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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第三部 子爵令嬢、婚約お披露目パーティに参加する
32/47

10.事の顛末


本日7話目です。

 

 後日、王宮にて。

 ライリューゲ子爵とプリシラ、ナロウ王子やその取り巻き、主治医など、事件に関わった者たちに対して、厳しい取り調べが行われた。


 ナロウ王子や主治医などの洗脳を受けて犯行に及んだ者たちは、ショックのあまり話ができる状態ではなく、プリシラに至っては泣くわ喚くわの錯乱状態。


 唯一まともにしゃべれたライリューゲ子爵は、自らを



『千年前にこの大陸を支配していたリエルガ帝国の帝室の末裔』



 と名乗った。


 ライリューゲ家には、代々伝わる『本』が存在。

 その本により、彼は自分たちがリエルガ帝国の王族であることと、どこかに強力な武器(魔道具)を隠してあることを知ったらしい。


 子爵は、その記述を信じ、長い時間かけて領地を探索。

 大山脈の麓に頑丈な石室を発見した。


 石室の中には、たくさんの見たこともない魔道具が置いてあり、その中で、唯一動く魔道具が、例の魔道具だったという。



「本により、私はそれが洗脳のための魔道具だと知った」



 本には、魔道具から発せられた波動を浴びた者は、魔力登録した人間の言うことを何でも信じるようになる、と書いてあった。

 当時は植民地支配のための魔道具として使っていたらしい。


 子爵は、それを王都のティーサロンの中に運び込ませ、娘と協力してナロウ王子とその取り巻きを洗脳。


 プリシラとナロウ王子が婚約した後は、城の地下にその魔道具を持ち込み、城全体の洗脳を始めた。


 誰もが子爵とプリシラに傾倒し、彼らの言うことを全て信じるようになった。


 残念ながら、国王は洗脳が効きにくかったため、主治医に毒を盛らせてジワジワと弱らせ、病気に見せかけて殺そうと企んだ。


 彼はこう考えていたそうだ。



「国王が死んで、ナロウ王子が即位すれば、この国は私のものだ」と。



 誤算だったのは、魔道具から発せられた波動が、水分に微妙な影響を与えること。

 それをセドリックに勘づかれたお陰で、クロエに調べられ、事件が発覚してしまった。


 この話を聞いたライリューゲ子爵はこう言ったという。



「私には、運がなかったのだ」




 ――その後、裁判が行われ、それぞれの処分が決まった。


 ライリューゲ子爵は極刑。

 娘のプリシラは鉱山に送られ、一族は財産没収の末、爵位はく奪となった。


 ナロウ王子とその側近たち、主治医などの洗脳を受けた者たちへの処分については、



「洗脳されていたので、仕方なかったのではないか」


「どんな状況であろうと、やっていいことと悪いことがある」



 など、様々な意見が出て、揉めに揉めたが、



「情状酌量の余地はあるが、なにも罰しないという訳にはいかない」



 ということになり、辺境の砦に送られ、国境線の防衛などにあたることになった。

 働きと反省が認められれば戻って来られるが、元の通りとはならないだろう。


 そして、それぞれの刑が執行され、

 ようやくこの前代未聞の洗脳事件は、終わりを告げたのであった。





 *





 ――お披露目会の約七カ月後。

 春の日差しが暖かな、よく晴れた午後。


 ソリディド公爵家の明るいティーサロンにて、セドリックとコンスタンスがお茶を飲んでいた。


 若葉色の庭園をながめながら、他愛もない話に花を咲かせる二人。


 コンスタンスが、ふと思い出したように言った。



「そういえば、例の一件がようやく全て片付いたと聞きました」


「ああ、ようやく終わった」



 コンスタンスが、カップをソーサーの上に丁寧に置くと、セドリックに尋ねた。



「わたくし、ずっと不思議だったのですが、どうして、元子爵はクロエを狙ったのでしょうか」


「ああ、彼曰く、欲が出たらしいよ」



 徐々に政治が思うがままになり、子爵は欲が出た。

 遺された魔道具の全てを動かすことができれば、世界征服も夢ではないのではないかと思い始めたのだ。


 彼は、次々と有名魔道具師を攫ってきては、洗脳し、解析させた。

 しかし、誰も歯が立たず。皆口を揃えてこう言ったらしい。



「クロエ・マドネスであれば恐らく可能だ、彼女の魔道具には似た仕組みが使ってある」



 そこで、子爵はナロウ王子を使ってクロエを捕らえることにしたらしい。


 セドリックが肩をすくめた。



「あのお披露目会の断罪劇も、クロエ嬢を冤罪で死刑判決させることが狙いだったらしいよ」



 会場にいる人間に強い洗脳を行い、クロエ・マドネスを断罪させ、そのまま手に入れる。



「処刑したことにして裏で手を回して家に幽閉し、魔道具の解析をさせるつもりだったようだ。全く以て悪知恵の働く男だったよ」



 そう、とコンスタンスが険しい顔をする。



「そういえば、ライリューゲ元子爵が見つけた他の古代魔道具はどうなったのかしら?」


「調査に行った文官曰く、現場はグチャグチャだったらしいよ。近隣の住民の話では、突然大爆発が起きたらしくて、全ての魔道具が跡形もなく吹き飛んでいたらしい」



 ある夜、煤まみれになって帰ってきた兄とクロエの姿を思い出し、そう、とつぶやいて窓の外を見るコンスタンス。



 窓の外では、若葉色の木々が春風に吹かれてざわめいていた。






次がエピローグになります。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 洗脳された訳ではなく自分の意思で、王子を含め国の中枢の洗脳に協力し、王妃となり国を乗っ取る気だった娘を鉱山送りですか。この娘も極刑以外は甘い処罰じゃないかと思いました。
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