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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第三部 子爵令嬢、婚約お披露目パーティに参加する

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04.【Another Side】悩めるクロエ


(※コンスタンス視点)



 コンコンコン



 家に珍客が二人訪れてきた、数日後。

 コンスタンスが、クロエの部屋のドアをノックしていた。



「……はあい」



 少し間があって、ドアがゆっくりと開かれる。


 ドアの隙間から漏れ出す匂いに、コンスタンスは思わず鼻と口を押えた。



「すごいお酒の匂いよ! どうしたのよ、一体!」


「お酒を分析してたの」


「そのお酒って、この前お兄様が王城から持ち帰って来たもの?」


「ええ。全部開けて分析してたら、すごい匂いになっちゃって」



 クロエがバツが悪そうに頭をかく。


 その様子を見て、コンスタンスは思った。

 この子、やっぱり元気がないわ、と。



「クロエ、元気がないように見えるけど、大丈夫?」


「うん、大丈夫。ちゃんとご飯食べてるし、睡眠だってとってるし」


「もう! それは当たり前よ!」



 それもそうね、と笑うクロエだが、やはり元気がない。


 最近行動も変で、急にプリシラの生家であるライリューゲ家について調べたいと言い出したり、ライリューゲ領の地図を取り寄せて、ながめてはため息をついている。


 しかも、数日前など、ライリューゲ家が経営するカフェに行きたいと言い出した。



(一体どうしたのかしら)



 コンスタンスの前で、疲れたようにあくびをするクロエ。



(……これは一度、お兄様と相談した方が良いかもしれないわね)



 そんな訳で、その日の夕方。

 コンスタンスは、帰って来たばかりのオスカーの部屋に向かった。



「お兄様、ちょっといいかしら」


「どうした、コンスタンス?」



 まだ騎士服姿のオスカーが、コンスタンスを部屋に招き入れてくれる。


 彼女はソファに座ると、おもむろに口を開いた。



「実は、クロエのことで気になっていることがあるの」


「ああ、元気がない件、だろう?」


「ええ。わたくしの考えでは、王宮から帰って来たあたりからだと思うのですが、お兄様はどう思われますか?」


「俺もそう思う」


「彼女が部屋で何をしているのかご存じですか?」


「ああ、調べ物や、酒の分析だろう? 持って帰って来てくれと頼まれたからな。今日も、あれらを持って帰って来た」



 オスカーが指さす方向を見ると、そこに並んでいたのは酒瓶が5,6本。

 コンスタンスは眉を顰めた。



「大丈夫ですの。あんなにあったら部屋に籠りきりになってしまうのでは?」



 部屋に籠っていては気が滅入るのではないだろうか。

 そんなことを考えるコンスタンスに対し、オスカーが首を横に振った。



「まあ、確かにこもりきりは体に良くないだろうが、恐らくこれは彼女にとって必要な儀式みたいなものなのだと思う」


「儀式、ですか」


「ああ。彼女は心の中の整理がつかないと、何かに没頭するところがある。気が済むまで没頭して自分の中で答えが出たら、きっと話をしてくれると俺は思う」


「……そうかもしれませんわね」


「ああ。気が済むまで没頭した後に、話しやすい環境を作れば、それできっと大丈夫だ」



 なるほど、と感心するコンスタンス。

 実によく見ているし、理解している。



「さすがはお兄様ですわ。サイファの街でクロエの面倒を見ていただけのことはありますわ」


「……」


「クロエが絶賛していましたわ。お兄様のオムライスは絶品だと」



 にこにこするコンスタンスと、気まずそうに目を伏せるオスカー。




 そして、その数日後。


 どことなく、すっきりとした顔で部屋から出て来たクロエを、オスカーが「クロエの好きなお菓子を買って来たから、あとで一緒に庭で食べないか」とさりげなく誘い。


 コンスタンスが出掛ける予定が入っていたことから、

 クロエとオスカーは、庭の東屋でお菓子を食べることになった。



 コンスタンスが「お兄様、やるわね」と思ったのは、言うまでもない。






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