「あと、窓を開けておいたりもするな。鳥の鳴き声でも目が覚めやすくなるからな」



 クロエが、なるほど、とうなずいた。



「窓とかカーテンを開けると目が覚めやすいのはあるかもしれませんね。この前、うっかり窓とカーテンを閉めて寝たら、気が付いた時には翌日の夕方でした」

「……そこまでいくと違う気もするが、明るさとか音は重要だと思うぞ」

「そうですね」



 なるほどなるほど、とうなずくクロエ。


 その後、ぬいぐるみ目覚ましの材料を買うために、2人は街に出た。

 春の光に包まれた街は、どこかのんびりとしている。


 クロエの横をゆっくりと歩きながら、オスカーが口を開いた。



「どこへ行くんだ?」

「まずは道具屋でぬいぐるみを買って、その後冒険者ギルドで魔石を買おうと思います」



 通りの端にある道具屋に到着すると、しっとりとした雰囲気の色気のある美人――看板娘のナタリアが笑顔で迎えてくれた。



「いらっしゃい、ココさん。何かお探し?」

「うん、ぬいぐるみとかある?」



 ナタリアが目をぱちくりさせた。



「あら、珍しいわね。こっちよ」



 ナタリアについて店の奥に行くと、そこには大小さまざまなぬいぐるみが並んでいた。



「こんなにいっぱいあるんですね」

「女の子へのプレゼントに人気なのよ」



 クロエは慎重にぬいぐるみをながめた。

 中に骨組みを入れることを想定しながら、じっくりと選ぶ。

 そして、



「これください」



 手に取ったのは、抱えるほどの大きさのピンク色のウサギだった。

 耳が長く、持ち上げるとゆらゆらと揺れる。



「可愛いの選んだわね。ラッピングする?」

「ううん、このままで大丈夫」



 クロエは、ほくほく顔でぬいぐるみを抱き締めた。

 大きさといい形といい、申し分ない。



(これはいい物が作れそうだわ)



 そして、ふと思い出して尋ねた。



「ナタリアさんって、毎朝どうやって起きているの?」






(参考)コミック1巻より、魔道具開発のために外に出て参考になるものをスケッチする幼少期のクロエ

挿絵(By みてみん)

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