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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
おまけ

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【書籍1巻発売!記念SS】クロエ、部屋を監視する①


書籍1巻発売、記念SSです。全2話。(②は明日投稿します)

今回は、第1章の『06.突然始まった断罪劇』の少し前の話です。

 

 クロエが貴族学園3年生になって、約7カ月。

 学園内の木々が、赤や黄色に美しく染まる秋のこと。


 授業が終わり、早く戻って魔道具の研究の続きをしようと、クロエがいそいそと帰る準備をしていると、



「クロエ・マドネス君、ちょっといいかね」



 教室に、分厚いファイルを抱えた真面目そうな男性教師が現れた。

 彼の名前は、アネスト・ラブレ。

 この学園で生徒指導を担当しているベテラン教師だ。


 突然の訪問に、生徒指導常連のクロエは身構えた。



「……アネスト先生、わたし、最近、何もしてませんけど」



 アネストが苦笑した。



「いや、今日は君の指導に来たんじゃない」



 そして、周囲を見回すと、声を潜めた。



「……実は、仕事の依頼で来たんだ」



 クロエは目をぱちくりさせた。



「仕事、ですか。ということは、魔道具ですか?」

「ああ、魔道具で何とか解決できないかと思っていることがあるんだが、相談できるだろうか」

「もちろんです」

「では、場所を変えよう」


 アネストが教室を出て廊下を歩き始めた。

 魔道具の話なら大歓迎だと、鞄を抱えたクロエが、嬉々として彼の後に付いていく。


 2人は、廊下の端にある来客用の応接室に入ると、置いてあるソファに向かい合って座った。


 アネストが、持っていたファイルから1枚の紙を取り出すと、クロエに差し出した。



「何とかならないかと思っているのは、これだ。見てくれるか」

「はい」



 クロエは紙を受け取ると、じっくりと読み始めた。



(ええっと、これは……、被害届?)



 紙には、

『とある女生徒の寮の自室にあるノートやドレスが、何者かに複数回に渡って破損された』

 といったことが書かれていた。

 守秘義務でもあるのか、女子生徒名の部分は、黒く塗りつぶされている。


 アネストが眉間にしわを寄せながら口を開いた。



「最初に被害届があったのは2カ月ほど前でね。本人が不在時に、教科書やノートがビリビリに破られていたらしい」



 彼曰く、それ以降、寮の監視を厳しくしたにも関わらず、再び何者かに忍び込まれて、服を破損されてしまったらしい。


 クロエは「ふむ」と考え込んだ。



「鍵は? かかっていたんですか?」

「ああ、確かにかけてあったらしい」

「窓は?」

「被害のあった部屋は2階の端でね。窓から入るのは難しいと思う」



 アネスト曰く、鍵を持っているのは、本人と学園寮の管理人だけ。

 万が一の時のためのスペアも存在するが、学園内の金庫の中に厳重に保管してあるらしい。


 クロエは首をかしげた。



「だとすると、鍵を持っている管理人が犯人なのでは?」

「本人は、強く否定している」

「学園内の金庫から、鍵を盗める可能性がある人は?」

「学園長、副学園長、生徒会役員だけだ。だが、全員が関与を否定している」



 なるほど、とクロエは考え込んだ。

 犯人候補はいるが、誰か特定できない、というところだろう。

 もしかすると、外部の仕業の可能性もある。



(まあ、いずれにせよ、こういのは魔道具の得意分野よね)



