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どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第三部 子爵令嬢、婚約お披露目パーティに参加する

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01.プロローグ:ソリディド公爵家にて

(※コンスタンス視点)



 クロエとオスカーがサイファの街を出た、約一週間後。


 初夏を感じさせる、やや蒸し暑い曇天の午後。

 王都の貴族街を、買い物帰りの一台の立派な馬車が走っていた。


 乗っているのは、美しい青いドレスを身に纏ったコンスタンス・ソリディド公爵令嬢。


 彼女は、馬車の窓から今にも降り出しそうな空を見上げると、一人つぶやいた。



「国を出てずいぶん経つけど、お兄様、大丈夫かしら」



 約一カ月前、オスカーは騎士団の極秘任務のため、秘密裏に国を出た。


 対外的にはケガで療養中ということになっており、

 オスカーに変装させた使用人を家の庭に出したりして不在を誤魔化している。



(最長一カ月と言っていたし、もう帰ってきてもよい頃だと思うのだけど……)



 憂い顔で窓の外をながめるコンスタンスを乗せて、貴族街を走り抜ける馬車。

 ひときわ大きなソリディド公爵家の屋敷の前に止まった。


 コンスタンスが馬車から降りると、初老の執事が出迎えた。



「おかえりなさいませ、コンスタンス様」


「ただいま」



 執事と共にエントランスに入る。

 そして、彼女は、屋敷内の雰囲気が、いつになく慌ただしいことに気が付いた。


 どことなく落ち着かない様子のメイドたちに、バタバタしている男性使用人。

 執事もどことなく動揺しているように見える。



「……これは一体なんの騒ぎかしら」



 コンスタンスが尋ねると、執事が、戸惑ったような表情で口を開いた。



「……実は、オスカー様がお戻りになられまして」



 コンスタンスは目を見開いた。



「まあ、お兄様が! ご無事なの?」


「はい、元気そうではいらっしゃったのですが、なんの前触れもなく少年を一人連れて帰ってこられまして」


「少年?」



 執事の話だと、オスカーは突然馬車で帰ってきて、その馬車に少年が一人乗っていたらしい。



「十五、六歳くらいの、眼鏡をかけた方でして、どうやら眠っていらっしゃったらしく、オスカー様が、ご自分のマントにその少年を包んで、横抱きで馬車から降りられました。

その後、ご自分のお部屋に運ばれまして、少年のために部屋の準備するよう指示すると、『軽食と飲み物を持ってきてくれ、それ以外は絶対に入ってくるな』と」


 コンスタンスは眉間に軽くしわを寄せた。



「……お兄様はなにか言わなかったの?」


「それが、遠縁の少年だということ以外はなにも」


「……遠縁?」



 そんな遠縁、聞いたことがないわ、と首をかしげるコンスタンス。

 執事も同じらしく、首を横に振る。



(これは、わたくしが確かめた方が良さそうね)



「わかりました。わたくしが様子を見にいきます」




 *




 コンスタンスは、階段を上がると、廊下を歩いて兄の部屋の前に立った。

 息を軽く吸うと、ノックする。



 しばらくして、ドアがガチャリと開いて、やや疲れた様子のオスカーが顔を覗かせた。



「……久しぶりだな」


「おかえりなさいませ、お疲れですわね」



 そう言いながら、コンスタンスはドアの隙間から部屋の様子を窺った。

 部屋はいつも通りで、ローテーブルの上には便箋とペンが置かれている。



「手紙を書いていらしたのですか?」


「ああ、色々と調整が必要でな」


「少年を連れて来たと、家の者が驚いていましたが」


「色々あって、やむなしだった」



 と、そのとき。

 不意に部屋の中から嬉しそうな声が聞こえてきた。



「コンスタンス!」



 部屋の端で人影が動くのを感じ、そちらに目を向けて、コンスタンスは目を見開いた。



「……っ!」



 それは髪の毛を肩ほどの長さに切った懐かしい友の姿であった。



「クロエ!」



 コンスタンスは、オスカーを押しのけると、クロエに駆け寄って、思い切り抱きしめた。



「クロエ! 会いたかったわ!」


「ぐえっ」


「あなたったら、ほとんど手紙も寄越さないで!」


「ぐえっ、ちょ、まっ、てか、これってデジャヴ……」


「心配したんだから! 悪い子だわ!」


「く、苦しい……」



 ジタバタと暴れるクロエを、夢中で抱きしめるコンスタンス。

 オスカーが、慌てて妹の肩に手を置いた。



「落ち着け、クロエが死んでしまうぞ」


「え?」



 コンスタンスが慌てて腕を弛めると、

 そこには、きゅう、といった具合に伸びているクロエの姿があった。



「わ、わたくしったら! つい!」





 必死に謝るコンスタンスを見ながら、クロエは思った。


 やっぱり、この二人は兄妹なのね、と。





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