表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第三部 子爵令嬢、婚約お披露目パーティに参加する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/47

02.ティールームでの語らい

 

「聞いているだけで気絶しそうだわ。クロエは大冒険をしてきたのね」


「そうね、本当に色々あったわ」



 クロエがオスカーに抱えられて、ソリディド公爵家に到着した二日後。


 彼女は、午後の明るい陽射しが差し込む薔薇の花が飾られたティールームで、

 コンスタンスとお菓子をつまみながらお茶をしていた。


 話題は、サイファからここまでの旅のこと。




 *




 怪しい黒ローブの男たちに襲われたクロエが、オスカーに連れられてサイファを出た後、

 彼は隣の街に馬を進めた。



「もっと移動したいところだが、夜道は危ない、馬も疲れている」


「どこに行くんですか」


「ブライト王国に戻ろう。この国にいては、いざというとき君を守れない」



 隣の街の宿で眠れぬ数時間を過ごし、馬を新しくして、夜明け前に出発。


 途中の街で服を替え、道を変え、移動すること四日。

 国境を越え、ソリディド公爵家の屋敷に到着した、という次第だ。


 ちなみに、寝不足続きだったクロエは、三日目の夜に疲労と発熱でダウン。

 四日目は、ほぼオスカーの膝の上に抱えられているか、運ばれているかどちらかという状態だった。

 最後の方は、飲み物まで飲ませてもらっていた気がする。



「すみません」と謝るクロエに、

「気にしなくていい」「俺がいるから大丈夫だ」と励ましてくれた彼には感謝しかない。



 これらの話を聞いて、「とにかく無事に帰ってこれて良かったわ」と安堵の表情を浮かべるコンスタンス。



「それで、クロエはこれからずっと王都にいるつもりなの?」


「そのつもりはないわ。黒ローブの男たちの事件が解決したら、サイファの街に戻ろうと思っているわ」



 薬屋の就業期間は二年。

 今回助けてくれた街のみんなのためにも、早く戻って薬屋を再開して、最後までちゃんと働きたい。



「そうなのね」とコンスタンスが残念そうな顔をする。



「でも、しばらくはこっちにいるってことよね」


「ええ、そうなると思うわ」



(あとは、せっかく王都に戻って来たのだもの。オスカー様に頼まれた毒の分析の仕事もきちんと終わらせたいわ)



 その後、お茶を何度か替えながら近況報告し合う二人。


 コンスタンスが、ここ一年の状況を話してくれた。



「クロエのお陰で、ナロウ殿下と円満に婚約を解消できたんだけど、ものすごく騒がれて、半年くらい大変だったわ」



 その後、領地に戻って半年ほどのんびり過ごし、少し前に王都に戻って来たらしい。



「今は親戚の子の家庭教師をしていてね。社交界にも少しずつ復帰しているわ」



 コンスタンスの元気そうな様子に、よかったわ、と思うクロエ。ふと思い出して尋ねた。



「そういえば、サイファで見た新聞に、国王陛下のお加減が悪いと書いてあったけど、今も良くないの?」



 コンスタンスが声を潜めた。



「先月お見舞いに行ったお父様の話だと、

 意識が混濁している状態で、ほとんど話せなかったらしいわ」


「そうなのね。魔道具師が行方不明になっている件は?」


「見つかってないと思うわ。影も形もないという話よ」



 そうなのね、とつぶやくクロエ。

 行方不明になった人たちは、尊敬できる魔道具師ばかりだった。



(無事だといいけど)



 その後、この一年間に起きた、あれやこれやについて、お菓子をつまみながら談笑する二人。


 先生や元同級生の結婚話など、話題が尽きない。



 そして、窓から差す西日がまぶしく感じられるようになったころ。

 ノックの音と共に、初老の執事が入ってきた。



「コンスタンス様、オスカー様がお帰りです」


「あら、ずいぶん早かったのね」



 二人がティールームを出て、エントランスに向かうと、そこにはオスカーが立っていた。



「お帰りなさい、お兄様」


「おかえりなさい、オスカー様」


「ああ、ただいま」



 嬉しそうに微笑むオスカーが、持っていた箱を二人に差し出した。



「これは?」


「おみやげだ。街に寄って買ってきた」



 コンスタンスが思わずといった風に吹き出した。



「まあ、お兄様、あなた、街に寄っておみやげなんて買ってくる方でしたっけ」


「……たまにはな」


「ええ、わかりましたわ。そういうことにしておきましょう」



 箱を手に、「ティールームでお待ちしておりますわ」と歩き出すコンスタンス。


 クロエが、その後に付いて行こうとすると、オスカーが呼び止めた。



「少しいいか」


「はい。なんでしょう」


「この家はどうだ、快適に過ごせているか」


「ありがとうございます、とても良くして頂いています」



「そうか」とオスカーがホッとしたような顔をする。そして、声を潜めた。



「例の毒の件だが、セドリックが君の分析結果に基づいて調査を開始するそうだ。君にお礼を言ってくれと言われた」



 そうですか、と俯くクロエ。


 そして、少し考えた後、オスカーを見上げた。



「あの、一つお願いがあります」


「なんだ?」


「わたし、王宮に行きたいです」


「……は?」



 クロエの突然の申し出に、驚いた顔をするオスカー。



「……それはなぜだ」


「水分を直接調べさせて欲しいんです。現地じゃなきゃ分からないこともあると思いますし、乗り掛かった舟ですし」



(やっぱり、引き受けた分析は、ちゃんと終わらせるのが筋だと思うのよね)



「せっかく王都に来たし、最後までちゃんと調べたい」と研究者らしい発言をするクロエに、「君は追われる身なんだが」と苦笑するオスカー。


 軽くため息をついたあと、渋々うなずいた。



「分かった。こちらとしても助かる。安全対策を含めてセドリックに相談しよう」




 そして、この数日後。

 クロエは、遠縁の貴族令息に変装して、オスカーと共に王宮に調査に行くことになった。




ちなみに、セドリックは「王弟殿下」です。

(ナロウ殿下の叔父)


不要と思われるAnother Sideを削った中に入れていたのを、今の今まで失念しておりました。


完結後にどこかに入れますので、今は「ふうん、そうなんだ」くらいに思っていて頂けると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓5月30日書籍発売!『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』
お手に取って頂けると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

★各書店サイトはこちら★ 【Amazon】  【楽天ブックス】  【Book Worker】 
ie52c7gqa2qc87vji1om5l509wjf_jrc_f2_lk_7xlx.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