 わたしの魔道具(子ども)が大活躍するチャンスだわ! と思いながら、彼女は力強くうなずいた。



「分かりました。何とかできると思いますので、少し時間を下さい」



 それから数日。

 クロエは魔道具開発に没頭した。




 *




 依頼を受けて、1週間後。

 クロエはアネストと共に、女子学生寮の1階にある空き部屋の前に立っていた。



「今日は、解決策が見つかったので、お呼びしました」

「もう見つかったのか」

「はい、これです」



 クロエが指を差したのは、扉の横に付いているランプだ。

 アネストが首をかしげた。



「各部屋の横についている、備え付けのランプに見えるが、違うのか?」

「はい、ここを、こう外しますと……」



 クロエが、ランプの一部をパカッと外すと、そこには丸い水晶玉のようなものが入っていた。



「これは何だ?」

「これは、記録玉という魔道具です。先ほど取付けさせてもらいました」



 実際にやるので見ていて下さい。と、クロエはランプに記録玉を戻した。

 空き部屋のドアを開けて中に入り、ドアを閉める。

 しばらくして部屋から出てくると、今度はアネストに同じことをさせる。


 そして、ランプから記録玉を取り出すと

「一体何をやっているんだ?」とでも言いたげなアネストに、黒い板のようなものを見せた。


 そこに記録玉をくっつけて魔力を流すと、黒い板に白黒の映像が浮かび上がる。



「……っ!」



 アネストは目を見開いた。

 黒い板には、クロエがドアを開けて入る様子がはっきりと映っており、続いて、アネストがドアを開けて入る様子も映し出される。


 クロエが胸を張った。



「見ての通り、この魔道具は、映像を映して保存できる機能を持っています。ドアに何者かが触った瞬間起動して、一定時間録画するように設定しているので、ドアに触れた人間の映像を全て記録・保存できます」

「す、素晴らしい! これがあれば犯人など一発だな!」



 驚くアネストを見て、クロエは得意げな顔で魔道具を撫でた。

 自分の作った魔道具(子ども)が褒められるのは、とても嬉しい。


 その後2人は話し合い、件の女子生徒の部屋の横にあるランプに記録玉を取り付け、まずは1カ月ほど監視することになった。



「いやあ、助かったよ。これで事件解決だ」



 アネストが笑顔で何度もお礼を言う。



 ――しかし、事件は予想外の方向に進むことになる。




 *




 魔道具をセットして、約10日後。


 放課後のクロエの元に、再びアネストが現れた。

 前日に、件の女子生徒が泣きながら「自分が不在の間に、ドレスがビリビリに破られていました」と訴えてきたらしい。



「記録玉を見れば、犯人が映っているはずだ」



 という訳で、2人は女子寮から記録玉を回収すると、会議室に持ち込んで犯人を特定することにした。

 2人だけだと誰か分からない可能性もあるため、もう1人、生徒管理担当の女性教師も呼んで、3人で見ることにする。


 クロエが、記録玉を黒い板に取り付けて魔力を流すと、板に白黒の画像が映り始めた。


 まず映ったのは、可愛らしい顔立ちの女子生徒だ。

 アネスト曰く、被害者の女子生徒らしい。


 映像の中で、女子生徒がドアを開けて中に入り、その後10秒ほどで録画が切れて、画面が黒くなる。


 クロエは、用意したノートに、



『1日目(夕方) 被害女子生徒 入室』



 とメモをしながら、満足げな顔をした。

「誰かがドアを触った瞬間起動し、30秒後に自動的に撮影が切れる」という機能は、上手く働いているらしい。


 その後、画像の中で、女子生徒がドアを開け閉めするシーンが、5回ほど続く。



「なかなか犯人が現れませんね」

「まあ、まだ犯行の日には早いからな」

「しかし、誰も来ませんわね。友達の1人くらい来ても良さそうなものですが……」



 机の上の黒い板をながめながら、ヒソヒソと会話をする教師2人とクロエ。



 そして、7回目。

 とうとう女子生徒ではない人物が画面に映った。



「来ましたね!」

「ああ、誰だ!」



 思わず身を乗り出す3人。

 そして、その人物の顔を見て、



「「…………は?」」



 呆気にとられた顔をした。








(②につづく)




ちなみに、お気付きかと思いますが、被害女子生徒はピンクのふわふわ髪です。


今回のSSは、以前リクエストを頂いていたものです。楽しんで頂けると嬉しいです。(#^^#)

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