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【書籍2巻発売!記念SS】クロエ、お礼に魔道具を作る①


本日1月25日、書籍2巻発売! 記念SSです。(全2話)


今回は、Web版目次『第三部 02.ティールームでの語らい』の少し後くらい。

黒ローブの男たちに攫われそうになったクロエが、サイファの街からオスカーと一緒に帰って来る→親戚の男の子として、ソリティド公爵家で居候を始めたあたりです。

 

「そういえば、クロエ。あなた、セドリック様にお礼をした方が良いと思うわ」



 ソリティド公爵家の1階にある、薔薇の花が飾られた明るいティールームにて。

 青いドレス姿のコンスタンスがティーカップを置きながら、正面に座るクロエを見た。



「お兄様の話だと、あなたがこの家にいるのを隠すために、色々と配慮下さったみたいなの」

「そうなの?」

「ええ、あと、ナロウ殿下があなたの実家に突撃しないように見張っていてくれたようよ」



 コンスタンスの話を聞いて、クロエは思った。

 実家に配慮してくれていたのは非常にありがたい。

 それは確かにお礼をしなければ、と。



「お礼って何がいいのかしら」

「そうねえ、この状況だし、手紙かしら」



 手紙の書き方が分からなかったら言ってちょうだい、というコンスタンスの言葉を聞きながら、クロエは考え込んだ。



(実家に配慮してくれたのに、手紙だけっていうのも、ちょっと足りない気がするわよねえ)



 感謝の気持ちを表すには、物が良いと本に書いてあったし、前にコンスタンスもそう言っていた。

 ここは手紙に何かお礼の品を付けた方が良い気がする。



(することなくて暇だし、お礼の気持ちを表すために、何か作ってみよう)



 そんな訳で、その日の夕方。

 クロエはエントランスで、帰宅した騎士服姿のオスカーを捕まえて尋ねた。



「オスカー様、セドリック様って、何か、不足したり困っていたりすることありませんか?」

「急にどうしたんだ?」



 帰宅してすぐの唐突な質問に、オスカーが不思議そうな顔をする。

 クロエが小声で囁いた。



「実は、感謝の気持ちを表すために、何かお礼の品をと考えているんです」

「ああ、コンスタンスから聞いたのか」

「はい。実家に配慮してもらったと聞きました」

「なるほど、それで知りたいのか」



 オスカーが難しい顔をして考え込んだ。



「……難しいな。何せ王位継承順位一位の王弟殿下だ。大抵のことは叶うからな。

 この前話をした時は、最近忙し過ぎてお忍びに行きにくくなったとか、身体を動かす時間が取れないとか、そんなことをボヤいてはいたが、特に何か足りないとか困っているという話はなかったな」


「まあ、確かに王弟殿下ですものね」


「そうだな。もしも物を送りたいなら、毒見が必要な食べ物ではない方が良いかもしれないな。まあ、無難なところで花か」


「花ですか」



 ありがとうございます、とお辞儀をして部屋に戻るクロエ。

 そして、机に向かって頬杖をつくと、ふうむ、と考え込んだ。



(花ねえ……)



 確かに、花は、無難な感じがする。



(でも、花もらったところで何の役にも立たないわよね)



 そもそも、王宮にはたくさんの花壇があると聞く。

 もともとたくさんあるものを、外部から増やしてどうするんだって話だ。



(……花じゃない方が良い気がするわ)



 腕を組んで、うんうんと唸るクロエ。

 そして、考えること、しばし。



「……そうだ、アレ、どうだろう」



 前世のクロエは非常に腕の良い魔道具師で、上からのリクエストには大抵応えてきた。

 まあ、それが殺戮の魔道具の開発につながってしまった訳だが、



「1つだけ、どうしても成功しなかったものがあるのよね」



 当時は必要な技術が不足していて駄目だった。

 でも、もしかして、今世に学んだ新しい技術を掛け合わせたら可能じゃないだろうか。



(……何だか、出来そうな気がしてきたわ)



