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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第三部 子爵令嬢、婚約お披露目パーティに参加する
27/47

05.信じてくれますか


本日新規2話目です。

 ソリディド公爵家の広い庭の端にある木に囲まれた東屋にて。


 クロエはオスカーと向かい合って座りながら、お茶とお菓子を楽しんでいた。



(ああ、至福……)



 大好きなマカロンを、目をつぶって堪能するクロエを見て、オスカーがくすりと笑った。



「マカロンが好きだとは思っていたが、まさかそこまで感動されるとは思わなかった」


「なんか久々に食物を味わって食べてるなあと思って」



 この数日。クロエは未だかつてないほど分析に没頭していた。

 上の空でご飯を食べ、寝ている間は夢の中で分析を行い。

 正に分析一色の生活を送ってきた。


 そして、今日、ようやくその分析がひと段落し、オスカーに誘われて東屋で大好きなマカロンを頂いているのだ。感動しない訳がない。


 クロエはマカロンを頬張りながら空を見上げた。



(そういえば、陽の光に当たったのも久々よね)



 カーテンを閉め切った部屋も良いが、やはり外で日の光を浴びて、自然風に吹かれると元気が出る気がする。


 そんなことを考えていると、オスカーが躊躇うように黙った後、ゆっくりと口を開いた。



「今日は、楽しい話だけするつもりだったんだが、ちょっと風向きが変わってしまってな。少し重い話をしなければならない」



 クロエは姿勢を正した。



「はい、なんでしょう」


「これだ」



 差し出されたのは、一通の封筒。

 すでにナイフか何かで開けられた跡がある。



「つい先ほど、君の兄のテオドール氏から届けられたものだ。まず君の実家に届いて、その後テオドール氏のところに送られて来たらしい」


「中身はご存じですか?」


「ああ、ナロウ王子とプリシラ嬢の『婚約お披露目会』の招待状と聞いている」



 そうですか、とため息をつくクロエに、オスカーが意外そうな顔をした。



「驚かないのか?」


「……そうですね。なにか理由をつけて呼び出されるとは思っていたので。

 ちなみに、そのお披露目会って、王宮の中心部分にある舞踏会会場でやったりします?」



 オスカーが若干目を見開いた。



「ああ、その通りだ」


「……そうですか」



 黙り込むクロエに、オスカーが顔に心配の色を浮かべた。



「どうしたんだ、顔色が良くないぞ」


「……ええ、まあ、色々ありまして」



 クロエが、誤魔化すように紅茶に口をつけると、ため息をついた。


 酒蔵にある、ありとあらゆる酒類を分析し、ライリューゲ家について調べて、彼女はとある結論を出した。



『コンスタンスの婚約破棄事件から始まり、これまで起きた不可解な事件は、恐らく一本の線でつながる』



 そう考えれば全て説明がつくし、間違いないと思う。



(問題は、それを説明するのに、わたしの前世の知識をフル活用しなければならないことなのよね)



 前世の知識の中には、今世では通用しない物も多く、中には御伽噺に近いものまである。

 その知識を使って説明なんてしたら、確実に頭がおかしいヤツだと思われる。



(それに、例え信じてくれても、わたしにとってあまり嬉しいことにはならないわよね)



 この世の中にはない殺戮の魔道具を作れるなんてバレたら、前世の二の舞になるのではないだろうか。 



(これはどうしたらいいのかしら……)



 途方に暮れて黙り込むクロエを、ジッと見るオスカー。

 おもむろに口を開いた。



「クロエが、なにか困っているんだな」


「……」


「なにか、特別な事情があるのか?」



 こくりと頷くクロエ。


 オスカーは、なるほど、とつぶやくと、

 少し黙った後、真剣な顔で彼女を見た。



「俺はなにがあっても君の味方だ」



 オスカーは、彼女を真っすぐ見た。



「だから、もしも背負っているものがあるのであれば、俺を信じて話してみてくれないか」



 その真摯な目を見てクロエは思った。


 オスカーはいつだって自分に対して誠実だった。

 きっとこれ以上信頼できる人はいない。


 クロエは真剣な目でオスカーを見上げた。



「オスカー様、わたしを信じてくれますか?」



 オスカーは軽く目を見開くと、真面目な顔でうなずいた。



「当然だ」


「嘘みたいな話をするかもしれませんよ」


「それでもだ、俺が君のことを疑うなんてありえない」



 真摯な言葉に、俯くクロエ。

 そして、彼女は覚悟を決めたように顔を上げた。



「……少し長くなりますが、聞いてもらえますか」



 オスカーが力強くうなずいた。



「ああ、もちろんだ」





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― 新着の感想 ―
[一言] あぁ、やっとクロエの深くて重い傷を一緒に背負ってくれる人が……(இωஇ`。)
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