 クロエはソワソワし始めた。

 居ても立ってもいられず、紙を取り出して、わき目も降らず設計書を作る。



 ――そして、その日の深夜。



「で、できたわ! 多分いける! いけるわ!」



 もしかして、これならばいけるんじゃないかという設計書が出来上がった。



「しかも、武器じゃないから危なくない!」



 クロエは浮足立った。

 前世と今世の技術のコラボだわ! と胸を躍らせる。

 その日から、彼女は開発に没頭し始めた。




 *




 クロエが部屋にこもりがちになり始めてから一週間後。

 ネグリジェに着替えたコンスタンスが、自室でメイド長と話をしていた。



「クロエは今日も部屋に籠っていたわね」


「ええ、何でも魔道具研究が興に乗って来たそうです。執事の話では、お兄様のテオドール氏に頼んで、色々と手配してもらっているようです」


「外部にはバレないようになっている?」


「はい、そこは大丈夫です」



 コンスタンスは思った。

 こっちに来たばかりの時は、狙われたということもあり、元気がなくて心配だった。

 でも、魔道具に熱中できるくらいだから、きっと大丈夫だ。



「わかったわ。彼女は昔からあんな感じだから、見守ってあげて」

「はい、分かりました」



 では、おやすみなさいませ、とメイド長が部屋を出る。


 クロエも元気になったし、一安心ね。と思いながら、眠りにつくコンスタンス。






 ――しかし、その日の深夜、事件は起こった。


 1人の若い従僕が、薄暗い公爵邸の見回りをしていた。


 魔石ランプと棒を手に、1階と2階を見回り、3階に行くと、使用人部屋から、寝間着の上にショールを羽織った料理人の女性が出て来た。



「こんな夜更けにどうしたんだ?」


「ああ、翌日の朝食で仕込みを1つ忘れちまったのを思い出してね。これから行くところさ。あんた、丁度良い所に来た。あんた一緒に行ってくれるかい?」


「ああ、構わないよ」



 2人は、階段を降りて1階に向かった。

 1階の一番端にある厨房に向かって、暗い廊下を歩いていく。


 そして、厨房が廊下の向こうに見えてきた、そのとき。

 キイイ、という大きな音がして、薄暗い廊下の奥で、厨房の重いドアがゆっくりと開くのが見えた。



「……っ!」

「!」



 従僕と料理人の女性は、思わず顔を見合わせた。

 一瞬、風かとも思うが、あの重い扉が風で開くわけがないと思い直す。


 そして、覚悟を決めて頷き合うと、従僕が棒を、女性が魔石ランプを持って、ゆっくりと開いたドアに近づいた。


 厨房の中をのぞくと、窓から差し込む月明かりに照らされて、鍵をかけていたはずの貯蔵庫が開いているのが見え、そこからガサガサという音が聞こえてくる。


 従僕は、ごくりと唾を飲み込むと、厨房の中に向かって声を張り上げた。



「誰だ! そこにいるのは!」



 ガサガサという音が止み、厨房がシンと静まり返る。


 従僕は、ギュッと棒を握り締めながら厨房の中に入った。

 料理人の女性も、その後について、恐る恐る中に入る。


 そして、二人で、抜き足差し足で貯蔵庫に近づいて、中をのぞき込むと、奥に誰かが後ろ向きにしゃがんでいるのが見えた。



「……っ! 盗人め! そこを動くな!」



 従僕が飛び出して、貯蔵庫の入口から中に向かって棒を構える。

 女性が、その後ろから魔石ランプを掲げて、貯蔵庫内を照らす。


 しかし、



「……え?」



 彼らは、ポカンと口を開けた。


 貯蔵庫の中には、人っ子一人いない。

 ただ食料が並んでいるだけだ。



「……誰か、いたよな?」

「ああ、私も確かに見たよ、人だった」



 幻でも見たのだろうかと、目をこする2人。


 と、そのとき。

 突然、女性の持っていた魔石ランプの光が、ふっと消えた。



「……っ!」



 そして、驚く間もなく、二人の後ろで重い扉が、バタン! と勢いよく閉まる。



「う、うわあああああ!!! 幽霊だ!」

「ぎゃー!!! お化けーー!!!!」



 夜の静かな館に、男性と女性の叫び声がこだました。






ソリティド公爵家に幽霊騒ぎが発生した! 

明日、②を投稿します。



さて、皆様のお陰で、本日1月25日に、

KADOKAWAメディアワークス文庫から書籍2巻が発売されることになりました!(*'▽')


2巻は第2章途中からWeb版最後までの内容+5万字ほど加筆しており、主に下記3点になります。


1.クロエ、サイファの街でオスカーと一緒に魔道具開発&分析作業をする

 →絡みがもッと見たい! という感想をたくさん頂きまして、大幅増量に踏み切りました!


2.オスカーがお気持ち表明

 →あんまり言うとアレですが、つまりそういうことです♡

  これも感想でたくさん頂きまして、彼にがんばって頂きました!


3.クロエ、魔道具のとんでも改造をする

 →やはり彼女はこうでなくては!


ぜひお手にとって頂ければと思います。 ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-


詳細情報は↓↓(スクロールかなり下)をご覧ください。



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